区分所有法における区分所有者とは?区分所有法と合わせてわかりやすく解説
分譲マンションを購入すると、自動的に区分所有者となります。
また、分譲マンションの場合、区分所有法という法律が大きく関わってきます。
マンションに暮らす以上、自分の持つ権利や義務をきちんと理解しておきたいですよね
今回は、区分所有法や区分所有者について解説していきます。
INDEX
区分所有法ではどんなことが定められている?
区分所有法は正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といい、1962年(昭和37年)に施行されたのが最初です。
日本住宅公団(当時)による団地の供給や民間のデベロッパーによる分譲がはじまったことが区分所有法施行のきっかけと言われています。
区分所有法は大きく3章に分かれており「区分所有権」「区分所有者」「共用部分」といった用語の定義から、区分所有者の権利義務、総会、管理規約、管理組合の法人化、復旧や建替えなど、多岐に渡る項目が定められています。
何点かピックアップしてみていきましょう。
管理組合は自動的に組成される
(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
区分所有法
「区分所有者は全員で……団体を構成し」という文言は、分譲マンションの場合は自動的に管理組合が構成され、区分所有者は全員管理組合に加入する義務がある、と解釈して良いでしょう。
共用部分は区分所有者全員のもの
(共用部分の共有関係)
第十一条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。
区分所有法
エレベーターや駐車場は区分所有者全員のものということです。
共用部分の持分割合
(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
区分所有法
持っている部屋が広い方がより多く持ち分を有するということですね。
共用部分の持分の処分
(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
区分所有法
各区分所有者は、形式的には部屋と共用部分の両方の所有権を保有していることになります。
しかし部屋を売却すると、共用部分の持分割合もセットで、所有権が他人に移ることを定めています。
こうしておかないと、部屋の所有権は他人に所有権が移ったが、共用部分の持分はまだ前の人のまま、という状況を生み出してしまう可能性があるからです。
共用部分の変更
(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
区分所有法
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)というのは、例えば機械式駐車場を取り壊して駐輪場に変更するような場合です。
影響が大きいため四分の三以上の賛成が必要というのを原則としています。
また、2項で「特別な影響」とありますが、これは先ほどのケースで「これまで駐車場を使っていた人で、取り壊されてしまうと困ってしまう人」のような場合を指します。
ただし、どこまでが特別な影響として認められるかについては、ケースバイケースです。
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理事長の権限
(権限)
第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
区分所有法
区分所有法で登場する「管理者」とは、通常は理事長のことを指します。
理事長は集会(総会のこと)で決まった事や規約で定められた行為を行う権利と義務を負っているのです。
権利ならともかく、義務ときくと少々ドキッとしますよね。
規約の変更など
(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
区分所有法
規約を変更する場合は、四分の三以上の賛成が必要と定義しています。
また、誰かに特別な影響を与える場合は、その人の承諾が必要としています。
例えば、飲食店の営業を禁止するといったような規約変更する場合に、実際に既に飲食店を運営しているような方を指します。
総会の議事録
(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名しなければならない。
区分所有法
総会の議事録についても法律で義務付けられています。理事長になられた方は法律違反が無いよう注意する必要があります。
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建替え
(建替え決議)
第六十二条 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という)をすることができる。
区分所有法
マンションも古くなるといずれ建替えが必要になってきます。
建替えはマンションに住んでいる人たちへの影響がとても大きいため、各五分の四以上の賛成が求められています。
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罰則
第七十一条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。
区分所有法
区分所有法にも罰則があります。
具体的には管理規約を保管しなかったり、総会の議事録の作成を怠ったりした場合などです。
実際に過料を取られた、というようなお話は聞いたことがありませんが、罰則に抵触するような事態は避けましょう。
マンション標準管理規約は、区分所有法とどう違うの?
一般的なマンションには普通、管理規約というものがあります。
これはマンション内のさまざまなルールを定めたもので、例えば総会で決議すべき項目や、管理費の支払い期日、理事の人数などを定めています。
日本全国津々浦々にあるマンションが、それぞれで管理規約を作成するのは大変ですから、国土交通省が指針となる管理規約を公表しています。
これを標準管理規約といいます。
区分所有法は法律であるのに対し、標準管理規約はあくまでも「指針」であり、法的な拘束力はありません。
標準管理規約と異なる規約の定めをしてもそれ自体は問題ありません。
ただし、区分所有法と異なる定めをした場合、その定めは無効となる場合があります。
例えば、先ほど例に挙げたような共用部の変更などです。
区分所有法では以下の通り、原則的には四分の三以上の賛成を必要としているものの、区分所有者の定数だけは規約の定めによって過半数まで減ずることができる、としています。
これを議決権の方まであわせて過半数まで減ずるような規約を制定しても、その点は無効となります。
(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
区分所有法
マンション管理規約を見直す方法
区分所有者の入れ替わりや、時代の変化に伴う生活様式の移り変わりによって、従来の管理規約が、住民の利用実態にそぐわなくなることも考えられます。
存在しても意味がないルールや、一部の居住者だけが不利になるような条項があれば、管理組合は規約の内容を見直し、改正しなければなりません。
以下のような内容で管理規約の見直しをされるケースがよく見受けられます。
- 役員の業務内容変更
- 役員の任期変更
- 役員の定数変更
- 役員の選出ルール変更
- 新たなルールの追加
- 館外区分所有者の管理組合協力金の設定
- 専有部分を民泊化するときのルール
- 反社会的勢力排除のルール追加
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管理規約変更の基本的な流れ
STEP 1
理事会・専門委員会等での検討開始
必要に応じて管理規約変更のための専門委員会を立ち上げ
STEP 2
説明会の開催
特に居住者にとって影響のある事案の場合には説明会を開催
STEP 3
総会での決議
管理規約の変更の場合は総会での特別決議が必要
STEP 4
規約原本の作成
新しい管理規約を全組合員へ配布
STEP 5
広報活動
賃借人などにも掲示板などを利用してお知らせ
区分所有法における区分所有者とは?議決権と定数の違いは?
区分所有者は、建物に構造上区分された一部(専有部分)について所有する権利を持っている人のことをいいます。
つまり、分譲マンションでいえば101号室を購入して所有している人は、101号室の区分所有者というわけです。
管理組合の重要な意思決定においては、賛成している区分所有者がどのくらい多いかによって決定されます。
区分所有者の定数
区分所有者の定数は頭数のことです。
例えば総戸数100戸のマンションの場合、区分所有者の数は100です。
規約で過半数の賛成が必要、と定められている場合は51以上の区分所有者の賛成が必要となります。
50ではないため注意しましょう。
議決権の定数
議決権は、原則として床面積の割合によって定められます。
例えばマンション全体の専有部分の床面積の合計が1,000㎡あり、101号室は70㎡、102号室は100㎡だったとします。
その場合101号室の区分所有者は70分の1,000だけ議決権を持ち、102号室は100分の1,000の議決権を持つということになります。
実際のマンションはもっと細かい数字になりますから、計算ミスが起きやすいため注意が必要です。
マンションによっては、一律全部屋の議決権を1に設定して運用をしている場合もあります。
これなら計算ミスは起きづらいですが、広い部屋を所有している人からすると不公平感が出ますので、あまりおすすめはできません。
せめて1と1.5と2に分けるなど、実際の議決権割合に近しい設定をする方が良いでしょう。
区分所有者の義務
それでは、区分所有者にはどのような義務があるのか具体的にみていきましょう。
区分所有法では特段これといった記載はありませんが、標準管理規約では以下のような記載があります。
管理規約及び総会の決議を守る義務
区分所有者は、円滑に共同生活を維持するために管理規約や総会の決議を遵守することが義務付けられています。
また、区分所有者が家族や同居人と一緒に住んでいる場合は、同居する者に対しても管理規約や総会の決議を守らせる義務があります。
管理組合に加入する義務
区分所有者は、組合員として管理組合に加入することが義務付けられています。管理組合は区分所有者全員で構成されます。
共用部分を決められた使い方で使用する義務
区分所有者は、それぞれの使い方に従って共用部分を使用することが義務付けられています。
具体的な内容は使用細則によってマンションごとに定められています。
例えば「共用廊下は通行のために使用するものであり、私物を置くために使用してはいけません」「駐輪場以外の場所に自転車を置いてはいけません」というように、共用部分のそれぞれに使い方が定められています。
専有部分の修繕やリフォーム等を行う際は管理組合に承認を得る義務
区分所有者は、専有部分について修繕やリフォーム等を行うときは、あらかじめ管理組合の理事長にその旨を申請し、書面または電磁的方法による承認を受けなければなりません。
この時、共用部分や他の住戸に影響を与えるおそれがないかなどを確認するために、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に提出する必要があります。
管理費及び修繕積立金を管理組合に支払う義務
区分所有者は、マンション共用部分の維持・管理に必要な経費として、管理費や修繕積立金を管理組合に納入する義務があります。
区分所有者と「占有者」の違い
マンションの管理規約には、区分所有者のほかに「占有者」という言葉も多く出てきます。
「占有者」とは、実際その部屋に居住している人のことです。
区分所有者が自身の所有物件に住んでいる場合には所有者・占有者ともに区分所有者ということになります。
しかし区分所有者が賃貸物件として第三者に貸し出している場合の占有者は賃借人となります。
この場合、占有者である賃借人は区分所有者ではないので管理規約等を守らなくても良いと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。
標準管理規約では占有者も区分所有者と同一の義務を負うことが定められておりますので、占有者も規約を遵守する必要があります。
もし、ご自身のマンションの管理規約に「占有者も規約を遵守すること」を定める記載がない場合は、速やかに変更することをおすすめします。
まとめ
今回は区分所有法や区分所有者に関するお話でした。
一般の区分所有者の方はあまり深いところまで知識を深める必要はありませんが、役員に就任した際などは、最低限の知識を持っていると管理会社とのやり取りがスムーズになりますし、退屈な管理組合運営が少し面白いものになるかもしれません。
今回の記事が今後の参考になれば幸いです。