マンション管理の委託費用の相場とは?
毎月発生するマンション管理委託費用…実際、どれくらいが相場かご存知ですか?
「適正な費用なのかが分からない」、「うちのマンションってひょっとしたら高いんじゃないかな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、管理委託費に関しては「あそこの管理会社は高い」「ここの管理会社は安い」など、一概には判断できない理由があるのです。
今回はそれらを踏まえたうえで、マンション管理委託費用の「相場」について解説します。
自分たちのマンションで発生している管理委託費が、適正な価格かどうかを判断する方法も紹介しているため、ぜひご覧ください。
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INDEX
マンションの管理委託費とはどのような費用か?
管理委託費とは、管理業務を管理会社に委託するための費用です。
相場を知る前に、まずはどんな業務を委託しているのかを把握しておきましょう。
国土交通省が指針として公開している「マンション標準管理委託契約書」では、委託する業務を大きく以下の4つに分類しています。
管理会社の多くはこの標準管理委託契約書をベースに契約を締結しています。
- 事務管理業務
- 管理員業務
- 清掃業務
- 建物・設備管理業務
細かい内容をみていきましょう。
事務管理業務
マンション管理の業務において重要な基幹事務(管理組合の会計・出納、マンションの維持または修繕に関する企画・実施の調整)。
それ以外では理事会と総会の支援業務などが含まれます。
管理員業務
管理員さんを派遣するための費用です。管理員はマンション内での居住者や来訪者の受付対応や業者の作業への立ち合い、日々のマンション内の設備の点検業務等を行うのが一般的です。
清掃業務
清掃業務は大きく3つに分けられます。
日常的に行う掃き掃除やゴミ拾いなどの日常清掃、清掃業者が行う床のワックスがけなどの定期清掃、スポット的に発生する特別清掃が必要です。マンションの規模があまり大きくなければ日常清掃は管理員さんが行うのが一般的です。
建物・設備管理業務
マンション内のエレベータ、給排水設備、消防設備、駐車場設備などの各種設備や外観の点検・修理などです。当然ながら設備が多ければ多い程費用も高額になります。
管理委託費の相場っていくらなの?
実際のところ、管理委託費の相場は「一戸あたりいくら」といったように一概には言いきれないところがあります。
たとえば、優秀な人材を集め、高いレベルの管理サービスを提供しようと考える会社と、とにかく費用を安く抑えたい会社とでは比較になりません。
極端な例ですが、このような場合、どちらも相場としてふさわしくないといえます。
また、先ほど触れましたようにマンション内の設備の設置状況によっても大きく変わるため、スーパーで売っている野菜や卵の値段の相場と同じように考えることは難しいということです。
管理委託契約書を確認する際のポイント
管理委託契約書を確認する際、実は注意すべきポイントがあります。
「管理委託契約書が手元にない」という方は、管理会社または理事会に確認してみましょう。
管理委託契約書のパターンはどれか?
まずは管理委託契約書のパターンを確認しましょう。
国土交通省による標準管理委託契約書では、管理会社の利益の明示方法について以下3つのパターンを用意しています。
なお、内訳の内容として割りふられた漢数字は、説明文では「1〜5号」と示しています。
内訳明示例1
1〜4号には委託された業務の月額費用を。
これらとは別に、管理報酬を5号に明示しているパターン。
定額委託業務費月額内訳
一 事務管理業務費 月額○○○円
二 管理員業務費 月額○○○円
三 清掃業務費 月額○○○円
四 建物・設備管理業務費 月額○○○円
ア ○○業務費 月額○○円
イ ○○業務費 月額○○円
ウ ○○業務費 月額○○円
五 管理報酬 月額○○○円
(↑ここに管理会社の利益をまとめている)
消費税額等 月額○○円
内訳明示例2
1号を管理手数料とし、事務管理業務費に一般管理費および利益を加えているパターン(2~4号の各業務には一般管理費や利益が含まれていない)。
定額委託業務費月額内訳
一 管理手数料 月額○○○円
(↑ここに管理会社の利益をまとめている)
二 管理員業務費 月額○○○円
三 清掃業務費 月額○○○円
四 建物・設備管理業務費 月額○○○円
ア ○○業務費 月額○○円
イ ○○業務費 月額○○円
ウ ○○業務費 月額○○円
消費税額等 月額○○円
内訳明示例3
1~4号の各業務に一般管理費だけでなく、利益も含まれているパターン
定額委託業務費月額内訳
一 事務管理業務費 月額○○○円
二 管理員業務費 月額○○○円
三 清掃業務費 月額○○○円
四 建物・設備管理業務費 月額○○○円
(1〜4号の費用それぞれに、利益が含まれている)
ア ○○業務費 月額○○円
イ ○○業務費 月額○○円
ウ ○○業務費 月額○○円
消費税額等 月額○○円
このように、契約書のパターンはいくつかに分かれています。
単純に管理員業務費や清掃業務費をほかの会社と比較しようとしても、そこに利益が含まれているかどうかで大きく金額が異なります。
まずは自身のマンションの契約書パターンを確認してみましょう。
また、契約書には必ず業務の仕様が記載されています。
たとえば日常清掃なら週に何回、1日何時間、どこを実施するかなどについてです。
仕様によって委託する金額も変わってきますので、その点も注意しましょう。
関連記事:マンション管理会社が契約更新を拒否!?更新拒否の背景と管理組合ができることを解説
管理会社によって金額の違いが出るのはなぜ?
「相見積もりをしてみたら、同じ仕様なのに今よりも大幅に金額が下がった」というお話をよく耳にします。
このような場合、「うちは相場よりも高いんじゃないか」と感じてしまうかもしれません。
しかし、そうは言い切れない場合も多々あるのです。
この章では、その点について説明していきます。
管理会社は下請け業者へ再委託することが多い
管理会社の多くは、委託された業務の一部を下請け業者に再委託しています。
特に、設備管理など建物自体に関するところは専門業者へ委託しているパターンが多いようです。
日常的な清掃の場合、管理会社雇用の管理員が実施します。
しかし、大規模マンションのように清掃員が複数名必要な場合は、清掃会社へ再委託するパターンが多く見受けられます。
以上のことを踏まえ、管理委託費が会社によって変わる要因は、大きく分けて以下のように考えられます。
- 人件費の違い
- 再委託先の費用
- 管理会社の利益率
人件費の違い
人件費は、管理会社に勤めている社員と、マンションへ派遣される管理員の分を考慮しなければなりません。
管理会社社員の人件費
管理会社によって、まずは人件費が異なります。
「うちにはいい人材がそろっています!」という会社は、その分委託費を高く設定している傾向にあります。
(最近はどこもかしこも人手不足なので、こういった会社はほとんどないかも知れませんが・・・)
また、担当となった社員(一般的にはフロントと呼ばれる社員)が、ほかのマンションを何物件担当しているかによっても金額が変動します。
しかし、安いからという理由だけで選ぶのも注意が必要です。
やる気や知識、経験のない担当者があてがわれたり、「ほかのマンションもたくさん担当しているから」という理由で自分たちのマンションへの対応がおろそかにされることも考えられます。
そうなると、結果として費用が割高になってしまうこともあるため、慎重に選びましょう。
マンションへ派遣される管理員の人件費
マンションへ派遣される管理員の人件費も、会社によって異なります。
派遣された管理員が管理会社の正社員なのか、非正規雇用なのかでも異なりますし、その管理員が再委託先から派遣された人物であれば、さらに費用が変化します。
会社によっては管理員の研修費や、研修施設の維持管理費用なども管理委託費に含んだうえで請求するところがあります。
費用が安価な管理会社は、可能性として「管理員の教育・研修にあまり力をいれていない」ことが考えられます。
安価だから、という理由で選んだ結果、レベルの低いサービスを受けることになるかもしれないため、注意が必要です。
再委託先の費用
建物・設備の管理業務の多くは再委託先企業の従業員が行います。
管理会社と同様に、再委託先がどのくらい良い人材を採用しようとしているか、どのくらい教育訓練などにコストをかけようとしているかによって金額が変わってきます。
また、それ以外には、再委託先の事業所からマンションまでの距離が遠かったりすると、コストが割高になる場合もあります。
管理会社の利益率
管理会社が計上する利益額は、その会社の一定の基準に基づき、常識の範囲内で計上されています。
利益ばかりを追求し、管理委託費を高く設定したとしても新しい契約が取れない、もしくは解約をたくさんされてしまっては本末転倒だからです。
とはいったものの、管理会社によって管理委託費に含める利益の額は大きく異なります。
管理会社の設定している利益額が少なければ少ないほど、自分たちの支払う管理費は安くなります。
管理組合からしてみれば、安いに越したことはありません。
そのため、費用が安いところを選んでしまいがちです。
しかし、「安いから」という理由だけで決めるのは早計かもしれません。
管理会社の利益と、マンションが受けるサービスとは密接に関係しているのです。
管理会社の利益とマンションが受けるサービスとの関連性
管理会社は計上した利益額をさまざまな管理サービス拡充のための費用に充てている場合も多いのです。
たとえば、24時間365日連絡がつくコールセンターの運営費用や、居住者へのペーパーマガジンの作成費用などが挙げられます。
これらだけでなく、従業員向けに投資することで業務環境を整え、働きがいを高めることで結果的に管理サービスのクオリティアップを図っているという会社もあります。
24時間電話がつながるコールセンターがなければ、その分管理委託費は安くなるかもしれません。
しかし、夜間に漏水などが発生しても、翌日まで管理会社に連絡できない、という可能性も考えられます。
「こういう事態があるかもしれない」という想定をあらかじめしたうえで、契約内容と費用を照らし合わせて確認するのがよいかもしれません。
立地や管理職の人数も影響している
立地や管理職の人数の多さによっても管理会社が必要とする利益額水準は異なります。
管理職の人数についても同じことがいえるでしょう。
管理職の人数が少なければ管理委託費は安くなるかもしれませんが、管理職員の担当する業務範囲が広くなることが考えられます。結果として、質の高いサービスが提供されないかもしれません。
このように、一言で「管理委託費」といっても、管理会社によって積算の考え方が大きく異なるのが実態なのです。
マンションの管理委託費が適正かどうかを知るには?
「相場を知る」ということは、突き詰めると「自分たちのマンションの管理委託費が高いのか安いのかを知る」、ということだと思います。
その方法は、他の管理会社から見積もりを取得する以外にあまり有効な方法がありません。
ときどき、インターネット上で、簡易見積もりを取得できるサイトを見かけます。
しかし、現地を確認したうえで再見積もりをしてみたら金額が大きく変わったというケースも散見されます。
現在の管理会社に対する不満がまったくなかったとしても、現状を把握する目的で他の管理会社から見積もりを取得することは有効な取り組みといえるでしょう。
管理委託費の多くは人件費が占めているため、採用のしづらさや、最低賃金の上昇など社会情勢の影響を大きく受けます。
数年前に取得した見積もりと、今年取得した見積もりでは金額が大きく変わってしまったというケースも多々見受けられます。
よって、他社からの見積もりについては可能であれば一年に一度くらいの頻度で取得することをおすすめします。
ただし、他の管理会社に見積もりを取得する際は、下記の点に注意しましょう。
手当たり次第に管理会社を比較しない
方針の異なる管理会社から見積もりを取得しても、あまり比較になりません。
同じような方針の管理会社をカテゴリー分けし、その中で比較し合ってはじめて、参考となる見積書が取得できるのです。
管理会社は以下のように大きく分類されます。
- ブランド力があり、手厚いサービスを提供しようと考えている管理会社
- とにかく安価な管理サービスを提供しようと考えている管理会社
- 1と2の中間に位置づけられる管理会社
おおざっぱに、1は大手管理会社、2は小規模、3は中堅といえます。
しかし、大手のなかにも安価を売りにしている会社は多くあるため、一概にそうとは言いきれません。
他の管理会社の見積もりの方が安かった場合
同じ分類内で比較してみて、今委託している管理会社よりも他の管理会社の見積もりの方が高かった場合、現在の管理会社が値下げしてくれる可能性があります。
近い将来、管理委託費の値上げを要請されるかも知れません。
あらかじめ、そのような際にはどう対応すべきかを理事会内で検討しておくことをお勧めします。
他の管理会社の見積の方が安かった場合
同じ分類内で比較してみて、今委託している管理会社よりも他の管理会社の見積もりの方が安かった場合、管理委託費の減額交渉をする余地があります。
まずは、フロント担当者に相談してみてはいかがでしょうか。
この場合、「他社の方が安い」という実際の数字があるのとないのとでは先方の対応が大きく違ってくるでしょう。
そういう点でも、実際に見積もりを取得することはとても重要です。
仮に、管理業務の仕様をグレードダウンせずに管理委託費を減額することができれば、不足しがちな修繕積立金に振り替えることもできます。
関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
定期的に管理費用とサービスのバランスを確認しよう
見積もりを取得すること自体は理事会の判断で可能です。
しかし、良い機会のため、区分所有者の総意を確認しておくのもよいかもしれません。
「24時間電話がつながるコールセンターは、あったら安心だけど今までに一度も使ったことがない」
「たまにポストに入っている情報誌はいつもゴミになってる」
「今よりも管理費が安くなるなら多少のグレードダウンは受け入れる」などの声が多いなら、管理会社のグレードを落とすことも有効な選択肢かも知れませんね。
また、逆もしかりです。
「今の管理会社は費用が安いのは良いけど、フロント担当者はいい加減で連絡すらまともに取れない」
「最低限のやるべきこともできていない」
「管理員さんにももっとしっかり教育して欲しい」といったような不満の声が多ければ、今よりも管理委託があがったとしても管理会社のグレードを上げる選択肢も考えられるでしょう。
関連記事:【管理組合役員は必見】管理会社の変更手順とその注意点
さいごに
今回のテーマは管理委託費の相場についてでした。
管理委託費用の相場は◯◯円だ、とはいいきれません。
管理委託費がどのような内訳で設定されているのかは会社によって異なります。
これには、各会社の人件費の違いや立地の違い等が理由として挙げられます。
また、それぞれ会社ごとに方針が異なるのも影響していると考えられます。
「サービス内容はあまり関係がなく、とにかく1円でも安い委託費にしよう」という考えや「管理費用が高くなってもクオリティの高いサービスを提供しよう」などです。
そのため、マンション管理委託費の相場がいくらか、とは一概にはいえないのです。
しかし、そうはいっても自身のマンションの管理委託費が適正価格かどうか知りたいところ。
管理委託費用が適正かどうかを確認するためには、管理会社へ見積もりを作成してもらい、比較してみるとよいです。
その際、手当たり次第に管理会社をあたると意味があまりありません。
先述のとおり、管理会社はそれぞれ異なる経営方針をたてており、費用もそれによって異なるためです。
方針や考え方ごとに分類をし、そのグループ内で見積書の比較をしましょう。
また、現状を把握するという意味合いでも一年に一回程度、区分所有者へのアンケートを実施し、委託費用に関しての意向を確認してみるのをおすすめします。
住民によっては「サービスの質が低下してもいいから、委託費をもっと安くしてほしい」などの不満や意見を持っているかもしれません。
「わたしのマンションの管理会社はどこに分類されるの?」「同じ分類の管理会社ってどこの会社?」
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