マンション大規模修繕の相見積もりの取り方とは?注意点やポイントをご紹介

大規模修繕工事の工事業者を選定する際には、複数の工事業者から相見積もりを取得し、比較検討する必要があります。

割高な費用をかけずに工事を実施するためには、相見積もりの取得は必須と言って良いでしょう。
そして見積もりを受け取ったら、ポイントを押さえてしっかりと比較検討することが重要です。

今回のコラムでは、大規模修繕の相見積もりを取得する際の方法や、見積書をチェックする際のポイントについて解説します。

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大規模修繕の相見積もりを取るときの注意点

大規模修繕の相見積もりを取るときの注意点のイメージ

大規模修繕工事はマンションの修繕工事の中でも最も大きな金額がかかります。

また、マンションは数十年にわたり、計画的な修繕工事を必要としますので、資金の確保はとても重要です。

そのため、管理組合としても適正価格で工事を発注しなければなりません。
高額な契約を結んでしまい、次回の大規模修繕工事の際には資金が大幅に不足してしまったという事例も珍しくありません。

工事代金の適正な金額を把握するために大切なのが、複数の工事業者から相見積もりを取って、比較検討することです。

大規模修繕の見積もりを管理会社に委託するケースもありますが、注意が必要です。

なぜなら、管理会社が工事業者とつながりがある場合、工事業者に有利な金額を提示してくることがあるからです。

そのため、理事会や修繕委員会のメンバーが、自ら複数の工事業者の相見積もりを取得して、比較検討するようにした方が良いでしょう。

管理組合が主体となって相見積もりを取ることで、複数の工事業者と交渉する機会もでき、そこからさまざまな情報や知識を得ることもできます。

「同一条件」の見積もりを取得する

「同一条件」の見積もりを取得するイメージ

それぞれの工事業者から提出された見積もりは同一の条件で作成してもらわなければ、正確に比較ができません。

しかし、大規模修繕工事は項目が多岐にわたり、修繕工事に使用する材質などの仕様によって大きく金額が変わるため、ただ「見積もりをお願いします」と頼んだだけでは、複数社から同一条件の見積もりを取得できません。

いくら総額が安くても、工事の範囲が大幅に省略されたり、使用する部材が質の悪いものになっていたりすることもあります。

このような問題を解消するためには、工事の施工方法や施工範囲などの仕様をあらかじめ決めた上で各社に見積もりを依頼する必要があります。

また、その際に共通仕様の見積書を作成し、共通仕様書への記入を施工会社に依頼することが重要です。

しかし、施工方法を決めたり見積書を作成したりといった作業を管理組合の方だけで行うのは、難しいでしょう。
そのため「設計コンサルタント会社」の専門知識が必要となります。

設計コンサルタントを入れることで、管理組合は共通の仕様に基づいた分かりやすい見積書を得ることができ、透明性の高い工事業者選びを実現できます。

このように、工事業者とは別に設計コンサルタント会社を入れるやり方のことを「設計監理方式」と言います。

設計監理方式の場合、設計コンサルタント会社がマンションの調査診断や改修設計を担当し、工事業者の選定に関しても適切なサポートを提供してくれます。
なお、管理会社がこの設計コンサルタントの役割を担う場合もあります。

出来レースとなっている相見積もりに注意する

出来レースとなっている相見積もりに注意するイメージ

しかし、コンサルタントを入れても全てが安心とは限りません。

残念ながら、大規模修繕工事の見積もりが出来レースになっているケースがあるようです。

これは、いわゆる「不適切コンサルタント」と呼ばれる存在です。

2016年ごろ、業界紙などで「工事業者から不当なバックマージンを収受しているコンサルタントが存在する」という問題が多数取り上げられました。

インターネット上では「悪徳コンサル」や「不適切コンサル」などのキーワードで多くの記事が見つかります。

中立の立場であるべきコンサルタントが、自社と付き合いのある工事業者と癒着し、バックマージンを収受するという非常に悪質な手口ですが、残念ながら、巧妙な手口のため「談合が行われた」「癒着している」といった証拠を確実に得られないことが、この問題の難しいところです。

この問題に対処するためには、誓約書や損害賠償を約束する書面の提出を求めるとともに、国土交通省の通知に記載されている相談窓口に相談しながら対応を進めていくことが有効な取り組みとなります。

賢い相見積もりの取り方とは?5つのポイント

賢い相見積もりの取り方とは?5つのポイントイメージ

① 大規模修繕工事を行う工事業者の種類

まず、大規模修繕工事を依頼する工事業者の種類には3つのタイプがあることを理解しましょう。

マンションの大規模修繕工事を行う業者は、大きく分けて「管理会社」「ゼネコン」「大規模修繕工事の専門会社」の3つに分類されます。

管理会社に工事を依頼するメリットは、マンションのことを熟知している点です。

また、工事と管理は密接に関連していますので、工事中に何かトラブルが起きたとしてもスムーズに対処できます。

しかし、管理会社の多くは実際の工事作業を行う従業員を雇用していない場合がほとんどです。

そのため、実際の工事は下請け業者に再委託する形となるため、直接工事業者に発注するよりも費用が高くなる傾向があります

ゼネコンは総合建設業なので、組織力や高い工事対応力が期待されますが、管理会社と同様に金額は高額になる可能性があります

となると、残る選択肢は大規模修繕工事の専門会社になります。

実際、管理組合がこの専門会社に工事を発注するケースが圧倒的に多いようです。

大規模修繕の専門知識や経験が豊富で、細かい対応もでき、工事金額も抑えやすい点がメリットです。

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②相見積もりを取る前に準備しておきたい3つの書類

相見積もりを依頼する際は「建物診断報告書」「修繕計画書」「修繕仕様書」の3つの書類を準備しておく必要があります。

これらの書類を準備しておくことで、どの場所に、どんな工法で、いつからいつまで工事を行うのか、またどのメーカーの補修材料や塗料を、どの程度使用するのかといった内容を工事業者に伝えることができます。

そうすることで複数の工事業者から同条件の相見積もりを取ることができます。
こうした書類の作成は一般的にコンサルタントが行います。

③工事の費用相場を把握しておく

工事業者に相見積もりを依頼しつつ、管理組合としても工事のおおよその費用相場を把握しておきましょう。

それによって、見積書で提示された金額が適切かどうか判断することができます。

令和3年に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると1戸あたりの負担金額は以下の通りです。

50〜75万円の負担 9.5%
75〜100万円の負担 24.7%
100〜125万円の負担 27.0%

マンション全体の金額では中央値で7,600万円~8,700万円程度になります。

工事費総額では平均値で1億1,000万円~1億5,000万円になる計算です。
なお、これらの金額には共通仮設費は含まれていません。

また、何回目の大規模修繕工事なのかによっても金額が大きく変わりますので注意が必要です。

④消費税込みの金額で見積もりを取る

見積もりを取る際に気を付けたいのは、当たり前の話ですが必ず消費税込みの金額で見積もってもらうことです。

大規模修繕工事の費用は高額です。万が一消費税が抜けていると、実際には数百万円高かったということにもなりかねません

見積もりを依頼する際に、消費税込みの金額かどうかを忘れずに確認しておくことが大切です。

⑤見積書や工事金額に不安がある場合は、専門家に相談する

工事業者が提示した見積書や工事金額を見て、何か気になる点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」や「マンション管理センター」などの公益財団法人では、建築士などが大規模修繕に関するさまざまな相談に応じています。

また、最近では管理組合向けに工事の見積支援や伴走サービスも登場しています。

管理組合向け!コンサルタント選定を支援してくれるサービスとは?

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DeNAグループが提供している「スマート修繕」

大規模修繕などの相見積もりやコンサルタント選定を支援するサービスです。

この会社の社長は、かつて自宅マンションで理事長を務めた経験があるそうです。

その際、大規模修繕工事に関して管理会社から提案される内容に色々と疑問を持つことが多かったそうで、その経験から「スマート修繕」をDeNAの新規事業として立ち上げることに至ったとのことです。

ホームページ内で公正取引について宣言していますので安心感があります。

なにより、元理事長の視点からの事業ということもあり、管理組合の立場からの提案が期待できるでしょう。

スマート修繕の詳細はこちら

大規模修繕工事の際は、このようなサービスを活用するのも有効な方法です。

関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット

大規模修繕の相見積もりを取る前の準備

大規模修繕の相見積もりを取る前の準備イメージ

マンションの建物診断・建物調査をする

専門業者に見積もりを依頼する前に、まずはマンションの状態をしっかりと把握するために、建物診断を行うことが重要です。

建物診断とは、マンションの外壁や屋根、屋上、給排水設備などの劣化状況を確認するための調査です。

長期修繕計画で「この年に実施する」と計画していた工事項目であっても、劣化の程度によっては工事を延期したり、逆に前倒しにしたりする必要が生じることがあります。

建物の状態を把握するためには、建物診断が不可欠です。
ただし、建物診断を実施したとしても、完璧な状態把握ができるわけではありません。

診断する範囲や内容は費用の面から大まかな調査にとどまることが一般的です。

そのため建物診断では、見た目上問題がないように見えても、実際には交換が必要な状況であることがあります。

これは健康診断をイメージしてもらうと分かりやすいです。
健康診断で何らかの異常値が出ても、すぐに病気が特定されるわけではなく、精密な検査をしてみて初めて病気かどうかが分かるのが一般的です。

建物診断も同様で、ある程度までの調査しかできないことを頭の片隅に置いておきましょう。

また、建物診断だけでなく住民からのアンケートも有効です。
マンションに住んでいる方が一番建物内の問題や劣化状況を把握していることが多いため、管理組合が認識していない不具合や問題が報告されることもあります。

修繕工事の仕様書を作成する

修繕工事の仕様書を作成するイメージ

建物診断において、マンションの劣化や損傷の状況が明らかになった後は、具体的な修繕工事の仕様書を作成します。

工事仕様書とは、工事の工程や材料、数量、グレードなどを記した書類のことであり、大規模修繕には欠かせません。

建物診断によって劣化や損傷を明らかにしたのちに、マンションの住民に対してアンケート調査を行い、専有部や共用部において気になる箇所を聞きます。

具体的には、ベランダやバルコニーの塗装の劣化や損傷、玄関ドアや網戸などのガタつき、出窓からの雨漏りなどが多く報告されるようです。

建物診断と併せてアンケート結果も考慮し、どの範囲まで工事を実施すべきか、グレードアップが可能か、修繕積立金の状況なども踏まえて、工事範囲を決めていきます。

通常はさまざまな箇所が修繕対象項目として挙げられます。実際にマンションの修繕委員会のメンバーが修繕箇所を検討し、修理が必要な箇所を決定すると良いでしょう。

工事範囲が決まれば工事仕様書の作成となりますが、これには専門的な知識や経験が必要となりますので、多くのマンションではコンサルタントに依頼するケースが一般的です。

大規模修繕の相見積もりを取る工事業者を選ぶ

大規模修繕の相見積もりを取る工事業者を選ぶイメージ

工事仕様書が完成したら、相見積もりを依頼する工事業者を選定します。
前述の通り、まずは大規模修繕工事の専門会社のうち複数社に依頼するのが良いでしょう。

コンサルタントが入っている場合はコンサルタントの意見も聞きながら選定するようにしましょう。

また、マンション管理新聞やリフォーム産業新聞などの業界紙が、定期的に元請工事金額のランキングを公表していますので参考にするのも良いでしょう。

さらに、オリコンなどの調査会社が大規模修繕工事業者の満足度調査を実施していますので、それらも併せて確認することをおすすめします。

大規模修繕のよくある質問

大規模修繕のよくある質問イメージ

大規模修繕工事に関するご質問は、多くが費用に関するものです。

例えば、50世帯のマンションで2回目の大規模修繕工事を行う場合の費用の目安はいくらくらいですか?という内容のものがあります。

回答としては、かなり一般的な見積もりになりますが1戸あたり75万円~125万円程度となります。

ただし、これはマンションにある設備の種類や、現在の設備の劣化状況、立地条件などによって費用が大きく異なるため、一概に言い切れない場合もあります。

そのため、先ほどの目安の金額に収まらない場合もあることを理解しておく必要があります。

関連記事:マンション大規模修繕とは?その費用や目安について解説!

まとめ

まとめイメージ

今回のテーマは大規模修繕工事の相見積もりについてでした。

大規模修繕工事は管理組合にとって一大イベントです。

大規模修繕工事の成功・失敗の明確な定義はありませんが、一般的には以下のようなイメージがあります。

成功=必要な工事を適正な金額で実施し、大きなトラブルも発生しないこと。
失敗=不必要な工事も含めて割高な金額で実施し、施工不良や工事中のトラブルが多く発生すること。

大規模修繕工事が失敗に終わると、将来的に資金面で不安要素を抱える可能性が生じます。

その場合、たちまち修繕積立金の値上げが必要になったり、将来本当に必要な工事を実施できなくなったりするおそれが生じます。

大規模修繕工事を成功させるための重要な要素の一つは、最適な工事業者に発注することです。

そのための第一歩が相見積もりを依頼する会社の選定です。ここを間違えてしまうと、どうにもなりません。

とはいえ、管理組合の方々は修繕に関する知識のない方がほとんどでしょう。

そういった方々におすすめなのは、信頼できるコンサルタントの起用、または、先ほどご紹介したスマート修繕のようなサービスの活用です。

ぜひ検討してみてください。

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