今更聞きづらい?マンションの管理組合について解説!役員の役割やトラブルについても紹介
分譲マンションに住んでいると、賃貸マンションや一戸建ての時には馴染みのなかった「管理組合」「理事長」「役員」などといったワードを耳にするようになります。
突然「来年の役員はあなたの番なのでよろしくお願いします」と管理会社の担当者から言われ、戸惑う方もいるのではないでしょうか。
初めて回ってきた役員の順番。
何をしたら全く分からないけど、このマンションに住んで何年も経つのにいまさら「役員って何すれば良いの?」と聞きづらい人も多いようです。
今回のコラムでは管理組合の役割や役員の業務内容・よくあるトラブルなどを解説していきます。
関連記事:マンション管理組合の役員は義務?断れない?役員になるメリットなどもいっしょに解説!
INDEX
管理組合とは?
管理組合は「区分所有法」という法律がその根拠となっており、区分所有者全員が構成員(組合員)とされています。
そのため、分譲マンションの1室を購入したら自動的にそのマンションの管理組合員になると考えておきましょう。
また、管理組合における構成員の対象者は区分所有者です。
賃貸で住んでいる人や、区分所有者の家族などは管理組合員に含まれません。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)の基本方針には管理組合及び区分所有者の役割として以下のように定めています(一部見やすいよう省略しています)。
- マンションの管理の主体は、あくまでマンションの区分所有者等で構成される管理組合
- 管理組合は自らの責任を自覚し、必要に応じて専門家の支援も得ながら、適切に管理を行うとともに、国及び地方公共団体が講じる施策に協力するよう努める必要がある
- マンションの区分所有者等は、管理組合の一員として積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある
マンション管理組合の主な役割
では、管理組合の役割とは一体何なのでしょうか?
「マンションを適切に管理すること」といった漠然としたイメージを持っている方は多いと思います。
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約には、以下のような記載があります。
第1条(目的)
この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。第6条(管理組合)
国土交通省:マンション標準管理規約
区分所有者は、区分所有法第3条に定める建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体として、第1条に定める目的を達成するため、区分所有者全員をもって○○マンション管理組合(以下「管理組合」という。)を構成する。
この2つの条文から、管理組合の役割は「区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために活動すること」だといえます。
区分所有者の共同の利益といわれると、それが何を指すのか少し分かりづらいかしれません。
もっとわかりやすい言葉でいえば「マンションの資産価値を高める」や「管理組合のお金を無駄なく有効に使う」といったところでしょうか。
「良好な住環境の確保」は分かりやすいですね。
言葉の通り、住民が安心して気持ちよく暮らせるような住環境を確保することです。
関連記事:マンション管理組合の理事長とは?トラブル回避のためにも知っておきたい仕事内容
マンション管理組合役員の業務内容
理事会の役員は、マンションでの快適な生活を維持するために、管理組合活動の執行部として役割が求められます。
理事と監事は総会で選任します。
役職である理事長、副理事長および会計担当理事などは、理事に選出されたあとに開かれる理事会で理事の中から互選するのが一般的です。
ちなみに、役員の任期が2年で半数改選(役員の半分が退任して、残りの半分は新規の方が就任するパターン)となっている場合は、2年目の方が理事長や会計理事など重要な役職に就くパターンが多いようです。
1年理事をやった経験があると慣れているし、新人の役員さんにアドバイスもできるでしょう。
運用方法としても望ましいかもしれません。
一方、理事の任期が1年だと毎年新人だらけの役員しかいない状態になってしまい、あまり良い状況とはいえないでしょう。
このような運用ルールの変更を検討するのも役員の業務の一つです。
役員ごとの役割の違いについては、後ほど触れていきます。
管理組合と管理会社の関係は?
たまに、マンションの管理は管理会社が主体で行うものと思っている方がいらっしゃいますが、それは誤りです。
マンションの管理はあくまでも区分所有者全員で組成される管理組合が主体となって行うものであり、管理会社は管理組合から委託を受けて管理業務の一部を遂行しているにすぎません。
毎月支払っている管理費も、管理会社に支払っているものと思っている方がたまにいらっしゃいますが、それも誤り。
管理費は管理組合に支払われ、管理組合はそのお金を原資としてさまざまな管理業務を発注しているという図式です。
管理組合のないマンションの場合は?
ごくまれに管理組合がないというマンションが存在します。
最近のマンションではまずないですが、かなり古いマンションにそういった事例が見られます。
その理由として考えられるのが、昭和58年に区分所有法が大きく改正されたことです。
改正により、管理組合の設置が義務づけられたためだと思われます。
法改正以前のマンションでは、管理組合自体を組成していないケースも多くみられました。
日本全体でどのくらいあるのか。一体どのような管理運営を行っているか、などの実態はあまり明らかにされていませんが、管理組合のないマンションは将来、管理不全マンションとなる可能性が高いといえます。
管理不全マンションとは、維持・管理が適切に行われず、外壁の崩落など周辺地域にも悪影響をおよぼす可能性がある(もしくはすでにおよぼしている)ものを指します。
マンションの運営を続けていくにあたって、はっきりとしたルール決めがされていないと年を経るごとにおざなりな対応となってしまうかもしれません。
「管理費などを定期的に回収していない。滞納者も多い」
「そもそも区分所有者が誰なのか、誰が住んでいるのかすら分からない部屋が多数ある」などがあるのであれば、なおさら管理不全マンションとなる可能性は高まるでしょう。
自身のマンションが管理不全となってしまう前に、管理組合をできるだけ早く組成することをおすすめします。
管理組合組成にあたっては、設立総会開催の手続きや、管理規約の制定など、専門的な手続きも必要です。
そのため、マンション管理士など専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
関連記事:マンションの耐用年数は何年?耐用年数の延ばし方や減価償却との関係を解説!
関連記事:マンション管理組合の業務、どの程度まで委託ができる?委託方式について解説
管理組合で役員になったときに意識しておくと良いこと
管理組合の役員になった時に意識しておくべき事項は、以下の3つです。
- 役職ごとに役割が違う
- 管理規約は常に意識しておく
- 区分所有者の代表として厳しい目でチェック
1. 役職ごとに役割が違う
①理事長
理事長とはその名の通りマンション管理組合のリーダーであり、役員のトップを務める人を指します。
定期総会の議長を務めたり、役員が集まる理事会を招集したりすることが主な業務です。
また、その他にもマンション管理組合の代表者として管理組合の印鑑を保有し、工事の注文書や管理組合の運営書類等に署名捺印する仕事も兼任しています。
②副理事長
副理事長とは、その名の通り理事長の補佐役を担う役員です。
理事長が事情によって理事会や総会などに出席できない場合には、理事長の代わりを受け持ちます。
マンションの規模にもよりますが、理事長にトラブルがなければ副理事長が特別に何かの役割を担うことはありません。
③会計理事
会計理事とは、管理組合の会計に関する全般を担当します。
管理費や修繕積立金の徴収、発注先への支払い、決算書類の作成などが会計理事の業務にあたります。
役員のなかで一番大変な役割かも知れません。
しかし、会計業務を管理会社に委託している場合は、あまり「これ」といった役目はないといえるでしょう。
関連記事:【自主管理をされているマンションの方向け】管理組合の会計業務について徹底解説
④監事
監事とは理事会活動のお目付け役です。
会社における監査役と同じ役割があります。
理事会が正常に稼働しているか、お金の流れに不審な点はないか、などを確認します。
問題があれば臨時総会を開催する権利も持っています。
問題がない場合でもその結果を通常総会で報告しなければなりません。
関連記事:マンションの臨時総会とはどのタイミングで開くもの?通常総会の違いなども解説
関連記事:マンションの管理組合総会の進め方とは?総会の疑問を解消
【その他の役員の役割】
防災担当理事:防災訓練などを担う
修繕担当理事:修繕関連業務を担う
植栽担当理事:植栽管理を担う
広報担当理事:管理組合ニュースなどを発行する
自治会担当理事:地域と付き合う
など、マンションによって多彩な役職があります。
2. 管理規約は常に意識しておく
管理組合の役員になると、理事会の一員として何かを判断する場面も出てきます。
例えば、修繕積立金を取り崩して工事を行う必要がある場合。
一般的な管理規約の場合、たとえ少額であっても総会での決議が必要となります。
つまり理事会の判断で工事を行うことはできないのです。
また、ある部屋の住民から室内をリフォームしたいと言われた場合。
専有部だからご自由にどうぞというわけにはいかないこともあります。
例えば、フローリングの性能は一定以上のものにしなければならないと管理規約で定められていたり、リフォームの前には上下階の承認を取っておく必要があったりする場合があります。
こういった際の対応は管理会社に委託しているマンションの場合、管理会社の担当者が管理規約を調べてくれるのが一般的です。
しかし、役員として意識はしておいた方が良いでしょう。
3. 区分所有者の代表として厳しい目でチェック
役員は区分所有者の代表者として、他の管理組合員全員のために業務を遂行する必要があります。
具体的には委託している業務の仕上がり具合をチェックしたり、管理組合として発注する工事が割高でないか、そもそもこの工事は本当に必要なのかなど、厳しい目でチェックすることが求められます。
理事会があまり機能していないと、総会の場で批判を受けてしまうこともありますので、そうならないようしっかりと業務を遂行するようにしましょう。
マンションの管理組合でよくあるトラブルと解決策
国土交通省が5年ごとに実施しているマンション総合調査結果(平成30年度)によると、1,688件の回答のうち、約70%が「直近1年の間に何らかのトラブルが発生している」と回答しています。
中でも「生活音」「違法駐車」「水漏れ」「ペット飼育」「共用廊下への私物放置」が多く発生しているようです。
特に「生活音」については38%の方が「あり」と回答しており、最多となっています。
騒音の原因になりやすいものとその対処法
騒音問題を解決するには、どのような方法があると思いますか?
被害を訴えている住民が直接、騒音の原因である居住者へ苦情を言いに行くのはおすすめできません。
感情的になり、関係が悪化してしまうケースもあるためです。
また、被害者側が過敏になり過ぎて認識のズレが生じているケースもあります。
そのため、騒音問題については、理事会の方が間に入って対応を行うのが一般的です。
かといって「うるさいと苦情がありまして」などと直接的な言葉を言うわけにもいきません。
次の章では、よく事例としてありがちな騒音の原因別に、騒音元への伝達事項をまとめています。
生活音に関するトラブル
騒音の原因としてよく挙げられるのは生活音に関するものです。
生活音と一言で表してもさまざまですが、具体的にどのような音が居住者どうしの問題を引き起こすのでしょうか?
家電製品
テレビや洗濯機、掃除機などが騒音の発生源になっている場合は、音の大きさもさることながら、時間帯も問題点として挙げられる場合があります。
比較的周囲の行動が活発な昼間に掃除機をかける場合と、みんなが寝静まった夜中に掃除機や洗濯機を使うのとでは事情が変わってくるでしょう。
この種のトラブルが多い場合、予防として「洗濯機や掃除機は、朝9時~夜20時のみ使用」など、管理規約や使用細則で時間帯を定めて伝えてみてはいかがでしょうか。
その他の対応として
- 洗濯機は壁から離す
- 防振マットを敷く
などが挙げられます。
テレビや音楽鑑賞に関しては、周囲の状況を考えて音量を下げたり、イヤホンなどを使用したりして自分以外に音が聞こえないような工夫を促すのも手です。
子ども
小さいお子さまや赤ん坊がいるご家庭では、泣き声や走り回る音といった騒音も出やすくなります。
言葉が通じるくらいの年齢の子どもの場合は
- 床にマット類を敷く
- 壁際に背の高い本棚などを置く
- 防音や遮音カーテンを使用する
- 室内ではなるべく静かに過ごす
などの対策が考えられます。
赤ん坊が泣き出したら窓を閉め、換気扇も消すなどの対策がありますが、夜泣きなどは防ぎ用がありません。
赤ん坊の夜泣きなどは周囲の理解が必要な部分も少なからずあります。
少しでも住民間の不和を和らいでおくため、積極的にご近所付き合いができる場を設けるというのも対策の一つです。
ペット
ペットの無駄吠えや、深夜・早朝の吠え声などを原因に、トラブルが起こりやすいです。
まず、ペットの種類や共用部分での扱いなどを管理規約や使用細則で詳細に決め、守ってもらえるよう周知させる必要があります。
また、床にコルクマットなどを活用すること、無駄吠えなどに対するしつけの徹底をアナウンスしておきましょう。
フローリング床
フローリング床はカーペットなどに比べて音が外に漏れやすいため、往々にして騒音の原因となります。
- 遮音性の高いカーペットを敷く
- 家具にクッションシールを取り付ける
などの工夫を居住者に伝達しましょう。
また、フローリングについては使用細則で一定の遮音性能を有したものを使用するよう定めることも可能です。
既に定めている場合、その通りのものを使用しているかどうか確認してみるとよいでしょう。
騒音問題に限らず管理組合内のトラブルに関する対応業務は、管理組合役員の業務の一つです。
騒音以外では、違法駐車や上階からの漏水、ゴミ出しのマナー、喫煙問題などがあります。
管理会社に委託している場合は、ある程度は対応してくれると思いますが、管理会社との契約書には「管理組合内のトラブル対応」という内容は書かれていないのが一般的です。
管理会社によっては「契約の範囲外ですので対応しない」という会社もあるため、改めて確認しておきましょう。
まとめ
今回は、管理組合の役員の仕事の内容や住民間のトラブル対応に関する説明でした。
役員の仕事は多岐に渡り、法的な責任や義務といった負担も生じるため、なるべくならやりたくないと考える方が多いかもしれません。
しかし、役員を経験された方は、マンションのことや管理組合の状況をよく理解でき、良い経験になったという感想を述べられる方も多いようです。
輪番制のマンションの場合、10数年おきくらいに役員が回ってくるイメージでしょうか。
長年マンションで暮らしていくうちの、たった1年ですから、役員が回ってきた際は、ぜひ前向きに役員業務に取り組まれてはいかがでしょうか。