マンション総会における議決権とは?総会の成立要件を年間スケジュールと一緒におさらい
管理組合の役員の方にとって、総会は最大のイベントといえます。
初めて役員に就任された方の中には「総会ってなにをすれば良いの?」「準備は何をするの?」「当日の手続きは?」といったような疑問を持たれる方も多くいらっしゃるでしょう。
今回はそういった疑問にお答えするコラムです。
新人の役員さんはぜひチェックしてみてください。
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INDEX
総会の基本をおさらい
マンションの総会は、管理組合の最高意思決定機関です。
区分所有法では、少なくとも年に1回、一定の時期に総会を開催することが定められています。
総会は、議決権総数の半数以上を有する組合員の出席で成立します。
普通決議の議案の場合は、出席組合員の議決権の過半数で決します。
一方、区分所有者に大きな影響を与える重要事項を決定する決議のことを特別決議といい、その場合は、組合員総数の3/4以上かつ議決権総数の3/4以上の賛成で決定されます。
標準管理規約では、通常総会は決算月の翌月から2ヶ月以内に開催することが定められています。
通常総会以外に、臨時で開催する「臨時総会」もあります。
こちらは通常総会のタイミングを待っていると遅くなってしまう場合などに開催されます。
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マンション管理組合の年間スケジュール
一般的なマンションにおける管理組合の年間スケジュールは以下の通りです。
多くの管理組合は、毎年役員が入れ替わる「輪番制」を採用しており、役員の任期にあわせて総会から翌年の総会までをひとつのサイクルとして考えることが一般的です。
【管理組合の決算期が3月の場合】
5月~6月
・通常総会の開催(2~3ヵ月前から準備をはじめます)
新たな期の管理組合の執行体制の決定など
7月
・第1回理事会(総会終了後にそのまま行う場合もあります)
前期の理事からの引き継ぎ
理事長や副理事長、会計担当理事など、役職の決定
8月
・定例理事会
夏祭りや納涼祭、バーベキュー大会の開催など(マンションによる)
マンション内の交流の促進を促すイベントなどの検討や企画及び実施
9月~10月
・定例理事会
・防災訓練(マンションによる)
12月~1月
・定例理事会
・クリスマス会・餅つき大会など
2月~4月
・定例理事会
・総会前理事会(決算理事会ともいいます)
・総会準備
・総会で決議すべき内容の確認
・予算案の作成
・次期役員の選出
・総会案内配布
・組合員に総会出席を促す
5月~6月
・通常総会の開催
上記はあくまでも一般的なスケジュールです。
マンションの状況によって理事会の頻度やイベントの回数を増減させるなど、柔軟に変更可能です。
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マンション総会の成立要件
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約には、総会の成立要件は以下のように書かれています。
(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
マンション標準管理規約
たとえばマンション全体の議決権総数がちょうど100だった場合、合計で50以上の議決権を持っている方の出席が必要ということになります。
この議決権行使は、委任状や議決権行使書によるものでも問題ありません。
ちなみに区分所有法には特別決議に関する定足数の制限はあるものの、普通決議に関しては特段制限がありません。
つまり、総会の成立要件はマンションの管理規約によって自由に変えることが可能ということです。
しかし多くのマンションは標準管理規約に沿った定めをしているのではないでしょうか。
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決議事項の制限
会社の株主総会の場合、株主総会の当日に突然株主から経営陣の退陣を求める発議がなされることがあります。これを緊急動議といいます。
管理組合の総会でも同じように「緊急動議」ができるのでしょうか?
標準管理規約には以下のような記載があります。
(総会の会議及び議事)
第47条
マンション標準管理規約
10 総会においては、第43条1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。
つまり、標準管理規約に沿った管理規約を制定しているマンションの場合は「あらかじめ通知した事項」しか決議できません。
よって緊急動議のようなことはできません。
例をあげると「駐車場の改修工事」という議案しか通知されていないのに、割安になるからといって自転車・バイク置場も一緒に工事をするというったような決議はできません。
しかし、管理規約で別段の定めがあれば、普通決議事項については通知していない事項も決議できます。
この場合の「別段の定め」とは、たとえば「集会においてあらかじめ通知した事項でなくても決議することができる」旨の定めのことです。
総会の決議は2種類ある
総会の決議には普通決議と特別決議があり、違いは以下の通りです。
普通決議 | 特別決議 | |
---|---|---|
決議する内容 | 日常の管理運営に関する決議 | 区分所有者に大きな影響を与える重要事項を決定する決議 |
決議要件 | 出席組合員の議決権の過半数(標準管理規約の場合) | 組合員総数の3/4以上かつ議決権総数の3/4以上の賛成 |
日常的な管理運営に関するものは過半数以上の賛成で決定となります。
しかし、特に重要なもの(区分所有者への影響が大きいもの)は3/4以上の賛成が必要とされています。
なお、特別決議のなかに“建て替え決議”というものがありますが、こちらはさらに条件が厳しく「組合員総数の4/5以上かつ議決権総数の4/5以上の賛成」が必要です。
老朽化したマンションを建て替えるわけですから、資金的にも日常生活にも大きな影響があることが予想されます。
よって、ほとんどの人が賛成しないと進められないようにしているわけです。
ちなみに総会で決議しなければ主なものは以下の通りです。 (※マンションの管理規約によって異なる場合があります)
普通決議事項 | 特別決議事項 |
---|---|
・前年度の管理組合の活動報告 ・前年度の会計報告(管理費会計や修繕積立金会計などの収支決算) ・収支予算案と事業計画案 ・使用細則の改定(制定や変更や廃止) ・管理費や修繕積立金の改定 ・次の役員の選任(理事や監事など) | ・管理規約の改定 ・管理組合法人の設立および解散 ・共用部分の変更(階段部分をエレベーターに改造する工事などです) ・大規模消滅における建物の復旧 ・専有部分の使用禁止の請求 ・区分所有権の競売の請求 ・占有者に対する引渡の請求 ・建て替え |
これらの事項が発生しそうな場合は、必ず総会で諮りましょう。
通常総会まで待っている余裕がない場合は臨時総会を開催し、しっかりと決議した方が良いです。
ちなみに、特別決議事項は仮に区分所有者の賛成多数によって管理規約改正をしたとしても、決議要件を緩和することはできません。
区分所有法によって定められているためです。
ただし「共用部分の変更」だけは、管理規約によって「区分所有者数の過半数かつ議決権の4分の3以上の賛成」にまで条件を緩和することができます。
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マンションの総会における注意点
既に説明した内容も含まれますが、総会における主な注意点は以下の通りです。
なお、以下の記載は標準管理規約の場合です。
招集通知は少なくとも総会の2週間前までに通知
総会の招集通知は、少なくとも開催日の2週間前までに、総会の日時、場所及び目的を示して通知しなければなりません。
総会の成立要件は満たしているか?
総会は議決権総数の半数以上を有する組合員の出席が必要です。
カウントミスがないよう、複数人で確認するようにしましょう。
また、総会当日になって不足することが判明しても手の打ちようがありません。
必ず事前に出欠表を回収し、集計をしておきましょう。万が一定足数が不足しそうな場合は組合員に出席を呼びかけ、どうしても都合が悪い場合は、委任状や議決権行使書の提出をお願いしましょう。
可決のための賛成数を満たしているか?
普通決議の議案の場合は、出席組合員の議決権の過半数で決します。
後で数え直してみたら賛成数が足らなかったということがないよう、しっかりチェックしましょう。
なお、総会の直前や総会当日になって賛成数が足らないことが判明しても、もうどうにもなりません。
たとえば高額な工事を実施する、管理会社を変更する、ペットの飼育ルールを変更する、といったように、ある程度の反対意見があがりそうな議案の場合は、総会の前に説明会を開催したり、区分所有者アンケ―トを実施して意向を確認したりしておくなどの対応も必要です。
まとめ
今回は総会の議決権や成立要件などがテーマでした。
管理会社に管理業務を委託しているマンションの場合は、管理会社が全てお膳立てしてくれるのが一般的です。
しかし昨今、管理会社の人手不足は年々深刻化しており、管理会社の方から管理をやめる、という事例も珍しくありません。
後継の管理会社が見つからなかった場合は、自分たちで管理業務を行うしかありません。
しかしそうなると、当然ながら総会も自分たちだけで開催しなければなりません。
そのような状況に陥った際、管理会社に任せっぱなしだったから管理組合運営のノウハウが全くない、総会もどうやって良いのか全然分からない、というマンションも決して珍しくありません。
どこの管理会社も管理を引き受けてくれないケースはやや極端な例かもしれませんが、管理会社に任せきりにし過ぎて管理組合側にノウハウが全く蓄積しない、という状況は決して望ましくありません。
管理会社に頼るのは結構ですが、決してお任せにし過ぎず、当事者意識をもって総会の準備や当日の運営に臨むことをお勧めします。