マンション管理における利益相反とは?
マンション管理の現場において「これって利益相反だからまずいのでは?」という声が聞こえてくることがあります。
でも、具体的にどんな場面で利益相反が起きるのか、そしてそれがどういう状態なのかはご存じでしょうか?
今回のコラムではマンション管理における利益相反について解説していきます。
INDEX
利益相反とは
利益相反とは、信任を得て職務を行う地位にある人物が、立場上追求すべき利益・目的と、その人物が他にも有している立場や個人としての利益とが、競合ないしは相反している状態を指します。
例えば、会社において、社長の親族が別の会社を経営していて、その会社に高額な仕事を発注するケースが考えられます。
このような場合、その会社にとっては不利益となりますが、社長個人にとっては利益になるため利益相反が生じます。
また、弁護士が裁判で原告と被告の双方の代理人を引き受けるようなケースも、利益相反が生じます。
なぜなら、原告に有利な内容で交渉を進めると、被告にとっては不利益になるからです。
このような双方の代理人を引き受けることは法律で禁止されています。
利益相反の事例
では、マンション管理における利益相反とはどんな場面でしょうか?
主に以下の2点で発生しやすい傾向にあります。
- 役員と管理組合の利益相反
- 管理組合と管理会社の利益相反
1. 役員と管理組合の利益相反
これは「管理組合が工事を行う際、理事長が自身の経営する会社に発注する」など、立場や個人の利益と組合の利益が競合するケースが考えられます。
例え適正な金額で契約したとしても、利益相反となります。
工事の仕上がりが不十分だった場合、理事長は工事業者である自身の会社にやり直しをさせるなどのクレームを言う必要がありますが、やり直し工事をすることで自身の会社にも追加のコストが発生して不利益となります。
ちなみにマンション標準管理規約およびコメントには以下の記載があります。
(利益相反取引の防止)
第37条の2 役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。
二 管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするとき。
マンション標準管理規約
第37条の2関係
役員は、マンションの資産価値の保全に努めなければならず、管理組合の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることがあってはならない。
とりわけ、外部の専門家の役員就任を可能とする選択肢を設けたことに伴い、このようなおそれのある取引に対する規制の必要性が高くなっている。
そこで、役員が、利益相反取引(直接取引又は間接取引)を行おうとする場合には、理事会で当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならないことを定めるものである。
なお、同様の趣旨により、理事会の決議に特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることができない旨を規定する(第53条第3項)とともに、管理組合と理事長との利益が相反する事項については、監事又は当該理事以外の理事が管理組合を代表する旨を規定する(第38条第6項)こととしている。
マンション標準管理規約(短棟型)コメント
つまり、標準管理規約におけるポイントとしては以下の通りです。
① 利益相反となる取引についてはきちんとその情報を開示し、承認を受ける
② 理事が利益相反取引の当事者となる場合、その理事は議決に加われない
③ 理事長が利益相反の当時者となる場合、理事長以外の役員が管理組合の代表となる
③については、珍しいケースかもしれませんが、管理組合と理事長個人の間で訴訟に発展するような場面です。
2. 管理組合と管理会社の利益相反
こちらは、管理会社による第三者管理方式の場合に発生します。
最近、管理会社による第三者管理方式の採用が増えていますが、その多くは管理会社が管理組合の管理者(理事長)の役割を担う方式を採用しています。
通常、管理組合は多くの業務を管理会社に発注しています。
第三者管理方式の場合、管理会社は管理組合の代表として業務を受注する立場となり、利益相反が生じる可能性があります。
具体例を挙げると、マンション内のとある設備に修繕工事が必要となったとします。
その工事を管理会社が受注すると、利益相反取引となります。
例えば相場が10万円程度の工事であった場合、管理組合の立場ではできるだけ費用を抑えたいと考えるでしょうが、一方で工事を請負う管理会社はできるだけ高く請け負いたいと思うでしょう。
また、清掃業務なども同様です。
清掃の仕上がりが悪ければ、管理組合の立場ならもう一度やり直してほしいと思うかもしれませんが、管理会社の立場ではやり直しは避けたいと考えるでしょう。
このように管理会社が第三者管理を引き受ける場合は、多くの場面で利益相反が生じることになります。
理事会の責任を負う必要がなくなるという点から、管理組合側には魅力的に見えるかもしれませんが、実際には非常に大きなリスクを抱えることとなります。
管理会社による第三者管理方式を採用する場合は、十分な検討や議論が必要です。
なお、国土交通省もこの問題を懸念しており、ガイドラインの策定作業を進めています。
これまでに発表された内容によれば、管理会社が自社グループに修繕工事を発注する場合、管理会社の一存で決められず、総会決議が必要という内容が盛り込まれるようです。
また、管理会社の業務状況を確認する役職の監事を管理組合に設置することも求められるようです。監事については、マンション管理士や弁護士などの外部専門家の選任を推奨する方向のようです。
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利益相反の発生を防ぐためにできること
利益相反の発生を防ぐためには、管理会社による第三者管理方式への安易な移行を避けることが重要です。
役員のなり手がおらず、理事会の機能不全など、マンションが適切に運営されない場合は、第三者管理方式が有効な解決策となりますが、その際にはマンション管理士などに管理業務を委託することで利益相反を回避できます。
「高齢者が多く、役員を引き受けられる人が少ない」「投資用マンションのため、区分所有者がみな遠方に住んでいて理事会が組成できない」というマンションの場合でも、なるべく利益相反とならない方式を選択することをおすすめします。
また、単に組合員が役員をやらなくて済むからといって、第三者管理方式に移行することは全く推奨できません。
役員業務をやりたくないと考える方は多くいらっしゃると思いますが、管理会社に完全に委ねてしまうと、管理会社に対する牽制が全く働かなくなり、その結果、数年後には修繕積立金が空っぽに……といった声もよく耳にします。
繰り返しになりますが、管理会社による第三者管理方式への移行は慎重に検討することをおすすめします。
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まとめ
マンション管理における利益相反とは、主に以下の2点です。
- 役員と管理組合の利益相反
- 管理組合と管理会社の利益相反
役員と管理組合の利益相反については、なるべく役員が経営する会社に仕事を発注することを避けた方が良いでしょう。
同様に、管理組合と管理会社の利益相反も回避することが望ましいです。
もし「第三者管理方式を検討したいけど、利益相反が心配」という方がいらっしゃいましたらぜひ弊社にご相談ください。
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