マンション大規模修繕とは?その費用や目安について解説!

大規模修繕工事は1回で終わるものではなく、マンションがマンションとして機能する限り十数年周期で行われる、とても大掛かりなものです。

この工事にはかなりの費用がかかります。しかし、そう聞いていても実際どれくらいの費用感なのか初めてであればわからないところです。
そのため、実際は工事を計画するにあたってどれくらいの費用がかかるのか、という目安を確認してから業者へ見積もりを出したりした方が、より実感が湧くでしょう。

今回は、大規模修繕工事にかかる費用やその目安について解説していきます。
大規模修繕工事の実施を考えている方だけでなく、マンションの管理に携わっている方もぜひご覧ください。

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マンションの大規模修繕とは?

「大規模修繕」とは、経年に伴い劣化したマンションの外観や設備を定期的に修繕することです。

特に、普段実施するのが難しい大がかりな建物本体(躯体)を維持するための修繕や、共用部分の改修を指します。
何年ごとに行うかはマンションによって異なりますが、12年から16年程度の周期で行われるのが一般的とされています。
なお、修繕工事と改修工事の違いは以下の通りです。

修繕工事改修工事
問題部分の性能や機能が、支障なく利用できる状態にまで回復させるという目的で行う工事。社会や時代の変化によって向上していく居住環境の水準に合わせ、初期よりも高性能、高機能または高い居住性を獲得する目的で行う工事。

マンションの大規模修繕工事の費用相場

大規模な修繕では、一戸あたり75~125万円の費用がかかります。

令和3年に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、半数以上が一戸あたり75万円以上の費用を負担していることがわかります。

負担額 割合

  • 50~75万円の負担 13.8%
  • 75~100万円の負担 30.6%
  • 100~125万円の負担 24.7%

マンション全体の金額だと中央値で7,600万円~8,700万円程度。
平均値で1億1,000万円~1億5,000万円になる計算です。

なお、金額はいずれも共通仮設費は含まれていません。

2回目・3回目の大規模修繕の費用はどれくらいかかるの?

大規模修繕の工事内容のイメージは以下の通りです。

【1回目の大規模修繕】

  • 屋根防水の補修・修繕
  • 外壁の補修・塗装
  • 建具の点検・調整 など

【2回目の大規模修繕工事】

屋上防水の補修・修繕または撤去・新設

  • 外壁の補修・塗装、除去
  • 痛んだ金物類の取替え
  • 耐用年数を迎えた設備の取替え など

【3回目の大規模修繕工事】

1回目〜2回目の工事に加えて

  • 屋根防水の撤去・新設
  • 建具の取替え
  • 給排水管の取替え
  • 耐用年数を迎えた設備の取替え など

つまり、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が対象の工事が広がっていくため、一般的には回数を重ねるほど工事費用は高額になっていきます。

2回目以降はどれくらい費用が高額になるのか

2回目以降の費用が1回目と比べてどのくらい高くなるのか、という点についてはマンションの劣化状況などによって異なるため一概には言えません。

しかし、実際の現場において1回目の大規模修繕と比較して(目安としてですが)2回目は肌感覚で2割くらい高くなる印象です。

1回目の大規模修繕工事の費用相場が「一戸あたり75万円~100万円」だとすると、2回目は「一戸あたり90万円~120万円」くらいが目安でしょう。

 

では3回目は?というと、一般論としては2回目よりもさらに高くなる傾向にあるといえます。

大規模修繕の周期はおよそ12年〜16年。

3回目の修繕を行うときには、単純計算でそのマンションが建設されてから、36年〜48年が経過していることになります。

これほどの築年数を持つマンションだと、もしかすると建替えも視野に入れ始めているかもしれません。

「どうせ建て替えるから、あまり修繕にお金をかけないようにしたいな」という考えから、むしろ2回目より安くなる可能性もあるでしょう。

また、40〜50年近い年月の間行ってきたメンテナンス状況によって、必要な工事内容が大きく変わってきます。

そのため、3回目に関しては特に目安も立てづらく、一概に言い切ることが難しいのです。

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なぜ修繕費用は高額なのか?修繕が特に必要な場所とは?

修繕にかかる工事費用が高額なのは、人件費の高騰と建築部材の入手が困難なことが影響しています。

大規模修繕工事は言うまでもありませんが、長期間に渡りたくさんの人手が必要になります。

我が国においては労働人口が毎年減少する傾向にあり、人件費が高騰し続けているのが現状。

そのため、工事費も年々高騰していく傾向にあります。

また、ロシアのウクライナ侵攻による影響で建築部材が入手しづらくなったことも工事費高騰の要因です。

前者の人手不足の問題は根本的な解決策が見出せておらず、今後も工事費が高騰し続ける可能性は十分に考えられます。

修繕費用が足りないときにできることは?

想定より工事費が高額だったり、修繕したいところが多かったりなどを原因に、積み立てている修繕費用分では足りないという可能性も、ないとは言い切れません。

毎月徴収している修繕積立金の値上げが難しく、費用面で解決ができそうにないのであれば、修繕箇所の見直しをする必要があるでしょう。

しかしながら、大規模修繕工事の項目はどれも必要なものばかり。

たとえば、屋上やバルコニーの防水工事を実施しないとコンクリートの状態がさらに悪化してしまいます。

その結果、建物の劣化を早めることになるでしょう。漏水事故を引き起こし、想定以上の費用がかかってしまう可能性も考えられます。

外壁の検査を怠るとタイルの落下事故を引き起こしかねない上に、極度の劣化はマンション全体の資産価値低下を招きます。

ここで重要なのは修繕箇所の見極めです。

どうしても修繕費用が足りない場合は各対象項目の診断結果を確認し、そこまで劣化が進んでいない箇所は先送りにするのも一つの方法として考えられるでしょう。

修繕積立金の目安について

修繕積立金の目安は下記の通りです。

このデータは国土交通省が公表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」から引用しています。

地上階数建築延床面積平均値/㎡(月額)
20階未満5,000㎡未満335円
5,000㎡以上~10,000㎡未満252円
10,000㎡以上~20,000㎡未満271円
20,000㎡以上 255円
20階以上338円
機械式駐車場が無い場合

例:15階建てマンション|総床面積 4,000㎡|部屋の面積 70㎡ の場合

335円×70㎡=月額23,450円

「あれ、そんなに払っていないんだけど…?」という方は、長期修繕計画を確認してみてください。

もしかしたら「段階増額方式」という、数年ごとに値上げしていく方式を採用しているのかもしれません。

または、既に修繕積立金が大幅に不足している事態に陥っている可能性が考えられます。

なぜ20階以上と未満で分かれているのか

20階以上の高層マンションの場合、外壁等の修繕のために特殊な足場が必要です。

また、共用部分の占める割合が高くなることも相まって、修繕工事費が増大する傾向にあります。

そのため、20階以上と未満とで表が分けられているのです。

機械式駐車場がある場合の修繕工事に加算される額

機械式駐車場がある場合は、その分修繕工事に多額の費用を要します。

そのため、修繕積立金の額に影響する度合いが大きくなってしまうのです。

機械式の駐車があるマンションでは、通常の修繕積立金(先述の表参考)に以下の金額を加算します。

機械式駐車場1台あたりの月額の修繕費用(下表)×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)

機械式駐車場の種類機械式駐車場の修繕工事費(1台あたり月額)
2段(ピット1段)昇降式6,450円
3段(ピット2段)昇降式5,840円
3段(ピット1段)昇降横行式7,210円
4段(ピット2段)昇降横行式6,235円
エレベーター方式(垂直循環方式)4,645円
その他5,235円
機械式駐車場の1台あたり月額修繕工事費

例:マンションの総床面積 4,000㎡|2段(ピット1段)昇降式|20台分の機械式駐車場あり の場合

6,450円×20台÷4,000≒32円(㎡あたり)

修繕積立金の目安を算出する際に用いた表に記載されている「平均値/㎡(月額)」に32円を加算した上で、再度計算してみましょう。すると、目安の金額が算出できます。

例で挙げたこのマンションは総床面積が5,000㎡未満のため、㎡あたりの積立金は335円と設定されています。

この金額に、先ほど算出した32円を加算して修繕積立金をあらためて計算してみましょう。

(335+32)×70㎡(部屋の面積)=月額25,690円

なお「駐車場使用料」や「維持修繕費用」を「管理費」や「修繕積立金」と区分して経理している場合や、機械式駐車場の修繕工事費を「駐車場使用料収入」で賄っている場合、この加算は不要です。

マンション大規模修繕工事の費用が払えない場合の対処法

もし修繕積立金が足らず、必要な大規模修繕工事ができない場合は、以下のような対応が考えられます。

  • 一時金を徴収する
  • 不足額を借り入れる
  • 修繕積立金を値上げする
  • 大規模修繕を延期する

一つずつみていきましょう。

一時金を徴収する

一つ目は修繕積立金の不足分を「一時金」として徴収する方法です。

これには総会決議が必要になります。
金額によっては各区分所有者に大きな負担を強いることになるため、反対多数で否決される可能性もあるでしょう。
一時金を徴収するメリットは、金利がかからないことと、手早く不足分を補えることです。

不足額を借り入れる

もう一つの方法は、金融機関等から修繕積立金の不足分を借り入れることです。
こちらも総会決議を要しますが、一時金徴収よりは議決が通りやすく、現実的な方法だといえるでしょう。
ただし、借り入れをするわけですから当然金利がかかります。
返済のため、修繕積立金の増額が必要になる可能性は想定しておいた方が良いでしょう。

修繕積立金を値上げする

毎月の修繕積立金を増額する方法です。
総会決議が必要ですが、一時金の徴収と同様に反対意見が出やすい傾向にあります。
また、不足分を補填できるまでにはある程度時間がかかるので、この方法が選べるのは工事が差し迫っていないマンションに限られるでしょう。

大規模修繕を延期する

上記のいずれの方法もNGだった場合は、大規模修繕を延期せざるを得ません。

しかし「修繕積立金が足りないから」という理由で大規模修繕を先延ばしにするのは、決して望ましいことではありません。マンションの状況にもよりますが、工事を先延ばしにすれば劣化が進み、さらに工事費負担が増えてしまう可能性が高くなるためです。

従ってできる限りこの方法を選択する状況にならないよう、積立金をしっかりと確保しておいた上で、マンションがさほど古くないうちから適切な修繕を計画的に行うことを心がけておきましょう。

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さいごに

大規模修繕を理想通りに実施するため重要なことは、資金計画です。
きちんと適切な工事を実施できるよう毎月の積立を行うこと。

日頃から不要と思われる過剰な工事や割高な工事の実施をせず、無駄な支出を控えること。

管理費会計も含めてコストを抑えられるところは抑えておくこと。
これらの意識を、管理組合の役員全体で持ち続けることが大切なのです。

そのため、弊社のマンション管理アプリ「クラセル」を活用する例が増えています。
クラセルを導入して管理会社に委託する業務の範囲を限定的にしたり、管理会社にクラセルを使ってもらって効率的に管理業務を遂行してもらったり、など各管理組合にあった使い方が可能です。

ぜひ、一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

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