マンション管理組合が抱える課題とは?課題への向き合い方についても解説

突然ですが、あなたのマンションの管理組合が抱える課題は何ですか?

修繕積立金が足りない、管理費を滞納している人がいる、放置自転車が多い、共用部に物を置く人がいる、騒音トラブルが多い、管理会社の仕事ぶりが悪いなど、マンションによって課題はさまざまでしょう。

もちろん「うちの管理組合に課題はない!」というマンションもあるかと思いますが、多くの管理組合は何らかの課題を抱えています。

今回のコラムでは多くの管理組合が抱える課題やその対応策について解説していきます。

マンション管理組合が抱える課題とは

最近、管理組合が抱える課題として注目されるのは、主に以下の3つです。

  1. マンションの老朽化
  2. 住民の高齢化
  3. 財政コストの増加と財政難

1.マンションの老朽化

老朽化マンションとは、一般的に築年数が経過し、劣化の進んだマンションのことを指します。

以前、日本経済新聞が老朽化マンションを取り上げた際は、以下の通り定義付けています。

【老朽化マンション】
建物や設備が経年劣化して外観などが悪くなったマンションの総称。
老朽化の進行は修繕の有無や管理状況に左右される。

築年数による明確な定義はないが一般的に築30~40年を過ぎたマンションを指すことが多い。

周辺の住環境に悪影響を与えるほか倒壊などのリスクもある。

2021年12月10日付日本経済新聞

マンションが老朽化すると、当然ながら修繕すべき箇所が増えます。

また、設備によっては修繕ではなく交換が必要になることもあります。
そのため、3回目の大規模修繕工事(築35~40年頃)ともなると工事費用も膨大になります。

これまでに十分な修繕積立金を積み立てており、予算の中で対応できる場合は良いですが、全然費用が足りないというマンションの方が圧倒的に多いようです。

大規模修繕工事はやらざるを得ない、しかし費用が足りない。

このような状況になった場合、対応策としては以下の方法が考えられます。

  • 工事の見積もりを精査し、緊急度の高い工事だけ実施する(コンサルタントの起用も検討)
  • なるべく安価な工事業者に依頼する(ただし「安かろう悪かろう」に注意)

それでも工事費用が足りないという場合は、以下の対応が考えられます。

  • 各区分所有者から一時金を徴収する
  • 金融機関などから借り入れをする

しかし、どちらの場合も総会決議が必要な手続きとなります。

金銭的な負担増は避けたいと考える方も多いため、総会での承認が難しいケースもあるようです。

その結果、大規模修繕工事が必要でも費用が不足しているため、計画を先延ばしにすることになります。こうして徐々にマンションの老朽化が進んでいくことになります。

例えば、排水管の劣化が進み、あちこちの部屋で漏水が起きたり、エレベーターが使用できなくなったり、非常階段の手すりがサビついて危険な状態になるなど、生活に支障を来すことや住民の安全に関する問題が生じる可能性があります。

こういった状態に陥ってしまうことを「老朽化マンション問題」と呼ばれています。

関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?

2.住民の高齢化

マンションの築年数が進むということは、区分所有者の方も高齢化していくことを意味します。

もし建物が新築時に30代の方が住み続けた場合、40年が経過するとその方は70代に、新築時に40代だった方は80代になります。

もちろん、中古で購入される若い世代もいますが、マンション全体の高齢化率は高くなる傾向にあります。

区分所有者が高齢化すると、さまざまな問題が発生しやすくなります。

その中でも特に一般的なのが「役員の引き受け手不足問題」です。

国土交通省が5年に一度実施しているマンション総合調査(平成30年度)の結果を見ると「役員を引き受けない」と回答した方の割合が、他の年代では3%~7%でしたが、80代になると一気に27%まで上昇しています。

高齢を理由に役員を引き受けない方が増えると、役員を引き受けられる人たちが限られ、輪番で担当する頻度が増えてしまいます

そのため、役員を引き受けられる人たちは不公平さを感じ、マンション内でのトラブルに発展することもあるようです。

3.財政コストの増加と財政難

この課題は、ある意味で最も深刻かもしれません。

マンション管理に必要なコストや修繕コストが軒並み値上がりしており、多くのマンションが財政難に陥っています。

老朽化や高齢化の課題は、築年数がある程度進んだマンションに多く見受けられますが、財政コスト問題はどのマンションでも起こり得ます。

マンション管理に関するコストが増加傾向にある理由は主に以下の通りです。

①人件費の上昇
②管理会社の方針変更による値上げ
③電気代や保険料の値上げ

①人件費の上昇

マンション管理の実務は、清掃や点検など、多くが人の手によって行われます。

現時点では、清掃をするロボットや管理会社の業務をAIが代行する可能性はほとんどありません。

そのため、マンションの管理は人件費上昇の影響を直に受けてしまします。

全国的に最低賃金が上昇しており、多くの業種で人手不足が深刻な状況が続いているため、企業は従業員を確保するために賃金を引き上げたり、採用にかかる費用を増やしたりしています

これらのコストが管理組合の支払う費用に転嫁され、管理コストを増加させることになるのです。

②管理会社の方針変更による値上げ

管理会社は多くの業務を下請け企業に再委託しています。

再委託先が①で挙げたように発注金額を引き上げれば、その増額分は管理組合が管理会社に支払う管理委託費に転嫁されます。

さらに、近年は全体的に管理会社の方針が変わりつつあり、管理コストの増大要因となっています。

以前は、日常の管理業務自体の利幅が薄くても、大規模修繕工事での高収益を期待して、管理委託費は安くても良いと考える管理会社が多く見受けられました。

しかし最近は、大規模修繕工事を管理会社が受託できないケースも多く、利益を上げるために日常の管理業務の値上げを要請するパターンをよく耳にします

管理会社も営利企業ですから、利益を確保する必要があり、社員の賃金の底上げを図るには収益を上げるしかありません。

数年前までは顧客の離反を恐れて値上げを避ける管理会社が多く存在していましたが、最近は解約を覚悟して値上げ交渉に臨む場合が多いようです。

③電気代や保険料の値上げ

電気代が上がっているのはどの家庭でも同じですので、実感している方も多いでしょう。

マンションの場合、共用部の電気代は管理組合の管理費会計から捻出します。

敷地内の電灯、共用廊下の照明、エレベーターなどの電気代が対象となりますが、マンションによってはとても高額になります。

また、多くの管理組合は火災保険や地震保険に加入しています。
ここ数年でこれらの保険料が急上昇しています。

2021年には平均して10.9%、2023年には13%の値上げがあり、2024年度にも値上げが予定されています。

この保険料の値上げは、保険金の請求金額の増加が原因です。

日本は地震大国であり、ここ数年でも全国各地で大きな地震が頻繁に発生しています。

保険会社が支払う保険金の原資は、保険加入者の保険料です。

被害が減らない限り、保険料の値下げは期待できず、保険に加入しないという選択肢はリスクが大きいため、やむを得ない状況といったところでしょう。

マンション管理会社が抱える人手不足の課題

管理会社の人手不足は今に始まったわけではありませんが、ここ数年で深刻度がかなり増しています。

この人手不足は、管理員の不足とフロント担当者の不足の両方が含まれます。

かつては、管理員の仕事は、定年後のシニア層が年金を受け取るまでの間の仕事として選ばれることが一般的でした。

しかし、定年が65歳に延長され、再雇用の機会が増えたことで、このような仕事を希望する人が減ってきているのです。

また、シニア世代の就業機会が以前と比べて増えている点も管理員の不足の要因になっています。

管理会社が自社で管理員を雇用できない場合、多くは派遣会社に代行を依頼します。

この場合、自社で雇用した場合の人件費よりも割高になってしまうため、管理会社の利益を圧迫してしまうのです。

そのため、管理委託費の値上げを管理組合に求めるケースも珍しくありません。

もう一つの人手不足はフロント担当者(マンションの担当者)の不足です。

我が国の労働人口が年々減少傾向にあるため、当然ながらその影響を受けています。

一方、マンションの数は毎年増加しているので、全体としてはフロント担当者の数が増えなければ、これまでと同じようには対応できない状況です。

ただし、実際にはフロント担当者の総人数はおそらく減少していると考えられます。

フロント担当者は管理会社によって差はありますが、一人あたり10棟~20棟程度のマンションを担当します。

フロント担当者が不足すると、在籍する担当者の担当するマンション数や業務負担が増え、サービスの質や業務スピードに影響が出る可能性があります

また、人手不足の限界に達した管理会社の場合、管理するマンションを減らさざるを得ないこともあります。

管理会社にとって利幅の小さいマンションから管理を打ち切るケースが多く、30戸以下の小規模マンションがその対象になります。

管理会社の管理員不足と、フロント担当者不足は、どちらも管理組合に深刻な影響を与える問題なのです。

今後想定されるマンション管理の将来

では今後のマンション管理はどうなっていくのでしょうか?

もちろんマンションによって違いはありますが、大きな流れとしては以下のようなことが起きるのではないかと予想されます。

①修繕積立金が不足し、老朽化マンションが増加する
②管理費コストが上昇し、管理費の値上げが必要なマンションが増加する
③人手不足により管理会社が管理委託契約を打ち切るケースが増加する

いずれも直面した場合は管理組合にとって悩ましい問題となります。

ではこのような課題に対して管理組合はどのように備えておくべきなのでしょうか。

マンション管理を続ける上で、管理組合は課題とどう向き合うべきか

管理組合が抱える課題のうち、多くは費用に関するものです。

①修繕積立金が不足し、老朽化マンションが増加する
⇒修繕積立金が不足しないように何年も前からしっかり対応していればこのような問題は回避できます。

②管理費コストが上昇し、管理費の値上げが必要なマンションが増加する
⇒管理費会計に余裕がある状態を作っておけば管理コストが上昇しても管理費の値上げを回避できます。

③人手不足により管理会社が管理委託契約を打ち切るケースが増加する
⇒同様に管理費会計に余裕がある状態にしておけば管理費の値上げをせずに他の管理会社に管理を委託することも考えられます。

毎月各区分所有者から徴収する管理費や修繕積立金の使い道をしっかりとチェックし続けることが重要です。

マンションがさほど古くないうちから以下のような取り組みをされると良いでしょう。

管理費会計に対してシビアな目を持つ

例えば以下のような取り組みによって管理費会計の支出を抑えることができます。

  • 管理業務の仕様を見直す
  • 管理業務の発注先を変更する
  • 管理会社に委託している業務の一部を自主管理に切り替える
  • 管理会社を変更する
  • 電力会社を変更する
  • 空いている駐車場を外部者に貸し出す
  • マンションの空きスペースを有効活用する

具体的な内容については別のコラムで詳細を説明していますので、併せてお読みください。

関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント

マンション管理の体制を見直す

管理費用を抑えるために最も手っ取り早い方法は、管理体制を見直すことです。

現在の管理会社から安価な別の会社に変更するか、管理組合が主体となって自主管理に移行する選択をされる管理組合が非常に増えています。

「管理会社を変更するならともかく、自主管理なんてできるの?」

そう思われる方も多いかもしれませんが、実際に毎年多くのマンションが自主管理に移行しています(特に30戸以下の小規模マンションの事例が多いです)。

自主管理といっても、清掃や管理員業務を自分たちで行うわけではありません。

建物の維持管理業務は管理会社よりも安価なビルメンテナンス会社に委託したり、清掃や点検の専門会社に委託したりするのが一般的です。

理事会や総会の運営に関しては、小規模なマンションでは専門的な知識も膨大な手間も発生しません。

そのため、役員の方々で手分けをして対応したり、状況に応じて近隣のマンション管理士からサポートを受けたりしながら対応する事例が多いようです。

自主管理の場合、大変なのは会計関連の業務です。

管理費の徴収や、工事業者への支払いは手間がかかりますし、最も労力が必要なのが決算書類の作成です。

簿記の知識が必要となるため、担当者が限られる場合もあります。

では、自主管理に移行したマンションはどのように会計業務を対応しているのでしょうか?

関連記事:【マンション管理組合役員向け】書類の保存期間は?各例を紹介

関連記事:【自主管理をされているマンションの方向け】管理組合の会計業務について徹底解説

マンション管理支援アプリ「クラセル」を導入して自主管理へ移行

最後に、弊社のマンション管理支援アプリ「クラセル」について少しだけご紹介をさせていただきます。

クラセルは管理組合の複雑で手間のかかる会計業務を劇的に効率良く行えるようにしたアプリです。

クラセルを利用することで、管理費の徴収や工事業者への支払いなどの作業をわずか数分で完了することができます。

また、なんと決算書類は自動で作成されるため管理組合の方々は作成にかかる手間を省くことも可能です。

近年、自主管理へ移行するマンションが増えているのは、クラセルの存在が少しずつ浸透してきたということも理由の一つかもしれません。

クラセルについてもっと詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

関連記事:クラセルの導入事例をご紹介

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