マンションの設備点検とは?業者の選び方や相場などを解説
快適な暮らしのために、マンションの設備点検はとても重要です。
マンションに行う点検は、法律で義務付けられた「法定点検」と、自主的に行う「任意点検」があります。
しかし、いざ点検をしようにも適切な頻度や委託費用の相場が分からず、管理会社からの提案内容が本当に正しいのか分からないと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、マンションの設備点検の項目や頻度、費用についてわかりやすく解説していきます。
管理組合の役員の方はぜひ参考にしてください。
INDEX
マンションの設備点検とは
マンションの設備点検とは、マンションで快適な生活を送るために必要な、定期的に行う点検のことです。
「消防設備点検」や「エレベーターの点検」「電気設備の点検」などが設備点検に含まれます。
一般的にマンションの総戸数が大きければ大きいほど、点検の対象設備が多くなる傾向にあります。
設備点検を行うのはだれ?
設備点検を行うのは、管理組合から依頼を受けた点検業者(管理会社が元請けして、設備点検業者に再委託するパターンも多い)です。
法定点検は専門知識や資格を保有したプロが、細かなチェックを行います。
一方の任意点検は箇所により異なりますが、専門家が行うものもあれば、管理員や住民の方が行うものもあります。
マンションの点検は義務なのか
マンションの点検には、法的に義務と決められている点検もあります。
法律で義務付けられたものを「法定点検」と呼び、任意で自主的に行う点検を「任意点検」と呼びます。
法定点検を実施しなかったり、虚偽の報告を行ったりすると罰則がありますので注意が必要です。
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設備点検の種類と頻度とは?
法定点検の方は「どれくらいの周期で点検を行うのか」というルールまで細かく決められています。
一方の任意点検は、具体的な周期などは決められていません。
任意点検に関しては、自分たちの判断で定期的な点検を行いましょう。
法定点検の項目一覧
名称 | 点検の周期 | 点検内容 |
特殊建築物定期調査 | 3年に1回 | 地盤沈下や排水不良などがないか、基礎や外壁など建物の構造強度に問題はないか、など |
建築設備定期検査 | 1年に1回 | 換気設備、排煙設備、非常用照明装置などの設備 |
昇降機(エレベーター)定期検査 | 1年に1回 | エレベーターの機能全般 |
消防用設備点検 | 機器点検: 6カ月に1回 総合点検: 1年に1回 | 消火器や消火栓、火災報知機、ガス漏れ警報器、避難器具、避難通路などの設備が火災の際にきちんと作動するか |
簡易専用水道管理状況検査 | 1年以内に1回 | 施設および、管理の状態、給水栓における水質の検査および書類の整理などに関して |
専用水道定期水質検査 | 残留塩素検査:毎日 水質検査:1月に1回 受水槽清掃:1年1回 | 細菌や大腸菌の検査など、水質に問題がないか |
自家用電気工作物定期点検 | 月次点検:1月に1回 年次点検:1年に1回 | ・月次点検では、回路の漏電がないか、機器に異常な温度上昇が発生していないか、異音や異臭はないかなど ・年次点検では高圧電力が流れる箇所に絶縁がないか、高圧ブレーカーの動作に問題はないかなど |
なお、自家用電気工作物定期点検における年次点検は電気を止めて行います。
そのため、1時間程度の停電が発生してしまう点に注意しましょう。
主な任意点検の項目
法定点検は8つあります。
一方の任意点検はマンションによりますが、たとえば下記のような項目です。
・機械式駐車場点検
・自動ドア点検
・宅配ボックス
法的に「やってください」と決められてはいませんが、マンションでの快適な暮らしをしていくうえではとても大事な点検です。
任意点検では目視確認や動作確認しか行わないケースが多いようですが、その設備に精通している方がチェックをすることで、一般の方では気づけない異常を検知できる場合もあります。
ぜひ、下記の箇所も確認してみましょう。
機械式駐車場点検
意外かも知れませんが、機械式駐車場には1年に○回以上といった法的な点検義務や周期はありません。
しかし、多くのマンションは自発的に定期的な点検を行なっているかもしれません。
建築基準法第8条内では、建築物の管理者や所有者などは敷地や設備を常に適切な状態で保っておくようにと言及されています。
また、国土交通省の『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』では、メンテナンス技術者による機械式駐車装置の点検を1~3ヶ月内に1度、目安として受けることが求められています。
そのため、定期的に点検を実施しているマンションが多いのではないでしょうか。
自動ドア点検
自動ドア点検に関しても法的な義務はありません。
しかし機械式駐車場と同様に、自動ドアは建築基準法8条の対象です。
そのため、定期的に点検をしているマンションも多いのではないかと考えられます。
宅配ボックス点検
宅配ボックスは建築基準法8条の対象ではありません。
上記で説明した機械式駐車場や自動ドアは、法的な点検の義務はなかったものの「やった方がいい」くらいの扱いでした。
しかし、宅配ボックスにはそういった決まりも基準もありません。
そのため、定期的な点検はしていないマンションの方が多いかも知れませんね。
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失敗はしたくない!消防点検業者の選び方とは
消防設備点検では消火器や火災報知機など、災害に備えた設備が火災の際にきちんと作動するかをチェックします。
消防設備点検の費用は、1回あたり30,000円~60,000円(消費税抜き)くらいが相場。
あまり高額ではないものの、信用のない業者からいい加減な点検をされるのは嫌ですよね。
もしいい加減な点検をされたとしても、消防設備に不備があった場合に罰則の対象となるのは管理組合……。
そのため、業者選びはとても重要なのです。
業者選定をする場合は、以下のような点を参考にしましょう。
最新情報を押さえているか
消防設備点検は、すべて“消防法”に従って行われています。
消防法は、大きな防災事故などが起こると改正されることが多く、その度に知識のアップデートが必要になります。
適切な消防設備点検を実施するには、業界・法令の最新情報をしっかりと把握し、的確かつスピーディーな対応がとれることが必須条件です。
そのため最新情報を持っている業者であるかをきちんと確認するのが良いでしょう。
見積もりが明瞭であるか
見積もりがアバウトな業者は、いいかげんな見積もりをしていたり料金を上乗せしていたりする場合があります。
「点検費用一式○○円」という見積もりでは、どこにどのくらいかかっているのか、どんな点検をしてくれるのかがまるでわかりませんよね。
見積もり内容を詳細に記載している業者を選びましょう。
スピーディーに対応してくれるか
「消防設備が誤作動し、非常ベルが突然鳴りだした」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このようなとき、迅速に対応してくれる業者なら「もしも」のときでも安心ですね。
点検だけでなく工事もできるか
消防設備も経年劣化により故障や不具合が発生します。
「点検はできるけど工事はできないんです……」という業者だと、不具合箇所を修理するために別業者の助けが必要に。これは高コスト化を招く原因となります。
自前で工事業者を探すとなると時間的・精神的な負担にもなってしまうでしょう。
管理会社が消防設備点検を?
管理会社に管理業務を委託しているマンションの場合、管理会社が消防設備点検を請け負うことも。
「これってどうなの?」というご質問はよくいただきます。
消防設備点検の場合、管理会社が下請け業者に再委託するのがほとんどです。
その場合手数料などが加算されるので、管理組合が支払う金額は相場(直接点検業者に頼む)よりも高くなってしまいます。
一方で「管理会社に任せておけばしっかりやってくれるだろう」という安心感を得られます。
安心感よりも少しでも費用を抑えたいと考えている管理組合の場合は、直接消防設備点検業者に発注することも有効な選択肢でしょう。
消防設備業者はどうやって見つければいいの?
「消防設備業者ってどうやって見つければいいの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
最近ではそのような管理組合向けに、消防設備業者を無償で紹介してくれるサービスなども始まりました。
ご興味ある方は「スマテンBASE」で検索してみてください。
マンションの設備点検にかかる費用
各種設備点検にかかる費用の相場は次の通りです。
なお、金額は全て税抜き表記です。
特殊建築物定期調査
特殊建築物定期調査とは、建築基準法第12条に定められた調査で、多くの人が出入りするビルやマンションにおいて、安全面で問題がないかを定期的に調査するものです。
〜1,000㎡ | 35,000円 |
1,000㎡〜2,000㎡ | 45,000円 |
2,000㎡〜3,000㎡ | 55,000円 |
3,000㎡〜4,000㎡ | 65,000円 |
4,000㎡〜5,000㎡ | 70,000円 |
建築設備定期検査
こちらも建築基準法12条に定められた検査で、建築設備がきちんと機能するかを調べます。
〜1,000㎡ | 30,000円〜35,000円 |
1,000㎡〜2,000㎡ | 35,000円〜40,000円 |
2,000㎡〜3,000㎡ | 40,000円〜45,000円 |
3,000㎡〜 | 50,000円〜 |
昇降機(エレベーター)定期検査
こちらはエレベーターが安全な状態かを確認する調査です。
エレベーター定期検査の場合、エレベーターのメーカー(メーカー系)が行う場合と、保守や工事を中心に行う非メーカー(独立系)のどちらに発注するかでかなり相場が異なります。
さらに、相場が変わる原因はそれだけではありません。
契約形態によっても変わりますので、確認したうえで点検を頼むとよいでしょう。
契約形態は下記の2通りです。
- フルメンテナンス契約:定期的な機器・装置の保守・点検を行うことに加え、点検結果に基づく合理的な判断のもと、劣化した部品の取替えや修理等を行う契約方式
- POG 契約:「Parts・Oil・Grease」の略で、定期的な機器・装置の保守・点検のみを行う契約方式で、劣化した部品の取替えや修理などは含まない
エレベーター保守点検費用の相場
契約形態 メーカー系(1基あたり) 独立系(1基あたり)
フルメンテナンス契約 月額4万円~6万円 月額3万円~4万円
POG契約 月額3万円~5万円 月額2万円~3万円
消防用設備点検
1回あたり30,000円~60,000円くらいが相場です。
簡易専用水道管理状況検査
簡易専用水道設備の状況や、水質検査を行います。
1回あたり15,000円~20,000円くらいが相場です。
専用水道定期水質検査
水質検査の費用相場:1回あたり3,000円~10,000円
受水槽清掃の費用相場は下記表のとおりです。
~5t | 20,000~40,000円 |
5t~10t | 30,000~50,000円 |
10t~15t | 40,000~60,000円 |
15t~20t | 50,000~70,000円 |
自家用電気工作物定期点検
中規模以上のマンションの場合、キュービクルと呼ばれる高圧受電設備が設置されています。
この設備に異常な点がないかを点検します。
1回あたり20,000円~30,000円くらいが相場です。
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点検費用の算出方法
点検作業費の内訳は、大半が点検者に対する人件費及び交通費などの移動費用です。
なかには有資格者でないとできない点検も。
その場合は他と比べると少し単価が高くなっています。
それぞれの点検に対し1回あたりの作業時間と作業者の人件費単価を掛け合わせ、そこに移動費などの諸経費と業者の利益を乗せたものが総額として算出されるのが一般的です。
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消防設備点検を拒んだことで火災被害が広がると賠償責任が発生する可能性も?
居住者の立場でいえば、点検への参加は努力義務です。
そのため「部屋に入ってほしくない」などの私的な理由であっても、消防点検を断ったからといって法的な罰則はありません。
しかし、罰則がないとはいえ、消防点検を毎回無視してしまうと管理規約違反になってしまう可能性があるのです。
第23条
出典:マンション標準管理規約(単棟型)|国土交通省
前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
標準管理規約に準拠した管理規約を定めているマンションの場合、消防用設備点検時の居室内立ち入りを拒否し続けると、規約違反となる可能性があります。
定期点検を拒み消防用設備の不備が放置された状態で火災が起きたとしましょう。
消防用設備の不備が原因で火災の被害が他の住戸に広がった、というような事態にでもなってしまえば不法行為を問われる可能性もあります。
点検作業自体は5~10分程度で終了するのが一般的ですので、なるべく点検作業に協力することをおすすめします。
各住居スペースでチェックされる消防設備紹介
消防設備点検の場合、マンションの各居室内に設置されている設備の点検も一緒に行います。
居室内で主に行われるのは、自動火災報知設備の点検です。
バルコニーに避難用はしごが設置されている場合は、はしごも点検対象になります。
その他、点検対象となるものは下記のとおりです。
自動火災報知設備
熱源が入っている装置を棒の先に取り付け、天井の報知機に押し当てることで火災報知機が正常に機能するかを確認するのが、点検の基本の流れです。
自動火災報知設備は居室内の天井に感知器、管理員室などに受信機が設置されています。
感知器が煙や熱を感知すると、管理員室で異常箇所が表示されると共に、館内に警報が鳴る仕組みです。
そのため、点検時には管理員室に別の作業員が待機しており、無線機や携帯電話で連絡を取り合いながら、感知器が正常に作動するか、受信機が問題なく受信できるか、警報が正常に鳴るかどうかをチェックします。
避難はしご
バルコニーに避難はしごがある場合は、これも点検対象となります。
主な点検内容は以下の通りです。
・避難器具ハッチを操作する際、周辺に支障があるものはないか
・はしごを降下させる空間や降下位置に障害となるものがないか
・はしごの巻上げ・降下の機能に異常はないか
・ハッチの蓋、本体に著しい錆や腐食はないか
・ハッチの標識や使用方法の表示に問題ないか
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まとめ
マンションで快適に生活を続けるうえで、各種点検はとても重要なイベントです。
一方、一つ一つの作業自体はあまり高額でなかったとしても、相場よりも高い費用を払っていたり、過剰と思われる点検作業を行ってしまっていたりすると、無駄な費用を払い続けることになってしまいます。
無駄なコストを少しでも抑えたいとお考えの管理組合の方は、今一度ご自身のマンションにおける点検の実施状況や費用などを確認してみてはいかがでしょうか。