マンション管理計画認定制度とは?認定の受け方やその他評価との違いを解説

マンション管理計画認定制度という制度をご存知ですか?

この制度は2022年4月から施行されたもので、マンションにお住まいの方々の間で噂になっているものの、まだその認知は広まっていません。

「言葉は聞いたことがあるけど、実際なんなのかは知らない」
「マンション管理適正評価制度とは違うの?」など、思ったことがある方は少なくないでしょう。

そこで今回は、マンション管理計画認定制度の概要やメリット、「マンション管理適正評価制度」との違いなどを解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

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マンション管理計画認定制度とは?

「マンション管理計画認定制度」とは、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」の改正によりできた制度です。

マンション管理組合が管理計画などを都道府県に提出し、管理体制が一定の基準に達していると判断されれば、認定を受けられます。

マンション管理計画認定制度はなんのためにあるの?

マンション管理計画認定制度は、正しいマンション管理を促すために創設されました。

2021年末時点で全国にマンションは約686万戸あり、1,500万人を超える人が居住しています。

そのなかで築40年を超えるマンションは115万戸。

2031年には2.2倍の249万戸、2041年には3.7倍の425万戸になると予測されています。
※国土交通省分譲マンションストック戸数(2022年6月28日更新)より

築年数が古いマンションでは、居住者の減少や入居者の高齢化により管理組合の役員となる人手が不足しがちです。

また、近年増加しているタワーマンションなどの大規模マンションでは、管理が専門的で複雑化しやすいという状況も。「今後マンションが適切に管理できないのではないか」という懸念があります。

適切な管理が行われていないと、老朽化が早く進んでしまう可能性もあります。

老朽化による破損や倒壊が起こると、周辺住民にまで影響がおよぶでしょう。

このように、正しい管理のできていないマンションは一戸建て住宅と比べてとても危険なのです。

こういったマンションの老朽化や管理組合の役員不足などの背景があり、マンション管理計画認定制度が制定されました。

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管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度の違いとは?

マンション管理計画認定制度と似たような制度で、「管理適正評価制度」があります。

この制度は、適正なマンション管理の促進と、良質な管理をしているマンションが市場で正しく評価されるようになることを目的としています。

管理適正評価制度が作られる以前は、マンション管理に関する評価基準はありませんでした。

マンション管理業協会が新たに設定した基準をもとに、定期的に実際の管理状態と照らし合わせ、6段階で評価を行います。

評価結果は総会の決議などを通したあと、ネット上に載せることが可能です。

老朽化したマンションのスラム化を減らすことで、適切なマンション管理を促し、市場における正当な評価へとつなげています。

マンション管理計画認定制度と管理適正評価制度の違いは下記のとおりです。

管理計画認定制度
【国の制度】
管理適正評価制度
【管理業協会の制度】
目的マンションの管理不全化防止のため管理の適切性が市場から正しく評価される仕組みを構築するため
対象既存マンションが対象(管理組合が設立されているマンション)
※新築マンションは、予備認定を導入
既存マンションが対象(管理組合が設立されているマンション)
※新築マンションについては検討中
法令の有無マンション管理適正化法で定められているなし
管理組合のメリット・2023年募集分からマンションすまい・る債の利率の上乗せがされる(上乗せ幅は各年度募集分の利率決定時に決定)
・住宅金融支援機構のマンション共用部リフォーム融資の融資金利が年0.2%引下げられる(2022年10月1日以降申込み受付分から)
・金利優遇(フラット35【維持保全型】の借入金利を当初5年間0.25%引き下げ)
※予算金額に達した場合は受付終了となる可能性あり
※新築マンションの予備認定についても同様の金利優遇が受けられる
・管理状態をカテゴリー別に数値化することで、適正な管理状態のために必要な課題が見えてくる
適切な管理を維持することで市場において評価される可能性がある
開始時期 2022年4月から順次開始
※地方公共団体により異なる
2022年4月から全国で開始
登録期間5年ごとに更新
※変更があった場合は変更申請を行う必要がある
1年ごとに更新
登録料
(地方公共団体・協会等へ)
・マンション管理センター経由:マンション管理センターシステム利用料(10,000円)+マンション管理士事前確認審査料(10,000円)+地方公共団体手数料
事前確認審査料は2022年度無料
※地方公共団体手数料は地方公共団体により異なる
・直接地方公共団体へ申請:25,000円程度(地方公共団体による)
管理業協会への登録料:税込5,500円(2022年度は無料)
申請方法・マンション管理センターのシステム経由で申請
・地方公共団体へ直接申請
協会の独自システムによるオンライン申請
申請主体管理組合 管理組合
登録補助者管理会社の担当者管理会社の担当者(管理業協会の評価者講習を修了した管理業務主任者、またはマンション管理士)
評価基準国が指定する16項目の基準を達成したうえで、地方公共団体の上乗せ基準をクリアすることで認定される加点方式
0〜100点のうち得たポイント総数をもとに、星0〜5の6段階に割り振られる
決議方法総会決議
※規約で理事会決議と定めた場合、理事会で申請を決議することも可能
総会決議
ポイント16項目全てで基準を満たす必要がある。大きなポイントとしては下記のとおり加点方式になるため、高評価を得るためには、以下のポイントが重要
■長期修繕計画
・「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され長計が総会承認されていること
・適切な修繕項目(19項目)が明記されていること(例外あり)
・長期修繕計画上の修繕積立金の月当たりの㎡単価が記載されていること
⇒持分割合で算出されている長期修繕計画は認定外
・修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
■管理規約
・マンション標準管理規約23条、32条、64条が標準管理規約に準拠していること
■その他
・各証票書類の提出が必要
■長期修繕計画
国の基準を満たしたうえで、積立方式が均等積立方式となっていると高得点につながる
■管理規約
国の基準を満たしたうえで複数の条文の準拠が高得点につながる
■組合収支
管理費等の滞納が少ないと高得点につながる
■その他
・各証票書類の提出が必要

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管理計画認定制度っていうけど、なにを認定するの?

管理計画認定制度の目的などは前章で解説しました。

では、一体なにを認定しているのでしょうか?

まず、管理計画認定制度の創設にともない、改正されたマンション管理適正化法では以下のように定められています。

第五条の四(認定基準)
計画作成都道府県知事等は、前条第一項の認定の申請があった場合において、当該申請に係る管理計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる。
一 マンションの修繕その他の管理の方法が国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
二 資金計画がマンションの修繕その他の管理を確実に遂行するため適切なものであること。
三 管理組合の運営の状況が国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
四 その他マンション管理適正化指針及び都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること。

引用:マンション管理適正化法

平たくいうと、国交省や都道府県などが設定した基準のとおりに管理を行っているマンションに「このマンションはきちんと管理ができています!」と国が太鼓判を押してくれるわけです。

マンション管理計画認定制度のチェック項目

マンション管理計画認定制度認定の基準は以下のとおりです。

1.管理組合および管理組合の経理に関する事項

  • 管理者などが定められている
  • 監事が選び出されている
  • 年に1回以上、集会が開催されている
  • 修繕積立金や管理費など、項目ごとに経理が明瞭に区分されている
  • 修繕積立金を別の会計として利用していない
  • 申請直前年度の終了日時点で、3ヵ月以上の修繕積立金滞納者が全居住者の1割以内である

2.管理規約に関する事項

  • 管理規約がきちんと作成されている
  • 管理規約内に点検時や緊急時などの専有部への立ち入り、これまでの修繕履歴情報の管理について定めた項目がある
  • 管理組合の管理・財務情報に関する書面の交付や電子メールなどを用いた情報提供について、管理規約内で定められている

3.長期修繕計画に関する事項

  • 国土交通省の定める長期修繕計画標準様式にもとづいて長期修繕計画が作成され、計画の内容や修繕積立金額が集会で決議されている
  • 7年以内に長期修繕計画の見直しおよび作成が行われている
  • 長期修繕計画の計画期間が30年以上であり、同時に残りの期間内で大規模修繕工事が2回以上行われるよう設定されている
  • 長期修繕計画内で、一時的な修繕積立金を徴収する予定がない(=均等積立方式である)
  • 長期修繕計画全体の修繕積立金総額に基づいて算定された修繕積立金平均額が、著しく低額でない(※原則として「修繕積立金に関するガイドライン」に記載された下限値を上回っていなければならない)
  • 長期修繕計画期間の最終年度に借入金の残高がない

4.その他の事項

  • 居住者名簿・組合員名簿を備え、年に1度以上内容を確認している
  • マンション管理適正化指針と照らし合わせ、適切な内容である

自治体によっては独自の認定基準が設けられている場合があります。

そちらも必ず確認しましょう。

マンション管理計画認定制度の難易度は

マンション管理計画認定制度の評価項目は、大半はハードルの低い基本的な項目です。

しかし、中には「ハードルが低い」とはいいづらい、難易度の高い項目もあります。

長期修繕計画全体の修繕積立金総額に基づいて算定された修繕積立金平均額が、著しく低額でないこと

2021年10月、長期修繕計画ガイドラインが改訂されました。
改訂により認定基準における修繕積立金額の目安が大幅に上がったのです。
マンションの規模によっては、上昇率がなんと50%を超えることも。

ただでさえ大変な修繕積立金の徴収。
その達成金額が、目安とはいえ50%も上昇すれば基準をクリアすることができないマンションも少なからず生まれてしまうことでしょう。

結果として、「著しく低額」とみなされるマンションも一定数存在するのではないかと思われます。

長期修繕計画期間の最終年度に借入金の残高がないこと

「借入金の残高がない」というのは、つまり「借入れをしていない」ということです。

借入れには住宅金融支援機構や民間金融機関の共用部リフォームローンなども含まれます。

これらを利用している管理組合は、決して少なくはないでしょう。

一時的な修繕積立金を徴収する予定がない

一時的な修繕積立金を徴収する予定のマンションも少なくない印象があります。

一時金の設定がないようにするには、積立金をかなり増額しなければならない可能性が高く、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。

1年に1回以上確認している組合員名簿・居住者名簿がある

管理計画認定制度の項目には、名簿の作成に関するものも。

これは、管理組合がマンションの区分所有者などへ災害などの緊急時を含む連絡をする際のものです。

災害時は特に迅速な対応が必要なので、こういった名簿の存在は重要な役割を担います。

行組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていることが、基準として挙げられます。

しかし、個人情報保護法を気にするあまり、名簿すら作っていない管理組合も少なくない印象です。

持っていても数年間整備していない、といった管理組合も割と多くありそうです。

どんな機関が認定を行う?認定にはどれくらい時間がかかる?

結論からいえば、「認定にこれくらいの時間がかかる」とは一概にはいえません。

というのも、申請を受け付ける地方公共団体などによって異なるためです。

マンション管理計画認定制度の申請は、まずマンション管理センターに認定申請を依頼し、マンション管理士による事前確認を受けなければなりません。

その後、事前確認適合通知を受けた管理組合は、申請について総会決議を行います。

次に、管理計画と添付書類を地方公共団体へ提出・申請し、認定を受ける……というのが、一般的な流れです。

自分たちのマンションで申請についての総会決議が、その日だけでもしかしたら終わらない……という可能性も否定できません。

そのため、認定にどれくらいの時間がかかるとは説明が難しいのです。

管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度の連携は?

少し似ている制度ではありますが、今のところ評価結果に関する連携はしていません。

評価項目がやや異なるため、仮にどちらかの制度で高評価を取得したとしても、もう一方の制度で優遇されることはありません。

ただし、既に評価制度の申請を終えている場合、マンションの一般情報など一部の項目が認定制度側のシステムに連携されるようです。

マンション管理計画認定制度を受けるのに費用は発生する?

マンション管理センターシステム利用料1万円、マンション管理士の事前審査費用1万円に加え、各自治体の手数料が発生します。
金額は自治体ごとに異なります。

ちなみに東京都の場合、オンライン申請なら4,100円、紙申請なら29,000円です。

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マンション管理計画認定制度を活用するメリット

マンション管理計画認定制度のメリットは以下のとおりです。

市場価値の向上が期待できる

建物や管理組合の管理状態への評価が公開されるため、購入希望者や所有者にとって売買判断がしやすくなります

情報を開示していないマンションに比べて、市場価値の向上が期待できるでしょう。

管理組合の運営がしやすくなる

マンション管理計画認定制度では審査項目が決まっているため、管理組合の運営目標や課題が明確になります。

また、外部の評価を受けることで、管理組合運営の改善・適正化につながります。

結果として、管理組合の運営がしやすくなるでしょう。

上記2点は管理適正評価制度と同じ利点なのですが、マンション管理計画認定制度には、さらに以下のようなメリットがあります。

  • 2023年募集分からマンションすまい・る債の利率の上乗せがされる(上乗せ幅は各年度募集分の利率決定時に決定されます)
  • 住宅金融支援機構のマンション共用部リフォーム融資の融資金利が年0.2%引下げられる(2022年10月1日以降申込み受付分から)
  • フラット35【維持保全型】の借入金利を当初5年間0.25%引き下げられる
    (予算金額に達した場合は受付終了となる可能性があるそうです。なお、新築マンションの予備認定についても同様の金利優遇が受けられます)

マンション管理計画認定制度を活用するデメリット

特に大きなデメリットはありません。

強いていうならば、申請費用や事務手続きの負担が発生するくらいでしょうか。

メリットが多いうえに、ほとんどデメリットのないマンション管理計画認定制度。一度、申請してみてはいかがでしょうか?

おわりに

管理計画認定制度の創設は、マンションの老朽化抑制や維持管理の適正化につながるといえるでしょう。

しかし、2023年2月の時点でマンション管理センターが公開している認定マンションは、全国でわずか21棟。

全国の管理組合数は約10万と言われているので、わずか0.02%です。

認定のハードルが高いのか。まだまだ認知度が低いのか。管理組合側が認定のメリットをあまり感じていないのか、理由は定かではありません。

今後、マンション管理計画認定制度がどのような広がりを見せていくか、引き続き注目が集まります。

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