マンションの大規模修繕で注意すべきことは?費用・周期・時期について

あらゆるものが年月を経るごとに劣化していきます。

マンションもその例に漏れず、経年以外にも雨風に直接晒されたりする影響もありその劣化はとても激しいもの。
その劣化を治すための大規模な工事を「大規模修繕」と呼びますが、具体的にどれくらい費用がかかるのか、いつ頃どれくらいの周期で行うのがよいのかなど知らない方も多いのではないでしょうか?

今回は大規模修繕で注意すべき点や費用、時期などについて解説していきます。
マンションの劣化は売却時に直接関わってくる部分のため、しっかりと知識を蓄えて今後に備えておきましょう。

マンションの大規模修繕とは?

大規模修繕とは、経年に伴い劣化したマンションの建物や設備を定期的に修繕することです。

特に、普段実施するのが難しい大がかりな建物本体(躯体)を維持するための修繕や共用部分の改修をいいます。
何年ごとに行うかはマンションによって異なりますが、12年から16年程度の周期で行われるのが一般的とされています。なお、修繕工事と改修工事の違いは以下の通りです。

修繕工事…経年や、何らかの外的要因によって劣化・不具合が発生した建物や、建物の一部・設備・部材などに対して、修理や取り替えなどの処置を行い、問題部分の性能や機能を支障なく利用できる状態にまで回復させる目的で行う工事。

改修工事…建築されてから何年も経ち劣化がすすんでいたり、何らかの理由で不具合が発生した場合に、建物の一部・設備・部材などに対して、修理や取り替えなどの処置を行うこと。
これは問題部分の性能や機能が、支障なく利用できる状態にまで回復させる、という目的で行います。

修繕工事は「リフォーム」改修工事は「リノベーション」といった方がイメージしやすいかも知れませんね。

なぜ、マンションは大規模修繕が必要なのか?

大規模修繕を行わないまま劣化を放置した場合、発生する恐れのある問題は大きく分けて2つあります。

  1. 排水設備などの不備による生活の支障
  2. マンション全体の資産価値が下がる

排水設備などの不備による生活の支障

マンションに設置されている給排水設備の修繕工事を怠ると「ある日突然水道の水が出ない」「トイレが流せない」などの事態が生じる可能性があります。

また、エレベーターや機械式駐車場なども同様です。ある日突然エレベーターが止まってしまったり、自分の車を出庫できなくなったりと、定期的な修繕工事を行わないと大きなトラブルに発展しかねません。

マンション全体の資産価値が下がる

大規模修繕を行わないままマンションの建物の経年に伴う劣化を放置すると、見た目やイメージが悪くなったりすることがあります。
また、故障や不具合だけでなく、付属する設備の仕様が古くなり、生活に不便さを感じる原因にもつながります。

マンションの住宅としての暮らしやすさが損なわれると、マンションそのものの価値も下がってしまいます。そうなると売却時や賃貸として貸し出す際、価格や家賃を下げざるを得なくなってしまうのです。

また、外壁の劣化を放置するとタイルの落下事故が起きることも予想されます。

大きな事故を防ぐためにも、大規模修繕は非常に大切なのです。

マンションの大規模修繕工事の内容は?

マンションの大規模修繕は、1回目と2回目で工事内容が異なります。

大規模修繕はおよそ12年くらいの間隔で行われます。1回目と比べて2回目、3回目と回を重ねるごとに劣化が激しくなるため、その分修繕する場所も増えるというわけなのです。

【1回目の大規模修繕】

大規模修繕工事は複数のステップに分けて行われます。

1回目の修繕は、主に以下の流れです。

  1. 仮設工事
  2. 下地補修工事
  3. タイル補修工事
  4. シーリング工事
  5. 外壁塗装工事
  6. 鉄部塗装工事
  7. 防水工事

ステップ①:仮設工事

最初に行なわれるのが「仮設工事」です。

仮設工事とは、建築工事期間中に使用する施設や設備の施工のこと。
仮の囲いや養生(建物を覆うシート)、工事用の電力・用水などを設置します。

また、仮設工事では外壁塗装に用いる足場も建設するため窓のすぐ外で人が作業したり、日差しがさえぎられたりする場合もあるため住民に対しても周知しておくとよいかもしれません。

ステップ②:下地補修工事

続いて「下地補修工事」が行われます。

下地補修工事とは、外壁や屋根を塗装する前に細かい劣化やひび割れなどを補修する工事のこと。
下地補修工事は、マンションの外観を保ったり強度を上げたりするだけでなく、塗装の仕上がりを左右する重要な工事です。

なお、この段階でも窓のすぐ外で人が作業したり、日差しがさえぎられたりする場合があります。

ステップ③:タイル補修工事

続いてタイル補修工事を行います。タイルの補修工事は、タイルの劣化や浮きを補修する工事です。

見た目に問題がなくとも、調査診断で見つかるタイルの浮きは少なくありません。外観だけではなく、タイルの落下による危険性を防ぐ工程となっているためマンションの大規模修繕工事においては必須といえます。

なお、タイル補修工事も外壁に関する工事のため、窓のすぐ外で人が作業したり、足場で日差しがさえぎられたりする場合があります。

ステップ④:シーリング工事

外壁のベースを補修し終わったら、シーリング工事に入ります。

シーリングとは、外壁のタイルとタイルのつなぎ目にあるゴムのような素材のことです。
シーリングの剥がれやヒビを補修することで建物内部や鉄部への浸水を防ぎ、建物の劣化が防げます。また、シーリングの補修は建物の気密性を高めて、断熱性の向上も期待できる工程です。

なお、この工程ではベランダや窓の外、玄関前の廊下などに作業員が出入りします。

ステップ⑤:外壁塗装工事

外壁の塗装工事はマンションの外観を保つ以外にも、防水性や断熱性を保つ役割を担っています。

外壁塗装には「上塗り」「中塗り」「下塗り」という3つの工程があり、各工程は外装が乾かないと次の作業へすすめません。

中塗りから塗料が乾燥するまでの3日間は匂いが気になる場合もありますし、塗料を吹き付けて塗装する場合はスプレーの音が気になる場合もあります。
匂いや音に敏感な方は窓を開けず、窓から遠い部屋で過ごしたり、休日は外へ出かけたりするなどの対策を取ってもらった方が好ましいでしょう。

ステップ⑥:鉄部塗装工事

外壁塗装が終わったら「鉄部塗装工事」に入ります。ここまでくると大規模修繕もいよいよ終盤です。

鉄部の塗装工事とは、扉や外部の階段、手すりなどに使用されている鉄部分の塗装を施す工事のこと。見た目や耐久性を保つため、ひいてはマンションの資産価値を保つためにかなり重要な工事内容といえるでしょう。

錆が発生しているところは、ブラシを用いて錆を落としてから塗装していきます。

また、鉄部塗装も外壁塗装と同様、音や匂いが気になる場合があるところが留意点です。

ステップ⑦:防水工事

ここまで進んだら最後に防水工事を行って終了です。

防水工事とは、屋上や各部屋のバルコニー、廊下といった箇所を雨水や汚れからコンクリートを守るための作業です。
防水工事には、シート防水やFRP防水などあらゆる種類があり、その種類によって見積もりや工法が変わります。

【2回目以降の大規模修繕】

2回目の大規模修繕は、1回目に比べてより踏み込んだ工事が必要となります。

工事内容や流れは大きく変わりませんが、12年と24年では建物の劣化具合が異なります。
建設されてからずっと紫外線や強風、雨に晒されているため、やはりどうしても年月を経るごとに劣化が激しくなってしまうのです。

そのため、同じ工事でも2回目の方が工事期間も長く、費用も高くなる傾向にあります。

また、3回目以降の大規模修繕となると排水管やサッシ、電気設備などの工事を実施することもあるほか、バリアフリー設備を増設する可能性も出てくるでしょう。
そうなるとさらに費用がかかることを想定しておかなければなりません。

マンションを大規模修繕する場合の工事期間について

工事着手から完了までの期間はマンションの規模によって異なります。

一般的には50戸程度のマンションなら3カ月~4カ月、100戸程度なら6~8カ月が目安となります。

なお、上記は着工開始から工事完了までの期間です。大規模修繕工事の場合、工事の計画から着工までは通常1年~1年半かかるとされています。

マンションを大規模修繕する時期はいつが良いの?

たとえば、大規模修繕工事の一つである外壁塗装の工事周期の目安は10年とされています。
屋上防水、バルコニー床防水工事の周期は12年です。

かといって新築から10年目に外壁塗装だけ実施し、その2年後に防水工事を行うのは明らかに非効率といえます。また、別に発注することで費用も高くなってしまいます。
これは、別々に発注すると現場人件費や資材置場、業者用駐車場の確保など、工事を行ううえで基礎的な費用がそれぞれにかかってしまうためです。

そのため多くのマンションでは、これらの工事を12年でまとめて実施するよう計画しているケースが多く見受けられます。
もちろんあくまでも目安のため、それぞれのマンションにおける工事対象箇所の劣化状態を見ながら実施時期を前後にずらす対応が必要でしょう。

たとえば塩害が予想されるような海辺と、雨も日照も標準的な地域では建物の経年劣化の度合いに大きな差が出る傾向にあります。

12年周期をベースにしながら、状態によって工事時期を早めたり遅らせたりする対応、判断を心がけましょう。

マンションを大規模修繕する費用の相場について

マンションの大規模修繕では、一戸あたり75万円~125万円の費用がかかります。

令和3年に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば以下のとおり、半数以上が一戸あたり75万円以上の費用を負担していることがわかります。

負担額割合
50~75万円の負担13.8%
75~100万円の負担30.6%
100~125万円の負担24.7%
参考資料:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査」
2022年公表,<https://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf>

マンション全体の金額だと中央値で7,600万円~8,700万円程度。
平均値で1億1,000万円~1億5,000万円になる計算です。

なお、金額はいずれも共通仮設費は含まれていません。

マンションの大規模修繕時の注意点について

大規模修繕時において注意しておかなければならないことは、各作業段階でいくつか存在します。

この章では大規模修繕における流れと、その各段階ごとの注意点を説明していきます。

1.検討前の管理組合内における体制づくり

まずは、管理組合内での体制づくりを行います。

理事会が主導する場合も多いですが「修繕委員会」といった専門委員会を設置する場合もあります。
通常の組合運営業務も担当しているのが理事会です。

そこに大規模修繕工事の準備まで業務に加わるとその量は膨大なものに。
そこで、理事会の下部組織として設置されるのが「修繕委員会」です。

修繕委員会は大規模修繕工事に関わる業務を担当し、工事に関する内容の検討をしたのちに理事会へ提案をします。最終的な方向性を決定するのは理事会ですが、そこに至るまでの業務的な役割は準備段階から完工まで修繕委員会が担っており、工事全体に深く関わってきます。

修繕委員会メンバーに専門的な知識を持っている人がいると心強いでしょう。
修繕委員会を結成する際には、過去に大規模修繕工事を経験した方や、建築関係に明るい方がいれば声をかけてみるのもよいかもしれません。

また、修繕委員会は必ず設置しなければいけないという組織ではありません。管理組合の実情に応じて対応していきましょう。

また、たとえば修繕委員会を設置しないかわりにほかの対応をしているところもあります。
たとえば、引継ぎ時のロスを減らすため大規模修繕工事を機に理事の任期を1年から2年に変更、半数交代制にするといった対応をとっている管理組合もあるようです。

2.工事の発注方式の決定

大規模修繕の代表的な発注方式は以下の3つです。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分にあった方法を選ぶことが大事となってきます。

責任施工方式

施工会社またはマンション管理会社1社とのみ工事請負契約を結ぶ方式です。

直接契約するため「劣化診断」「修繕計画」などの管理・窓口が一本化されるという点が主な特徴です。それにより管理組合側が工事状況などを把握しやすかったり、コンサルタント費用が発生しないというメリットがあります。

ただし、第三者のチェックがないため、手抜き工事による品質低下や適正な工事が行われたかといった判断が難しくなり、公正性・公平性が保ちにくいというデメリットがあるとも判断できます。

そうすると管理組合での検査をしなければならず、負担となるという面も持ち合わせているため注意が必要です。

設計監理方式

設計監理と工事請負を分ける方法です。

設計監理業務はコンサルティング会社と契約を結び、工事は工事施工会社と請負契約を結びます。

コンサルタントが入ることで、管理組合の予算や要望に合わせた設計内容に調整することができ、適正な工事を行うための精査が可能です。管理組合にとっては透明性が担保されるので、合意形成もしやすくなるというメリットがあるといえます。

デメリットとしては工事費の他にコンサルタント費が発生することです。

また、設計コンサルティング会社と施工会社が癒着したり、施工会社間で談合が行われたりという不適切なケースも少なくありません。

アドバイザー方式(プロポーザル方式)

基本計画立案及び業者選定補助業務契約、工事監理契約の2つの契約をコンサルティング会社と結ぶ方式です。

施工会社決定後に工事請負契約を交わすため、コンサルティング会社と施工会社との癒着を防ぐことが可能といえます。

コンサルタントのアドバイスを受けながら基本計画書を決定するので、管理組合の要望が反映されやすくなり、予算管理が可能となります。
施工会社の見積り比較がしやすく、施工会社の実力を理解するとともに高い品質を担保できることがメリットです。その分、マンション管理組合には設計、工事監理に能動的に関わる姿勢が求められます。

発注方式をどうするかは大規模修繕工事における大切なポイントのため、協議を重ねて慎重に検討しましょう。

また、管理会社に管理業務を委託しているマンションの場合、管理会社にどう関わってもらうかも重要なポイントです。

そのマンションのことを熟知しており、何かトラブルがあった際の対応力は管理会社が最も高いと言えます。そのため、管理会社に何らかの形で工事に関与してもらう方が望ましいでしょう。

しかし、管理会社に発注することで費用が割高になる場合も考えられます。

3.建物診断の実施

パートナーを決めたら、次に行うのは建物診断です。

調査員が実際に建物を訪問し調査を行います。建物に現れる様々な変化から、どこにどのような劣化症状がでているのか、また補修の緊急度はどの程度か、目視や機械調査も併用して判定していきます。

調査で得られた結果は大規模修繕工事の時期や工事内容を決定するベースとなります。

修繕の第一歩は現状を知ること。この段階で行う診断が後の工事に関係するということを理解して、疎かにせずしっかりと建物診断を行いましょう。

4.修繕計画・予算を立てる

建物診断で建物の現状がわかったら、次に工事の実施時期や工事内容を検討していきます。

建物診断で劣化が進んでいると判定された箇所は優先的に修繕計画に組み込んでいく必要があります。

対して、状態の良い箇所は次回の大規模修繕工事まで維持できるような処置に留め、その分の費用で要望の多い改良工事を実施するなどメリハリをつけた予算の使い方を考えていくことが大切です。

また、大規模修繕工事の資金には修繕積立金が充てられますが、積立金が不足している場合には工事内容の見直しや不足分の工面、または工事の時期自体を見直すなどの対応策を検討する必要があります。

同時に、修繕積立金は将来的に予定されている工事のための費用でもあるため、目の前の工事に留まらず、将来的な計画まで踏まえて使い方を考えていかなければなりません。

今後20年~30年にわたる収支の状況は長期修繕計画で確認ができます。大きな金額が動く大規模修繕工事の際には必ず見直しを行いましょう。
将来的に積立金の不足が予見される場合には、管理費会計を含めた費用の見直しも必要です。

5.施工会社の選定

工事の内容や予算が決まったら、施工会社の選定に移ります。
どこに工事を依頼するのかは、複数の会社から見積もりを出してもらい比較検討をするのが一般的です。

施工会社を決定する際、費用は非常に重要な判断材料のひとつです。しかしそれと同時に、これまでの施工実績や経験、工事への意気込み、また経営の安定性もしっかり見て総合的に判断することが大切です。

工事の仕上がりは建物の耐久性や資産価値にも影響します。補修が適切に行われていないと劣化症状がすぐに再発し、結果として余分な費用や手間がかかるといったことにもなりかねません。
また、施工会社とは工事中はもちろん、施工後もアフター点検などを通じて長年にわたる付き合いがあることを想定して会社を選ぶ、対応していくということが重要なポイントといえるでしょう。

6.総会決議

大規模修繕工事についての概要が決まったら、総会を開催します。
組合員に向け、修繕の目的や費用、期間など工事計画の概要について報告をします。
この総会で組合員の承認を得てからようやく、正式に工事の発注ができるようになるのです。

大規模修繕工事は組合員の理解を得ないと実施することはできません。
そのため、選考や決定の過程においても公平性・透明性が保たれていることがとても大切です。

建物診断でわかった建物の劣化状況、工事の方向性、予算の用途、施工会社の選定理由など、理事や修繕委員など関係する方たちの間では十分に議論を重ねていると思います。
しかし、それだけでなく組合員に向けてもわかりやすく明確に説明ができるように準備をしておきましょう。

また、総会に至るまでの過程においても、報告会や広報誌の作成、場合によっては臨時総会を開催し、組合内での意見の吸い上げや調整を行いましょう。

準備の段階でこうしたコミュニケーションを丁寧に行うことが組合員の合意形成を促す上でとても大切です。

7.工事説明会の実施

総会で大規模修繕工事実施の承認が得られたら、決定した施工会社と契約を締結し、工事の準備に入ります。

着工の1ヵ月程度前に工事説明会を実施し、組合員や居住者に工事の概要や注意点などを説明します。
特に安全上の留意点や対策、日常生活への影響については時間をとって丁寧に説明しましょう。
大規模修繕工事は住みながらの工事になりますので、住んでいる人たちの理解・協力が欠かせません。

ここで上がった意見や懸念点はパートナーや施工会社にも共有し、極力生活に影響がでないよう対応策を検討しましょう。

8.着工

工事説明会、そして近隣への挨拶などが済んだら、いよいよ着工です。

大規模修繕工事の場合、事前に綿密な施工計画を立てていたとしても、実際に施工箇所を確認して初めてわかる不具合などがでてきます。

工事期間中は理事会や修繕委員会とパートナー、施工会社とで定期的に打ち合わせを行いましょう。

変更箇所の確認や工事の進捗、住民からの要望などを共有し、工事がスムーズに運ぶよう各種調整や意見交換を行います。

同時に、居住者へ向けた広報活動を欠かさないようにすることも大切です。

工事中は大きな音がしたり、多くの作業員や工事車両が出入りしたりと、自身を取り巻く環境が普段とは大きく変化します。ストレスを感じる方も出てくるため、生活への影響を極力抑える配慮が特に必要となります。

特に、居住者の生活に直接影響のある事柄や安全に関する注意点は、工事中に設置される掲示板や各戸への案内チラシの配布なども使い、必ず事前に知らせましょう。

工事中でも居住者が安心して生活できる環境を整える姿勢や配慮が運営側への信頼につながり、工事に対する居住者の理解や協力につながるのです。

9.竣工・引渡し

工事の終盤、施工箇所について管理組合、パートナー、施工会社で確認を行うことを「竣工検査」と呼びます。

竣工検査を経て無事に工事が完了すると竣工・引き渡しです。
竣工時に受け取る「竣工図書」は、マンションを維持管理していく上での重要な記録。大切に保管しておきましょう。

大規模修繕の騒音対策について

マンション大規模修繕では様々な音がどうしても発生してしまいます。
作業で用いる機械のドリル音や金属音はもちろん、作業員の声、エンジン音など挙げればきりがないほど。

しかし、静かに工事を行うということは不可能です。そのため、極力トラブルを起こさないよう万全な騒音対策を業者側は行わなければなりません。

また、その対策は施工業者側はもちろん、居住者側もある程度考えておく必要があります。
それぞれの立場でできる防音対策法を下記で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

騒音トラブルにならないための対処法 ~施工者側~

音が発生する工事は大規模修繕では必要不可欠なものばかりで、控えることはできません。
そこで施工者側が行うべき防音対策法として、まずは「居住者と近隣住人に騒音がする工事があると事前に知らせること」が挙げられるでしょう。

大規模修繕の着工前には工事説明会を開催するので、その時点である程度騒音が発生する旨と工事内容を説明します。
それと同時に、近隣住人へ挨拶へ向かう際、挨拶文とともに騒音などの留意事項をしっかり説明しておくことが重要です。挨拶文には、工事を実施する期間と時間帯を大きく明記するほか、現場責任者の連絡先も明記しておきます。

工事が始まっていても、大きな騒音が発生する工事を行うときは事前にエントランスやエレベーター内に案内文を掲示して注意喚起しておきましょう。

近隣住人に対しても挨拶文を配布するほか、防音シートを貼るなどの配慮は必要です。

このように事前に知らせておけば、住人側もある程度の備えができるようになります。
その結果、トラブルや苦情の発生を極力押さえることにつながるのです。

騒音トラブルにならないための対処法 ~居住者側~

騒音に対して最も影響を受けるのが居住者です。

騒音が発生する工事を行うときは、施工業者から事前にお知らせがあります。
そこである程度騒音が発生することが想定できるため、事前に対処がしやすくなっています。

居住者の方は以下のような対処法を実践することをおすすめします。

工事中の音が気にならないように生活する

ここまで説明した通り、大規模修繕の工事期間中はどうしても騒音は発生してしまいます。

ずっと発生するわけではありませんが、基本的に工事期間中は何かしらの音は発生すると思っておいた方がよいでしょう。その場合、なるべく音が気にならない環境を整えて生活することが重要になります。

たとえば「テレビの音量を上げる」「好きな音楽を流す」「掃除をする」などです。殊更大きな音は別ですが、工事中の音が気にならないように生活することで感じるストレスを少しでも軽減することができるかもしれません。

我慢できないときは「一時退避」

工事中の音が気にならないよう生活していても、やはり多かれ少なかれどうしてもストレスは溜まるもの。日常と異なる環境下にいるため、それは当然のことです。

こういった生活や騒音を我慢し続けるとさらにストレスが溜まります。限界を迎える前に、外出するなど一時退避することをおすすめします。これが一番の対処法です。

いきなり外出できない方もいるかもしれません。
そのため、当日に予定を決めるのではなく、事前にお知らせを確認しておきその日に予定を入れておくとよいでしょう。

できるだけ騒音から離れることが重要です。

また、夜間仕事をして昼間に寝ている方は「音がうるさくて眠れない」というケースが考えられます。
「騒音が発生する」と事前に告知があるほどの工事日は、夜間仕事のスケジュールを調整するか、それが無理なときは、睡眠がとれる場所を自室以外に確保するなどの対策が必要になるでしょう。

あると便利な騒音対策グッズを用意する

昨今では様々な騒音対策グッズが販売されています。

現在の壁は遮音性が高いため、ひと昔前と比べると騒音は軽減されます。
しかし、それでも気になる方は以下のような騒音対策グッズを用意してみるのもよいかもしれません。

  • 防音カーテン
  • 防音イヤーマフ(ヘッドホンのような耳全体を覆う防音保護具)
  • 耳栓

大規模修繕も工事である以上、どうしても騒音は発生してしまいます。
騒音が気にならないで済むような工夫を生活する上で心がけるほか、最も有効な対処法は外出することでしょう。

マンション大規模修繕にトラブルはつきもの。中でも最も多いトラブルが、騒音に対する苦情です。
夜間働いている方や在宅で仕事をしている方には、仕方がないといっても騒音は迷惑以外のなにものでもないでしょう。
大規模修繕で騒音が発生する工事はどれも必要不可欠な工事のため、トラブルが発生しないように対策を施す配慮が必要です。

「施工業者側は事前に告知をする」「住人側は音を気にしない」。これらがトラブルが発生しないようにする一番の対策法といえます。

賃貸マンションでも大規模修繕工事は必要?

ここまで、分譲マンションにおける大規模修繕工事を前提とした内容で説明してきました。
しかし基本的には賃貸マンションであっても同様です。

建物の維持管理の面からは12年周期を目途に大規模修繕工事を実施するのが望ましいでしょう。

賃貸マンションが分譲マンションと異なるところは「購入ではなく、借りて住んでいる」という点です。
大規模修繕を理由に退去をされてしまったり、さらにそこが空室のままなかなか次の借り手が決まらなかったりなどの事態が想定されます。
分譲マンション以上に、居住者へ向けての丁寧な説明が必要かも知れません。

さいごに

大規模修繕工事は専門的すぎて自分ではとても…と躊躇される方も多いですが、自身の資産を守る一環としてとらえて携わってみると、また違った一面が見えてくるかもしれません。
実際、大規模修繕工事にたまたま理事として関わったことで、自分のマンションや管理組合の運営について真剣に考えるきっかけになったという話も伺います。

管理方法を見直した際「管理会社にそのまま頼み続けるのは費用がかかりすぎる。かといって自分たちだけで管理できるのか」と頭を悩ませることがあるかもしれません。
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大規模修繕工事は建物の劣化を防ぎ、維持管理していくため必要な工事です。しかし同時に、マンションにとっては、今後の方向性を決定づけていく大きなターニングポイントでもあります。
工事の内容を組み立てていく上で、資金面での検証や現状とのバランス、マンションの将来像など様々な可能性を検討して進めていく必要があるためです。

建物としての資産価値向上を目指すことはもちろん、大規模修繕工事をマンション内部の活性化や将来像を考えていくための大きなチャンスととらえ、管理組合として上手に活用していきましょう。