マンションの標準管理規約とは?使用細則との違いや最近の改正内容も解説!

                                                            

管理組合運営をしていく上では当然ながら一定のルールが必要です。

例えば、理事会の役割や権限、管理費などの徴収方法、滞納した場合の遅延損害金の有無、総会に関する内容を定めておく必要があります。

また、ペットの飼育ルールや専有部分をリフォームする場合の手続きなど、生活に関する取り決めも必要です。

これらを定めたものが管理規約です。

管理規約は管理組合ごとにある程度自由に作成することができますが、何らかの指針があった方が作成しやすいため、国土交通省が標準管理規約というものを公開しています。

今回は、マンション管理規約の基となるマンション標準管理規約について詳しく解説していきます。

マンションの標準管理規約とは?

マンションの標準管理規約とは、国土交通省がマンションの維持・管理や住民の生活の基本的ルールを定める管理規約の標準モデルとして作成したものです。

標準管理規約は、あくまでも「指針」であり、必ずしもその内容どおりに各マンションの管理規約を作成する必要はありませんが、多くの管理組合では標準管理規約を参考にして規約を作成しています。

マンション標準管理規約の主な内容は、共用部分に関するもの、管理組合や理事会の運営に関するもの、区分所有者の共用持分の割合、専用使用権の範囲、使用細則の設定などです。また、災害時の対処方法などについても定められています。

マンション標準管理規約の種類

マンション標準管理規約には、マンションのタイプによって以下の3つの種類があります。

単棟型

単棟型は、一つの敷地にマンションが一棟建てられている、住居専用のマンションタイプを想定して作成されたものです。

これは、一般的なマンションに適応される管理規約の基本です。

団地型

複数の建物で敷地を共有している団地のようなマンションタイプを想定して作成されたものです。

複数の建物の管理を一元的に行う必要があるため、そうした状況に即した規定が設けられています。

複合型

住居だけでなく、一部が店舗や事務所として使用されるマンションタイプを想定して作成されたものです。

例えば、建物の一階部分を店舗や事務所が占めているマンションです。

管理組合には住居部分の区分所有者で構成する「住居部会」と店舗部分の区分所有者で構成する「店舗部会」が置かれますが、全体の意思決定は管理組合が一元的に行います。

区分所有法とマンション標準管理規約との違い

マンション標準管理規約と密接に関連した法律として「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)というものがあります。

区分所有法は、建物の区分所有者および居住者の権利や財産を守ることを目的に制定された法律です。

こちらは法律なので、当然ながら強制力がありますが、標準管理規約はあくまでも指針という位置付けです。

管理規約の主な内容

管理規約には、管理組合運営に関する事項や共用部分の範囲などが記載されています。管理規約で示される規定は、主に以下の3つに分類されます。

(1)区分所有法と別段の定めをすることができない強行規定

管理規約の変更や廃止、共用部分の変更、建て替えなどに関する重要な議案について、一定数以上の議決を取って可決することを特別決議と言います

例えば、管理規約の変更や廃止は組合員数および議決権総数の4分の3以上の賛成が必要です。

また、建て替えの決定には5分の4以上の賛成が必要になります。

こういった特別決議に関する内容および数字は区分所有法で定められており、管理組合が自由に変更・調整ができない強行規定となります。

※ただし、共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)の場合は、必要となる賛成区分所有者数を過半数まで減ずる定めをすることができます。

例えば管理規約で建て替えを過半数の賛成でできるようにしたとしても、その定めは無効となります。

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(2)区分所有法と異なる別段の定めが可能な規定

共用部分の持分割合や議決権の持分割合、普通決議事項の要件などは区分所有法とは異なる定めをすることも可能です。

(3)特に制限がなく、管理組合の裁量で決められる内容

特に法的な制限がない内容もあります。

理事会の設置や理事の人数、駐車場・集会室の使用方法などは管理組合ごとに自由に決めてよい内容とされています。

管理規約が適用される範囲

管理規約が適用される範囲は専有部分を含む建物全体、敷地、付属施設になり、専有部分と共用部分の境目がどこなのかは、通常は管理規約に記載します

共用部分とはエントランスや共用廊下、エレベーター、駐車場などを指します。

専有部分とは区分所有者が所有する部屋の中のことです。

ここで注意しなければならないのが、専用使用権のある共用部分についてです。

例えば、バルコニーや専用庭、窓枠やサッシなどは専有部分だと思われがちなのですが、実は専用使用権のある共用部分に当たります。

そのため、区分所有者ではなく管理組合が管理する場所となり、所有者が勝手に修繕や塗装、交換などを行うことは禁止されています

標準管理規約と使用細則との違いは?

マンションの管理や使用に関するルールには、管理規約の他に使用細則というものがあります。

管理規約は管理組合運営全般に対する取り決めをしたものです。

一方、使用細則はペットを飼う場合のルールや、駐車場などの共用部分を利用する際のルールを定めており、マンションでの生活に密接したものが多く存在します。

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管理規約・使用細則で定める例

標準管理規約(単棟型)18条では、「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」とされています。

また、18条関係のコメント①では、「使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等があげられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。」とされています。

そして、標準管理規約(単棟型)では、具体的に以下のような使用細則などを想定しています。

  • 敷地・共用部分等の用法(13条)…「自転車置場使用細則」(13条関係コメント)
  • バルコニー等の専用使用権 (14条)…「バルコニー使用細則」(14条関係コメント②)
  • 駐車場の使用 (15条)…「駐車場使用細則」 (15条関係コメント③)
  • 対象物件の使用(18条)…「ペット飼育細則」 (18条関係コメント②)

管理規約の確認・入手、作成方法は?

管理規約の内容は区分所有者であれば誰でも閲覧することができます。

区分所有法では以下の通りに定められています。

(規約の保管及び閲覧)

第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。

3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

区分所有法

2項に記載のある利害関係人には、当然ながら区分所有者も含まれます。

他には、部屋の売却の依頼を受けた不動産会社やこのマンションの購入を検討している人などが考えられます。

つまり、こういった利害関係人から「規約を見せてほしい」と言われたら管理組合は断ることができないということが法律上定められているのです。

また、標準管理規約には以下の通りに定められています。

(規約原本等)(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。

2 規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。

3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名した上で、この書面を保管する。

4 区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。

5 第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

6 理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。

標準管理規約

区分所有法と同じような内容ですが、より具体的に定められています。

管理規約の作成や見直しをする際の注意点

管理規約を新たに作成したり既存のものを見直したりする場合、通常、一般的なマンションでは管理会社が草案を作成してくれます。

ただし、それは難しい作業ではないため、管理組合自ら管理規約を作成することも可能です。
以下の点に気を付けながら作成すると良いでしょう。

  • 標準管理規約に沿った内容で問題なければ、極力合わせる
  • もし、標準管理規約と異なる定めをする場合、それが強行規定(区分所有法と別段の定めをすることができないもの)でないか、確認する
  • 強行規定の場合は、区分所有法と異なる内容にしない

管理規約・使用細則を変更したい場合

管理規約は一度作成したら終わり、というわけではありません。
次の理由により改正する必要があります。

  1. 現行の管理規約では、時代と共に生活様式が変化してマンション内で快適な生活が送れなくなってきている。
  2. あいまいな記載により、疑義が生じることがあり、管理組合運営に支障を来している。
  3. 区分所有法やマンション管理適正化の改正、標準管理規約の改正などにより、現行の管理規約のままでは後々のトラブルに発展する可能性がある

このような場合は、管理規約や使用細則の内容を変更する必要があります

一般的なマンションの場合は、管理会社に頼めば改正案の作成をしてくれますが、管理会社が対応してくれない場合や、自主管理マンションの場合は、管理組合側で進めていくことになります。

上記で述べたように、さほど専門的な知識が必要というわけではありませんので、管理組合だけで対応していくことも不可能ではありません。

それでも重要な変更手続きなので、専門的なアドバイスが欲しいとお考えの場合は、多くのマンション管理士事務所が管理規約見直しの業務を行っていますので相談してみるのも良いでしょう。

関連記事:マンション管理組合の業務、どの程度まで委託ができる?委託方式について解説

関連記事:管理会社の対応が遅いときにできる対処法とは。管理会社の変更方法なども解説

マンション標準管理規約の改正とは?

マンション標準管理規約は、時代の変化に伴い変更されることがあります。

マンション標準管理規約が改正されたからといって、各マンションの管理規約の改正が義務付けられているわけではありませんが、管理組合としてどのような改正が行われたかを把握しておくことはとても重要です。

参考にこれまでに行われたマンション標準管理規約の主な改正内容を見ていきましょう。

住宅宿泊事業に伴う改正

平成29(2017)年に、住宅宿泊事業法の成立に伴いマンション標準管理規約が改正されました。

分譲マンションにおける住宅宿泊事業(民泊)をめぐるトラブル防止のために、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例がマンション標準管理規約に示されています。

管理組合におけるITを活用した総会・理事会のルールの明確化

マンションの管理の適正化の推進およびマンションの建て替えなどの円滑化に関する法律の改正、そして新型コロナウイルス感染症拡大といった社会情勢の変化を踏まえ、管理組合におけるITを活用した総会・理事会のルールが明確化されました

ITを活用した総会・理事会や置き配を認める際の留意事項、専有部分配管の工事を共用部分配管と一体的に行う際の修繕積立金からの工事費の拠出についてなど、必要な規定が整備されています。

関連記事:マンション管理適正化法とは?2022年の改正内容など含めて解説

管理規約の法的効力

管理規約には原則として法的効力はありません。

ただし、管理規約の取り決めの中には区分所有法の定めと共通する項目も多々存在します。

区分所有法は法律ですから、当然ながら法的効力があります。

つまり、管理規約に書かれているものの中には法的効力を持つものも含まれているということになります。

違反をした場合に罰則はある?

管理規約に罰則規定がある場合は、当然ですが罰則の対象になります

ちなみに標準管理規約では以下の通りに定められています。

(義務違反者に対する措置)

第66条 区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。

標準管理規約

区分所有法57条から60条というのは、問題を引き起こしている住戸の競売や引き渡しの請求ができるという条文です。

こちらはあくまでも、建物の保存に有害な行為や区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合が対象となりますので、相当な行為が対象と考えて良いでしょう。

また、標準管理規約には管理費などの滞納については遅延損害金を付加することや、督促のために要した弁護士費用などを請求できる定めもあります。

まとめ

今回は管理規約がテーマでした。

管理規約がずっと古いままで見直しをしていないマンションというのは案外多く存在するようです。

  • いつの間にか勝手に民泊を始めてしまう部屋があり、生活マナーを乱しているが、今の管理規約では強く規制できない
  • 少しでも多くの人が総会に出席しやすいようにオンラインでの参加を認めるようにしたいが、今の管理規約では認められていない

こういった事態に備え、問題が浮き彫りになる前に管理規約を見直すことをおすすめします。

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