大規模修繕で確認申請は必要か?申請の流れや注意点なども解説

マンションの大規模修繕を行う際、建築基準法上の確認申請が必要となる場合があるのをご存じでしょうか。

知らなかったでは済まされないのが法律です。

今回のコラムでは大規模修繕工事で確認申請が必要なケースや、確認申請の際に注意すべき点について解説していきます。

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確認申請とは?

確認申請とは?

確認申請とは、新築工事や大規模な増改築工事などを行う前に、確認検査機関や特定行政庁に必要書類を添えて申請し、建築基準法や条例に適合しているかの確認を受ける手続きのことを指します。

建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命・健康・財産の保護を図り、公共の福祉を増進させることを目的としています。

例えば、ちょっとした地震で倒壊してしまうような建物があると住んでいる人はもちろん、周りの住民も危険にさらされてしまいます。

また、十分な幅のない道路に面した場所に建物を建てると、火災発生時に消防車が近づけず、被害が拡大する恐れがあります。

そのような状況を避けるため、建築基準法の基準を満たしているかのチェックを受ける必要があるのです。

大規模修繕工事の際に確認申請は必要か?

では、マンションの大規模修繕工事を実施する場合、確認申請は必要なのでしょうか?

大半の大規模修繕工事では確認申請は不要

大半の大規模修繕工事では確認申請は不要

多くのマンションの場合、建築確認申請は不要です。

大規模修繕工事は、その工事が何回目かによって費用や範囲が大きく変わりますが、1回目の大規模修繕工事の場合、確認申請が必要となる工事を実施することはほとんどありません。

大規模修繕で確認申請が必要になるのはどんな場合?

建築確認申請が必要となる条件は「建築基準法第6条第1項の第1号〜第3号 建築物」に当てはまる建物の規模で、かつ「主要構造部の一種以上について過半の修繕、模様替えに該当する工事」を行う場合です。

建築基準法6条第1項の第1号〜第3号建築物とは?

制度内容
1号特殊建築物(例:病院、共同住宅、飲食店、物販店、倉庫、自動車車庫など)で床面積の合計が200平方メートルを超えるもの
2号木造で                  
1.階数が3以上
2.延べ面積が500平方メートルを超えるもの
3.高さが13m超 or 軒高9mを超えるもの
3号非木造で
1.階数が2以上
2.延面積が200平方メートルを超えるもの
4号上記の1号から3号以外のもの

マンションの場合は、大半は第1号に該当します。(床面積の合計が200㎡以下の場合はマンションであっても第4号に該当します)

主要構造部とは?

主要構造部とは?

主要構造部とは、建物の構造上重要な部分のことで、建築基準法第2条第1項第5号で以下のように定義されています。

主要構造部・・・壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

建築基準法第2条第1項第5号

大規模の修繕・模様替えの定義とは?

大規模の修繕・模様替えの定義とは?

「大規模の修繕」と「大規模の模様替え」は、建築基準法の第2条第14項・第15項で以下のように定義されています。

大規模の修繕・・・建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

大規模の模様替え・・・建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替えをいう。

建築基準法の第2条第14項・第15項

これらをまとめて分かりやすく説明すると、修繕や模様替えの工事で確認申請が必要になるのは、マンションの主要構造部の一種以上について、過半の修繕や模様替えを行う場合ということになります。

大規模修繕で確認申請が必要となる場合の具体例

大規模修繕で確認申請が必要となる場合の具体例

では、どのような大規模修繕工事の場合に建築確認申請が必要となるのでしょうか。

具体例としては、エレベーター関連の工事や耐震補強工事などが挙げられます。

エレベーターの修繕工事を実施する場合、全体を一新する工事だけでなく、機器を部分的に取り替える工事でも確認申請が必要となります。

また、耐震補強工事を実施する場合にも確認申請が必要な場合があります。

耐震補強工事では、主要構造部にあたる「柱」や「梁」の過半の修繕が必要となるためです。

その他にも、部屋を増築したり、バルコニーを屋内化したりするなど、建物の面積を拡充する工事は確認申請が必要です。ただし、大規模修繕の際にこのような工事を行うことはほとんどありませんので、あまり気にする必要はないでしょう。

さらに、マンション内の空きスペースに集会室を建てるなど、建物内の共用スペースを整備する場合も確認申請が必要となることがあります。

大規模修繕の確認申請における注意点

大規模修繕の確認申請における注意点

確認申請を行う際に、いくつか注意しておきたいことがあります。

確認申請を怠ると法律違反になる

確認申請を怠ると法律違反になる

建築確認は建築基準法に基づく手続きです。建築確認申請を怠ると法律違反となり、建築基準法第99条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、申請を怠らないよう注意してください。

なお、罰せられるのは施主であり、工事会社ではありません。

つまり、マンションの管理組合が罰せられることになります。

確認申請後に間取りや設備の変更はできない

確認申請後に間取りや設備の変更はできない

確認申請後は、原則として間取りや設備の大幅な変更はできません。変更すると、建築の判断基準となる住宅の性能に確認前後で差が生じ、申請内容が虚偽となる可能性があるためです。

もし確認申請後に変更が必要になった場合は「計画変更の申請」を行い、建築基準法に適合しているかどうか、再度確認が必要となります。

この場合、確認終了まで工事ができなくなるため、工期が長くなってしまい余計な人件費がかかる可能性があります。

既存不適格のマンションは注意が必要

既存不適格のマンションは注意が必要

既存不適格物件とは、建設時には適法であったけれど、後の法改正などにより法的に不適合となった物件のことを指します。

例えば、建築時には容積率の上限が300%まで許可されていた建物が、後に上限が200%に変更された場合などです。

なお、たまに「違法建築物件」と混同されるケースがありますが、既存不適格物件と違法建築物件は全く意味合いが異なります。

違法建築物件とは、一度も適法であったことのない物件を指します。例えば先ほどの例で言えば、容積率が200%と定められているのに300%の建物を無許可で建ててしまった場合です。

どちらも外見上では300%の建物ですが、違法建築と既存不適格では法律上の扱いが全く異なります。

既存不適格物件の場合でも、建築確認申請が必要な工事を実施することは可能です。

ただし、その場合、既存不適格な状態を是正することが求められる場合もあります。また、求められない場合でも、通常のマンションと比べて提出する書類が増える可能性がありますので、注意が必要です。

確認申請の流れとは?

確認申請の流れとは?

確認申請では、工事の着工前と工事の完了後の2段階で審査が実施されます。

手続きの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 工事計画の立案
  2. 建築確認申請
  3. 着工前の書類審査
  4. 建築確認済証の交付
  5. 工事の開始
  6. 工事の終了
  7. 完了検査
  8. 検査済証の交付

確認申請書類を提出すると、民間の検査機関もしくは特定行政庁(自治体)による書面審査が行われ、そこで問題がなければ「建築確認済証」が交付されます。建築確認済証の交付を受けるまでは工事を始めることはできません。

工事の完了後には、完了検査が行われます。申請書類の内容に基づいて工事が実施されたかを確認するためのものです。問題がなければ、「検査済証」が交付されます。

確認申請は施主に義務付けられていますが、一般的には設計事務所や施工会社などの専門家が代理人として申請を行います。

確認申請にかかる期間・費用はどれくらい?

確認申請にかかる期間・費用はどれくらい?

まず期間ですが、国土交通省の建築確認審査に係る法定期間に関する基礎データによると、確認済証の交付は、建築確認申請書を提出した日から、問題がなければ最長35日以内に行われます。

ただし、建築物省エネ法に基づく適合性判定が必要な場合は、さらに最長35日かかり、合計で最長70日が必要となります。

この最長期間は、事務手続きや指摘事項のやりとりなどにより、それ以上の日数がかかる可能性もあります。

続いて費用ですが、自治体によって異なりますが、一般的には床面積の広さによって決められています。建築確認と中間検査、完了検査のそれぞれで費用がかかる点に注意をしておきましょう。

以下は東京都の場合の費用です。

床面積の合計費用
30㎡以内のもの5,600円
30㎡を超え100㎡以内のもの9,400円
100㎡を超え200㎡以内のもの14,000円
200㎡を超え500㎡以内のもの19,000円
500㎡を超え1,000㎡以内のもの35,000円
1,000㎡を超え2,000㎡以内のもの49,000円
2,000㎡を超え10,000㎡以内のもの146,000円
10,000㎡を超え50,000㎡以内のもの249,000円
50,000㎡を超えるもの474,000円

また、自治体ではなく民間の検査機関に建築確認を依頼する場合、費用が高くなる傾向がありますので注意が必要です。

大規模修繕の確認申請に関するよくある質問

大規模修繕の確認申請に関するよくある質問

Q:確認申請をしていない建物はどうなりますか?

A:確認申請をせずに工事を実施してしまった場合、その建物は違法建築物となります。先ほど説明した通り、違法建築物は既存不適格物件とは異なり、即座に法律違反となりますので、絶対に避けなければなりません。

Q:完了検査を受けないとどうなりますか?

A:建築基準法に違反しますので、必ず検査を受けるようにしてください。

Q:自治体と民間の検査期間で検査する内容に違いはありますか?

A:検査する内容に違いはありません。両者の違いは、費用や期間、対応可能なエリアなどです。

まとめ

まとめ

今回のテーマは大規模修繕工事における確認申請についてでした。

ポイントをまとめると以下の通りです。

  • マンションの大規模修繕工事であっても確認申請が必要な場合がある(ほとんどの場合は申請不要だが、エレベーター関連工事の場合などは必要となる)
  • 確認申請が必要なのに申請を怠ると法律違反となってしまうので注意が必要

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