管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
最近よく耳にするのは、管理会社から管理委託費の値上げを要請されるケースです。
人件費の高騰や外注費の上昇によるものなので、仕方ないかと思う反面「理由はどうあれ、嫌なものは嫌だ」と思っている方も多いのではないでしょうか?
今回は、管理費の値上げが必要となる要因や、値上げを回避するための対策など、管理組合役員の方必見の情報をお伝えしていきますのでぜひ最後までお読み下さい。
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INDEX
そもそも管理費とは

「まだマンションを購入したばかりで、管理組合のことや管理会社の役割などあまりよく分からない」
そういった方向けにまずは基礎的な情報を確認していきましょう。
ベテランの役員さんは飛ばして読んでいただいて結構です。
管理費は、マンションの共用部分の維持管理費に使われるお金です。
清掃や設備点検の費用、共用部分の水光熱費、火災保険料、日常的な修繕費用などに充てられます。
近いイメージとしては、一般家庭でいうところの生活費でしょうか。
マンション全体で必要となる費用を算出し、所有している部屋の広さに応じて各区分所有者が負担するのが一般的です。
管理費と同じように徴収される「修繕積立金」
各区分所有者から徴収するお金には管理費以外に「修繕積立金」があります。
修繕積立金は、十数年ごとに行われる大規模修繕工事のために積み立てられているお金です。
一般家庭でいうところの、将来を見据えた貯金といったところでしょうか。
劣化した共用部分の修繕や、資産価値を高めるための改修工事に使われます。
大規模修繕工事は長期修繕計画に基づいて行われるため、修繕積立金も長期修繕計画に基づいて積み立てられます。
関連記事:マンション大規模修繕とは?その費用や目安について解説!
管理費の値上げはなにが原因で起こるのか

管理費の値上げが必要となる場合、考えられる要因は以下の通りです。
- 管理会社から管理委託費用の値上げ要請があった
・管理員の採用難・人件費上昇
・再委託先からの値上げ要請
・今までの管理委託費が安すぎた
・管理会社の人手不足
・管理会社だって営利企業である
- 電気代や火災保険料の値上がりがあった
- 駐車場の空きが増え、管理費収入が減ってしまった
- 消費税の増税
- 管理費滞納者の増加
詳しく見ていきましょう。
管理会社から管理委託費の値上げ要請があった

管理費値上げの理由として圧倒的に多いのは管理会社からの要請によるものです。
管理会社にすべての業務を委託しているマンションの場合、管理費会計全体の支出において70%〜80%を占めていると言われているのが、管理会社への支出です。
支出の大半を占めているものの値上げ要請が、どれくらい大きな影響を与えることになるかは想像に難くありませんね。
なぜ管理会社が管理委託費の値上げを要請するのか。
その原因を深堀りしていくと、さらにいくつかの理由に細かく分類されます。
1:管理員の採用難・人件費上昇
管理員は通常、管理会社の従業員として派遣されます。
しかし、この管理員の採用に苦戦するケースが最近ではかなり増えてきているようです。
かつては、一般企業を定年退職したあとのセカンドライフとして管理員を選択する方が多くいました。
60歳で定年退職するのが一般的だった頃。
その当時は60歳~65歳まで管理員の仕事に就く方が多かったわけですが、定年が65歳まで延長になったり、再雇用制度が導入されたりしたことで管理員の仕事に就こうとする方が減ってしまったと言われています。
色んな管理会社の方から話を聞く限りでは、管理員のなり手不足問題は結構深刻なようです。
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高齢者の働き口増加について

高齢者の働き口が昔と比べて増えたのも、管理員の採用難につながっています。
管理員の採用がしづらくなると、人材確保・定着などのため管理会社は時給を上げる必要があります。
また、募集広告の費用など採用のためのコストも膨らむ一方です。
管理員のお給料はもちろん管理会社から支払われています。
しかし、その源は区分所有者から徴収する管理費です。
管理会社側で管理員の採用が滞ると、管理費が上がる要因につながってしまいます。
昨今の最低賃金の引き上げも原因の一つとして考えられるでしょう。
我が国の最低賃金は全国平均で毎年約3%ずつ上がり続けており、今後も増加していくことが予想されます。
底上げされる最低賃金に伴い、管理員の人件費も値上げするのが当然です。
こういった事情もあり、管理会社からの値上げ要請は今後も続いていくと考えられるでしょう。
2:再委託先からの値上げ要請

管理会社は、管理員業務以外のほとんどを外部の業者に再委託しています。
実は、再委託先企業による発注金額の値上げがここ数年活発に行われているのです。
マンションの管理業務は清掃や設備の点検作業、修繕など、ほとんどが人の手によるもので、ロボットやAIに置き換えられるものではありません。
逆を言えば、こういった仕事は人手不足の影響を受けやすいのです。
人手不足を解消するために、再委託先企業は給料をアップして採用者を募ります。
採用するためのコストも膨らむばかりでしょう。
再委託先企業は発注金額を値上げすることで、これらをカバーしているのです。
再委託先企業の発注金額が値上がりしている背景には、人手不足が関係しています。
管理員の採用難のお話と同じですね。
3:今までの管理委託費が安すぎた

3つ目の理由として、相当安く設定していた管理委託費を適正価格に戻すために値上げをする、ということが考えられます。
管理会社を変更して自社の管理に切り替えてもらういわゆる「リプレイス営業」は今も行われている営業ですが、昔はもっと盛んに行われていました。
自社に委託先を変更してもらうため、とても安い金額で管理委託を提案するという会社が多かったのです。
一方、別の管理会社は競合にお客さんを持っていかれるわけにはいかないので、競合よりさらに安価に設定しなければなりませんでした。
「管理組合の方が、費用の安い管理会社に見積もりを依頼する」
⇒ 「今よりもかなり管理費用が下がる見積もりを入手する」
⇒ 「それを材料に現在の管理会社と交渉する」
⇒ 「現在の管理会社は管理を打ち切られないようにするため、大幅に管理委託費を減額する」
このような負のスパイラルが実際に起こってしまっていたのです。
当時このスパイラルに巻き込まれていた会社は、相場よりもかなり安い価格設定になっています。
その金額を適正価格に引き戻すために、費用の値上げを行なっているというわけです。
4:管理会社の人手不足

ここ数年でよく耳にするのが、管理会社の方から管理業務を打ち切られてしまうケースです。
こういったマンションでは別の管理会社に委託するケースが多いのですが、管理会社を変更した結果、元の会社と比べて管理委託費が高額になる場合がほとんどのようです。(なかには管理会社が見つからず、自主管理に移行する例もあるようです)
これも最近増えている「管理委託費の値上げ」のパターンのひとつです。
人手不足があまりにも進行してしまい「今いるメンバーで全部回せない!」となってしまえば、管理会社は契約先を切る(契約の解約または、契約更新の拒否)という選択肢も視野に入れ始めます。
たとえばある管理会社に、一人で10棟のマンションを担当するフロントマンが5人いたとしましょう。
つまり会社全体で50棟のマンションを管理している状況です。
この状況で一人フロントマンが辞めてしまったら?
残りの4人で辞めたフロントマンの10棟分の業務を割り振ることになります。
つまり一人で12~13棟を担当することになります。
担当数が2~3棟増えるくらい大したことないでしょう、と感じるかも知れませんが、業務量としては1.2倍~1.3倍になるので人によってはかなりの負担に感じることも。
では、欠員を補充する前にもう一人辞めてしまったら?
一人で16~17棟担当することになるので、残業が増えたり休日が取りづらくなったりと、労務環境が悪化することが考えられます。
また、顧客対応も十分にできず、ミスが増えたり、対応が遅くなることでお客様からクレームが入ることも考えられます。
そうなると「もうこの仕事辞めたい」と考える人も出てきます。いまはあらゆる産業が人手不足ですから、割と転職がしやすい状況です。そうなると管理会社はさらに欠員へ・・・
まさに負のスパイラルです。
このレベルになると、管理会社は残っている社員の労務環境を守るために、一部のマンションとの管理委託契約を打ち切っていくしかありません。
契約を打ち切られたマンションは、場合によっては以前の契約会社よりも管理委託費を高額に設定している会社と契約することになるかもしれません。
5:管理会社だって営利企業である

管理会社も営利企業です。
利益を追い求める企業として、利益を増やし続けることが求められます。
管理するマンションを増やすことができないのであれば、一つ一つのマンションから得られる収益を増やしていくしかありません。
従業員の賃金も上げていきたいと考える経営者も多くいらっしゃるでしょう。
こういう事情で、単純に管理委託費の値上げを要請するという動きにつながっていく場合もあるのです。
電気代や火災保険料の値上がり

電気代の上昇については、痛感しているご家庭も多いでしょう。
2022年10月、過去最大規模の火災保険料の値上げがありました。
これは、自然災害の発生や築古住宅の増加に伴い、保険金の支払いも増加してきたことが原因と言われています。
駐車場の空きが増え、管理費収入が減ってしまった
こちらもよくありがちなお話です。
マンション購入時は埋まっていた駐車場も、今では空きが目立つというケースもあります。
年齢を重ねていくなかで、車を手放す方が出てくるためです。
また、機械式駐車場の場合あまり車高が高い車は入りません。
居住者の所有する車と駐車場がマッチせず、使ってもらえないということも。
管理費会計は、ある程度駐車場が埋まっている前提で収支を見込んでいます。
空き区画が増えてしまうと支出をまかなうことができなくなり、管理費の値上げにつながるケースがあるのです。
消費税の増税

管理会社や修繕業者など、管理業務の発注先はたいてい課税業者です。
そのため、管理組合も消費税の増税の影響を受けます。
こればかりは仕方ありませんね。
管理費滞納者の増加

費用の滞納者が増えてしまうと収入が減り、支出をまかなうことができなくなります。
滞納が長期化した場合は最終的に競売へかけ、競落した人から滞納分の管理費を回収することが可能でしょう。
しかし、回収するまでの支出をまかなうために管理費の値上げが必要な場合があります。
関連記事:マンションの管理費を払わない人への対処法や予防策を徹底解説!法的措置に関する注意点も
管理費の改定をするためには総会の決議が必要

管理費の値上げが必要だと判明したあと、誰がどのようにして改定の手続きを進めていくのでしょうか?
たまに「管理費の金額は管理会社が決めている」と認識されている方がいらっしゃいますが、これは誤った認識です。
管理費の金額は管理組合の総会で決定されます。(ただし、標準管理規約と異なる取り決めをしている場合はその限りではありません)
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
マンション標準管理規約(議決事項)
六 管理費等及び利用料の額並びに賦課徴収方法
関連記事:マンションの管理組合総会の進め方とは?総会の疑問を解消
関連記事:マンションの臨時総会とはどのタイミングで開くもの?通常総会の違いなども解説
管理費の値上げを回避するためにできること

管理費の値上げを回避するためできることは以下の通りです。
- 管理業務の仕様を見直す
- 管理業務の発注先を変更する
- 管理会社に委託している業務の一部を自主管理に切り替える
- 管理会社を変更する
- 電力会社を変更する
- 空いている駐車場を外部者に貸し出す
- マンションの空きスペースを有効活用する
順番にみていきましょう。
管理業務の仕様を見直す
管理業務の仕様というのは、管理員の勤務時間や清掃などの各種作業の頻度のことです。
たとえば管理員が週に5日勤務である場合。
半分の勤務日数にしてもらえば、その分管理費用は安くなります。
管理員が不在の日が増え、住民の方にとっては不都合かもしれません。
しかし管理費の値上げよりはこっちが良い、という意見が多ければ仕方ないと言えるでしょう。
清掃も同じです。
毎日清掃してくれると気持ちよく、快適に生活ができます。
しかし、費用を削減するために2~3日に一度に減らしても良いかもしれませんね。
消防設備など、法律で定められているものの点検頻度を下げることはNGですが、宅配ボックスや自動ドアの点検などを見直してみるのは一つの手として挙げられます。
関連記事:マンションの設備点検とは?業者の選び方や相場などを解説
管理業務の発注先を変更する

管理会社ではなく、専門業者に直接頼むことで管理費用を抑えることができるかもしれません。
多くの管理会社は清掃業務や点検業務などを下請企業に再委託しています。
つまり、管理会社の利益と専門業者の利益の二重利益状態になっているのです。
直接専門業者に発注することで管理会社の利益分が浮くことになります。
また、既に直接専門業者に発注しているという場合でも、業者を変更することで費用が下がる場合があるため、定期的に見直すのがおすすめです。
委託している業務の一部を自主管理に切り替える
管理会社に委託している業務のうちの一部を自主管理に切り替える方法です。
たとえば理事会・総会業務などは自分たちで行うというマンションの例も割と多く見受けられます。
管理会社への委託費用が削減できるメリットはありますが、管理組合の役員の負担が増すというデメリットがあります。
管理会社を変更する

いわゆる管理会社のリプレイスです。
ある意味これが一番手っ取り早い選択肢かもしれませんね。
管理会社ごとに利益率は大きく異なるので、管理会社を変更することで費用の大幅ダウンが見込めるでしょう。
たまに、管理会社を変更すること自体に不安感を抱く方がいます。
しかし、管理会社の変更は割と多くのマンションで行われていることなので、特に気負うこともありません。
リプレイスに慣れている会社であればたいていの場合、特段大きな問題も生じていないようです。
関連記事:【管理組合役員は必見】管理会社の変更手順とその注意点
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電力会社を変更する

電力自由化によって電力会社を自由に切り替えられるようになりました。
昨今は電気代自体が非常に高騰しているので、切り替えによる大幅な費用削減は見込めないかもしれません……。
しかし、確認してみて損をすることはないため、自由化以降一度も電力会社の見直しをしたことがないマンションの方は、ぜひ検討してみることをおすすめします。
空いている駐車場を外部者に貸し出す

近隣の月極駐車場の数が不足している場合や、マンションの方が相場より安い場合などは有効な選択肢かもしれません。
また、空き区画を一括で借り上げる、いわゆるサブリースをしてくれる会社もいくつかあります。そういった企業に相談するのも有効な選択肢でしょう。
ただし、収入が増えるというメリットがある一方で、以下のようなデメリットもありますので注意が必要です。
- 外部者に貸し出すと、収益事業とみなされ、課税対象となる
- 外部の方がマンションの敷地内に出入りすることになり、セキュリティ面で不安視される方もいる
こういったデメリットがあることも踏まえ、どう対処していくべきかも含めて検討していくのがベストな形でしょう。
関連記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説
マンションの空きスペースを有効活用する
少し前だと、携帯電話会社の基地局設置などが代表例でした。
屋上などに携帯電話会社の設備を設置させてあげる代わりに使用料をもらえていました。
他にも自動販売機を空きスペースに設置し、売り上げに応じて手数料を収受したり、最近では、シェアサイクルのスペースを貸し出したりする例も見られます。
これも収入が増えるメリットがある一方で、収益事業とみなされるデメリットがあるため確認が必要です。
値上げを回避するときの注意点

値上げ回避を検討する際、念頭に置いておく必要があるのは「管理組合としての総意はなにか」という点です。
値上げをしたくないという思いは、区分所有者ほぼ全員の共通した考えだと思いますが「どれくらいそう思っているのか」は個人差があります。
「値上げを回避するためならとにかく安い会社に切り替えるべき」と考える人や「値上げ回避のために管理会社を変更するくらいなら、値上げを受け入れる」と考える人も中にはいるでしょう。
言うまでもありませんが、管理組合には色んな方々がいらっしゃいます。
一人一人価値観や生活が違うので、重きを置く部分が異なることもあるでしょう。
管理組合内における意見の最終決定は多数決です。
重要な意思決定は全て総会の決議によって確定するので、多数決の原則に従って判断していかなければなりません。
そのため管理会社の変更など、重要な事項の検討を理事会の意見だけで推し進めることは控えましょう。
区分所有者全員に対するアンケートを取るなど、管理組合の総意を確認しながら進めていくことが大切です。
まとめ

昨今、多くのマンションで起きている管理費の値上げ。
それを回避するには、いくつかの対応策が考えられますが、共通して言えることは「役員の方々が当事者意識を持って進めていくしかない」ということです。
値上げを回避するためには、管理費会計の収支状況をしっかりと把握し、余裕のあるうちから早めにコスト削減への取り組みに着手することも重要です。
ある程度剰余金が出るような計画になっていれば、突発的なコストアップが発生しても管理費の値上げは避けられます。
しかし「どの部分を削れば、費用削減につながるのか」と自分たちですべて考えるのはちょっと難しいかも、と感じる管理組合も少なくないでしょう。
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