老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?
最近、テレビやインターネット上で老朽化したマンションをテーマにした話題を目にする機会が増えてきました。
- マンションが老朽化しているが、修繕積立金が不足し、必要な補修ができない
- 住民も高齢化し、修繕積立金の値上げや一時金の徴収も困難な状況に
- このままでは少しずつマンションが朽ち果てていってしまうのではないかと不安に感じる理事会役員たち
このような話が記事の中心です。
どんなマンションもいつかは劣化していきます。
「老朽化したマンションはどんな状況になるの?」
「老朽化の時期を少しでも先延ばしにするためには?」
「今のうちにできることは?」
などの疑問を中心に解説していきます。
ぜひ、最後までご覧ください。
関連記事:マンションの大規模修繕で注意すべきことは?費用・周期・時期について
関連記事:マンションの自主管理とは?やるべきこととメリット・デメリットについて
INDEX
老朽化マンションの定義とは

はじめに老朽化マンションの定義について少し触れておきましょう。
「老朽」という言葉を辞書で調べると、次のような記載があります。
古くなって役に立たないこと。また、そのもの。
出典:デジタル大辞泉 小学館
年老いて役に立たないこと。また、そのさま。
「老朽」という言葉には「役に立たない」という意味が含まれているようです。
そうなると「老朽化マンション」とは、マンションとして役に立たない。
つまり、もう住むことができないマンションという意味になるでしょう。取り壊し寸前のイメージでしょうか。
しかし、一般的には「老朽化マンション」と聞くと、住めなくなる状態よりも少し前。築古のマンションをイメージされる方が多いのではないかと思います。
少し日本語の定義とは異なるかも知れませんが、今回は「老朽化マンション=築年数が経過し、劣化の進んだマンション」という定義で話を進めていきます。
ちなみに、2021年12月10日付の日経新聞でも老朽化マンションを以下のように説明しています。
建物や設備が経年劣化して外観などが悪くなったマンションの総称。老朽化の進行は修繕の有無や管理状況に左右される。築年数による明確な定義はないが一般的に築30~40年を過ぎたマンションを指すことが多い。
出典:日経新聞
周辺の住環境に悪影響を与えるほか倒壊などのリスクもある。
老朽化マンション問題とは

最近、築年数が経過したマンションにおいて、資金不足などの理由により必要な修繕ができないケースが増えています。
弊社にお問い合わせいただくお客様からも、同じようなお話をお聞きすることがよくあります。
マンションのあらゆる箇所の劣化が進んでいるにもかかわらず、必要な修繕ができない。
それによって、生活に支障をきたすレベルの不具合が発生したり、安全性に問題のある状態になったりしているマンションが増えている。
これが、老朽化マンション問題です。
国土交通省の統計によると、2021年末の時点で築年数40年以上のマンションは全国で約115万戸あるとされています。
これが10年後には約2.2倍になり、20年後には約3.7倍になる見込みです。
老朽化マンションの数は今後ますます増えていく一方なのです。

マンションの耐久年数は?
明確な根拠はありませんが、鉄筋コンクリート造のマンションの耐久年数は「100年ほど」といわれることが多くあります。
しかし、築年数が30年〜40年であるのに老朽化してしまい、住居が困難なマンションがあるのも現実です。
「100年もつ」というのは、大げさな表現なのでしょうか?
いいえ、そうではありません。
築年数が30年~40年くらいのマンションが老朽化してしまうのは、マンションの耐久性が悪いのではなく、必要な修繕やメンテナンスをしていないからだと考えられます。
マンションが100年以上もつといわれているのは、あくまでも「必要な修繕やメンテナンスをしていれば」という前提条件を満たした場合なのです。
関連記事:マンションの耐用年数は何年?耐用年数の延ばし方や減価償却との関係を解説!
マンション修繕積立金が足りない!その原因は?

必要な修繕などを行っていないマンションの理由として「修繕積立金が足りない」というものが最も多いのではないかと思います。
では、なぜ修繕積立金が不足してしまうのでしょうか?
修繕積立金が不足してしまう理由は、おおよそ5つほど考えられます。
- 新築時の修繕積立金の額が低く設定されており、その後も値上げをしなかった
- 長期修繕計画の見直しをしなかった
- 工事費用の価格上昇や、消費税の増税を見込んでいなかった
- これまでの間で、相場よりも割高な工事を実施してしまった
- そもそも修繕積立金を徴収していない
それぞれもっと深く確認していきましょう。
新築時の修繕積立金の額が低く設定されており、その後も値上げをしなかった
修繕積立金の積立方式は、大半は以下の2通りに分類されます。
A:均等積立方式
B:段階増額積立方式
長期修繕計画で30年先までの工事を全て洗い出し、必要な工事総額を算出するところまでの作業は共通しています。
総額費用を「均等」で徴収するか、「段階的に値上げしながら」徴収するか。
これが2つある方式の違いです。
段階式積立方式では数年ごとに値上げをします。
マンションは築年数が増すごとに修繕箇所などが増えてきます。
これは形あるものとして仕方のないことです。
修繕箇所が増えれば、修繕にかかる費用も増していきます。
修繕積立金を初年のまま同じ金額だけ徴収していたら、修繕費用が足りなくなってしまうのは当然でしょう。
なお、国土交通省が5年ごとに実施しているマンション総合調査(平成30年度)の結果によると、全体的には「均等積立方式」「段階増額積立方式」の割合に、あまり差は見られません。
しかし、完成年次が新しいほど「段階増額積立方式」の割合が高くなる傾向にあるようです。

関連記事:マンションの修繕積立金、相場はいくら?そもそも必要なの?あらゆる疑問を解消!
長期修繕計画の見直しをしなかった
国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン」では、長期修繕計画は5年ごとに見直すよう推奨されています。
見直しを定期的に行っていないマンションは、なるべく早く見直しをしましょう。
計画の見直しを行うことで、修繕費用にかかる実際の支出と徴収している金額との差額が浮き彫りになります。
今までの徴収方法の見直しなどにつながるでしょう。
工事費用の価格上昇や、消費税の増税を見込んでいなかった

「将来、工事費はどのくらい上がるのか?」「消費税は増税するのか?」などを予測することは、非常に困難です。
不確実な要素までを長期修繕計画に盛り込む必要はありません。
イレギュラーが発生した際、速やかに対応するために行うのが5年に一度の「長期修繕計画見直し」です。
5年ごとの見直しの際、工事費用の相場が上がっていたり、消費税の増税が決定していたりしたらその部分は必ず、その分も盛り込みましょう。
その結果、修繕積立金の不足が予想される場合は速やかに管理組合内で対策を検討した方がよいです。
これまでの間で、相場よりも割高な工事を実施してきてしまった
「管理会社に全部お任せ」というマンションにありがちなお話です。
管理組合の役員の方たちは建築や工事に関する知識のない方たちばかりですので、管理会社が提案する内容通りに工事を進めてしまう傾向があります。
弊社のお客様から「知り合いの工事業者に聞いたら管理会社が作成した見積より、4割も下がって驚いた」というお話をお聞きしたことがあります。
もしかしたらこれまで行ってきた工事の中に、相場よりも割高であったり、不必要な工事を実施してしまったりということがあったかも知れません。
今後はセカンドオピニオンをきちんと取るようにしましょう。
でも工事関連業者の知り合いなんていないし・・・
そういった方には以下のサービスをおすすめしています。
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なお、管理会社の名誉のために付け加えておきますが、決して管理会社が悪徳という訳ではありません。
管理会社も営利企業ですから、より多くの収益を得ようとするのは当然の事です。
管理組合の方たちは、管理会社の話を鵜呑みにせず、当事者意識を持って提案内容を吟味することが大切です。
そもそも修繕積立金を徴収していない
この項目に関しては、ちょっと厳しい言い方になりますが、正直お話になりません。
しかし、こういったマンションもどうやら少なくないようです。
管理組合自体がないマンションや、管理組合がまともに機能していない自主管理マンションに多く見受けられます。
このようなマンションは、修繕積立金が足りないという問題の前に、まずは管理組合運営をしっかりと行うこと。
これは必須項目です。
関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
マンションが老朽化してしまうとどんな問題が起きるのか?

マンションの老朽化に伴って発生してしまう問題は、5つほど挙げられます。
・設備の不具合が発生する
・建物が危険な状態に陥る
・修繕積立金の大幅な値上げが必要になる
・マンションがスラム化する
・資産価値の低下につながる
設備の不具合が発生する
たとえば、給水管の交換工事をしていないと、漏水事故が起こってしまうかもしれません。
漏水が起きた部屋だけでなく、その階下の部屋は特に大変な損害を被ることになるでしょう。
場合によっては、部屋から一時退去する必要が生じるケースも考えられます。
交換せずに古い給水設備をそのまま使っていると、ある日突然水が出なくなる、というアクシデントにみまわれるかもしれません。
機械式駐車場やエレベーターなどの設備も同様です。
建物が危険な状態に陥る
以前、某テレビ番組でとある老朽化マンションを取り上げていましたが、そのマンションでは、非常階段の手すりがサビ付き、少し力を入れると手すり自体が落下してしまいそうな状態のまま、ずっと放置されていると報じられていました。
万が一、手すりの落下位置に人がいたら、と想像するだけで恐ろしいですね。
また、住民が非常階段から落下してしまう可能性も考えられます。
このように、今までは問題なく耐えていたところも、老朽化により耐久性が低くなり、人間1人を支えるだけでも困難になっている場合があるのです。
こういったマンションは、大変危険な状態にあるといえるでしょう。
修繕積立金の大幅な値上げが必要になる
すでに老朽化がすすんでしまったマンションが、慌てて修繕箇所の見直しなどを行うと、積立金の大幅な値上げを視野にいれないといけません。
某番組で取り上げられていたマンションの例でいうと、1世帯あたり約94万円の不足だと計算されました。
このマンションは全部で48世帯なので、マンション全体でいえば不足金額は4,500万円と莫大な数字に。
不足分を仮に3年の徴収で補おうとした場合、月々約26,000円の値上げが必要という計算になります。(1世帯あたりの徴収金額94万円÷36=1ヶ月あたりの徴収金額)
マンションがスラム化する

マンションの老朽化が進み、危険な状態に陥ると、マンションから出て行く人が増えていきます。
出て行った分、新たに確保しようにも状態の悪いマンションを選ぶ人は限られているでしょう。
古いマンションの場合、区分所有者自身は別のところに住んでいて、マンションを他人に賃貸しているケースも多く見受けられます。
このような館外の区分所有者の方たちからすると、入居者を募っても誰も集まらない状態は家賃収入を得られる機会の損失につながるといえるでしょう。
また、管理組合としても空室率が増えると、駐車場利用料などの収入減が考えられます。
資産価値の低下につながる
見るからにボロボロなマンションや、修繕積立金が他と比べてかなり高額なマンションを購入しようと考える方は少ないでしょう。
そうなると、近隣相場よりも大幅に価格を下げないとマンションは売れにくくなり、その結果、資産価値の低下につながります。
老朽化マンションが取るべき選択肢

すでに老朽化してしまっているマンションはどうすれば良いのでしょうか?
考えられる選択肢は以下の3つです。
- 大規模修繕工事を行う
- 建て替えを検討する
- 取り壊して敷地売却する
どの選択肢も実際に行おうと思うとかなりハードルが高いものばかりです。
一番現実的な選択肢は、大規模修繕工事を行うことでしょう。
大規模修繕工事の実施には、いうまでもありませんが費用が必要です。
その費用を区分所有者からの一時金の徴収でまかなえれば良いですが、簡単ではありません。
そのような場合、次に考えられる選択肢は「大規模修繕工事費用の借入」です。
この場合、管理組合として借入をすることを指します。
大規模修繕工事を借入をしてまで実施するのは、基本的にはあまり良くないことです。
しかし、背に腹は代えられません。
関連記事:マンション大規模修繕とは?その費用や目安について解説!
借入をする場合の選択肢
借入をする場合の選択肢としては、大きく分けて2パターンが考えられます。
- 住宅金融支援機構から借り入れる
- 民間の金融機関から借り入れる
住宅金融支援機構のマンション共用部リフォーム融資では、最大で戸当たり1,500万円まで融資を受けることが可能です(もちろん、借入をするための条件や基準があります)。
なお、民間の金融機関の方は、住宅金融支援機構と比べて手続きが簡単という特徴があります。
住宅金融支援の基準ではNGだったマンションへの融資が可能な場合もあるようです。
マンションを老朽化させないための対策とは

では、まだ老朽化を迎えていないマンションは、どのようなことをすれば良いのでしょうか?
考えられる項目は下記の4つです。
- 長期修繕計画や修繕積立金について、まずは現状を確認する
- 修繕積立金の値上げを回避、または値上げ幅を抑制するために管理費会計のコスト削減を検討する
- 今後発生する工事は、すべてセカンドオピニオンを取ることを理事会内のルールにする
- 修繕積立金の値上げが必要と思われる場合、問題を先送りせず、少額でも良いので値上げに踏み切る(総会に議案上程する)
マンションの置かれている状況によって打つべき対策の強弱は異なります。
しかし、これらはどんなマンションであっても取り組むべきテーマでしょう。
「うちのマンションはまだ大丈夫」と思わず、上記で挙げたポイントをもとに今から行動を起こすことをおすすめします。
現時点で老朽化してしまっているマンションは、築40年~50年くらいのものが多いといわれています。
これらのマンションは10〜20年前の段階で手を打っていれば、老朽化せずに今も健康的なマンションでいられた可能性が高いのです。
老朽化がすすんでしまったマンションに残された道は、そのまま放置するか、「莫大な費用を出して工事を行う」「建て替えを行う」「取り壊して敷地の売却を行う」か、です。
こうなってしまう前に、できることから早めに手を打っておきましょう。
関連記事:マンションの建て替えって実際してるの?住民の負担費用や、マンション寿命などから詳しく解説
弊社のマンション管理アプリ「クラセル」とは

マンションの管理運営には多かれ少なかれコストが発生します。
少しでもマンションの健康状態を維持したいのなら適切な修繕が必要になりますが、そのためには決して少なくはない修繕費用がかかるのが現実です。
コストを削減して、少しでも修繕費用積積立金の方にまわしたい、と考える方もいるのではないでしょうか。
そんな管理組合におすすめなのが、弊社の提供するマンション管理アプリ「クラセル」です。
これまで管理会社に管理業務を委託していたマンションの場合、クラセルを活用することで管理費会計のコスト削減が期待できます。
管理費会計のコストを削減し、余った分を将来不足が予想される修繕積立金にまわすことが可能です。
また、クラセルの大きな特徴として金融機関とも提携をしているところが挙げられます。
クラセルを導入しているマンションであれば融資を受けやすくなるというメリットがあります。
クラセルについて詳しく知りたいという方は、お気軽に弊社ホームページよりお問合せ下さい。
まとめ

老朽化マンションは、建物や設備の劣化がすすんでしまったマンションのこと。
老朽化マンションとして放置していると、設備の不具合が発生したり、資産価値が下がったりなどさまざまなトラブルが発生してしまいます。
すでに老朽化マンションとなっている場合は大規模修繕工事や建て替えを行いましょう。
もし、これらをするだけの費用がない場合などは、マンションを取り壊すしか道はないかもしれません。
まだ老朽化がすすんでいない、もしくは築年数の浅いマンションは早いうちから老朽化をすすめないように対処を進めておきましょう。
まずは、長期修繕計画や大規模修繕工事まわりのことに関する現状把握からしてみることをおすすめします。
「マンションは維持修繕を管理会社や管理組合がやってくれる。
毎月の修繕積立金だけ払っていれば良いから、一戸建てよりも気楽でいいや」と考えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、区分所有者の大半がそのように考えてしまうと、いつの間にか修繕積立金が不足し、老朽化マンションへの道へ向かってしまう可能性があります。
早めに対策を打っていくことが重要です。
管理組合内で意見交換や情報共有をしてみてはいかがでしょうか。
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