マンションの管理組合総会の進め方とは?総会の疑問を解消
管理組合の理事長に就任し、マンションの総会で議長を務めることになったものの具体的にどのように進めたらよいのか、迷う方もいるでしょう。
今回は管理組合の総会について解説していきます。
自主管理のマンションの方も、管理会社に委託しているマンションの方も、どちらの方にとっても参考になると思いますのでぜひ最後までお読み下さい。
INDEX
なぜ総会を開かないといけないのか

そもそも総会って、なぜ開かないといけないのでしょうか?
理事長が総会好きだから開いているわけではありません。
区分所有法とマンション管理規約に「総会を開催すること」に関する記述があるためです。
区分所有法に関しては義務違反をしてしまうと罰則が課せられるものもあります。。
まずはそれぞれの記述を確認していきましょう。
区分所有法での記述
区分所有法には次のような記載があります。
第三十四条 集会は、管理者が招集する。
区分所有法:集会の招集
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
ちなみに、区分所有法では「総会」ではなく「集会」と表現されます。
「管理者」とは理事長のこと。
つまり、理事長は少なくも年に1回は総会を招集しなければならない、とされているのです。
同じく区分所有法において、総会の場で事務に関する報告をすることが義務づけられています。
第四十三条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
区分所有法:事務の報告
つまり、区分所有法において理事長は「毎年1回は必ず総会を招集し、その中で事務の報告をしなければならない」と明記されているため、定期的に総会を開催しているのです。
標準管理規約での記述
標準管理規約には以下の記載があります。
第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
標準管理規約:総会
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。
標準管理規約では区分所有法にはなかった開催時期に関する記載もあります。
標準管理規約に沿った管理規約を制定しているマンションの場合だと、管理組合の決算が3月末だった場合、5月末までに総会を開催しなければならない、というわけです。
総会の進め方

マンションによって異なりますが、一般的な総会の進行は以下のようになります。
- 理事長あいさつ
- 議事録署名人選出
- 議案審議
- 閉会のことば
それぞれどのような進行がなされているのか、一例を確認してみましょう。
1. 理事長あいさつ
私、当管理組合の理事長をしております○○号室の○○○○○です。
管理規約第○○条の規定により、本日の議長を努めさせていただきます。
本日はご多用のところ、出席いただきありがとうございました。
定刻となりましたので、○○管理組合の第○○回通常総会を開催します。
当管理組合の事業年度末○月○○日現在における組合員数は、○名および議決権総数は○となっております。
本日出席の組合員数は本人出席が○名、委任状(代理人)による出席が○名、議決権行使書による出席が○名の合計○○名です。
本日出席の議決権数は本人出席が○、委任状(代理人)による出席が○、議決権行使書による出席が○の合計○○となっております。
議決権総数の半数以上の方が出席しており、規約第○○条○○項の規定に基づき、本総会は有効に成立しましたことをご報告申し上げます。
2. 議事録署名人選出
本総会の議事の結果を議事録に記録するため、議事録を確認していただく方をお二人選ばなければなりません。
どなたか議事録署名人になっていただけませんでしょうか。
しばらく待って、どなたも名乗り出なかった場合
もし、いらっしゃらないようでしたら○○号室の○○さん、○○号室の○○さんを指名させていただきますがよろしいでしょうか。
※区分所有法及び規約の定めにより、議事録には議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員の署名が必要です。
3. 議案審議

それでは、議案審議に入らせていただきます。
第一号議案「○○年度事業報告」に関しましてご説明します。
~事業報告~
以上で「○○年度事業報告」を終わります。
続きまして第二号議案「○○年度収支決算報告」につきましてご説明します。
決算報告
~決算報告中~
(報告終了)
以上で「○○年度収支決算報告」を終わります。
続きまして監査報告をお願いいたします。
監査報告
~監事による監査報告中~
(報告終了)
ありがとうございました。
それでは第一号議案及び第二号議案につきまして、ご質問をお受けいたします。
質疑応答
ご質問がある方は、挙手をお願いいたします。
~質疑応答中~
(質疑応答終了)
それでは、十分審議を尽くしましたので、これをもって質問を終了し、議案の採決に移らせていただきます。
第一号議案「○○年度事業報告」及び第二号議案「○○年度収支決算報告」承認の件を採決いたします。
挙手のカウント
本議案について承認される方は、挙手をお願いいたします。
~挙手をカウント~
(カウント終了)
ありがとうございました。
事前にご提出頂いた議決権行使書及び委任状による賛成を合わせ、賛成票が過半数に達しましたので、本議案は原案どおり承認可決されました。
続きまして、第三号議案の審議に入らせていただきます。
第三号議案の審議
第三号議案「○○の件」は総会議案書の○ページに提案理由が記載されています。
要点のみ、ご説明させていただきます。
~以下は第一号議案・第二号議案と同じ流れ~
4. 閉会のことば
以上をもちまして、本日の会議の目的事項はすべて終了いたしました。
本総会はこれをもちまして閉会といたします。
ありがとうございました。
大まかな流れはこのような感じです。
管理委託会社が総会を進めてくれる?

「うちのマンションって管理会社に全部管理してもらっているのだけど、総会は管理会社が進めてくれるんでしょ?」
たまにこのようなお声をお聞きします。
確かに管理会社がいるマンションの場合、総会運営の支援はしてくれます(管理委託契約の内容にもよります)。
しかし、あくまでも「支援」です。
標準管理委託契約書では、管理会社が行う業務の範囲について以下のように書かれています。
一 甲の総会の開催日程等の調整
総会支援業務
二 甲の次年度の事業計画案の素案の作成
三 総会会場の手配、招集通知及び議案書の配付
四 組合員の出欠の集計等
五 甲の求めに応じた総会議事に係る助言
六 総会議事録案の作成
総会を開催するための準備や、当日のサポート、議事録の作成などは管理会社の業務範囲ですが、当日の進行に関する記載はありません。
あくまでも総会の進行は管理組合が主体で行うべきものなのです。
総会に関するQ&A

この章では総会に関するよくあるご質問を紹介します。
Q:必ず総会で決議しなければならない議案とは?
本題へ入る前に、普通決議と特別決議について触れておきます。
この部分をごちゃ混ぜに理解してしまっていると、大きな食い違いなどが生まれてしまうかもしれませんから。
しっかりと理解しておきましょう。
普通決議 | 特別決議 | |
---|---|---|
決議する内容 | 日常の管理運営に関する決議 | 区分所有者に大きな影響を与える重要事項を決定する決議 |
決議要件 | 出席組合員の議決権の過半数(標準管理規約の場合) | 組合員総数の3/4以上かつ議決権総数の3/4以上の賛成 |
日常的な管理運営に関するものは過半数以上の賛成で決定となります。
しかし、特に重要なもの(区分所有者への影響が大きいもの)は3/4以上の賛成が必要とされています。
なお、特別決議のなかに“建て替え決議”というものがありますが、こちらはさらに条件が厳しく「組合員総数の4/5以上かつ議決権総数の4/5以上の賛成」が必要です。
老朽化したマンションを建て替えるわけですから、資金的にも日常生活にも大きな影響があることが予想されます。
よって、ほとんどの人が賛成しないと進められないようにしているわけです。
総会で決議しなければ主なものは以下の通りです。
(※マンションの管理規約によって異なる場合があります)
普通決議事項 | 特別決議事項 |
---|---|
・前年度の管理組合の活動報告 ・前年度の会計報告(管理費会計や修繕積立金会計などの収支決算) ・収支予算案と事業計画案 ・使用細則の改定(制定や変更や廃止) ・管理費や修繕積立金の改定 ・次の役員の選任(理事や監事など) | ・管理規約の改定 ・管理組合法人の設立および解散 ・共用部分の変更(階段部分をエレベーターに改造する工事などです) ・大規模消滅における建物の復旧 ・専有部分の使用禁止の請求 ・区分所有権の競売の請求 ・占有者に対する引渡の請求 ・建て替え |
これらの事項が発生しそうな場合は、必ず総会で諮りましょう。
通常総会まで待っている余裕がない場合は、臨時総会を開催し、しっかりと決議した方がよいです。
ちなみに、特別決議事項は仮に区分所有者の賛成多数によって管理規約改正をしたとしても、決議要件を緩和することはできません。
区分所有法によって定められているためです。
ただし「共用部分の変更」だけは、管理規約によって「区分所有者数の過半数かつ議決権の4分の3以上の賛成」にまで条件を緩和することができます。
関連記事:マンションの臨時総会とはどのタイミングで開くもの?通常総会の違いなども解説
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Q:通知していた事項以外の議題について
総会招集通知の時点で議題に含まれていなかった事案を当日、決議することが可能か?というご質問ですね。
結論から言えば多くのマンションはおそらく“NO”です。
区分所有法には決議事項に関する表記があり、そこでは「総会ではあらかじめ通知した事項以外、決議することはできない」との旨が記載されています。
しかし、管理規約で「あらかじめ通知した事項の決議もOK」と定めることが認められており、その場合は決議ができることになっています。
(標準管理規約には、このような定めはありませんので、ほとんどのマンションでは事前に通知した事項の決議のみが認められているのではないかと思われます。)
ただし、上記のような管理規約の別段の定めが認められるのはあくまでも普通決議事項のみであり、特別決議事項は含まれないため注意しましょう。
また、区分所有者全員の同意を得たうえで開かれた総会においては、そもそも事前の通知がないため、決議事項に関しても事前に通知しておくことができません。
よって、この場合も例外となります。
Q:議事進行をスムーズにするため、総会出席通知状に質問事項を記入してもらい、会場での質問は受け付けないとすることは可能か?
この点に関しては特段、管理規約や区分所有法には記載はありません。
管理組合内で議論を活発に行うこと自体はよいことであるため、質問を禁止することは避けた方がよいでしょう。
Q:議論が堂々めぐりで収集のつかない場合はどうすればよいか?
議長は質問を打ち切ってしまってもよいでしょう。
- 質問に対し、既に説明者から客観的に相当な程度の説明がなされていたとき
- 質問事項が議題を合理的に判断するために必要なものとはいえないとき
- 質問が議題に関しないなど、質問を拒否する正当な事由があるとき
- 一つの質問が合理的な限度を超えて長時間となったとき
このような場合は、質問を打ち切り、審議に進みましょう。
Q:理事長以外の役員に対してなされた質問には、その指名された役員が回答しなければならないのでしょうか?
理事長や、質問された役員以外の他の役員の方が回答しても差し支えありません。
Q:質問に対して説明を拒否することはできますか? 即答できない質問があった場合はどう対応すればよいですか?
賛否の判断に無関係な質問であれば「お答えしかねる」と回答してしまって問題ありません。
また、理事会側も把握していない事項であれば「分かりかねます」と回答してしまっても問題ありません。
しかし、この場合は後日文書などであらためて回答をするのが望ましいでしょう。
Q:質問に対して補助者(管理会社社員やマンション管理士など)に回答してもらうのは問題ありませんか?
問題ありません。
大規模修繕工事などは特に専門的な話になる場合がありますので、総会に同席してもらって補足説明などをしてもらうのがよいでしょう。
Q:老朽化した機械式駐車場を撤去し、平面駐車場を設ける計画がある場合、普通決議ですか?特別決議ですか?
特別決議です。
区分所有法第十七条に「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する」と定められています。
また、標準管理規約のコメントに以下のような記載があります。
区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている。
標準管理規約コメント
つまり、共用部分の変更は原則として特別決議であるが、形状または効用の著しい変更を伴わない変更は普通決議でよいとしています。
たとえばこれまで駐輪スペースだったところを、形状変更せずにバイク置場にするような場合です。
質問のケースは、機械式駐車場から平面駐車場にするため、効用は変わらないかも知れませんが、形状が著しく変わるため特別決議と判断されます。
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Q:「委任状が提出されない場合は、総会の議題につき賛成とみなす」との取り扱いは有効ですか?
これはNG!
あとで「あの総会決議事項は手続きに瑕疵があり、無効だ」と主張された場合、抗弁できない可能性が高いと考えられます。
決議の区分所有者に対する効力とは?

総会で決議された内容は、区分所有者全員に対し管理組合構成員間のルールとして拘束力を有します。
つまり、総会で反対したので「自分はその決定に従わない」という理屈は通用しないというわけです。
まとめ

管理組合の総会は1年に一度の重大イベントです。ここでの手続きに瑕疵があると後々問題になることもあります。
ところが、理事会のメンバーは輪番で回ってきた人ばかりでみんな初めてなんです……、という管理組合も珍しくありません。
基本的には前年までと同様に行っていれば大きな問題は起きないと思います。
しかし、もしご不安の場合は総会の支援だけをしてくれるマンション管理士さんもいらっしゃいますので、ご相談してみてはいかがでしょうか。