マンション管理費値上げ時の総会決議の進め方や反対されないためのポイントを解説
最近、管理会社から管理委託費の値上げの要請を受けた、というお話をよく見聞きします。
管理会社の下請先の値上げによる価格転嫁、管理員さんの人件費増加、管理会社の利益率改善など、理由はさまざまですが、管理費の値上げを伴うケースも多いようです。
今回は管理費の値上げが必要な場合の総会手続きの進め方について解説します。
INDEX
マンション管理費の値上げ背景
管理費の値上げが必要となる原因は、主に以下の通りです。
- 管理会社から管理委託費用の値上げ要請があった
- 電気代や火災保険料の値上がりがあった
- 駐車場の空きが増え、管理費収入が減ってしまった
- 消費税の増税
- 管理費滞納者の増加
特に影響が大きいのが①です。
管理会社に管理業務を委託しているマンションの場合、管理組合全体の支出のうち、管理会社に発注している金額の割合が多いため影響を受けやすいのです。
また、②や③もマンションによっては大きく影響を受けます。
詳しくは別コラムでも説明しておりますので、あわせてお読みください。
関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
マンション管理費の変更には総会決議が必要
管理費の値上げを決定するには、総会の決議が必要です。
国土交通省が作成し、公開している標準管理規約では以下のように定められています。
(議決事項)
標準管理規約
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
六 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
管理規約とはマンションの維持・管理、その他住民が快適かつ安全に生活を送るための基本的ルールを定めたもののこと。
中でも標準管理規約は、国土交通省が管理規約の標準モデルとして作成したものです。
管理規約を作成・変更する際の参考になるよう作られた標準管理規約に準拠したものを、多くのマンションは制定しています。
多くの場合は普通決議
標準管理規約の第48条はいわゆる普通決議について定めたものです。
普通決議の場合、議決権総数の半数以上が出席する総会において出席した組合員の議決権の過半数の賛成が必要となります。
場合によっては特別決議が必要になることも
標準管理規約とは異なる取り決めをしているマンションの場合、特別決議が必要となる場合があります。
また、管理規約そのものに管理費の金額が記載されている場合「管理規約の変更」との解釈になり、その場合も特別決議が必要な可能性があります。
ご自身のマンションの最新の管理規約をよく確認したうえで手続きを進めていきましょう。
関連記事:マンションの管理組合総会の進め方とは?総会の疑問を解消
値上げの議案書に書くべき内容
値上げ金額
当然ですが、値上げ金額は必ず記載しましょう。
各組合員の専有面積ごとに金額を変えているマンションでは、住戸ごと、もしくは㎡単価で金額を記載してあげるとわかりやすいかもしれません。
値上げする金額と値上げ後の総額の両方を記載しましょう。
値上げ実施日
管理費は毎月集められるのが一般的です。
管理費の徴収を口座引き落としにしているマンションの場合、値上げの実施日ならびに引き落としの日は議案書に記載して事前に通知しておきましょう。
値上げが必要である理由
単に値上げをすると伝えても、組合員からの賛成を得られない可能性があります。
納得して値上げを認めてもらわなければ、総会での決議は難しくなるでしょう。
「管理会社から管理委託費の値上げ要請があった。他の管理会社からも見積もりを取得したが、現在の管理会社の値上げ後の金額よりも高かったため、値上げを受け入れるしかないとの判断に至った」など、なぜ値上げに踏み切ることになったのか、理由の説明がとても重要です。
値上げに至った経緯
値上げの根拠とともに、総会で議案を提出するに至った経緯も記載しておくと、より納得感が高められます。
理事会や管理会社で話し合った内容などや交渉した結果なども記載できると、組合員の疑問を事前に減らせるはずです。
また、当日総会に出席できない組合員は、委任状や議決権行使書で賛否を表明します。
議案書を見るだけで議題の流れがわかるようにしておけば、組合員にとっても理事会にとっても円滑に決議が取れるでしょう。
妥当な値上げ金額は?
値上げ幅は、いくら~いくらの間だったらOKというような目安は特段ありません。
しかし、現状の金額の20%増くらいまでなら受け入れられる、という方が多いかもしれませんね。
なかには現状の2倍以上にしなければならない、というマンションの例もあるようですが、そうなると反対多数で否決、というパターンも多そうです。
マンション管理費の値上げにはリスクも伴う
さまざまな理由があって管理費の値上げに踏み込むことになるかと思いますが、 管理費の値上げでは以下のようなリスクが生じます。
マンションの資産価値が下がる可能性がある
中古でマンションを売買する場合、購入者は何を重視して物件を選ぶでしょうか?
販売価格・立地条件・築年数・近隣環境など、さまざまな項目がありますが、「毎月の管理費の額」が重要な要素になることがあります。
購入検討者のなかには「現在賃貸住宅に住んでいるが、購入した場合の毎月の住宅ローンや管理費などの支払い総額が今の家賃よりも安くなるなら購入したい」と考える方も多くいらっしゃいます。
このような方の場合、管理費が高いと購入を見送られてしまうケースがあるでしょう。
つまり、売りづらいマンションとなり、売主は販売価格を下げざるを得なくなります。
こうして該当マンションの販売相場が下がっていき、結果として資産価値が下がってしまうことにもつながるのです。
関連記事:自主管理マンションは売れない?売りづらい?買い手から敬遠されてしまう自主管理マンションとは
値上げを総会で否決されてしまった場合、管理運営に支障をきたす可能性がある
何かしらの理由があっても、値上げが可決されなければ意味がありません。
もし管理費値上げの理由が深刻なものであった場合、値上げが否決されることで管理運営そのものに支障が出る可能性が考えられます。
実例
あるマンションは管理会社から管理委託費値上げの要請があったため、現状の2倍以上の値上げを要請しましたが、総会で否決されてしまいました。
管理費の値上げができないのであれば事実上、値上げ後の管理委託費は支払えません。
少し前までなら管理会社も現状の金額のまま管理を続行してくれるケースも多かったのですが、最近は管理会社も強気の姿勢で臨む例が増えています。
管理会社からの管理業務終了の申し入れを受けた理事会の方々は、他の管理会社に声をかけてみました。
しかし、今の管理費の設定で引き受けてくれる管理会社は一社もありません。
そして現在の管理会社の契約期間満了を迎え、強制的に自主管理への移行を強いられる形となったのです。
今まで外部に頼んでいたため、管理費の徴収すらまともにできませんし、設備の点検や日常的な清掃など、どこに頼んで良いかもまったく分かりません。
この状態が続くと管理不全マンションとなってしまう恐れがありました。
管理費の値上げをする、という動きにはこういったリスクが伴います。
ちなみにこの例であげたマンションの方々は、その後弊社にご相談をいただき、今はクラセルを活用して健全な管理運営をしています(管理費の値上げも回避しました)。
関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット
マンション管理費の値上げが反対されないようにできること
値上げが反対されないようにするためには、繰り返しになりますが、総会議案書に「値上げが必要である理由」や「値上げに至った経緯」などをきちんと記載することです。
また、区分所有者向けのアンケートを行い、皆さんがどう考えているかを確認したり、総会を開催する前に説明会を開いて丁寧に説明したりする手法も考えられます。
まとめ
管理費の値上げは誰でも避けたいと思うことです。
値上げによって、たとえば管理会社から有益なサービスを受けられるようになるなど、なんらかのメリットがあれば、まだ受け入れられるかもしれません。
しかし多くの場合、サービス面は変わらない単純な値上げです。(それどころか管理員さんの勤務時間が減る、というようにサービス面が悪化しつつ、さらに管理費の値上げも、といったケースも珍しくありません)
そんな状況であっても理事会のメンバーの方々は「値上げもやむなし」と判断し、総会での上程に至っているのだと思います。
自分たちだって値上げは嫌だと思っているのに、総会で批判の的にされてしまったり、反対多数で否決されてしまったりしたら嫌な思いをするだけです。
総会で反対されないよう、しっかりと値上げを回避する取り組みをしたうえで、その努力をきちんと各組合員に説明し、より多くの賛成意見を得られるようにしたいですね。