【2024年】マンション標準管理規約が改正の見込み?標準管理規約の基本から解説

「マンション標準管理規約が改正されるって本当?」
「改正されたら、うちのマンションの管理規約も変更しないといけないの?」
「そもそも標準管理規約って何?」

こういった疑問を持たれる方も少なくないようです。

今回のコラムのテーマはマンション標準管理規約です。

管理規約はマンションにおける法律のような存在。

管理組合の方々にとってこのテーマを理解しておくことは大切ですので、ぜひ最後までご一読いただければ幸いです。

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マンション標準管理規約とは

マンションの標準管理規約とは、国土交通省が作成したマンションの維持・管理や住民の生活の基本的ルールを定める管理規約の標準モデルです。

標準管理規約はあくまでも「指針」であり、必ずしもこの内容に準拠する必要はありませんが、多くの管理組合ではこれを参考にして規約を作成しています。

マンション標準管理規約の主な内容は、共用部分に関するもの、管理組合や理事会の運営に関するもの、区分所有者の共用持分の割合、専用使用権の範囲、使用細則の設定などです

災害時の対処方法などについても定められています。

2021年のマンション標準管理規約の改正について

マンション標準管理規約は定期的に見直され、最近では2021年6月に改正が行われました。その改正内容は以下の通りです。

何が変わった?

I.「マンション標準管理規約(単棟型)」の改正

①「ITを活用した総会」等の会議の実施が可能なことを明確化し、これに合わせて留意事項等を記載

  • 「IT を活用した総会」等の会議を実施するために用いる「WEB 会議システム等」の定義を定義規定に追加(第2条)
     
  • 理事長による事務報告が「ITを活用した総会」等でも可能なことを記載(第38条関係コメント)
      
  • 「ITを活用した総会」等の会議を実施するにあたっては、WEB 会議システム等にアクセスするためのURLを開催方法として通知することが考えられることを記載(第43条及び同条関係コメント(総会)・第52条関係コメント(理事会))
     
  • ITを活用した議決権の行使は、総会や理事会の会場において議決権を行使する場合と同様に取り扱うことを記載(第46条関係コメント(総会)・第53条関係コメント(理事会))
     
  • 「ITを活用した総会」等の会議の実施が可能であること及び定足数を算出する際のWEB 会議システム等を用いて出席した者の取り扱い等について記載(第47条及び同条関係コメント(総会)・第53条及び同条関係コメント(理事会))

なお、IT を活用した総会・理事会の具体的な開催方法は(一社)マンション管理業協会が「IT を活用した総会の実施ガイドライン」を定めています。

また、この IT を活用した総会・理事会については、それを可能とすることを明確化する観点から標準管理規約の改正を行っているものであるため、この改正に伴って各管理組合の管理規約を変更しなくとも、ITを活用した総会・理事会の開催は可能としています。

②マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応

  • 感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合における共用施設の使用停止等を使用細則で定めることが可能であることを記載(第18条関係コメント)
     
  • 感染症の感染拡大の防止等への対応として、「ITを活用した総会」を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、総会の延期が可能であることを記載(第42条関係コメント)

③置き配

置き配を認める際のルールを使用細則で定めることが考えられることを記載(第18条関係コメント)

④専有部分配管

共用部分と専有部分の配管を一体的に工事する場合に、修繕積立金から工事費を拠出するときの取扱いを記載(第21条関係コメント)

⑤管理計画認定及び要除却認定の申請

総会の議決事項として、改正適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「円滑化法」という。)第102条第1項に基づく要除却認定の申請を追加し、これに合わせて規定順を整理(第48条)

⑥その他所要の改正

改元に伴う記載の適正化、書面・押印主義の見直しや近年の最高裁判決等に伴う改正等

また、併せて「マンション標準管理規約(団地型)」の改正も行われています。

少々専門的な表現が多いため、詳細の説明は割愛しますが、団地タイプのマンションにおける建て替えに関連する項目について改正しています。

2024年度中には新たな改正の見込みがある

2024年にも標準管理規約の改正の予定があり、国土交通省が主体となって検討が進められています。

改正を予定している主な内容は以下の通りです。

I.「マンション標準管理規約(単棟型)」の改正案(概要)

①組合員名簿及び居住者名簿の整備・更新の仕組み

  • 組合員の住所等に変更があった際に管理組合へ届け出ることを記載(第31条及び同条関係コメント)
     
  • 専有部分を第三者に貸与する場合において、当該第三者に関する情報を管理組合へ届け出ることを記載(第19条及び同条関係コメント)
     
  • 組合員名簿を更新すること及び居住者名簿を作成・更新することを記載(第64条の2及び同条関係コメント)

②所在等が判明しない区分所有者への対応

区分所有者の所在等が判明せず管理に支障を及ぼす場合に、区分所有者の探索ができることや、その探索に要した費用を当該区分所有者に請求することができることを記載(第 67 条の2及び同条関係コメント)

近年、管理組合員名簿や居住者名簿の整備不足が深刻な問題となっています。

特に、館外に住む区分所有者の連絡先が不明だったり、居住者の身元が確認できなかったりする状態は、管理上の問題を引き起こす可能性があります

①②については、こういった課題を解消するための改正です。

③EV用充電設備の設置の推進

  • EV用充電設備を設置する際のルール等をあらかじめ定めておくことを記載(第15条関係コメント)
     
  • EV用充電設備の設置工事を行う際の決議要件の考え方を記載(第47条関係コメント)
     
  • 売買時の管理情報提供項目例に EV 用充電設備に関する情報を記載(コメント別添4)

国は地球温暖化対策の一環として電気自動車(EV)の普及を推進しています。

しかし、マンションにおける充電設備の不足がEV普及の障害の一つとなっています。

一戸建てなら所有者の判断で自由に設置できますが、マンションの場合はそうはいきません。

管理組合員全員がEVを購入するわけではありませんし、車を所有しない方も多くいます。

このような状況下で、管理組合の費用で充電設備の設置について合意形成するのは非常に難しいことと言えます。

この改正は、そのような課題を少しでも解決するためのものです。

④宅配ボックスの設置に係る決議要件の明確化

宅配ボックスの設置工事を行う際の決議要件の考え方を記載(第47条関係コメント)

これは、物流業界が直面する2024年問題への対応です。

宅配ドライバーの人手不足が予想されるため、マンションに宅配ボックスを設置する取り組みが増える見込みです。

その際の考え方を明確化した改正となっています。

⑤修繕積立金の変更予定等の見える化

  • 総会において長期修繕計画上の積立予定額と現時点の積立額の差を明示することや、修繕積立金の変更予定等を明示することについて記載(第48条関係コメント)
     
  • マンション売買時の購入予定者に対する情報提供項目例に長期修繕計画上の修繕積立金の変更予定額及び変更予定時期を記載(コメント別添4)

⑥管理に関する図書の保管の推進

  • 総会及び理事会で使用する資料を保管することを記載(第49条の2及び同条関係コメント(総会)・第53条(理事会))
     
  • 管理規約を変更した際に、変更内容を反映した冊子を作成することが望ましいことを記載(第72条関係コメント)

そもそもマンション標準管理規約とは?義務なのか

ではこれらのマンション標準管理規約が改正された場合、自分たちのマンションの管理規約も変更する必要があるのでしょうか?

先ほども少し触れましたが、義務ではありません。
標準管理規約はあくまでも指針です。

しかしながら、標準管理規約は、現時点で最も望ましいと思われるものを示しているので、なるべく標準管理規約に準じて変更しておいた方が良いでしょう。

仮に変更まではしないとしても、少なくとも標準管理規約の改正内容の把握や自分たちのマンションとの相違点はどこかを明確にしておくことをおすすめします

管理規約の確認方法や入手方法は?

管理規約の内容は区分所有者であれば誰でも閲覧することができます。

区分所有法では以下の通りに定められています。

(規約の保管及び閲覧)
第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。

3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

区分所有法より

2項に記載のある利害関係人には、区分所有者も含まれます。

他には、部屋の売却の依頼を受けた不動産会社やこのマンションの購入を検討している人などが考えられます。

つまり、こういった利害関係人から「規約を見せてほしい」と言われたら管理組合は断ることができないということが法律上定められているのです。

管理規約は管理組合に依頼すればいつでも入手できるということです。

マンション管理規約の強行規定

管理規約には、管理組合運営に関する事項や共用部分の範囲などが記載されています。

管理規約で示される規定は、主に以下の3つに分類されます。

(1)区分所有法と別段の定めをすることができない強行規定

管理規約の変更や廃止、共用部分の変更、建て替えなどに関する重要な議案について、一定数以上の議決を取って可決することを特別決議と言います。

例えば、管理規約の変更や廃止は組合員数および議決権総数の4分の3以上の賛成が必要です。

また、建て替えの決定には5分の4以上の賛成が必要になります。

こういった特別決議に関する内容および数字は区分所有法で定められており、管理組合が自由に変更・調整ができない強行規定となります

※ただし、共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)の場合は、必要となる賛成区分所有者数を過半数まで減ずることができます。

(2)区分所有法と異なる別段の定めが可能な規定

共用部分の持分割合や議決権の持分割合、普通決議事項の要件などは区分所有法とは異なる定めをすることも可能です。

(3)特に制限がなく、管理組合の裁量で決められる内容

特に法的な制限がない内容もあります。

理事会の設置や理事の人数、駐車場・集会室の使用方法などは管理組合ごとに自由に決めて良い内容とされています。

紹介した3種類の中で特に注意が必要なのは、強行規定です。

管理規約で強行規定と異なる定めをしてしまい、そのまま規約通りに承認されたとしても、その決議は無効とされます

最悪の場合、管理組合内でのトラブルに発展する可能性がありますので、規約を変更する際は十分に確認するようにしましょう。

管理会社が管理業務を行っているマンションの場合は管理会社にアドバイスを求めることができます。

一方、管理会社のいない自主管理のマンションでは、行政が実施している無料相談などを活用するのが良いでしょう。

管理規約と使用細則の違い

マンションの管理や使用に関するルールには、管理規約の他に使用細則というものがあります。

管理規約は管理組合運営全般に対する取り決めをしたものです。

一方、使用細則はペットを飼う場合のルールや、駐車場などの共用部分を利用する際のルールを定めており、マンションでの生活に密接したものが多く存在します。

使用細則で定める例

標準管理規約(単棟型)18条では、「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」とされています。

また、18条関係のコメント①では、「使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項などがあげられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。」とされています。

そして、標準管理規約(単棟型)では、具体的に以下のような使用細則などを想定しています。

敷地及び共用部分等の用法(13条)…「自転車置場使用細則」(13条関係コメント)
バルコニー等の専用使用権 (14条)…「バルコニー使用細則」(14条関係コメント②)
駐車場の使用 (15条)…「駐車場使用細則」 (15条関係コメント③)
対象物件の使用(18条)…「ペット飼育細則」 (18条関係コメント②)

マンション標準管理規約の法的効力について

マンション標準管理規約には原則として法的効力はありません。

ただし、管理規約の取り決めの中には区分所有法の定めと共通する項目も多々存在します

区分所有法は法律ですから、当然ながら法的効力があります。

つまり、管理規約に書かれているものの中には法的効力を持つものも含まれているということになります。

まとめ

今回はマンション標準管理規約がテーマでした。
管理規約がずっと古いままで見直しをしていないマンションというのは案外多く存在するようです。

  • いつの間にか勝手に民泊を始めてしまう部屋があり、生活マナーを乱しているが、今の管理規約では強く規制できない
     
  • 少しでも多くの人が総会に出席しやすいようにオンラインでの参加を認めるようにしたいが、今の管理規約ではその旨の記載がないため、オンラインで開催して良いのか判断に迷ってしまう
     
  • 館外居住の区分所有者が管理費を滞納しているが、どこに住んでいるか分からず、督促もできない

こういった事態に備え、問題が浮き彫りになる前に管理規約を見直すことをおすすめします。

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