修繕積立金の値上げはトラブルの元になりやすい?事前にできる対処法などを解説

  • 修繕積立金が不足しそうなマンション
  • もともと段階増額積立方式のため、数年ごとに値上げが必要なマンション

こういったマンションでは修繕積立金の値上げをする必要があるでしょう。

修繕積立金の値上げは理事会や管理会社だけでは決定できません。
総会での承認が必要です。

合意形成に向けた進め方を間違えると、管理組合員から文句や理事会に対する非難の声があがってしまうこともあります。

今回のテーマは「修繕積立金の値上げ」です。

修繕積立金が不足しているマンションや、段階増額積立方式のマンションの方はぜひ参考にしてみてください。

関連記事:【クラセルをご検討中の方向け】クラセル導入に向けた管理組合内の合意形成の進め方を解説

マンションの修繕積立金が必要な理由をおさらい

本題に入る前にまずは、修繕積立金が必要な理由を再確認しましょう。

分譲マンションにおける修繕積立金とは

修繕積立金は大規模修繕工事のために毎月積み立てておくお金です。

修繕積立金を毎月集めていないと、12~15年ごとを目安に実施する大規模修繕工事ができなくなり、マンションがボロボロになってしまうでしょう。

大規模修繕工事の度に、区分所有者がお金を出しあうという方法も検討できないわけではありませんが、現実的ではありません。

費用を全額集められずに修繕工事ができないという事態を避けるため、将来必要になるであろう工事費用を計画的に積み立てるのが「修繕積立金」なのです。

修繕積立金と管理費の違い

一方、管理費は、マンションの日常的な維持管理のための費用です。
管理会社への業務委託費用のほか、共用部の水道光熱費、損害保険料などに使われます。

修繕積立金の相場について

修繕積立金については、所有している部屋の広さが70㎡なら○○円くらい、といったような相場を示すのが難しい面があります。
修繕積立金はマンションにある設備の種類や多さ、築年数や総戸数によって大きく変わってくるためです。

例えば、機械式駐車場の有無や、エレベーターの数、外壁の種類によっても金額が変わってきます。

あくまでも目安となりますが、国土交通省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」というものを公表していますので、ご興味がありましたら以下の別コラムをご参照ください。

関連記事:マンションの修繕積立金、相場はいくら?そもそも必要なの?あらゆる疑問を解消!

修繕積立金値上げにおける背景

そもそもなぜ修繕積立金の値上げが必要になるのでしょうか?
修繕積立金が値上がりする場合の理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • 値上げを前提とした「段階増額方式」を採用している
  • 今まで不要な工事や割高な工事を実施してきてしまった
  • 数年後の工事費が賄えないことが判明した

こちらも詳細については、先ほどご紹介した別コラムで触れていますので併せてお読みください

修繕積立金の値上げはトラブルを招くことも

誰だって値上げは嫌ですよね。

事前にあまり説明がなく、突然総会で「修繕積立金の値上げ」という議案が出される場合があります。
しかも、その際に値上げの幅が大きかったりすると、総会で怒り出す組合員さんもいらっしゃいます。
理事会の方たちだって値上げをしたくてしているわけではありません。

そこまで言われると感情的に反論してしまうこともありますよね。

こうして管理組合内でトラブルになることがあります。

修繕積立金の値上げトラブルを防ぐための事前対策

修繕積立金の値上げに関するトラブルを回避するポイントは以下の通りです。

1. 管理規約で修繕積立金を値上げするための決議方法を確認

まずはご自身のマンション管理規約を確認してください。

標準管理規約を参考にすると、第48条に総会での議決事項として「管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法」との記載があります。

つまり、総会の普通決議事項です。

多くのマンションは普通決議事項になっていると思われますが、まれに修繕積立金の金額自体が、管理規約に記載されているケースがあります。

この場合、規約の変更になるという解釈をされるかもしれません。
そのときは特別決議事項になります。

値上げの最終決定は総会での承認となりますので、まずは先に承認条件を確認しましょう。

関連記事:マンションの管理組合総会の進め方とは?総会の疑問を解消

2. 修繕積立金の値上げをいきなり総会に提案をしてはいけない

いきなり総会で修繕積立金の値上げの提案をするとどうなるでしょうか?

おそらく次のような反対意見や理事会に対する批判が出て、理事会と区分所有者の間でトラブルに発展することもあり得ます。

【予想される反対意見】

  • 事前の告知や説明会を行うべきではないか
  • 理事会としてちゃんと検討をしたのか、検討が足りないのではないか
  • 高齢のため、そのような金額は払えない
  • 他のマンションはこんなに高くないと聞いている
  • 値上げしなくても都度工事費を抑えていけばやって良いのでは

そのような状況を回避するためには、値上げに関する注意点を理解して、慎重かつ着実に進める必要があります

3. 修繕積立金を値上げするための総会決議に向けた進め方と注意事項

お金の話になると、それまで無関心層であった区分所有者が大きな声で反対意見を主張し始める場合があります。

また、まるで理事会や管理会社が間違った情報を流しているような論調で極論な反対意見を主張し始める人もいます。

マンションの資産価値を維持していくために、修繕積立金を値上げせざるを得ないと考えている人にとっては、たまったものではありません。

そのためにしっかりと手順を踏むことが重要となります。
以下、修繕積立金の値上げに向けた進め方と注意事項の参考例です。

【修繕積立金の値上げの手順】

  1. 最新の長期修繕計画を準備して資金計画を確認する
  2. どのタイミングを目指して修繕積立金を値上げするかを決める
  3. 管理組合員に対して修繕積立金の値上げに関するアンケートを実施する
  4. 理事会としてアンケートで出た意見に対する考えをまとめる
  5. 理事会の方針及びアンケート結果を広報して説明会を開催する
  6. 総会を開催して修繕積立金の値上げを決議する

1. 最新の長期修繕計画を準備して資金計画を確認する

必要な修繕積立金を算出するための根拠が長期修繕計画です。

まずは長期修繕計画を準備するとともに、その計画に基づいた場合の資金計画をシミュレーションしてみましょう。

管理会社によっては毎年無償で更新してくれる会社もありますが、おおむね5年に一度の更新となります。

5年を待たずに提出してもらうためには管理会社と交渉するか、管理会社ではなく設計会社やマンション管理士事務所などに長期修繕計画の作成を依頼する方法もあります。

長期修繕計画は修繕積立金の設定の大元となるものです。
長期修繕計画の精度が低いと、当然ながら修繕積立金の設定もおかしくなってしまいます

足りないと思って値上げしたのに、長期修繕計画での見通しが甘かったため、また数年後に値上げが必要になってしまうケースもあります。

これでは住民の方も困ってしまいますし、当時の理事会メンバーに対する批判の声が上がることもあります。

そのような事態を招かないためにも精度の高い長期修繕計画が必要なのです。

管理会社によっては、長期修繕計画における工事費用を高めに設定している会社があるようです。

「うちのマンションは本当に値上げをしないといけないのか?」「いつのタイミングでどのくらい足らないのか?」を正確に把握するために、大規模修繕工事を商売の機会と捉えていない第三者機関に長期修繕計画を作成してみてもらうのも一つの方法です

2. どのタイミングを目指していつから修繕積立金を値上げするかを決める

長期修繕計画に基づき、資金状況の把握ができたあとは、どのタイミングでいくら足りないのかが明確になってきます。

そのタイミングによって、いつから値上げを始めるのかを検討します

例えば、このままだと10年後に資金が不足してしまうことが分かっている場合、早い段階から値上げしていくのと、不足する10年後の数年前から値上げをするのとでは、当然ながら値上げ幅が異なります。

前者は値上げ幅を抑えられるため、賛同を得やすいという点がある一方で、問題を先送りしたがる性格の方たちから反対される可能性があります。

逆に後者は、値上げ幅がきつくなるため、その点で反対意見が増える可能性があります。

しかし3年後にはすでにお金がないという状況です。
先送りできない問題としてとらえ、意思決定がしやすくなるという特徴があります。

これはどちらが正解でどちらかが不正解という話ではありません。
管理組合員の総意によって決めていくべきものです。

よって管理組合内でアンケートを実施し、どちらを希望する声が多いのかを把握することが重要です。

3. 修繕積立金の値上げに関するアンケートを実施する

区分所有者向けに値上げに関するアンケートを実施します。
このアンケートはあくまでも修繕積立金の負担義務を負っている区分所有者向けにするものであるため、賃貸で住んでいる居住者に実施する必要はありません。

アンケートには、先ほど触れたように値上げパターンを複数案用意して、どの方法が良いと思うかをたずねるようにします。

また、判断に迷う方も一定数いらっしゃるため、理事会が推奨する案というのを事前に取り決め、それを示してあげるのも有効です

4. アンケート結果をまとめ、理事会としての方針を決定する

基本的にはアンケートで最も意見の多かった案を採用する方向で検討を進めます。
アンケートで出された質問や意見については、なるべく回答できるようにしておきましょう。

5. 理事会の方針及びアンケート結果を広報して説明会を開催する

アンケート→説明会→総会という進め方はとても丁寧ですが、分譲時から段階増額方式を採用していて、管理組合員の大半の方は値上げすることを理解している、という場合や、値上げに反対する意見が少なそうな場合は、説明会を割愛して、アンケート結果や、あがった意見や質問に対する回答を配付するだけという進め方でも問題ありません。

6. 総会を開催して修繕積立金の値上げを決議する

総会に提出する議案には値上げが必要な理由や、理事会として検討してきた内容、アンケート結果などを確認できるようにこれまでの経緯を記載した方が良いでしょう。

ここでもう一度、いきなり総会に上程した場合に予想される反対意見を振り返ってみましょう。

【予想される反対意見】

  • 事前の告知や説明会を行うべきではないか
  • 理事会としてちゃんと検討をしたのか、検討が足らないのではないか
  • 高齢のため、そのような金額は払えない
  • 他のマンションはこんなに高くないと聞いている
  • 値上げしなくても都度工事費を抑えていけばやってよいのでは

丁寧に合意形成までの道のりを進めることによって、このような反対意見は出しづらくなります
また、反対意見が出たとしても過半数の賛成があれば、反対者も賛成意見に従わざるを得なくなるでしょう。

一番避けなければならないのは、声の大きい批判者に引っ張られて中立的な立場の人たちが賛成しづらくなり、総会で承認を得られないという事態です。

管理体制を見直して値上げしない工夫も必要

ここまでは、あくまでも「修繕積立金の不足が明確になり、値上げが必要」と判断された場合を想定してお話を進めてきました。

そのような状況においても、値上げを回避できる方法があるのです。

それは、管理費会計の支出を見直し、削減できた分を修繕積立金会計にあてるという方法です。

弊社が提供するマンション管理支援アプリ「クラセル」を活用すると、平均で19%のコスト削減が可能という実績があります。
あくまでも、最大で19%ではなく、平均で19%です。

とあるマンションの例ですと、総戸数48戸のマンションで年間約120万円の削減ができました
この浮いたお金を修繕積立金に充当すれば修繕積立金の値上げを回避できるかもしれせん。

仮に値上げの回避が出来なくても、値上げ幅を低減することは可能でしょう。

ご興味ございましたら、下記のフォームからお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

今回は、修繕積立金の値上げが必要なマンションにおける総会手続きまでの取り進め方がテーマでした。

国土交通省が実施しているマンション総合調査(平成30年度)によると、修繕積立金が不足している、と回答したマンションの割合が34.8%となっており、5年前の調査時点から約2倍に増加しているそうです。

工事費の高騰や、築古マンションの増加などにより今後、値上げが必要なマンションの割合はますます増えていく可能性があります。

できれば値上げは回避したいところですが、最悪なのは、値上げが必要な状況なのに、値上げができない状態です。
将来修繕が必要な時期に資金が不足し、工事ができないと、マンションが老朽化し、ボロボロになってきてしまいます。

住民の生活に支障をきたしたり、住んでいる人や近隣住民の身を危険な状態にさらしてしまったりする可能性もありますし、マンションの資産価値もどんどん下がってしまいます。

こういった事態を避けるために、値上げが必要な場合はきちんと検討を重ね、トラブルのないよう合意形成ができるように進めていくことが望ましいですね。

関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?

関連する記事

人気記事ランキング