マンション管理組合の理事長とは?トラブル回避のためにも知っておきたい仕事内容

初めて回ってきた役員の順番。

よく分かっていないまま理事長の役目を引き受けてしまった、というケースも多いのはないでしょうか。

今回は、管理組合における理事長の役割や責任などについて説明していきます。
初めて理事長に就任した方だけでなく、久しぶりに理事長に就任したという方はぜひご一読ください。

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マンション管理組合の理事長とは

管理組合の理事長は、管理組合の代表者です。

理事長になるには、まず総会で理事に選任され、その後理事会の決議によって選任される必要があります。

区分所有法やマンション標準管理規約は会社法の考え方に似ているところがあるため、管理組合を会社に例えて考えてみるとイメージがしやすい面があります。

理事長は、会社で言えば代表取締役社長のような立場といえるでしょう。

しかし、会社の社長ほど大きな決裁権限を持っているわけではありません。

管理組合の中で何か重大な意思決定をする際は、理事長であっても一区分所有者としての議決権しか持っていないのです。

その一方で、理事長がやるべきことは多岐に渡ります。

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管理組合の理事長の主な仕事

マンション標準管理規約では理事長が行うべきに項目ついて以下のように記載しています。

1. 総会の招集とその議長

第42条(総会)

3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。

4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。

5 総会の議長は、理事長が務める。

マンション標準管理規約

基本的に、総会を招集できるのは理事長だけです。(理事長が総会を招集しない場合、議決権総数の5分の1以上の同意を得れば理事長以外の区分所有者が招集することができます)

総会には定時総会と臨時総会の2種類がありますが、定時総会は「招集しなければならない」となっており、臨時総会は「招集することができる」と定められています。

また、総会における議長は理事長が務めます。

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2. 理事会の招集とその議長

総会と同様に理事会も理事長が招集し、理事長が議長を務めます。

第51条(理事会)

3 理事会の議長は、理事長が務める。

第52条(招集)

理事会は、理事長が招集する。

マンション標準管理規約

3. 会計報告

会社でいうところの株主総会における決算報告と似ています。

第59条(会計報告)

理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない。

マンション標準管理規約

管理組合の活動は、各区分所有者から毎月集める管理費や修繕積立金で運営していますから、集められた資金が有効に使用されているかは管理組合にとって非常に重要な関心事です。

そのため、会計監査や通常総会での承認が義務づけられています。

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4. 総会の議事録作成や書類の保管

議事録の作成や書類の保管も理事長の重要な業務です。

第49条(議事録の作成、保管等 ※電磁的方法が利用可能ではない場合)

総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。

2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名しなければならない。

3 理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

第64条(帳票類の作成、保管 ※電磁的方法が利用可能ではない場合)

理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

理事長が保管しなければならない書類は、総会の議事録、決算書類など多岐に渡ります。

マンション標準管理規約

以上が標準管理規約で定められている理事長の役割の主な内容です。

あくまでも標準管理規約における取り決めですので、お住まいのマンションの管理規約は異なる記載になっているかもしれません。

ご心配な場合は、ご自身の管理組合の管理規約を確認するようにしてください。

続いて、区分所有法における理事長業務に関する記載について触れていきます。

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5. 総会決議事項の実行と規約で定められた行為の権利及び義務

区分所有法でも理事長の義務や責任について触れている箇所があります。

なお、区分所有法では「理事長」という文言はありませんので「管理者=理事長」とお考えください。

また、以下の区分所有法の条文は、読み取りやすいように多少文言を省略したり、加工編集を加えたりしていますのでご留意ください。

 

区分所有法 第二十六条(権限) 

管理者は、共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。

理事長になると、例えば管理費の長期滞納者に対して訴訟を起こす場合の原告になったり、外部から管理組合が訴えられた場合の被告になったりすることがあります

訴訟と聞くと、理事長の責任の重さを感じてしまうかもしれませんが、通常は対応を弁護士に委任するため、原告や被告になったからといって、裁判所に出廷しなければならないわけではありません

6. 事務の報告義務

区分所有法 第四十三条(事務の報告)

管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

 

先ほど触れました「会計報告」以外でも、事務報告をすることが区分所有法で義務づけられています。

ここでいう事務報告とは、管理組合全体の1年間の活動を総会で報告するイメージです。

また、似たような項目が標準管理規約にも記載がありますのでご紹介します。

 

第38条(理事長)

4 理事長は、○か月に1回以上、職務の状況を理事会に報告しなければならない。

 

事務報告は管理組合全体での活動報告ですが、上記は理事長としての職務状況となります

これを怠ると管理規約違反となってしまいますので注意が必要です。

マンション管理組合の理事長になった場合のメリット

ここまでの話を読んだ限りでは「理事長になるとやる事もたくさんあるし、責任や義務も負うし、良いことなんてないんじゃない?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、理事長になると以下のようなメリットもあります。

  • マンションのことや管理組合のことがよく分かる
  • 理事長経験者がマンション内に多くいると管理組合運営が活性化する

マンションのことや管理組合のことがよく分かる

管理組合のお金がどのように使われているのか、管理会社がどのような仕事をしているのか、マンション内にどのような設備が存在しているのか、修繕積立金は足りているのか、住民の方々からはどんな要望があるのかなど、理事長は管理組合内のあらゆる情報を見聞きします

その結果、理事長を1年やり切ったあとに「マンションのことがとてもよく分かるようになった。今まで管理組合運営に対し、無関心だったことを少々反省している」といったことをお話される方も決して珍しくありません。

理事長経験者がマンション内に多くいると管理組合運営が活性化する

マンション内に理事長経験者が多くいると、管理組合運営が活性化することが期待できます。

理事長経験者の方は、理事会の方々の苦労や、管理組合の課題などを理解しているケースが多く、総会にも出席し、前向きな意見を述べてくれる場合があります。

また、大規模修繕工事を経験した理事長は、次の大規模修繕工事の際の理事会メンバーに対して有益なアドバイスができる場合もあります。

そのような状況は管理組合運営の活性化につながるため、より多くの方に理事長を経験してもらうことはマンションにとって良い影響をもたらします

関連記事:必要?大規模修繕工事コンサルタントの役割と選び方とは

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理事間や居住者間のトラブル、どう解決する?

時折、理事同士や住民同士のトラブルが発生することがあります。

マンション内には属性や価値観の異なる方々が共同で生活しています。

日々忙しく仕事をしている人と、リタイヤ層では考え方が違う場合がありますし、犬が好きな人もいれば動物が嫌いな人もいます。

また、子育て世代と単身世帯では子供の足音や遊び声などに対する寛容度が違うかもしれません。

そのため、意見や主張の食い違いからトラブルに発展することもあります。

理事長として管理組合内のトラブルに直面した場合、どのように対応したら良いでしょうか?

理事間のトラブル

理事間のトラブルで多いのは、「理事会に全然参加しない人」や「理事会の仕事を全然やろうとしない人」がいる場合です。

どちらかといえば、管理組合の役員を好き好んでやりたがる人よりも、できればやりたくないと考えている人の方が多いのではないでしょうか。

「自分だって休みの日に理事会に参加するのは嫌だけど、自分だけわがままを言うわけにはいかないから、ちゃんと参加しよう」と思っているところに、全然理事会に来ない人を見るとついつい感情的に文句を言ってしまう場合もあります

そこからトラブルに発展するケースも少なくありません。

居住者間のトラブル

居住者間のトラブルで多いのは「住環境に対する苦情」「理不尽なクレーム」の2つです。

① 住環境への不満

例えば「他の住民のゴミ出しのマナーが悪い」「隣人や上階の生活音がうるさい」「共用部に私物が放置してある」といった不満です。

受け取ったクレームは基本的には理事会で議題に挙げ、対処法を検討することになります。

クレームの内容を細かく把握したい場合、苦情を言っている人を理事会に出席してもらい、話を聞く機会を設けても良いでしょう。

特に騒音問題などは騒音の原因となっている部屋の人の話も聞くことも検討しましょう。

② 理不尽なクレーム

住民の中には、自分勝手な理由でクレームを言ってくる人もいます。

例えば「自分の車の駐車場の区画を自分の部屋から一番近い場所に移動させろ」「共用部にゴミが落ちていたから掃除が行き届いていない。管理会社にやり直しさせろ」など。

また、耳をすましてよく聞かないと分からないような些細な生活音に対してクレームを入れるケースも多いようです。

理不尽なクレームをしてくる人は、一度クレームを受け入れてしまうと、要求がどんどんエスカレートしてしまうこともあります

また、意にそぐわない対応だった場合、対応した人への個人攻撃に発展する可能性もあります。

そのため、慎重に対応した方が良いです。

関連記事:マンション管理費の滞納はトラブルの元?管理費を払わない人への対応策などを紹介

関連記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説

トラブルを避ける! クレーム対応のポイント

住民からクレームがきたら、どのように対応すれば良いのでしょうか。

一般論とはなりますが、以下のポイントを参考にしてみてください。

【ポイント1】冷静に話を聞く

住民からのクレームを、最初から「理不尽なもの」と決めつけないことはとても大切です。

中には真剣にマンションのことを考え、提案してくれる人もいます。

多少口調が荒かったとしても、初めから厄介なクレーマーとして遠ざけてしまうと、かえって反発を招くことにもなりかねません

また、苦情を言っている人の意見を頭ごなしに否定したり「それは無理です」と即答したりすることは控えましょう。

誰かがきちんと話を聞いてくれたり「それは大変でしたね」と同調してあげたり、丁寧に接することでクレームが解決する可能性もあります。

【ポイント2】1人での対応は避ける

クレームを理事長1人で対応してしまうと、お互いに感情的になってしまったり、意見が偏ったりしてしまい、トラブルが大きくなってしまう可能性もあります

必ず他の理事の方と一緒に対応するようにしましょう。

なおこの場合、話を聞く側の人は人数が多ければ多いほど有効な場合があります。

クレームを言っている人の意見が少々おかしい場合、理事長1人に「それはちょっと違いませんか?」と言われるよりも、5~6人の理事全員から同じことを言われた方が効果的な相手もいます。

また、1人で結論を出すことにリスクがあります

要求を否定すれば「軽くあしらわれた」と相手の不満を募らせることになりかねません。

実際に苦情に対応できるかどうかは理事会で検討しなければならないという場合もあるでしょう。

1人では気圧されてしまうような相手でも、話を聞く理事会側の人数が多い状況であれば、冷静に対応できることもありますので、必ず複数人で対応するようにしましょう。

まとめ

今回は、理事長の仕事の内容や住民間のトラブル対応に関する説明でした。

理事長の仕事は多岐に渡り、法的な責任や義務といった負担も生じるため、なるべくならやりたくないと考える方が多いかもしれません。

しかし、理事長を経験された方は、マンションのことや管理組合の状況をよく理解でき、良い経験になったという感想を述べられる方も多いようです。

輪番制のマンションの場合、10数年おきくらいに役員が回ってくるイメージでしょうか。

長年マンションで暮らしていくうちの、たった1年ですから、役員が回ってきた際は、ぜひ前向きに理事長業務に取り組まれてはいかがでしょうか。

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