マンションの臨時総会とはどのタイミングで開くもの?通常総会の違いなども解説

みなさんがお住いのマンションでは、定期的にマンション総会が開かれていると思います。

総会では管理規約の変更や大規模修繕の予算額設定など、理事会だけで決められない重要事項についての決議が行われます。

そのため、理事会役員だけでなく区分所有者の出席も必要なのです。

 

そんな重要事項を決める場である総会には「通常総会」と「臨時総会」の2種類があります。

2つの総会にはどのような違いがあるのでしょうか?

今回の記事では「臨時総会」について解説していきます。

関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット

関連記事:マンションの設備点検とは?業者の選び方や相場などを解説

総会とは?

マンションで実施される総会は、管理組合の「最高意思決定機関」とされています。

区分所有法においては、少なくとも年に1回。
一定の時期に集会し、収支決算や事業報告などについて決議を取ることが定められています。

 

総会は、年に1回必ず開催される「通常総会(定期総会)」と、大規模修繕工事など重要な議題を審議する「臨時総会」の2種類に分けられます。

臨時総会は組合員なら誰でも開催が可能!

総会の招集は誰が行うのでしょうか。

区分所有法では、集会は管理者が招集するとされています(区分所有法34条1項)。

管理者とは通常、理事長を指すため、原則として総会は理事長開催によるものです。

臨時総会も理事長による開催……ではなく、実は組合員であれば誰でも開催が可能なのはご存知ですか?

つまり、通常総会と臨時総会の違いは開催者に決まりがあるかないかという部分にもあるのです。

この章ではより詳しく説明していきます。

理事長

理事長は、「必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる」と標準管理規約では定められています。

理事長が臨時総会を開く場合、理事会で決議して「臨時総会」の開催の承認を取らなければなりません。

その後、理事長が臨時総会の招集を行う、といった手順が必要です。

監事

マンション管理組合の監事とは、組合における業務の執行状況や財産を監視する役割を持つ役員のことです。

役員には大きく分けて理事と監事の2種類がありますが、監事は理事を兼任することができません。

管理組合の業務に関する執行権を持つ役員が理事であり、監事は理事を監視する立場にあるからです。

 

監事は理事会の承認を得ずに臨時総会を開催できるという権限も持っています。

業務監査や会計監査の過程で不正があると認められた場合、監事は理事会の承認を得ずに単独で臨時総会を開催することができます。

組合員

管理組合の組合員である区分所有者でも、総会を招集し理事長に対して総会の招集を請求することが可能です。

区分所有者総数、もしくは議決権総数の5分の1以上の賛成を得ることができれば、臨時総会の開催を請求することができます。

区分所有者から臨時総会開催の請求を出された場合、理事長は臨時総会の招集通知を2週間以内に通知しなければならないことが標準管理規約で定められています。

 

ただし、請求があったにもかかわらず、理事長が総会を招集しない場合には、請求を行った区分所有者がみずから臨時総会の招集を行うことができます。

臨時総会を開くタイミングはある?

臨時総会は必要が生じた場合にその都度開催されるため、時期は問いません。

臨時総会は、通常総会の開催時期以外で重要事項についての総会決議が必要な場合に開催されるマンション総会です。

収支状況の悪化や緊急で必要となる管理規約の改定、理事会役員の不祥事が発覚した場合など、必要に応じて招集されます。

これを見れば完璧!?臨時総会を開くための全手順

総会に関するルールが法律で定められている以上、開催についても一定のルールがあります。

開催に関する手続きにおいては、通常総会と臨時総会どちらも同じですが、どのような手続きが必要なのでしょうか。

招集通知書の作成

総会を開くには招集通知が必要です。

招集通知には、場所、日時、開催の目的を明記しなければなりません。

各区分所有者への総会の招集通知は電話や口頭でも可能です。

しかし後々問題を起こさないためにも、書面で通知するのがベストでしょう。

なお、マンション標準管理規約にて開催2週間前までに告知することとされています。

 

ほとんどのマンションの管理規約はマンション標準管理規約に準じて作成され、告知期間は各マンションの管理規約に準拠することになります。

また、招集通知には管理規約の第何条に基づいて総会を開催するのかを明記するのが一般的です。

総会の決議事項について

総会の決議事項は、原則として招集通知に記載された議題に限られます。

通知されなかった議題を決議することはできません(区分所有法第37条1項)。

もし、議題や議案の要領の通知がないままに決議が行なわれたとしたら、その決議は無効になります。

総会議案書の作成

次に議案書の作成です。

総会で決議が必要なものは必ず議案書に盛り込む必要があります。

 

総会議案書では「区分所有法」や「管理規約」内で、必ず議案にするよう決められている項目のほか、管理組合の事情により追加される議案を記載することもあるでしょう。

様式については特に定めがないため、原案の作成を担当する管理会社による雛形や管理組合の慣例に合わせ作成されることもあるようです。

「議案書」という言葉について

区分所有法や標準管理規約では「議案書」という言葉は出てきません。

しかし大多数の管理組合では、総会の議案が記載された書類を「総会議案書」という名称で作成し配布しています。

関連記事:必要?大規模修繕工事コンサルタントの役割と選び方とは

関連記事:【管理組合役員は必見】管理会社の変更手順とその注意点

出席表・委任状・議決権行使書の作成

議案書の議題にあわせた「出席表・委任状・議決権行使書」を作成します。

これらを事前に配布し、総会に出席できない方から開催前までに集めます。

委任状は、議案に対する賛否を代理人に委ねるものです。

 

議決権行使書とは、事前に知らされていた議案に対して賛否を記載するもので、これを提出することによって、総会に参加しなくても議決権を行使することができます。

招集通知書・総会議案書の配布

招集通知書・総会議案書の配布・告知はマンション敷地内の掲示板などへの張り出しと、各住戸へ行うのが一般的です。

しかし管理規約に特段の定めがなければ、マンション内掲示だけでもよいとされています。

マンション外に住んでいる方で住居の変更届けが提出されている場合は、その住所へ郵送します。

住所変更届けがされておらず、住所不明の場合は所有住戸に対して配布することで通知したものとみなすことが可能です。

総会の開催

総会開催当日はかならず委任状、議決権行使書を含めたうえで出席の数を確認します。

承認に必要な議決権に満たない場合「流会(総会が流れてしまうこと)」となってしまうためです。

流会になると後日改めて召集し、開催する流れになります。

 

総会には原則として、区分所有者全員が出席することが可能です。

ただし、理事長が必要と認めた場合には、管理会社や専門業者に所属する人などへ出席を依頼することもできます。

区分所有者と入居者が異なる場合、たとえば賃貸に出している場合の賃借人などは総会には参加できません。

 

総会や役員についてより詳しい解説は、下記の関連記事をご覧ください。

関連記事:マンション管理組合の役員は義務?断れない?役員になるメリットなどもいっしょに解説!

議事録の作成

区分所有法では総会の議事録の作成が義務付けられています。

開催後のトラブルを防止するためにも、総会で何が議決されたのか、適正に開催されたのか、などの記録を残しておいた方がよいでしょう。

そして議事録のチェックを記録するために、理事長のほか2名の署名・押印が必要です。

 

議事録には、開催日時、場所、組合員総数、議決権数、そして議案の決議結果を記載します。

組合員から議事録の閲覧を求められた際には、閲覧できる状況にしておく必要があるため、原本保管とは別に閲覧用のものを作成しておくことが一般的です。

マンションの臨時総会を開くにあたって抑えるべき3つのポイント

臨時総会を開催する際に抑えるべきポイントは3つあります。

総会成立のための定足数

総会の種類に関係なく、総会は「議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない」(標準管理規約第47条第1項)と定められています。

人数(定足数)に達していなければ、総会は流れてしまいます。

もし欠席する場合は議決権行使書を提出するか、委任状を提出し代理人に出席してもらうのもよいでしょう。

そうすることで出席者数に含めることができます。

そのため、総会の欠席者が多い管理組合では事前に住戸を回って、事前に議決権行使書又は委任状をしっかり集めるということが開催のために必要です。

合意形成へのサポート

総会においてだれもが納得した結論を出すことは難しいこともあるでしょう。

マンションで重要な事項について臨時総会が開催される際は、総会での合意形成をスムーズに行うことを目的として、総会開催前に「議案についての説明会」を開催する方法が有効な場合もあります。

たとえば、マンション大規模修繕工事に関して、総会前に工事説明会を開催することは、すでに一般的になっていると言えます。

事前説明会の開催は法令などで義務付けられたようなものではありません。

理事会などの判断で開催の可否を自由に決めることが可能です。

議長の選任

総会を開催する際、議長の選任に関しても注意が必要です。

通常議長は管理組合の理事長が務めますが、議長次第で議事の進行が大きく変わることがあります。

その中の大きなポイントの1つとして「白紙委任状」の扱いが挙げられるでしょう。

一般的に、総会開催時には議案書とともに委任状が送られてきます。
委任状は「自分の代わりに議決権を行使する代理人」を指名するものです。

代理人になれるのは「配偶者(パートナー)または一親等の親族」「組合員の住戸に同居する親族」「他の組合員」に限られるため、注意しましょう。

代理人が明記されていない委任状

代理人が明記されていない委任状、いわゆる白紙委任状の場合には、議長に委任したものとみなされるケースが多くあります。

そのため、白紙委任状が多ければ多いほど議長の「票」が増えることになり、議長に有利な方向に決議がなされる可能性が高くなるわけです。

 

もしも臨時総会の開催目的が「区分所有者からの理事の解任請求や理事会に対する要求」であった場合、理事長が議長を務めるのはそもそも開催の目的に合っていません。

標準管理規約では、区分所有者が臨時総会の招集請求を行った場合は、その総会の議長は、出席組合員の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任することと定めています(標準管理規約44条3項)。 

 

白紙委任状の扱いについては、管理規約に「代理人の指名がない場合は、議長に委任したものとみなす」などと補足事項を定めているところも多いです。

事前にしっかりと自分のマンションの規約を確かめることをおすすめします。

関連記事:マンションの大規模修繕で注意すべきことは?費用・周期・時期について

関連記事:マンション管理計画認定制度とは?認定の受け方やその他評価との違いを解説

まとめ

今回は「臨時総会」についてお話しました。

管理組合が実施する総会には「通常総会」「臨時総会」の2種類ありますが、いずれにせよ区分所有者であれば必ず出席すべきものです。

しかし、実際には多くの管理組合で総会の出席者が少ないことが問題になっています。

特に、臨時総会を開催するケースは、大規模修繕工事や管理会社の変更など、マンションの住人にとって、重大な案件に関わることがほとんど。

自分の資産についての必要な話し合いであると自覚を持ち、積極的に参加していくことが大切です。

関連する記事

人気記事ランキング