大規模修繕の補助金・助成金制度は?予算不足対策に役立つ制度をご紹介

10数年に一度実施する大規模修繕工事では、膨大な費用が発生します。

工事費用が想定以上にかかると、将来の工事費用が不足し、修繕積立金の値上げが必要となるケースも決して珍しくありません。

このような状況を回避するために検討したいのが、補助金や助成金です。

今回のコラムでは大規模修繕工事の際に受けられる可能性のある補助金・助成金制度について解説します。

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マンション大規模修繕の補助金・助成金とは?

補助金や助成金は、一定の条件を満たすことで支給されるお金です。自身のマンションがその条件に当てはまる場合は、積極的に活用することをおすすめします。

補助金と助成金の違いとは?

補助金制度と助成金制度は似た制度ですが、意味合いが少し異なります。

この違いを知らないと「もらえると思って準備していたのに、認可が下りなかった」という事態に陥りかねません。

そのリスクを回避するためにも、まずは補助金制度と助成金制度の違いを把握しましょう。

①補助金の意味

補助金とは、一定の条件を満たした応募者の中から審査を経て選ばれた一部の申請者に支給されるものを指します。つまり、条件を全てクリアしていたとしても、必ずしも補助金が給付されるとは限りません。

大規模修繕工事に関連する給付金制度には「熱エネルギー有効活用支援補助金(宮城県)」や「分譲集合住宅計画修繕調査費補助金(千葉県浦安市)」などが挙げられます。

②助成金

一方、助成金は、各制度に設定された条件を満たしていれば基本的に給付されるものを指します。

例えば「エコ住宅普及促進費用助成金(東京都)」や「マンション劣化診断調査費用助成(東京都北区)」などは、定められた条件を全てクリアしていれば支給されます。

大規模修繕の補助金・助成金制度の例

具体的な補助金・助成金制度をいくつか紹介します。

①アスベスト除去等事業補助金

大規模修繕工事の補助金・助成金制度の中でも特に多く見受けられるのが、アスベスト除去に関するものです。

アスベストが健康に悪影響を及ぼすことが判明して以来、地方自治体が市民の安全・安心を確保するため、また新たなアスベストによる被害を防ぐための支援を行っています。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
民間建築物吹付けアスベスト除去等事業補助金(宮城県仙台市)吹付けアスベスト等の分析調査や除去工事等を行う場合の補助
民間建築物のアスベスト除去等に対する補助制度(埼玉県)民間建築物に施工された吹付けアスベスト除去等に対する補助や融資
アスベスト(石綿)飛散防止対策(山梨県)吹付アスベスト等の除去等工事に対する補助制度がある市町村に補助

②劣化診断補助事業

大規模修繕工事の実施前には、通常はマンションの劣化診断を行います(建物診断とも呼ばれます)。

劣化診断によって建物の劣化状態を把握し、その後の工事の範囲や仕様を決定するための重要な判断材料となります。

この劣化診断費用を補助する地方自治体は多く存在します。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
マンション劣化調査診断費補助事業(兵庫県神戸市)分譲マンションの劣化調査診断を実施する際の費用を補助
マンション劣化診断調査費助成(東京都千代田区)劣化診断調査費の助成(調査とあわせて国土交通省のガイドラインに基づき長期修繕計画の作成、見直しを行う場合は、その費用についても助成)

③防災対策整備費補助金

地震などの大規模災害や特殊災害、増加する救急需要に適切に対応し、住民の安心・安全を確保するために、地方公共団体が整備する消防防災施設に対する補助金です。

特に重要な耐震性貯水槽や消防指令センターの整備を国として促進するためのものです。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
マンション防災マニュアル作成支援専門家派遣事業(宮城県仙台市)マンションの防災活動の促進を図るため、防災マニュアル作成に取り組む管理組合等を支援するため専門家を派遣
分譲集合住宅のエレベーター防災対策整備費補助金(千葉県浦安市)分譲集合住宅に設置されているエレベーターの防災対策整備に要した経費を補助
分譲マンション共用部分改修費用助成制度(東京都中央区)分譲マンション管理組合による適切な維持管理や防災対策を推進するため、共用部分の修繕工事や防災対策工事を行う場合に、設計費用や工事費用を助成

④共用部分改修費用補助・助成制度

マンションの共用部分を対象に、修繕工事や防災対策工事などの設計費用や工事費用を支給する制度です。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
分譲マンション共用部分改修費用助成制度(東京都中央区)分譲マンション管理組合による適切な維持管理や防災対策を推進するため、共用部分の修繕工事や防災対策工事を行う場合に、設計費用や工事費用を助成
分譲マンション共用部分リフォーム融資の債務保証料助成(東京都港区)管理組合が、住宅金融支援機構の融資を利用して行うマンション共用部分の修繕工事に対し、(公財)マンション管理センターの債務保証料を助成
人生いきいき住宅助成事業(兵庫県神河町)共用部分のバリアフリー化工事費の一部を助成

⑤分譲マンション計画修繕調査支援制度

分譲マンションの計画的な修繕を促進するため、長期修繕計画の見直しや建物劣化診断などに関わる調査費用の一部を補助する制度です。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
分譲マンション計画修繕調査支援制度(東京都墨田区)共用部に関する調査費用の一部を補助
分譲マンション計画修繕調査費助成(東京都中央区)分譲マンションの管理組合が、大規模修繕を計画的に取り組むため専門調査業者に委託した場合の、調査費の一部を予算の範囲内で助成

⑥マンション耐震診断助成制度

安全で災害に強いまちづくりを推進するため、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)で建設された分譲マンションの耐震診断費用の一部を補助する制度です。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
分譲マンション耐震診断補助制度(千葉県千葉市)旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)で建設された分譲マンションの耐震診断費用の3分の2を補助
マンション耐震診断助成事業(千葉県船橋市)同上

⑦バリアフリー整備助成制度

マンションの共用部分をバリアフリー化する工事を行う場合に、費用の一部を助成する制度です。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
マンション共用部分バリアフリー化支援助成制度(東京都台東区)マンションの共用部分、又は敷地内における以下のバリアフリー化工事に対し助成金を支給
(1)段差の解消(スロープの設置)
(2)手すりの取り付け(廊下・階段・エレベーター内等)
分譲マンション共用部分バリアフリー化等支援事業(千葉県船橋市)下記工事を行う際に、工事費用の3分の1、又は助成の対象となる分譲マンションの専有部分(店舗・事務所等の用に供している部分を除く)の戸数に2万円を乗じた額のいずれか低い額を助成(上限60万円)
 
・手すりの設置
・スロープの設置
・床のノンスリップ化
・点字ブロックの設置
・通路・開口部の拡幅又は改修
・エレベーターの設置等
・断熱改修
・椅子式階段昇降機の設置

⑧屋上・壁面緑化助成

屋上や壁面の緑化工事を行う場合の費用の一部を助成する制度です。

補助金や助成金のある地方自治体の例

制度内容
屋上壁面緑化助成事業(千葉県千葉市)緑の少ない中心市街地の緑化を推進するにあたり、対象となる範囲において、建築物の屋上及び壁面の緑化に要する費用の一部を助成
屋上・壁面緑化助成(東京都杉並区)新たに、屋上・壁面緑化をする方に対して緑化工事費の一部を助成

大規模修繕の補助金・助成金以外の支援制度

大規模修繕関連以外では以下のような支援制度もあります。

①マンションアドバイザー派遣

マンションの適切な管理を推進することを目的に、専門知識を有するアドバイザーを派遣する制度です。

補助金や助成金を収受できるわけではありませんが、専門家のアドバイスを無料で受けられるため、有益です。

②マンション建て替え・改修アドバイザー制度

マンション建て替えや改修に関する知識や経験のあるアドバイザーが、情報提供やアドバイスを行い、マンションの建て替えや改修に向けた検討を支援する制度です。

建て替えを検討する段階が近づいている築古マンションの方にとっては、勉強の意味でも有益な制度です。

大規模修繕の補助金・助成金を見つける方法

大規模修繕工事の補助金・助成金の存在を知らずに工事を終えてしまったり、知った時には申請期限を逃してしまったりすることがよくあります。

では、どのようにして情報を入手すれば良いのでしょうか。

自治体のホームページを確認する

必ず実施した方が良いのは自治体のホームページを確認することです。

補助金・助成金制度が設けられている場合は、その情報はほぼ確実に自治体のホームページに掲載されています。

自治体のホームページでは常に最新情報がチェックできるので、最も確実な方法と言えるでしょう。

具体的な情報を調べる際は、インターネット検索で「東京都 〇〇区 大規模修繕 補助金」「大阪市 改修工事 助成金」といったキーワードを入力すると、関連ページが簡単に見つかります。

また、市役所や区役所の窓口に直接問い合わせてみるのも良いでしょう。

補助金・助成金制度の掲載サイトを利用する

自治体のホームページ以外にも、補助金・助成金制度を調べることができるサイトがいくつか存在します。

自治体のホームページで制度を見つけられない場合は、そのようなサイトを利用してみるのもおすすめです。

ただし、常に最新の情報が更新されているわけではないので注意が必要です。

申請期限がある制度の場合は特に、最新情報を確認することが重要です。

これらのサイトは制度を探す手段としては有効ですが、最終的にはやはり自治体のホームページを確認することが必要です。

大規模修繕の補助金・助成金に関するよくあるご質問

Q:マンションエレベーターのリニューアルに補助金はありますか。

A:例えば東京都千代田区の場合、以下のような制度があります。

【制度名】
安全・安心整備助成制度

【助成内容】
共用部分の「手すり設置」や「段差解消」等の安全・安心に資する工事を行う場合や、エレベーターの「地震時管制運転装置」・「戸開走行保護装置」の設置や「停電時自動着床装置」の設置を含むリニューアルにかかる費用の一部を助成しています。

さらに、共用部分に防犯カメラ等を設置・更新する場合に、その費用の一部を助成します。

【助成対象】
千代田区内の分譲マンション管理組合

【助成額】
・「手すり等の設置工事」等 上限100万円
・「地震時管制装置」・「戸開走行保護装置」の設置 それぞれ上限30万円
・「停電時自動着床装置」の設置を含むエレベーターのリニューアル 上限100万円
・防犯カメラ等防犯装置の設置(新設) 上限30万円
・防犯カメラ等防犯装置の増設・取替え 上限20万円

エレベーターのリニューアル工事の場合、最大で100万円の助成金を受けられます。

Q:補助金や助成金の申請手続きは大変ですか。管理組合のメンバーで対応可能でしょうか。

A:制度によって異なりますが、多くの場合、たくさんの提出書類が求められるようです。

以下は東京都が実施しているマンション改良工事助成金の場合の必要書類です。

  • マンション改良工事助成申込書
  • 委任状(管理組合員以外(管理会社、施工会社等)が申込書の連絡先になる場合)
  • 機構の「リフォーム融資借入申込書」の写し
  • 機構の「融資承認通知書」の写し
  • マンションの概要(平面図・立面図)及び修繕箇所を明示した設計図書の写し
  • 工事見積書又は工事請負契約書等に基づく請負代金内訳書の写し
  • マンション管理規約の写し
  • 長期修繕計画(工事周期表のみでなく、資金計画表(修繕積立金の額等の年度ごとの収入、支出が分かる表)を含む。)の写し及び総会の議事録の写し
  • 申込書に記載した修繕積立金の年間積立額の算出根拠が分かる書類
  • 過去に修繕工事を実施している場合は、修繕履歴を明記した書類の写し
  • 耐震診断の実施に係る契約書の写し
  • 耐震診断の結果の概要が分かる書類
  • 新築時の確認済証の写し、検査済証の写し又は建築確認台帳の記載事項証明書
  • 修正用封筒
  • 「交付決定通知」送付用封筒

かなり多岐にわたるため、全ての書類を揃えるのにそれなりの労力がかかりそうですね。

また、2つ目の項目に記載されている通り、管理会社や施工会社が委任を受けて書類を提出することも可能です。

関連記事:必要?大規模修繕工事コンサルタントの役割と選び方とは

まとめ

今回は大規模修繕工事に関する補助金と助成金がテーマでした。

今回紹介した制度以外にも太陽光発電機補助金やEV充電器設置に関する助成金など、自治体によってさまざまな制度があります。

大規模修繕工事には膨大な費用が発生します。少しでも費用を節約するために、まずは情報収集をしっかり行うことが重要です。

関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント

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