マンションの修繕積立金、相場はいくら?そもそも必要なの?あらゆる疑問を解消!
分譲マンションを購入すると、管理費や修繕積立金を支払う義務が発生します。
これらは継続的な支払いが必要で、家賃とはまた別に支払わなければなりません。
「なんでこんな、決して安いとはいえない金額を支払わないといけないんだ」
こう憤る方も少なくはないかもしれません。
しかし修繕積立金は、マンションの長期的な維持に必要な費用なのです。
この記事では、マンションの修繕積立金の相場やその必要性について解説します。
区分所有者の方であれば全員関係する内容です。ぜひ最後までご覧ください。
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INDEX
修繕積立金とは?
修繕積立金は管理組合が長期修繕計画に基づいて必要な修繕を実施するために区分所有者から毎月積み立てるものです。
通常は、所有している部屋の大きさで案分して負担割合を決めています。
最近のマンションは「100年持つ」とも言われています。
しかし、長期間維持させるためにはマンションのあらゆる箇所の修繕や改修を定期的に行わなければなりません。
修繕積立金とは、マンションのメンテナンスや工事をおこない、できるだけ長く住み続けるために必要不可欠な費用なのです。
長期修繕計画とは
マンションでの快適かつ安全な暮らしを維持するために、管理組合が作成する長期的な修繕計画のこと。
管理費とは?
管理費とは、マンションの日常的な維持管理のための費用です。
管理会社への業務委託費用のほか、共用部の水道光熱費、損害保険料などに使われます。
修繕積立金は計画的な修繕に、管理費は日常的な管理に使用されるイメージですね。
関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
なぜマンションの修繕積立金と管理費は必要なのか
修繕積立金や管理費は、マンションで快適な暮らしを何十年も続けていくためには必要不可欠な費用です。
管理費を集めないと、必要な設備点検や清掃費用などを捻出できません。
また、修繕積立金を毎月集めていないと、12~15年ごとを目安に実施する大規模修繕工事ができなくなり、マンションがボロボロになってしまうでしょう。
大規模修繕工事の度に、区分所有者がお金を出しあうという方法も検討できないわけではありませんが、現実的ではありません。
費用を全額集められずに修繕工事ができないという事態を避けるため、将来必要になるであろう工事費用を計画的に積み立てるのが「修繕積立金」なのです。
気になる修繕積立金の相場
「うちのマンションの修繕積立金って高い気がする」
そんな風に感じる方も多いのではないでしょうか。
修繕積立金にはしっかりと意味があって、その分の金額が徴収されているのです。
この章では複数の観点からみた修繕積立金の目安や相場を紹介します。
修繕積立金のガイドラインから確認できる修繕積立金の相場
今回のデータは国土交通省が公表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」から引用しています。
機械式駐車場がない場合
地上階数 | 建築延床面積 | 平均値/㎡(月額) |
20階未満 | 5,000㎡未満 | 335円 |
5,000㎡以上~10,000㎡未満 | 252円 | |
10,000㎡以上~20,000㎡未満 | 271円 | |
20,000㎡以上 | 255円 | |
20階以上 | 338円 |
例:15階建てマンション|総床面積 4,000㎡|部屋の面積 70㎡ の場合
335円×70㎡=月額23,450円
「そんなに払っていないんだけど」という方は、長期修繕計画を確認してみてください。
もしかすると「段階増額方式」という、数年ごとに値上げしていく方式を採用しているのかもしれません。
または、既に修繕積立金が大幅に不足している事態に陥っている可能性が考えられます。
なぜ20階以上と未満で分かれているのか
20階以上の高層マンションの場合、外壁などの修繕のために特殊な足場が必要です。
足場の設置費用や、共用部分の占める割合が高くなることも相まって、修繕工事費が増大する傾向にあります。
そのため、20階以上と未満とで表が分けられているのです。
機械式駐車場があるとその分修繕費がかかってしまう
機械式駐車場がある場合は、修繕工事にその分の費用が加算されます。
そのため、修繕積立金の額に影響する度合いが大きくなってしまうといえるでしょう。
機械式の駐車があるマンションでは、通常の修繕積立金に以下の計算から算出された額を加算します。
機械式駐車場1台あたりの月額の修繕費用(下表)×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)
機械式駐車場の種類 | 機械式駐車場の修繕工事費(1台あたり月額) |
2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円 |
3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円 |
3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円 |
4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円 |
エレベーター方式(垂直循環方式) | 4,645円 |
その他 | 5,235円 |
例:マンションの総床面積 4,000㎡|2段(ピット1段)昇降式|20台分の機械式駐車場あり の場合
6,450円×20台÷4,000≒32円(㎡あたり)
修繕積立金の目安を算出する際に用いた表に記載されている「平均値/㎡(月額)」に32円を加算した上で、再度計算してみましょう。
すると、目安の金額が算出できます。
例で挙げたこのマンションは総床面積が5,000㎡未満のため、㎡あたりの積立金設定は335円です。
この金額に、先ほど算出した32円を加算して修繕積立金をあらためて計算してみましょう。
(335+32)×70㎡(部屋の面積)=月額25,690円
なお「駐車場使用料」や「維持修繕費用」を「管理費」や「修繕積立金」と区分して経理している場合や、機械式駐車場の修繕工事費を「駐車場使用料収入」で賄っている場合、この加算は不要です。
築年数から見た修繕積立金の相場
一般的には築年数が経過すればするほど修繕積立金の額が高くなる傾向にあります。
しかしながら「築○○年以上ならいくら」というような目安はありません。
先ほどの国土交通省のガイドラインでも特段触れられているわけではありません。
築年数が経過すればするほど修繕積立金が高くなる理由は、「段階増額方式(※後述)を採用しているから」「長期修繕計画で見込んでいた工事費用よりももっとかかることが分かって急ぎ値上げした」などが考えられます。
戸数から見た修繕積立金の相場
一般的には20戸以下の小規模マンションが最も修繕積立金が高くなる傾向があると言われています。
当然ながら大規模修繕工事の総額自体は大型マンションと比べると安価になりますが、案分する戸数が少ないために割高になるというシンプルな仕組みです。
しかし、「こちらも○戸以下ならいくら」というような明確な目安はありません。
修繕積立金は値上がりすることもある!?その理由とは
修繕積立金が値上がりする場合の理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 値上げを前提とした「段階増額方式」を採用している
- 今まで不要な工事や割高な工事を実施してきてしまった
- 数年後の工事費が賄えないことが判明した
値上げを前提とした「段階増額方式」を採用している
修繕積立金の積立方法には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」があります。
均等積立方式は、計画期間中均等に積み立てる方式です。
そのため、毎月の修繕積立金が変わることがありません。
後々のことを考えると「均等積立方式」のほうが望ましいとされています。
2022年4月に始まった「管理計画認定制度」においても、均等積立方式であることが認定基準の一つになっています。
関連記事:マンション管理計画認定制度とは?認定の受け方やその他評価との違いを解説
関連記事:最近よく聞く「マンション管理適正評価制度」とは?評価項目やメリット・デメリットまで徹底解説
段階増額積立方式とは
段階増額積立方式は一定期間ごとに値上げをしていく方式です。
新築販売時に購入検討者が負担するランニング費用を抑えたいと考えるデベロッパー側の意向で、この方式を採用しているマンションが多く見受けられます。
国土交通省が5年ごとに実施しているマンション総合調査の結果によると、平成27年以降に完成したマンションの、約70%が段階増額積立方式を採用していると回答しています。
つまり、多くのマンションでは修繕積立金が値上げしていくのが前提になっているということですね。
今まで不要な工事や割高な工事を実施してきてしまった
「管理会社に全部お任せ」というマンションにありがちなお話です。
管理組合の役員の方たちは建築や工事に関する知識のない方たちばかり。そのため、管理会社が提案する内容通りに工事を進めてしまう傾向にあります。
「知り合いの工事業者に聞いたら管理会社が作成した見積もりより、4割も下がって驚いた」という話をお聞きしたことがあります。
もしかしたらこれまで行ってきた工事の中に、相場よりも割高だったり、不必要な工事を実施したり、ということもあったかも知れません。
今後はセカンドオピニオンをきちんと取るようにしましょう。
DeNAグループが提供している「スマート修繕」のようなサービスを利用するのも有効です。
スマート修繕は大規模修繕工事など共用部工事の相見積もりや、工事会社選定をサポートしてくれるサービスです。
複数の工事会社が現地調査を行い、予算内で行える工事を提案してくれるプランもあります。
今まで管理会社に全てお任せしていたという方は、一度このようなサービスも検討してみてはいかがでしょうか?
スマート修繕の詳細はこちら
なお、決して管理会社が悪徳というわけではありません。
管理会社も営利企業ですから、より多くの収益を得ようとするのは当然のことです。
管理会社の話を鵜呑みにせず、当事者意識を持って提案内容を吟味することが大切ですね。
関連記事:マンション管理会社が契約更新を拒否!?更新拒否の背景と管理組合ができることを解説
関連記事:【管理組合役員は必見】管理会社の変更手順とその注意点
数年後の工事費が賄えないことが判明した
長期修繕計画は5年ごとに見直しによって、将来の大規模修繕工事費用が足りなくなりそうだと判明した場合。
修繕積立金の値上げが必要になるかもしれません。
建築部材や人件費の高騰により、修繕積立金が値上げしてしまうことはどこのマンションでも考えられることです。
ところが、長期修繕計画を見直した結果、修繕積立金の値上げが必要だと分かってもすぐに値上げに踏み切らないマンションもあります。
誰しもが、値上げは避けたい事柄でしょう。
さらに理事会役員が輪番制でまわってくるマンションの場合、自分が役員のときに総会で値上げをして、他の住民に嫌な顔をされたくないと考え、先送りにしてしまうケースも多いようです。
修繕積立金の不足や、値上げが必要となる可能性が生じたら、速やかにその事実を管理組合内で情報共有し、対策を検討することが大切です。
なぜ5年ごとの見直しが必要なの?
長期修繕計画はその名の通り、かなり長期的な目で見た修繕に関する計画のことです。
しかし、何十年も先に行う予定の工事にどれくらい費用がかかるのか。また、建築部材がどれくらいの価格になっているのかも分かりません。価格の変動を予測し、精度の高い計画を作成するのはとても困難なのです。
そのため、5年ごとに見直しをすることが求められています。
修繕積立金が足りない!不足が判明した場合の対処法
修繕積立金の不足が判明した場合、管理組合としてどのような対応をすれば良いのでしょうか?
あなたが理事会のメンバーだった場合、どう行動しますか?
今回は、修繕積立金の値上げをする前にできることを3つご紹介します。
長期修繕計画の見直し
弊社がおすすめしているのは、まずは長期修繕計画のセカンドオピニオンを取ることです。
信頼できる第三者機関に作成を依頼している場合は良いのですが、管理会社が作成した長期修繕計画へ過剰に工事項目が盛り込まれている可能性も考えられます。
工事に関する専門的な知識を持っている管理組合の方は、そう多くはありません。
専門知識のない人が、いざ大規模修繕工事を発注しようとなった際。
その判断基準の一つとするのが「長期修繕計画通りの工事かどうか」です。
「総会で承認されている長期修繕計画通りの工事なら大丈夫か」と考える方も多いようです。
その工事内容が本当に必要なものなのか、マンションのためなのかというのは、工事の専門的知識がないために見落としがちなところ。
管理会社が長期修繕計画で多めに工事項目を盛り込んでいても、それを指摘する人はいません。
そのため、管理会社は本来よりも多くの売り上げが期待できるわけです。
もちろん、全ての管理会社がこのように考えているわけではありません。
しかし、やはり一部の管理会社にはこのように考える会社もあるようです。
注意しておきましょう。
管理費会計の見直し
「長期修繕計画は問題ないのに、やっぱり修繕積立金が不足する」という場合は、“管理費会計”の見直しを行いましょう。
管理費会計の見直しを行った結果、大幅なコスト削減ができ、剰余金を修繕積立金に回せる場合があります。
そうなれば修繕積立金の値上げを回避、または値上げをするにしてもその額をなるべく低く抑えることが可能です。
見直しの具体的な手法としては以下の方法が考えられます。
- 管理会社を通して発注している作業を、管理組合からの直接発注に変更し、中間マージンを削減する
- 点検や清掃などの頻度を減らしたり、管理員さんの勤務時間を削減したりして、コストを抑える
- 管理会社自体を安価な管理会社に変更する
- 自主管理に切り替えることでコスト削減する
なお、これらの手法は「管理会社に委託している」マンションの場合に有効な手段です。
自主管理をされているマンションの場合は②以外はあまり関係がないため、注意しましょう。
また、管理費会計を見直し、コスト削減に取り組むことは、なにも修繕積立金が不足する場合に限った話ではありません。
区分所有者から集めたお金を有効に使うことは管理組合として当然のことです。
意識を改めることも、マンションの健全な維持に欠かせないポイントと言えるでしょう。
関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット
関連記事:【自主管理をされているマンションの方向け】管理組合の会計業務について徹底解説
まとめ
いかがでしたでしょうか?
管理組合にとって修繕積立金はとても大切な役割を担っています。
1世帯あたりでみると月々数千円~数万円の費用ですが、毎月かつマンションが存在している限りは徴収される費用ですから、総額は相当なものです。
最近、よくメディアや週刊誌などで「老朽化したマンション」をテーマにした記事を目にします。
築40年以上経過しており、あちこちで不具合が起きている。にもかかわらず修繕積立金が不足しており、修繕工事が実施できない……。
住民の高齢化、年金生活者の割合も多いため、修繕積立金の値上げが総会で承認されない……。
このままでは少しずつマンションが朽ち果てていくのを黙って見ているだけ。
このような内容が多いです。
悲しい末路にたどり着かないために、早めに手を打つことが重要です。
2018年の日経新聞の調査によると、全国の物件のうち75%のマンションで修繕積立金不足が起きているそうです。
修繕積立金の不足は、どのマンションでも決して他人事ではありません。
管理組合を一般家庭に置き換えてみると、管理費は「生活費」修繕積立金は「貯金」のイメージです。
給与のなかから食費や住居費、水光熱費などの生活費(管理費)をやりくりしつつ、将来に備えて貯金(修繕積立金)をしておこうと考えるご家庭も多いのではないでしょうか?
金融庁が「老後30年で2,000万円必要」と試算を示したことで端を発した、いわゆる老後2,000万円問題が話題になったあと「自分たちは大丈夫だろうか? ちゃんと一度試算してみようか」「若いうちからコツコツと積立した方がいいかも知れない」「生活費に無駄な費用がないか見直ししよう」と考える方も多くいたのではないでしょうか。
修繕積立金も同じです。
修繕積立金の意味や目的をしっかりと理解したうえで、ご自身のマンションにおける修繕積立金の状況を確認してみてはいかがでしょうか