最近よく聞くマンション管理適正評価制度とは?評価項目やメリット・デメリットまで徹底解説
「マンション管理適正評価制度」という制度をご存知ですか?
この制度は2022年4月から始まったもので、マンション管理会社の社員の間では話題になることが多いものの、一般的にはそこまで認知は広まっていません。
似ている制度に「マンション管理計画認定制度」があります。
言葉は似ていますが、この2つには明確な違いがあるのです。マンションに住んでいる方や、マンション管理に少しでもたずさわる方であれば、知っておいて損はありません。
今回は、マンション管理計画認定制度の概要やメリット、「マンション管理計画認定制度」との違いなどを解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
INDEX
マンション管理適正評価制度とは?
マンション管理適正評価制度とは、マンション管理業協会による評価のことです。
マンションの管理状態を数値化し、その情報を公開することにより、管理の適切性が市場で評価される仕組みを目指すために施行されました。
マンションの一般情報のほか、管理・運営状態を100点満点で点数化。
点数によって6段階のランクで評価されます。
マンション管理適正評価制度はなんのためにあるの?
マンション管理適正評価制度は、適正なマンション管理の促進と、良質な管理をしているマンションが市場で正しく評価されるようになることを目的としています。
これまでは管理状態に関する明確な基準が存在していませんでした。
「うちのマンションは管理が行き届いている」と言ったとしても、その基準は人によって違います。
はっきりとした基準がなかったため、本当に管理が行き届いてるかどうか、客観的な判断がつかなかったのです。
マンション管理適正評価制度が始まり、マンション管理業協会が新たに基準を設定したことで、ようやくマンションは適切な管理をしているかどうかの客観的な判断がつけられるようになりました。
評価は6段階で行われます。評価結果は総会の決議などを通したあと、ネット上で公開することが可能です。
老朽化したマンションのスラム化を減らすことで、適切なマンション管理を促し、市場における正当な評価へとつなげることを目的としています。
関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?
マンション管理適正評価制度と管理計画認定制度の違いとは?
マンション管理適正評価制度と似たような制度で、「マンション管理計画認定制度」があります。
この制度はマンションの管理不全化を防ぐ目的で制定されました。
2つの制度の違いは以下の通りです。
管理計画認定制度 【国の制度】 | 管理適正評価制度 【管理業協会の制度】 | |
目的 | マンションの管理不全化防止のため | 管理の適切性が市場から正しく評価される仕組みを構築するため |
対象 | 既存マンションが対象(管理組合が設立されているマンション) ※新築マンションは、予備認定を導入 | 既存マンションが対象(管理組合が設立されているマンション) ※新築マンションについては検討中 |
法令の有無 | マンション管理適正化法で定められている | なし |
管理組合のメリット | ・2023年募集分からマンションすまい・る債の利率の上乗せがされる(上乗せ幅は各年度募集分の利率決定時に決定) ・住宅金融支援機構のマンション共用部リフォーム融資の融資金利が年0.2%引下げられる(2022年10月1日以降申込み受付分から) ・金利優遇(フラット35【維持保全型】の借入金利を当初5年間0.25%引き下げ) ※予算金額に達した場合は受付終了となる可能性あり ※新築マンションの予備認定についても同様の金利優遇が受けられる | ・管理状態をカテゴリー別に数値化することで、適正な管理状態のために必要な課題が見えてくる ・適切な管理を維持することで市場において評価される可能性がある |
開始時期 | 2022年4月から順次開始 ※地方公共団体により異なる | 2022年4月から全国で開始 |
登録期間 | 5年ごとに更新 ※変更があった場合は変更申請を行う必要がある | 1年ごとに更新 |
登録料 (地方公共団体・協会等へ) | ・マンション管理センター経由:マンション管理センターシステム利用料(10,000円)+マンション管理士事前確認審査料(10,000円)+地方公共団体手数料 事前確認審査料は2022年度無料 ※地方公共団体手数料は地方公共団体により異なる ・直接地方公共団体へ申請:25,000円程度(地方公共団体による) | 管理業協会への登録料:税込5,500円(2022年度は無料) |
申請方法 | ・マンション管理センターのシステム経由で申請 ・地方公共団体へ直接申請 | 協会の独自システムによるオンライン申請 |
申請主体 | 管理組合 | 管理組合 |
登録補助者 | 管理会社の担当者 | 管理会社の担当者(管理業協会の評価者講習を修了した管理業務主任者、またはマンション管理士) |
評価基準 | 国が指定する16項目の基準を達成したうえで、地方公共団体の上乗せ基準をクリアすることで認定される | 加点方式 0〜100点のうち得たポイント総数をもとに、星0〜5の6段階に割り振られる |
決議方法 | 総会決議 ※規約で理事会決議と定めた場合、理事会で申請を決議することも可能 | 総会決議 |
ポイント | 16項目全てで基準を満たす必要がある。大きなポイントとしては下記のとおり | 加点方式になるため、高評価を得るためには、以下のポイントが重要 |
■長期修繕計画 ・「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され長計が総会承認されていること ・適切な修繕項目(19項目)が明記されていること(例外あり) ・長期修繕計画上の修繕積立金の月当たりの㎡単価が記載されていること ⇒持分割合で算出されている長期修繕計画は認定外 ・修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと ■管理規約 ・マンション標準管理規約23条、32条、64条が標準管理規約に準拠していること ■その他 ・各証票書類の提出が必要 | ■長期修繕計画 国の基準を満たしたうえで、積立方式が均等積立方式となっていると高得点につながる ■管理規約 国の基準を満たしたうえで複数の条文の準拠が高得点につながる ■組合収支 管理費等の滞納が少ないと高得点につながる ■その他 ・各証票書類の提出が必要 |
関連記事:マンション管理の委託費用の相場とは?
関連記事:マンション管理計画認定制度とは?認定の受け方やその他評価との違いを解説
管理適正評価制度っていうけど、なにを評価するの?
管理適正評価制度の目的などを前章で解説しました。
では、具体的にどのような評価項目があるのでしょうか。
この章では評価項目や評価者など、具体的な内容について説明していきます。
マンション管理計画認定制度のチェック項目
マンション管理適正評価制度の評価項目は下記5つのカテゴリーに分類されます。
・「管理体制関係」
・「組合収支会計」
・「建築・設備」
・「耐震診断関係」
・「生活関連」
管理体制関係(20点)
理事長含む管理者に関する規定や、総会の開催、議事録の保管、規約が標準管理規約に準拠しているか、などが評価項目です。
組合収支会計(40点)
一般会計に余剰金はあるか?滞納している住戸は何%程度か?(またその滞納期間)、修繕積立金の徴収方式についてなどを評価項目としています。
5つの項目のうち、配点が40点と最も高いのが特徴です。
修繕積立金の項目で満点を取るには、たとえば下記のような条件が必要になります。
・均等積立方式による徴収
・長期修繕計画期間の推定工事費を積立金累計額が上回る
・組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入通りに徴収
建築・設備(20点)
長期修繕計画の有無や期間、見直しの頻度、竣工図書や修繕履歴の保管についての評価項目です。
国土交通省による長期修繕計画のガイドラインでは、5年ごとの見直しが推奨されています。
しかし、本評価項目では7年ごとと設定されています。
長期修繕計画の見直しは総会議決事項にもあたるため、2年の猶予を設け7年ごとの見直しを評価項目としているのです。
耐震診断関係(10点)
耐震診断の実施有無、またはその結果による改修計画の有無などが評価項目です。
生活関連(10点)
緊急時の対応、消防訓練の実施有無、防災マニュアルの整備状況などについての評価項目です。
6段階の評価はどんな点数配分なのか
マンションの管理状態の評価は、各項目の点数を足した合計点により、6段階で表示します。
ランク区分 | 得点 |
☆×5 | 90~100P |
☆×4 | 70~89P |
☆×3 | 50~69P |
☆×2 | 20~49P |
☆×1 | 1~19P |
☆×0 | 0P以下 |
だれが評価を行う?評価の時期は決まってるの?
評価にはマンション管理に関する知識、経験等の専門性並びに評価制度への理解が必要です。
そのため、マンション管理のエキスパートである「管理業務主任者」、またはマンション管理士の資格を有し、管理業協会が実施する評価者講習を修了した者でないと評価ができません。
なお、申請の時期は決まっていません。
マンション側の都合に合わせていつでも評価や申請を行えます。
管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度の連携は?
少し似ている制度ではありますが、今のところ評価結果に関する連携はしていません。
評価項目がやや異なるため、仮にどちらかの制度で高評価を取得したとしても、もう一方の制度で優遇されることはありません。
ただし、評価制度にあわせて管理計画認定制度を申請する場合、マンションの一般情報など、一部の項目が認定制度側のシステムに連携されるようです。
関連記事:マンション大規模修繕の適切な周期とは?目安は何年ごとの工事?
申請方法はこれだ!マンション管理適正評価制度の受け方
先述のとおり、申請のためには適切な評価ができる人へ依頼する必要があります。
管理会社に管理業務を委託しているマンションであれば管理会社に相談しましょう。
自主管理のマンションであれば管理業協会へ相談するとよいです。
大まかな流れとしては以下の通りです。
- 管理組合が評価者に対し、マンション管理適正評価制度における当該マンションの事前評価を依頼
- 評価者は事前評価の結果を、管理組合へ通知
- 管理組合は事前評価の結果を踏まえ、当制度への登録申請、情報開示について総会で決議
- 総会での決議を経て、申請者は適正評価制度への登録申請を評価者へ委任
- 評価者は、当協会の指定口座へ登録料の払い込みを行う
- 管理業協会は、登録料の入金確認をもって登録を完了。当該マンション情報を適正評価サイトに公開し、評価者へ通知
- 評価者は、登録完了・公開通知を受け、その内容を確認し管理組合へ通知
- 管理組合は、適正評価サイト上の公開内容および登録証をもって、登録完了を確認
マンション管理適正評価制度を受けるのに費用は発生する?
マンション管理適正評価制度では、登録料は5,500円(税込)と決められています。
しかし、評価者に対して支払う手数料や、登録申請代行の手数料などについては、管理会社や評価者ごとの自由設定です。
無償で対応する会社もあれば数千円~数万円の費用を設定している会社があるようです。
マンション管理適正評価制度を活用するメリット
マンション管理適正評価制度のメリットは以下の通りです。
市場価値の向上が期待できる
建物や管理組合の管理状態への評価が公開されるため、購入希望者や所有者が売買判断をしやすくなります。
情報を開示していないマンションに比べて、市場価値の向上が期待できるでしょう。
評価の有効期間が1年間と短く、最新の情報を確認できるのも魅力です。
管理組合の運営がしやすくなる
マンション管理適正評価制度では審査項目が決まっているため、管理組合の運営目標や課題が明確になります。
また、外部の評価を受けることで管理組合運営の改善・適正化につながります。
結果として、管理組合の運営がしやすくなるでしょう。
関連記事:自主管理マンションは売れない?売りづらい?買い手から敬遠されてしまう自主管理マンションとは
マンション管理適正評価制度を活用するデメリット
大きなデメリットはありませんが、強いて言えば費用や事務手続きの負担が発生するくらいでしょうか。
メリットが多いうえに、ほとんどデメリットのないマンション管理適正評価制度。一度、申請してみてはいかがでしょうか?
おわりに
管理適正評価制度の創設によって、マンションの老朽化抑制や維持管理の適正化につながる可能性があります。
不動産仲介物件のサイトの一部では、管理評価制度の点数を表示するなど、さまざまな取り組みが見られ始めています。
管理適正評価制度がどのように発展していくのか、今後も動向を注目していきたいと思います。