大規模修繕における管理会社のバックマージンについて。仕組み、予防策などを解説

マンションの大規模修繕工事は多額の費用が発生します。大規模修繕工事は10数年に一度実施されるので、管理組合としてはできる限り費用を抑えたいところです。

そこで重要になってくるのが、工事業者の選定です。

管理組合の方々は工事業者について詳しくないケースが多いため、管理会社に工事業者の紹介を依頼することがよくあります。

管理会社から紹介された複数社に相見積もりを依頼し、その中から最安値の業者を選択し、発注に至る。一見、自然な流れに見えますが、実はそこに不適切なバックマージンが発生していることもあるようです。

この話は以前、「不適切コンサルタント問題」として多くのメディアが取り上げました。

今回は、大規模修繕工事を適正価格で行うために気をつけるべき点などをご紹介します。

関連記事:大規模修繕を検討する段階から工事終わりまでの進め方を解説!

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大規模修繕では談合やバックマージンが横行している⁉︎

大規模修繕では談合やバックマージンが横行しているイメージ

バックマージンの仕組みや内容について説明する前に、まずは大規模修繕工事の方式について触れたいと思います。

大規模修繕工事の方式としては以下の3パターンがあります。

①責任施工方式
②設計監理方式
③CM(コンストラクション・マネジメント)方式

それぞれの方式の違いやメリット・デメリットについては今回のテーマとあまり関係がないため、説明は割愛します。

多く採用されるのが②の設計監理方式です。設計監理方式の場合、設計コンサルタントと呼ばれる専門家が関与することになります。

コンサルタントは発注者である管理組合の立場に立って大規模修繕を全般的にサポートするという役割が求められます。

その業務の一環として、工事業者を管理組合に紹介するケースが多く発生します。

「工事業者から提出された見積もりの金額には実は多額のバックマージンが含まれている」「紹介した業者同士が裏でいわゆる談合と呼ばれるような話し合いをして金額を決めている」という実態もあるようです。

このような不誠実なやり取りがどの程度行われているかは明確になっていません。

しかし、この問題は2017年ごろにテレビなどのメディアでも大きく取り上げられ、国土交通省が注意喚起をする事態にまで至りました。

数年が経過した現在では不適切コンサルタント自体は減少しているかもしれませんが、いまだに平然と不正が行われていたとしても決して不思議ではありません。

大規模修繕における談合、バックマージンの仕組みとは?

大規模修繕における談合、バックマージンの仕組みとは?のイメージ

では実際に、どのようにして談合やバックマージンが行われているのでしょうか。

さまざまなメディアが報道していた内容は以下の通りです。

①コンサルタントが格安な金額で業務を引き受ける

コンサルタントは仕事を請け負わないとのちのバックマージンの収受もできません。そのため、破格な値段でコンサルタント業務を引き受けるケースも多いようです。

②建物診断が完了し、見積もりを取得する

大まかな工事範囲が明確になってきた段階で、工事業者の見積もり取得へ移ります。その際、管理組合は大規模修繕工事業者の知り合いがいないことの方が多いため、コンサルタントに「おすすめの工事業者はいないか」と相談します(または、逆にコンサルタントの方から「おすすめの工事業者はこちらとこちらです」と紹介されます)。

そこで提出される見積もりには、あとでコンサルタントに支払われる多額の紹介料が含まれています。

また、例えばA社・B社・C社の3社の見積もりを取得した場合、コンサルタントから「今回はA社でいく」と指定され、B社・C社はA社の金額よりも高い金額を提出します(いわゆる談合状態)。

③A社への発注が決定するように働きかける

コンサルタントの本質は大規模修繕工事の専門家として管理組合にアドバイスすることです。その立場を利用して「この金額・内容であれば、私なら間違いなくA社を推奨します」とアドバイスします。一般的な知識しかない管理組合は、プロにそう言われると従うしかありません。

こうして、たくさんのマージンが含まれたA社の見積もりが総会で承認されるのです。

大規模修繕の談合やバックマージンを防ぐための対策

大規模修繕の談合やバックマージンを防ぐための対策のイメージ

不適切コンサルタントの手口はとても巧妙です。管理組合の方々が不正行為の証拠をつかむのは不可能と言って良いでしょう。

では、不適切コンサルタントの介入を回避するためにはどうしたら良いのでしょうか?

考えられる対策は以下の通りです。

①コンサルタント業務を発注する際に、誓約書の提出を求める。

「談合のあっせんやバックマージンの収受は行わない」という内容の誓約書の提出を求める方法です。しかし、不誠実な行為をしているコンサルタントにどこまで効果があるかは分かりません。

②コンサルタントが紹介してきた工事業者以外にも見積もりを依頼する。

悪徳なコンサルタントが関与している工事業者の見積もりは、基本的に相場よりかなり割高になります。

例えば、相場が5,000万円の大規模修繕工事であったと仮定しましょう。

また、コンサルタント経由でA社・B社・C社から見積もりを取得することになり、談合によってA社が受注するシナリオが組まれていたとします。

コンサルタントには10%~20%程度のキックバックが入ると一般的に言われています。そのため、A社によって5,500万円~6,000万円の見積もりが作成されることになります。

また、談合が行われていて、A社が受注できる確率が高いと考えられた場合、さらに高い見積もりが作成されることもあります。そうなると6,000万円~7,000万円の見積もりができあがります。

また、比較対象として提出される他社(B社・C社)はさらに高い8,000~9,000万円くらいの見積もりを提出します。

相場が5,000万円なのでどの会社の見積もりもかなり割高になりますが、管理組合の方々がそれを「高い」と判断するのは非常に困難です。そのため、用意された複数の見積もりの中から一番安いA社を選択してしまうことになります。

ここでおすすめなのが、コンサルタントと関係のないD社・E社から見積もりを取ることです。相場は5,000万円なので、A社よりも安い見積もりが提出される可能性が高いでしょう。

その結果、コンサルタントが悪徳だったかどうかが分かるかもしれません。しかし、注意点が1点あります。

悪徳なコンサルタントは管理組合がこのような動きをすることも想定して対応している場合もあるようです。具体的には、コンサルタントが実はD社・E社ともつながっていて、D社・E社にも高い見積もりを出すように要求するというパターンです。

この場合、管理組合は高い見積もりを見て、安心してA社への発注を決めるので、コンサルタントにとってますます都合が良いということになります。

そのため、管理組合が独自で見積もりを取得する場合は、コンサルタントと全く関係がない工事業者に依頼する必要があります。

しかし、コンサルタントと関係がない業者かどうかを判断する方法がないのが課題です。

③スマート修繕などの第三者サービスを活用する

DeNAグループが提供している「スマート修繕」というサービスをご存じでしょうか。

大規模修繕などの相見積もりやコンサルタント選定を支援するサービスです。

このサービスを活用する最大のメリットは大規模修繕工事費用を抑えられるということですが、同時に不適切コンサルタントを排除することが可能です。

例えば先ほどの例だと、コンサルタント紹介の工事業者の見積もりをスマート修繕でチェックしてもらうと、その見積もりが適正な金額かどうかを教えてくれます。

また、そもそも最初からスマート修繕にコンサルタントとして入ってもらうことで、不正が起きないようにできるというメリットもあります。

こちらの会社の社長は、かつて自宅マンションで理事長を務めた経験があるそうです。そのため、管理組合目線でのサービスを受けられることが期待できますし、ホームページ内で公正取引について宣言していますので安心感があります。

スマート修繕の詳細はこちら

大規模修繕工事の際は、このような第三者のサービスを活用するのも有効な方法です。

関連記事:マンション大規模修繕の相見積もりの取り方とは?注意点やポイントをご紹介

「談合かも」と思ったら第三者に相談!

「談合かも」と思ったら第三者に相談!

2017年ごろに不適切コンサルタント問題が話題となった際、国交省が以下の内容の通達を出しました。

3.相談窓口の活用

マンションの大規模修繕工事等に関する、管理組合や区分所有者の皆様のご疑問やご相談については、下記の相談窓口において、建築士等によるアドバイスを行っています。

設計コンサルタントを活用した設計監理方式を採用する際の留意点や参考となる取組事例の紹介等を行うこととしています。これらの相談窓口を有効活用しつつ、マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持向上にも資する大規模修繕工事等の実施に努めていただきたいと考えております。

<相談窓口>
○(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
○(公財)マンション管理センター

設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)より

少しでも違和感を覚えたら、このような相談窓口を活用するのも良いでしょう。

まとめ

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大規模修繕工事はとても高額な費用が発生します。

ただでさえ工事費用が値上がりしているのに、払う必要のないバックマージンはなんとしても回避したいところですよね。

「気がついたら悪徳コンサルタントのカモになっていた」という事態を避けるには、管理組合の方々が管理会社任せにせず当事者意識を持って対応することが重要です。

また、スマート修繕のような第三者サービスを有効活用して取り組まれることをおすすめします。

関連記事:マンションの大規模修繕で注意すべきことは?費用・周期・時期について

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