自主管理マンションは売れない?売りづらい?買い手から敬遠されてしまう自主管理マンションとは
「自主管理マンションは売りづらい」という噂を聞いたことはありますか?
実際、「自主管理マンション」と検索しようとすると、サジェスト(検索窓の下に現れる関連検索候補)に「売れない」というキーワードがでてきます。それだけ検索されている事柄なのです。
しかし、この噂は本当でしょうか?
結論からいえば、自主管理マンションが売れないということはありません。
しかし、とある項目をクリアしていないと「売れない」まではないものの、売りづらくなってしまいます。
今回は「自主管理のマンションって売りづらいの?」という疑問にお答えしながら、マンションが売りづらくなってしまう原因を紹介します。
ぜひ、最後までご覧ください。
関連記事:マンションの自主管理とは?やるべきこととメリット・デメリットについて
INDEX
自主管理マンションとは?
分譲マンションの管理形態は以下の3つに分類されます。
・管理会社にすべての管理業務を委託する「全部委託管理方式」
・管理会社に一部の管理業務を委託する「一部委託管理方式」
・管理組合がすべての管理業務を行う「自主管理方式」
「管理会社に全部任せているよ」というマンションは全部委託。
「清掃や管理員さんの派遣は管理会社に頼んでるけど、他のことは管理組合でやってるよ」というマンションは一部委託。
「管理会社に頼らず全部自分たちでやっているよ」というマンションは自主管理、というのが漠然なイメージとしてあるかもしれません。
実はこれらに関して法令上の明確な定義はないのです。
法令ではありませんが、国土交通省が行うマンション調査における項目を確認してみると、「基幹事務を誰が実施しているか」によって管理方式を分類していることがわかります。
つまり、国土交通省の基準だと「自主管理=管理組合が基幹事務のすべてを実施しているマンション」といえるでしょう。
本稿では、国土交通省の解釈を基準に紹介をしていきます。
基幹事務とは?
「基幹事務」というあまり聞き慣れない言葉ですが、法律上明確な定義があります。
- 管理組合の会計の収入及び支出の調定
- 出納
- マンション(専有部分を除く)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
参照:「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」第2条
管理組合の会計の収入及び支出の調定
「調定」とは、簡単にいえば「管理組合の収支を調べて確定すること」です。
収支計算書や決算書類、予算案などを作成する業務と考えて良いでしょう。
出納
管理組合内で発生したお金の動きを管理する業務も含まれています。
主に管理費や修繕積立金の収納業務と、業者さんへの費用の支払い業務です。
マンション(専有部分を除く)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
主に修繕に関する業務です。
小修繕から大規模修繕工事まで、広範囲にわたって対応しなければなりません。
さて、ここでもう一度国土交通省の出していた自主管理マンションの定義を確認してみましょう。
「自主管理=管理組合が基幹事務のすべてを実施しているマンション」でした。
つまり、今回の説明を合わせると
基幹事務のすべてを管理会社に委託していれば「全部委託」
一部なら「一部委託」
すべて管理組合で対応していれば「自主管理」
という分類になります。
自主管理マンションの割合は?
国土交通省のマンション総合調査(平成30年度)の回答では、自主管理と回答している方の割合は9%でした。
すべての基幹事務を管理組合だけで行うのは、なかなか大変だということでしょう。
ちなみに、全部委託は74%、一部委託は11%という結果です。
どういう物件に自主管理が多い?
国土交通省の行った調査結果によれば、自主管理をしているマンションは昭和59年より前に建築されたものに多い傾向があります。
これは、昭和58年に区分所有法が大きく改正されたことが関係していると考えられます。
改正により、管理組合の設置が義務づけられたのです。
法改正以前のマンションでは、管理組合自体を組成していないケースも多くみられました。
管理組合自体が存在していなければ、当然理事長も存在しません。
そのため誰かがマンションの代表となって契約行為を行うことができず、管理会社と契約を結ぶことが難しくなります。
その結果、自主管理が多くなるという事態に陥っていたのでしょう。
管理組合がないマンションとは?
「管理組合がないマンション」とは、言葉のとおり「管理組合自体を作っていないマンション」のことです。
日本全体でどのくらいあるのか。
一体どのような管理運営を行っているか、などの実態はあまり明らかにされていません。
しかし、お客様から弊社へといただいたご相談の中には、下記のようなものもあります。
・うちのマンションは管理組合がないんです
・管理規約や長期修繕計画がありません
・清掃は自分たちで交代でやっています
・設備の点検はいつも決まった業者さんに頼むけど、発注を忘れてしまうことも…
・管理費や修繕積立金は集めていません
・必要な費用が発生した際は、都度各世帯から回収しています
上記に当てはまるようなマンションは将来、管理不全マンションとなる可能性が高いといえます。
管理不全マンションとは、維持・管理が適切に行われず、外壁の崩落など周辺地域にも悪影響をおよぼす可能性がある(もしくはすでにおよぼしている)ものを指します。
マンションの運営を続けていくにあたって、はっきりとしたルール決めがされていないと年を経るごとにおざなりな対応となってしまうかもしれません。
現状で「管理費などを定期的に回収していない。滞納者も多い」
「そもそも区分所有者が誰なのか、誰が住んでいるのかすら分からない部屋が多数ある」などがあるのであれば、なおさら管理不全マンションとなる可能性は高まるでしょう。
自身のマンションが管理不全となってしまう前に、管理組合をできるだけ早く組成することをおすすめします。
管理組合組成にあたっては、設立総会開催の手続きや、管理規約の制定など、専門的な手続きも必要です。
そのため、マンション管理士など専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット
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自主管理のマンションは売れない?
インターネット上で「自主管理マンションは売れない」という記事を多く見かけます。
この話は本当なのでしょうか?
この章では、本当に自主管理マンションは売れないのか。また、そう言われる本当の意味を紹介します。
「自主管理マンションは売れない」わけじゃない!
自主管理マンションは売れないのか。
結論からいえば、決してそのようなことはありません。
とある項目をクリアしていれば、普通のマンションと代わりなく売却することが可能です。
逆にいうと、「とある項目」をクリアしていない自主管理マンションは売りにくい傾向にあります。
そのため「自主管理マンションは売れない」といわれてしまうのです。
この項目に関しては、また後ほど紹介します。
自主管理マンションのメリット
購入する側が気にする点のひとつとして、マンションを購入することによって生じる月々のランニングコストがどれくらにになるのか?という点が挙げられます。
賃貸住宅に住んでいる方の場合、このランニングコストが今支払っている家賃よりとあまり変わらない、または低くなるという状況だと購入意欲が強くなると言われています。
ランニングコストのなかには住宅ローンや、管理費・修繕積立金などがありますが、
自主管理マンションは、健全な管理運営を行っていれば各世帯あたりの管理費が抑えられます。
定期的なメンテナンスや清掃により、劣化の進みが穏やかであるためです。
マンション購入を検討している人にとって、月々の管理費負担額が安価であることはとても魅力的といえるでしょう。
ちなみに、下記のグラフは国土交通省の調査において「マンション購入の際に考慮した項目」という質問に対する回答です。
管理状況に関するものは「共用部分の維持管理状況」です。
11.5%の方しか考慮していないことがわかります。
「マンションは管理を買え」と言われることもありますが、購入の段階では管理の方式を含め、管理状態をあまり気にしない方が多いのかも知れませんね。
関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?
「管理組合がない」自主管理マンションは売りにくい!
「自主管理マンションは売れないわけではない」というお話を前章でしました。
では、なぜインターネット上では「自主管理マンション 売れない」という話が多くみられるのでしょうか?
それは、同じ自主管理マンションであっても「『管理組合がない自主管理マンション』は売りづらい」といえるためだと考えられます。
マンション売却時は、不動産仲介会社に買い手を探してもらうよう依頼をするのが一般的です。
仲介会社は依頼を受けたマンションの事前調査を行います。
たとえば、修繕履歴や現時点での修繕積立金総額、積立金滞納の有無、駐車場の空き状況などです。
これらの項目は管理会社や管理組合に確認しないと分からないことばかり。逆にいえば、管理組合がなければ確認しようがありません。
確認が取れないと、仲介会社としても売却の依頼を受け付けることができないこともあります。
仲介会社が売却を引き受けてくれない場合、買い手を自分で見つけるしかありません。
しかし、それはあまり現実的な話ではないでしょう。
よって「自主管理マンションは売れない・売りづらい」ではなく、「管理組合のない自主管理マンションは売りづらい」が正しい表現だといえます。
関連記事:マンション管理組合の役員は義務?断れない?役員になるメリットなどもいっしょに解説!
管理組合のないマンションを売りやすくする方法
管理組合のないマンションを売りやすくするため、まずすべきことは管理組合を組成することです。
この前提を変えないと、ほかの部分を改善したとしても大きな変化は見込めません。
しかし、管理組合が組成されたあとどのように運営を進めていけば分からないという方も多いかと思います。
その場合、一定期間だけマンション管理士さんのサポートを受けてみることを視野にいれてもいいかもしれません。
1年間運営してみて翌年以降は管理組合だけで行うのか、引き続きサポートを受けるのかを検討しましょう。
必要な時だけサポートを受けるという選択肢もあります。
管理組合の状況によって判断しましょう。
少しずつ管理状態を改善していけば、「自主管理だから」という理由で売れないことは回避できるようになると考えられます。
関連記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説
まとめ
マンションの管理形態は「全部委託」「一部委託」「自主管理」の3つに分類されます。
法律で明確な規格分けがなされている「基幹事務」を、自分たちだけで行っているマンションが「自主管理」に当てはまります。
昭和59年以前に建築されたマンションには「管理組合」の設置がされていない状態で、自主管理を行なっているところが多い傾向にあります。
区分所有法において管理組合の設置が推奨され始めたのが、昭和59年行われた法改正以降のためです。
「自主管理マンションだから」といって、売りづらいということはありません。
自主管理であっても、運営次第で1世帯あたりの管理費削減につながります。
しかし、「管理組合がないマンションは売りづらい」といえるため注意が必要でしょう。
管理組合がないと、マンション売却時に仲介会社が行う事前調査が滞り、結果として仲介を断られる可能性があるのです。
「うちのマンション、管理組合がないかも」という方は、一度確認してみましょう。本当になかった場合、できるだけ早く組成することをおすすめします。