マンション管理適正化法とは?2022年の改正内容など含めて解説
2022年にマンション管理適正化法が改正されました。
しかし
「そもそもマンション管理適正化法ってなに?」
「管理組合にどんな関係があるの?」
「関係あるのは管理会社だけ?」
などのような疑問を持たれる方も多いようです。
今回はマンション管理適正化法について解説していきます。
INDEX
マンション管理適正化法とは
マンション管理適正化法は正式名称を「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」といい、2001年に施行されました。
マンション管理が適正に行われるような仕組みを法律で定め、住人全員でマンションの資産価値を守り、快適な住環境を確保することを目的としています。
また、マンション管理に関係の深いマンション管理業者やマンション管理士に関しての登録や義務などについても定めています。
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マンション管理適正化法の内容
マンション管理適正化法は第一章から第九章まであります。
第一章 総則
マンション管理適正化法の目的や様々な用語の定義づけをしています。
第二章 基本方針及びマンション管理適正化推進計画等
基本方針や、国や都道府県の役割などについて書かれています。
管理組合については「マンションを適正に管理するよう自ら努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるマンションの管理の適正化の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない」と定められています。
また、「マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない」という記載もあります。
第三章 管理計画の認定等
2022年4月に始まった管理計画認定制度について定められています。
第四章 マンション管理士
マンション管理士資格の登録や義務などについて定められています。
第五章 マンション管理業
マンション管理業者の登録や義務、業務内容などについて定められています。
マンション管理業者に欠かせない管理業務主任者資格についてもこの章に書かれています。
第六章 マンション管理適正化推進センター
マンション管理適正化推進センターの目的や業務などについて定められています。
あまり聞き馴染みのない名称かもしれませんが、現在はマンション管理センターという名前で管理組合に対して情報提供や助言などの業務を行っています。
第七章 マンション管理業者の団体
マンション管理業者で組成する団体について定めています。
現在はマンション管理業協会という名称で、管理会社の業務の改善向上を図っています。
第八章 雑則
どの章にも該当しないような項目について書かれています。
第九章 罰則
各項目について違反した場合の罰則について定められています。
マンション管理適正化法に違反や罰則はある?
マンション管理適正化法も法律ですから、守らなければ違反になりますし、罰則も当然あります。
例えば、マンション管理業の登録をせずに管理事業を行ったり、違反行為をし、業務停止処分を受けたのに引き続き業務を行ったりしている場合などです。
なお、罰則の対象はマンション管理業者やマンション管理士、その他の団体などであるため、管理組合の方々が罰則の対象となるような定めはありません。
2022年に改正されたマンション管理適正化法にある背景
マンション管理適正化法の背景には高経年マンションの急増があります。
近年、築40年を超える古いマンションが81.4万戸(平成30年末時点)から103.3万戸(令和2年末時点)と大幅な増加傾向にあります。
今後も高経年マンションが急増する見込みがあることから、維持管理の適正化やマンションの再生に向けた取り組みの強化が課題となっているのです。
これらの課題を解決すべく、マンション管理適正化法の改正に至ったというわけです。
管理不全マンションになってしまうと、近隣住民にも危険を及ぼす状態になります。
実際に2020年に滋賀県にあるマンションで、行政代執行による取り壊した事例がありました。
費用は1億以上かかり、各所有者に負担を請求したものの、3分の1程度しか回収できていないようです。
こうした管理不全マンションを増やさないようにするために法改正が行われたわけです。
関連記事:マンションの耐用年数は何年?耐用年数の延ばし方や減価償却との関係を解説!
マンションを取り巻く現状と課題
国交省が行っている「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」において、マンションを取り巻く現状をまとめています。
注目すべきポイントは以下の通りです。
①高経年マンションの増加
- 築40年以上の高経年マンションは115.6万戸(マンションストック総数の約17%)
- 10年後には2.2倍の249.1万戸、20年後には3.7倍の425.4万戸に急増
②区分所有者の高齢化・非居住化
- 高経年マンションについて、ソフト面においては区分所有者の高齢化・非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行し、管理組合の役員の担い手不足や、総会運営や集会の議決が困難等の課題を抱えているものが多い
③区分所有者の永住意識
- 近年、マンション居住者の永住意識は高まっており、平成30年度調査において「永住するつもり」が過去最高の62.8%となっている
④管理組合の役員の年代別構成比
- 管理組合の役員の年代別構成比は、完成年次が古いマンションほど「60歳代以上の役員が占める」割合が高くなっている
⑤管理組合の役員就任等への対応
- 現在役員を務めていない区分所有者に対し、役員への就任要請があった場合の対応を聞いた調査の結果によれば、「他になり手がいなかったらやむを得ず引き受ける人」と「引き受けない人」の割合が約2割となっている
- 引き受けない理由は、「高齢のため」が最も高く、10年間で微増して約3割で推移している
⑥組合員名簿・居住者名簿の作成状況
- 2015年以降に完成したマンションのうち約3割の管理組合において、組合員名簿と居住者名簿のいずれかまたは両方の名簿を備えていない
- 高経年のマンションほど、「両方の名簿を備えている」割合は高くなるが、1979年以前に完成したマンションのうち、「組合員名簿と居住者名簿のいずれかまたは両方を備えていない」マンションが1割以上存在する
⑦適切な長期修繕計画・修繕積立金の不足
- 計画期間25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は増加しているものの、2018年度においても約54%にとどまっている
- 積立額が計画に比べて不足しているマンションは約35%
⑧高経年マンションにおける修繕不足の懸念
- 築40年以上の高経年マンションでは、共用部分である外壁等の剥落、鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化といった生命・身体・財産に影響する問題を抱えるものが多い
総括して見えてくるもの
以上の現状を踏まえると、以下の課題が浮かび上がってきます。
①高経年マンションの増加
⑦適切な長期修繕計画・修繕積立金の不足
⑧高経年マンションにおける修繕不足の懸念
⇒ 修繕費が高額になる高経年マンションにおいて修繕積立金が不足し、必要な工事ができない可能性がある。その結果老朽マンションと化し、危険な状況に陥る可能性も
②区分所有者の高齢化・非居住化
⑥組合員名簿・居住者名簿の作成状況
⇒ 誰が所有者なのか分からず、管理組合活動に支障をきたす場合も考えられる
③区分所有者の永住意識
④管理組合の役員の年代別構成比
⑤管理組合の役員就任等への対応
⇒ 高齢の管理組合員の割合が増加し、役員を引き受けないという方が増加。その結果、一部の人たちだけの負担が増加し、不公平感が出てしまう。最悪は役員のなり手がおらず管理不全状態に陥る可能性も
今後必要となる施策
管理不全マンションをこれ以上増やさないための取り組みとして、今後必要となる施策は第三者管理方式に関するルールの整備です。
先ほど触れた現状のマンションを取り巻く課題のなかに「組合員の高齢化が進み、役員のなり手がいない」というものがあります。
そういったマンションのために管理組合員以外の人が理事長役を務める第三者管理方式というものがあります。
理事会廃止型の第三者管理方式であれば、管理組合員の方々は役員を引き受けなくて良くなり、かなりの負担軽減になりますし、管理者が管理組合に代わって管理運営を行いますので管理不全も防げる、というのがこの方式の魅力です。
ところが、昨今この第三者管理方式の管理者を管理会社が担うケースが増えており、その場合、利益相反状態になってしまう点が問題視されています。
そのため、管理会社が第三者管理方式を行う場合のルール作りが必要なわけです。
2023年現在、国交省がワーキンググループを組成し、検討しているそうですので、近い将来ガイドラインなどが公開されることでしょう。
関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット
マンション管理適正化法の改正内容とは
再び話をマンション管理適正化法に戻します。
マンション管理適正化法の改正の内容は以下の通りです(令和4年4月1日施行)。
マンションは私有財産であることから、これまでは管理組合の自主的な管理に委ねられている状況でしたが、管理の適正化に関する取り組みを計画的に進めていくため、地方公共団体が積極的に関与できる制度が創設されました。
また、これらの制度により、管理組合は自らのマンションの価値の向上や、住人の管理への関心・理解を向上させることができると期待されます。
改正内容① 地方公共団体による管理適正化推進計画の作成
地方公共団体は、マンション管理適正化の推進を図るための施策等を含む、マンション管理の適正化の推進を図るための計画を作成することができます。
改正内容② 管理計画の認定制度
管理適正化推進計画を作成した地域において、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、マンション管理組合は地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けることができます。
認定基準については、長期修繕計画の計画期間が一定の年数以上であること、長期修繕計画に基づき修繕積立金を設定していること、集会(総会)を定期的に開催していることなどを基準としています。
改正内容③ 地方公共団体による助言・指導等
地方公共団体は、管理適正化のために必要に応じて助言や指導等を行うことができます。
まとめ
今回はマンション管理適正化法がテーマでした。
マンション管理適正化法は、どちらかというと管理会社の業法というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
しかし実は管理計画認定制度など、管理組合に直接関係するテーマも多く存在します。
高経年マンションの増加、修繕積立金不足、老朽化マンション、管理不全マンションという問題は今後社会課題となっていく可能性があります。
このような課題に対処していくための大元となる法律がマンション管理適正化法となります。
今後また法改正が行われた際はぜひチェックしてみてください。