マンション管理会社が契約更新を拒否!?更新拒否の背景と管理組合ができることを解説

「次回の契約期間満了をもって管理業務を終了させていただきます」

管理会社から突然このような通告をされるマンションが増えているようです。
実際、弊社にもそういったマンションの方からのご相談をたくさんいただいています。

 

この記事では、なぜこのようなことが起きているのか? このような申し入れを受けてしまったマンション役員はどうすれば良いのかなどを解説していきます。

ぜひ、最後までお読みください。

関連記事:【管理組合役員は必見】管理会社の変更手順とその注意点

マンション管理会社が契約更新を拒否?その理由とは

お客さん側である管理組合の方から管理を打ち切ることはあっても、仕事を受ける側である管理会社の方から仕事を拒否するなんて、普通は考えにくいですよね。

実際、数年前まではあまり聞いたことがありませんでした。
なぜ最近になってマンション管理会社が契約更新を拒否するようになったのでしょうか? 

考えられる原因は、主に以下の通りです。

 

  • 管理会社の人手不足
  • 管理会社にとって不採算なマンションとなっている
  • マンションの老朽化
  • 管理組合の過剰要求等によるフロント担当者の疲弊
  • その他

 

一つずつみていきましょう。

管理会社の人手不足

管理業界は全体的に人手不足の状態が続いています。
管理会社によっては、人手不足がかなり深刻な問題になっているところがあるようです。

管理業務を行う担当者(一般的にはフロントと呼ばれています)が次々と辞めてしまい、その穴を埋める人材が入って来なければ減っていく一方。対応できる人がいなくなってしまうのは当然です。

人手がなければ、マンションの管理業務を続けられません。

 

また、管理会社は管理するマンションの数に応じて「管理業務主任者」という資格を持った人員の配置が法律上求められています。
有資格者の確保ができなければ、管理するマンションの数を減らすしかありません。

不足する管理員

管理会社の人手不足はフロント担当者に限ったことではありません。

管理員の採用も、業界全体で非常に苦戦しています。
管理員は管理会社の従業員として派遣されるのが一般的です。

 

しかし、最近かなり増えてきているのがこの管理員の採用に苦戦するケース。

かつては、一般企業を定年退職したあとのセカンドライフとして管理員を選択する方が多くいました。
60歳で定年退職するのが一般的だった頃。

その当時は60歳~65歳まで管理員の仕事に就く方が多かったわけですが、定年が65歳まで延長になったり、再雇用制度が導入されたりしたことで管理員の仕事に就こうとする方が減ってしまったと言われています。

色んな管理会社の方から話を聞く限りでは、管理員のなり手不足問題はかなり深刻なようです。

 

「管理員さんが採用できなくて、管理業務を続けられない」

このように、数年前には考えもしなかったようなことが現在では起きています。

管理会社にとって不採算なマンションとなっている

管理会社からみて、あまり儲からないマンションということですね。

たとえば、下記のようなマンションが例として挙げられるでしょう。

例1:総戸数が30戸以下の小規模で、そもそも得られる管理委託費が少額

こちらのケースは、いきなり「更新しません」と突きつけてくるのでは無いようです。

管理委託費の値上げを要請し、値上げを受け入れられなかった場合に契約の更新はしない、という流れになっている場合も多いようです。

例2:修繕工事などに管理会社があまり関与できず、管理業務以外の売り上げが伸び悩んでいる

管理会社によっては、日常の管理業務の利益は薄くても良いから、大規模修繕工事や不定期に発生する小修繕工事を受注することで利益を確保しよう、と考えるところもあります。

 

以前は工事は全て管理会社にお任せする管理組合も多くありました。

しかし、最近では工事の相見積もりを取得できるサービスや、工事が高額すぎないかのチェックを行うセカンドオピニオンサービスなどを行ってくれる会社も増えています。

そのため、管理組合の工事の発注額に対する目がシビアになっている傾向にあると言えるでしょう。

このこと自体はとても良いことなのですが、管理会社が工事に関与しづらくなり、管理会社にとっては儲けの少ないマンションとなってしまうケースが多いようです。

マンションの老朽化

マンションが古くなると当然のことながら、あちこちに劣化が見られるようになります。

劣化した状態を修繕せずにそのままにしておくことで生じてしまうのが、建物面におけるさまざまな問題です。

深刻なものだと、マンションに住んでいる人の安全を脅かすような事態になることも。

非常階段の手すりが経年によって劣化しているとしましょう。さび付いており、強く押せば倒れてしまいそうな状態です。

管理会社の担当者は管理組合に「すぐに修繕すべきです」と提案しますが、修繕積立金の不足により工事が出来ないケースが最近増えています。

このような状態で、何らかの事故が起きた場合。管理会社が全責任を負うことはないと思いますが、管理業務を行っている以上、なんらかの管理責任を問われる可能性が出てきます。

 

なにもしていないのに責められるのは、誰だって嫌ですよね。

よって管理会社は、老朽化しているマンションの管理からは手を引きたいと考える傾向があります。

関連記事:マンションの建て替えって実際してるの?住民の負担費用や、マンション寿命などから詳しく解説

管理組合の過剰要求などによるフロント担当者の疲弊

こちらも割と多い理由の一つとして挙げられます。

管理組合からのフロント担当者に対する要求度合いが高すぎて、その結果、フロント担当者が疲弊してしまうケースです。

なかにはメンタルの不調に陥ってしまったり、会社を辞めてしまったりするケースもあることも。

管理組合も管理委託費を支払っている立場です。
もちろん、管理会社へさまざまな要求をすること自体は問題ありません。

 

ただ、度を超えたものが問題なのです。
マンションによっては管理会社への態度が横暴だったり、注文が多かったりすることが実際にあります。

たとえば 

  • 些細なことで会社やフロント担当者の携帯電話へ頻繁に電話を掛けてくる
  • 一度の電話が長時間に及ぶ
  • 折り返しの電話が遅いと怒り出す
  • 高頻度で業務時間外にマンションへ呼び出す
  • 罵声を浴びせる

 

などです。
いわゆるクレーマーや、カスタマーハラスメントと呼ばれる状況かも知れません。

このような状況に陥ると、管理会社によっては貴重なフロント担当者を守るために仕方なく管理業務から手を引く、という判断をする場合があるようです。

関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット

その他

上記以外の理由として、以下が挙げられます。

 

・住み込み管理員を配置していたが、管理員さんが辞めてしまい体制の維持ができなくなった


・管理会社からマンションまでの距離が離れており、非効率


・管理費などの徴収方法や、決算書類の作成ルールなど、物件特有のルールがあり、他のマンションと比べて特殊なやり方での処理を求められている

更新拒否されないよう、管理組合側でできることはある?

更新を拒否されないために管理組合側で何かできることはあるのでしょうか?

更新拒否の原因によって、手の打ちようがあるものとそうでないものに分かれます。

先ほど挙げた管理会社が更新を拒否する理由別に見ていきましょう。

管理会社の人材が不足している場合

この点については、管理組合側でできることはありませんね。
管理会社に社員を辞めさせないように頑張ってもらうしかないでしょう。

不採算なマンションとなっている場合

この課題を解消するとしたら、管理会社の儲けをアップさせる、ということになりますが、そうすると今度は管理組合にとって不利益が生じます。

よって、この部分も管理組合側でなにかできることはないでしょう。

収益性が低くとも管理を継続できるよう、管理会社の経営努力を期待するしかありません。

マンションの老朽化が進んでいる場合

この部分は管理組合側で手の打ちようがあります。

ずばり、まずはマンションを老朽化させないこと。

そのために早め早めにマンションの修繕計画を我が事としてとらえ、資金計画を精査することです。

また、仮に手を打つのが遅れてしまい、劣化がかなり進んでしまった場合も、その問題を放置せず、専門家などに相談しながら手を打つことが重要です。

そうすれば老朽化を理由に管理会社から契約更新を拒否される可能性は低くなるでしょう。

関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?

過剰要求などによるフロント担当者の疲弊による場合

こちらも管理組合として手の打ちようがあります。

いわゆるクレーマーと呼ばれる人たちに対する対応を、管理会社のフロント担当者だけに背負わせないことです。

管理会社の担当者がクレーマー対応で何か困ってそうなことがあれば、役員の人たちはまずは話を聞いてあげて下さい。

クレーマー対応、カスハラ対応は、精神的に悪い影響を与えるケースが多く見受けられます。

過剰な要求をされ大変だ、ということをマンション内で一人でも理解してくれる人がいてくれると、気持ちが少し楽になることもあるでしょう。

 

また、もう一歩踏み込んだ対応が必要な場合もあります。

まずは、クレーマーの方が要求している内容をしっかりと正確に聞き取ることです。

そのうえで一個人が管理会社に要求しても良い話なのか、それとも管理組合という組織として要求しなければならない話なのかを客観的に線引きしましょう。

前者であれば個人の判断に任せることになりますが、後者であれば個人の独断で過剰と思われる要求を管理会社に対して行うのは少々行き過ぎです。

 

よって後者の話であれば「その話は理事会内で議論し、理事会として正式に管理会社に要求しましょう」と言って話を引き取ってしまうのが吉です。

 

理事会で議論した結果、クレーマーの方と同じ要求を管理会社にするかもしれませんが、言い方や内容は相当マイルドになるケースがほとんど。

 

そうなると管理会社の担当者も通常の業務として対応してくれるようになります。

クレーマー対応についての本音

クレーマー問題の解決は、管理会社側でなく管理組合側の方が適任かもしれません。
しかし現実的な話として、クレーマーと呼ばれる人には誰しもあまり関わりたくないというのが本音でしょう。

 

「クレーマーが原因で更新拒否をされてしまっても、他の管理会社に管理をしてもらえばいいじゃないか」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

新しい管理会社に見積もりを依頼した際、かなりの確率で管理会社変更の経緯を聞かれます。

現管理会社の費用が高かったり、対応が悪かったりなど納得のいくような理由なら、見積もりを提出してくれるでしょう。

「居住者のなかに過剰な要求をされる方がいて、もう管理を続けられないと言われてしまい……」

こう伝えると、管理を引き受けてくれない可能性が高いです。

管理会社同士、横のつながりがある会社も多いですから、場合によっては今の管理会社にこっそり状況を聞く会社もあるかもしれません。

 

つまり「過剰要求による管理を続けられない」という理由で管理会社が手を引くことは、そのあと管理を引き受けてくれる管理会社がいなくなる可能性を高める原因となり、そしてそれはマンションにとって重大な話なのです。

 

かと言って、「うちにはクレーマーなどいない」と虚偽の話をして見積もりを取得してはいけません。
すぐにばれてしまいますし、信用を失くしてしまうでしょう。

 

管理会社へ過剰要求をする人がマンション内にいる場合は、理事会メンバーが間に入りながら解決を図っていくことをお勧めします。

そうしないと、管理を引き受けてくれる会社がいなくなってしまうということが起きかねません。

 

クレーマー関連の課題を解決できるとしたら、管理会社側ではなく管理組合の理事の方々であることの方が多いのです。

関連記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説

関連記事:マンション管理組合の役員は義務?断れない?役員になるメリットなどもいっしょに解説!

その他

住み込み管理員を配置していたが、管理員さんが辞めてしまい、体制を維持できなくなった

住み込み方式をやめ、通勤方式に切り替えることを管理組合が了承すれば、管理を続けられるケースがほとんどです。

ずっと管理員さんが住み込みでいてくれたことの安心感は大きいでしょうが、働いてくれる方がいなければ元も子もありません。

今の時点で住み込み方式のマンションの方は、いずれ迎えるであろうその時に備えて早めに通勤方式への切り替えの検討を進めておいた方がいいでしょう。

管理会社からマンションまでの距離が離れており、非効率

こればかりは対応のしようがありませんね。

るべく管理会社の担当者がマンションに来なくとも管理業務を円滑に行えるよう、協力できるところは協力してあげましょう。

管理費などの徴収方法や、決算書類の作成ルールなど、物件特有のルールがあり、他のマンションと比べ特殊なやり方での処理を求められている

こちらは対応のしようがあります。

たまに、一般的なマンションとは異なる処理を長年続けているマンションをたまにお見受けします。

 

特に多いのが会計処理に関するケースです。
管理組合の会計は発生主義を採用しながら、一部に現金主義が混在する処理をしているのが一般的です。

会計に詳しい人が理事になったりすると「この処理方法はおかしい」といって管理会社に決算書を作り直させるケースがあるようです。

そのような場合、管理会社からすると他のマンションと異なる処理をさせられ、システムが対応していないこともあるため、人手がかかり、ミスも多くなります。

 

もし管理会社から「あなたのマンションは他のマンションと比べてかなり特殊な処理をしているため、他のマンションと同じようにさせてもられないか」という相談があった際は、柔軟に対応することをおすすめします。

実際に更新拒否されてしまった場合に管理組合がすること

実際に更新を拒否されたら、とにかく急いで善後策を講じることが重要です。

管理会社によって違いはあるようですが、更新しない旨を契約期間満了の3カ月前に通告してくるケースもあります。

管理委託契約での取り決めがそのようになっていれば管理会社を責めることはできません。

管理組合側はこの3カ月の間に後継管理会社を見つけ、契約締結までしておかなくてはなりません。

 

仮に、現在の管理会社の契約満了日までに次の管理会社が見つけられなかった場合、暫定契約という形で3か月ほど契約期間を延長してくれる管理会社もあります。

 

しかし、最悪のケースは契約を延長せず、そのまま強制的に自主管理状態となるケースでしょう。
こうなると管理組合は非常に危険な状態になります。

管理費や修繕積立金もまともに集められませんし、維持管理も誰もしなくなるため、各家庭から出されるごみが溜まったり、設備が壊れても放置されてしまったりします。

 

そのうちに誰が所有者なのか分からない部屋が出てくるかも知れません。
いわゆる管理不全状態になる可能性が高いです。

関連記事:マンションの耐用年数は何年?耐用年数の延ばし方や減価償却との関係を解説!

「更新しない」と言われたら連絡を

ご安心下さい。

管理会社から更新をしないと言われたら、とにかく早く弊社にご連絡ください。

元々弊社のクラセルはこのようなマンションが増えてくるだろうという予測のもと、サービスを開始した経緯があるのです。

  

弊社はこのようなケースのご相談にたくさん対応してまいりました。
マンションの状況をお聞きしたうえで、最適と思われる管理プランをしっかりとご提案させていただきます。
提携している管理会社へ、今までと同じように総合管理という形で管理してもらうご提案も可能です。

とは言え、いくら弊社であっても、「来週から自主管理になってしまうからそれまでに管理会社を見つけてくれ」と言われても対応しきれません……。

とにかく、このような事態になったら一日でも早く弊社へご連絡いただけますと幸いです。

まとめ

今回は管理会社が管理契約を更新しない場合のお話でした。

このような申し入れを受けてしまったマンションはバタバタと慌ただしくなります。

普段、お仕事をしながら後継の管理会社を探し、対応をするというのは思っていた以上に大変だと感じるかも知れません。

 

また、何とか管理を引き受けてくれるマンションが見つかったとしても管理委託費が大幅に上がり、結果、管理費の値上げを伴うケースもあります。

今まさにこのような申し入れを受けてしまっているマンションは、正直もう仕方ないと言えるかもしれません。

しかし、まだそのような話は出ていないマンションの方は本コラムに記載した「更新拒否をされないようにするために管理組合ができること」を少しでも意識しておくと将来的に更新を拒否される可能性が低まるでしょう。

「万が一更新拒否を言われた場合は、どう対応するか」をあらかじめイメージしておくことをおすすめします。

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