マンション管理の法人化とは?メリット・デメリットや法人化の方法などを徹底解説!
分譲マンションを購入し、入居したら必ず入らなくてはならないのが「管理組合」です。
しかし、管理組合の中には「○○管理組合法人」のように“法人”と付く名称の管理組合もあります。
これは通常の管理組合と何が違うのか、管理組合を法人化することのメリット・デメリットなども含めて今回の記事でお伝えしたいと思います。
INDEX
管理組合法人とは?
管理組合法人とは、マンションの管理組合のうち法人格を有するものをいいます。
法人化と聞くと、株式会社などを思い浮かべるかもしれませんね。
しかし、マンションの管理組合の法人化の場合、会社を設立するという意味ではありません。
「管理組合法人」は株式会社や合同会社、社団法人などと同様に、法人格を持った存在です。
マンションの管理組合以外の法人や個人が、管理組合法人を名乗ることはできません。
もし管理組合法人ではない組合が、管理組合法人の名称を使用したときは、区分所有法上で罰則が設けられています。
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法人化するとどうなる?
マンションの管理組合法人は法律上、権利関係の主体になることができます。
銀行口座を例にあげると、法人化していない管理組合の銀行口座は「◯◯管理組合 理事長××」という名義で作ることになりますが、管理組合法人であれば管理組合法人の名義でつくることができます。
通帳の名義には「個人名義(一般口座)」と「法人名義(法人口座)」の2種類があります。法人化していない管理組合の場合、一般口座の作成しかできません。
そのため、マンション管理組合の場合だと理事長や理事等の個人名義での登録になります。
一方、法人化して管理組合に法律上の人格が認められると、口座開設に使用されるのは個人名ではなく法人名(「管理組合法人」)になります。
このように、法人化することで本来であれば個人名を出していたところ、管理組合という一つの団体としての名前が使用できるようになるのです。
法人化している管理組合の割合
それでは実際に法人化している管理組合はどれくらいあるのでしょうか。
平成30年度マンション総合調査によると、調査に回答した1688管理組合の中で管理組合を法人化していると回答があったの、は全体の13.2%でした。
築年数別では、古いマンションの方が法人化している割合が高い傾向があり、昭和45~49年に建てられたマンションでは、41.1%が管理組合を法人化しています。
管理組合の運営を長い間行なってきた中で、法人化にメリットを感じる管理組合が多いのかもしれませんね。
総戸数規模別では、151〜200戸が23.9%と最も高く、ついで301~500戸が23.2%、501戸以上が21.6%でした。
たまに聞く「みなし法人」との違いは?
みなし法人は所得税の課税制度に関連した用語で、マンションの管理組合とはなんの関係もありません。
「法人」とついていますが、立ち位置としては個人事業主に近く、法的に人格が認められているわけではありません。
元をたどれば所得税の課税制度に関連する用語です。
こういった点が、法律で人格が与えられた社会的な存在である管理組合法人との大きな違いといえるでしょう。
管理組合が法人化しても仕事内容はほぼ変わらない
管理組合の仕事は、マンションの維持・管理をすることです。
これは、管理組合が法人化した後も変わりません。
管理組合が法人化したからといって、マンションに住んでいる区分所有者の人が持つ権利や役割が変わるわけでもありません。
細かい実務面を見れば、理事長の変更などが起こった場合の手続き方法などに違いがあったり、事務手続きが増えたりはします。
しかし、法人化していてもしていなくても、基本的に活動内容について大きな違いはそれほどありません。
マンション管理組合法人化のメリット
管理組合の法人化は、絶対にしなければいけないということではありません。
特に、現状に問題が出ていないのであれば、法人化する必要はない場合も多いでしょう。
しかし、法人化したからこそ得られるメリットもあります。
もし現状の手続きに問題を感じている場合、法人化によって解決できる可能性もあるのです。
この章では、管理組合を法人化することで得られるメリット4点についてまとめました。
1.法律関係の明確化
管理組合が法人化すれば、法人の活動によって生じた権利・義務はすべて法人の所有となり、財産に関する法律関係が明確化されます。
また、財産が不動産である場合には法人名義で不動産を登記することが可能です。
2.取引の安全の確保
法人の場合には法律上、代表権を有する理事がいます。
理事と契約することは、つまり法人を相手に取引をしたことと同義です。
法人相手の取引なので、安全性が確保されるといえるでしょう。
3.団体財産と個人財産の区別
管理組合法人固有の財産と、区分所有者個人の財産とが明確に区別されることになります。
ただし、あまり大きなメリットとはいえないのも事実。
というのも、財産自体は区別されるのですが、責任が区別されるわけではないためです。
法53条により管理組合法人の債務については、区分所有者も自己の財産をもって責任を負わなければならないものとされています。
4.訴訟の迅速化
マンション管理組合を法人化すれば、法人自体が訴訟当事者になるため訴訟手続き関係がスムーズに済みます。
たとえば、滞納などによる金銭トラブルで訴訟を考えた場合。
マンション管理組合が法人化されていない場合には、理事長個人が訴訟当事者にならないといけません。
そうなると、理事長の抱える負担がとても大きくなってしまいます。
しかし、法人化すれば訴訟当事者は個人ではなく管理組合法人です。
それによりスムーズに手続きができるようになります。
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マンション管理組合法人化のデメリット
マンション管理組合の法人化はメリットだけではありません。
法人化によるデメリットもいくつかあります。
どのようなデメリットがあるのかをまとめました。
1.法人登記事務の手間
マンション管理組合を法人化するためには事務手続きが発生します。
法人設立時には、集会の決議をとったうえで、法務局へ設立登記申請をしなければなりません。
2.登記関連の経費の増加
理事長が再任しても、任期満了により改めて役員の変更登記手続きが必要です。
役員の任期は原則2年、規約で長くしても最長3年ごとに登記の出費を想定する必要があるでしょう。
マンション管理組合を法人化するための条件とは
管理組合を法人化するための方法は、次の3ステップです。
手続きは、他の法人設立手続きと比べて簡易なものになっています。
設立登記や変更登記の際の登録免許税も不要とされており、コストもそれほどかかりません。
管理組合による決議
管理組合を法人化するためにはマンションの区分所有者の4分の3以上が出席する総会で、議決権の4分の3以上の賛成を得る必要があります。
要件の制定
総会の決議では法人になった場合の名前も決めなければなりません。
管理組合法人という言葉を入れる必要があるため「◯◯(マンション名)管理組合法人」もしくは「管理組合法人◯◯」となるのが一般的でしょう。
また、管理組合法人の事務所と理事、監事についても同様です。
選任は(規約に別段の定めがない限り)普通決議で行われます。
法務局での設立登記
決定事項をもとに、登記手続きを行います。
登記手続きは、司法書士を通して行う場合もあります。
その場合は、管理組合内で依頼する司法書士を決定のうえ、手続きを行います。
マンション管理組合が法人化したら法人区分はどうなる?
マンション管理組合が法人化された場合、区分所有法47条13項および14項の規程により、法人税法および消費税法上は「公益法人」として扱われます。
法人でない管理組合よりも不利になることを避けるためです。
法人化に伴う法人税課税とは?
管理組合法人は公益法人として取り扱われますが、公益法人のようにすべての事業に課税されるわけではありません。
特定の収益事業から生じた所得に対してのみ課税が行われ、それ以外については特に課税の対象ではないように設定されています。
ここでいう収益事業とは、外部者からの収益があるもの(居住者以外への貸出を行う場合の駐車場収入など)を指します。
ただし、法人税とは別に管理組合法人には「法人住民税」が課税されます。
管理組合法人に課税される法人住民税とは
法人住民税は地方税の一種で、大きく分けて2種類あります。
利益に応じて課される「所得割」と、事務所などを有することに対して課される「均等割」です。
管理組合法人は公益法人とみなされます。
そのため、法人税法上の収益事業を行っていないのであれば、均等割のみ課税されることになります。
しかし、都道府県や市町村の条例により均等割が減免される場合があります。
まとめ
今回の記事では管理組合法人についてまとめました。
管理組合が法人格を有することによって、権利関係の主体になります。
たとえば、法人格の恩恵として財産関係の明確化や訴訟の迅速化が挙げられるでしょう。
今までは個人名で作成しなければならなかったマンション全体の口座も、法人化することで「◯◯管理組合法人」という名前で作成が可能に。
特に目的のないままに管理組合を法人化する必要はないとは思います。
しかし法人化を検討するのであれば、今回の記事で触れた法人化することのメリットとデメリットを比較して、十分に管理組合内で議論する必要があるでしょう。