マンション管理とは?マンション管理の基本のき!

全国の分譲マンションの総戸数は2022年末時点で約694万戸に達し、日本で暮らす人の約1割が分譲マンションで生活していると言われています。

特に昭和時代に多く建設されたマンションは、築40年以上が経過し、老朽化や管理不全などの問題が深刻化しています。

このような背景から、マンション管理の重要性がますます高まることが予想されます。

では、マンション管理とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか

管理組合と管理会社の役割はどこで区別されるのでしょうか?

そして、理想的な管理運営とはどのようなものでしょうか?

こういった疑問を持たれる方も多いようです。

今回のコラムではマンション管理の基本について解説していきます。

関連記事:マンション管理組合の役員は義務?断れない?役員になるメリットなどもいっしょに解説!

マンション管理とは

マンション管理とは、文字通りマンションを適切に管理することを指します。

マンション管理業務は多岐にわたりますが、大きく以下の3つに分類されます。

  1. 建物維持管理
  2. 会計・出納
  3. 理事会・総会運営

1.建物維持管理
マンション内外の清掃や定期的なメンテナンスなど、快適な居住環境を維持するための業務です。

2.会計・出納
管理組合の運営に必要な管理費や修繕積立金の徴収、工事業者への支払い、決算書類の作成など、財務関連の業務です。

3.理事会・総会運営
理事会や総会の準備や運営、議事録の作成など、組合員とのコミュニケーションや運営に関する業務です。

マンションの管理形態

マンションの管理形態は大きく分けて3つあります。

  1. 管理会社に全部委託する「全部委託方式」
  2. 管理会社に一部委託する「一部委託方式」
  3. 管理組合だけで対応する「自主管理方式」

委託可能な管理業務としては、先ほど紹介した「建物維持管理」「会計・出納」「理事会・総会運営」の全てが当てはまります。

これら全てを管理会社に委託している場合は「全部委託方式」

一部を委託し、残りの業務を管理組合で対応している場合は「一部委託方式」

管理会社に頼らず管理組合だけで全て対応している場合は「自主管理方式」

そう理解しておいて良いでしょう。

第三者管理方式

最近は前述の3つの管理方式に加えて、第三者管理方式の採用も増加しています。

第三者管理方式とは、管理者(理事長)の機能を、管理組合から見た際の第三者である管理会社やマンション管理士に委託する方式です。

この方式にはさまざまな分類がありますが、理事会そのものの機能を第三者に委託するタイプが一般的で、これは「理事会廃止型」と呼ばれています。

第三者管理方式は、前述の3つの方式を置き換えるものではなく、いずれかの方式に付加するイメージです。

【例】

管理会社に全ての管理業務と管理者業務(理事会機能)を委託するパターン
⇒ 全部委託方式+第三者管理方式

この場合、管理業務を受託している管理会社が管理者業務も担当することが一般的です。

自主管理を行いながらも、管理者業務を第三者に委託するパターン
⇒ 自主管理+第三者管理方式

この場合、マンション管理士が管理者業務を担当することが多いです。

第三者管理方式が誕生した背景

第三者管理方式が誕生した背景は、管理不全の防止がありました。

高齢化により役員不足が進むと、理事会の機能不全が起こり、結果として管理不全に陥る可能性があります。

元々はこのような事態を回避するために第三者管理方式が導入されましたが、最近では管理会社からの提案により採用されるケースが増えています。

管理会社にとっては、理事長の了解を得る手間が省け、修繕工事を自分たちの裁量で進められるようになるなど、メリットが大きい方式と言えます。

また、管理組合の中には役員を務める必要がないことを大きなメリットと捉える人もいます。

一見するとWin-Winのように見える第三者管理方式ですが、しかし実際にはデメリットも大きい方式なのです。

第三者管理方式については、下記のコラムで詳しく紹介していますので、ご興味があれば併せてご覧ください。

関連記事:新しいマンション管理の選択肢!第三者管理方式の導入メリットとデメリット

マンション管理組合の役割

マンション管理組合の役割は適切にマンションを管理することです。

国土交通省が公表しているマンション標準管理規約には、以下のような文章があります。

第1条(目的)
この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。

第6条(管理組合)
区分所有者は、区分所有法第3条に定める建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体として、第1条に定める目的を達成するため、区分所有者全員をもって○○マンション管理組合(以下「管理組合」という。)を構成する。

マンション標準管理規約

この2つの条文から、管理組合の役割は「区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために活動すること」だと言えます

「区分所有者の共同の利益を増進」と言われても、それが何を指すのか少し分かりづらいかもしれません。

より分かりやすく言えば「マンションの資産価値を高めること」や「管理組合の資金を効率的に活用すること」といったところでしょう。

また「良好な住環境の確保」は、住民が安心して快適に暮らせる環境を提供することを意味します。

管理組合の運営方法

管理組合の運営は理事会が中心となって進めていくのが一般的です。

理事会の人数はマンションの規模によって異なりますが、国土交通省が公表しているマンション標準管理規約では「10戸~15戸につき1名の割合で選出するものとする」と記載されています。

また、役員の任期は通常1~2年ですが、標準管理規約では「業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする」とされています。

任期が1年ですと、毎年新しい役員で理事会運営をすることになり、多くの不安な面があるでしょう。

その点、任期が2年の半数改選なら、毎年役員の半数は2年目の方たちになるので業務の継続性や安定性が確保されます

理事会の開催頻度はマンションの状況によって異なりますが、一般的には1カ月に1度くらいの頻度で開催するのが望ましいとされています。

2~3カ月に1度程度ですと、役員間のコミュニケーションが不足し、活発な意見交換ができなくなってしまったり、マンション内で問題が発生した際に迅速な対応ができなくなってしまったりすることが懸念されるため、というのが理由です。

管理組合の決定権限

管理組合の決定権限は基本的に「総会」「理事会」の2つに分かれます。

管理規約や区分所有法によって総会の決議が必要なものと、理事会決議で進められるものが明確に分かれていますので注意が必要です。

マンションの管理規約によりますが、標準管理規約に準じた規約を制定している場合、重要な事項のほとんどは総会の決議が必要です。

ただし、総会から付託された事項であれば理事会で決定することも可能です。例えば承認された予算内での工事の発注権限などです。

管理組合のトラブル対応策

管理組合内で発生したトラブルの対応も管理組合の重要な業務の一つです。

管理会社に委託している場合でも、ある程度の範囲までは管理会社が対応してくれますが、あくまでも主体は管理組合となります。

管理組合内で発生する主なトラブルは「生活音」「違法駐車」「水漏れ」「ペット飼育」「共用廊下への私物放置」です。
こういったトラブルには適切な対処法が存在します。

もちろんトラブルを完全に解決することはできないかもしれませんが、ゼロから知恵を絞るよりは早期解決につながる可能性がありますので参考にしてみると良いでしょう。

参考記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説

関連記事:マンション管理費の滞納はトラブルの元?管理費を払わない人への対応策などを紹介

マンション修繕計画の作成方法

マンションの場合、10数年ごとに大規模修繕工事を実施します。

その大規模修繕工事の基になるのが長期修繕計画です。
修繕計画を作成したり、大規模修繕工事を実施したりすることもマンション管理の一環なのです。

長期修繕計画は国土交通省がガイドラインを公表していますので、管理組合で作成することも可能ですが、多くのマンションでは管理会社やマンション管理士などに委託しています。

具体的な作成方法については、別のコラムで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

参考記事:長期修繕計画の作成にかかる費用を紹介!エクセルでの管理方法も解説

修繕計画の重要性

長期修繕計画は管理組合にとって非常に重要です。

もし、ご自身のマンションに長期修繕計画がない場合は速やかに作成することを強くおすすめします。

マンションの居住者が快適に生活する上で、定期的なメンテナンスは欠かせません。

メンテナンスを怠ると、ある日突然給水設備が故障し水が出なくなったり、排水管に穴が開いて上階からの漏水事故が起きたりするかもしれません。

また、修繕工事をしないことで外壁のタイルが落下したり、コンクリートの内部が腐食し、大きな地震に耐えられなくなったりする恐れがあるなど、生活に支障を来すどころか、身体に危害を及ぼすことも考えられます。

こうした事態を回避するために定期的な修繕工事が必要なのです。

マンションの大規模修繕工事は1戸あたり100万円~200万円程度の費用が発生します

工事時期になってから工事費用を各世帯から徴収するのは現実的ではありませんので、多くのマンションでは修繕積立金という形で毎月徴収しています

月々の修繕積立金の価格設定

では、月々の修繕積立金はいくらに設定すべきなのでしょうか?

それを決める根拠となるものが長期修繕計画です。

計画には10年後や20年後に必要な修繕工事の内容や費用が明確に示され、それに基づいて毎月の修繕積立金が設定されます。

そのため、長期修繕計画の精度が低いと、大規模修繕工事の費用が足りなくなってしまうことも考えられます。

また、長期修繕計画は30年先まで見据えて作成しますが、その間には工事費用の変動や消費税の増税、新しい工法の導入などがあります。

そのため、長期修繕計画は5年ごとに見直すことが推奨されています

マンション管理適正化法とは

マンション管理適正化法は正式には「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」と言い、2001年に施行された法律です。

主にマンション管理業者やマンション管理士などに関係する法律ですが、管理組合の方々も無関係ではありません。

特に2022年4月に始まった管理計画認定制度については、管理組合役員の方は少なくともその内容を知っておいた方が良いでしょう。

マンション管理計画認定制度

マンション管理計画認定制度は、2022年4月に施行された制度です。

マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば、適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けることができます。

この制度の目的は言うまでもありませんが、適正な管理運営を促進することです。

2022年末時点で全国には約694万戸のマンションがあり、その中には築40年を超えるものが125万戸存在します。

築40年超のマンションは2032年には2.1倍の260万戸、2042年には3.5倍の445万戸になると予測されています

築年数が古いマンションでは、居住者の減少や高齢化により管理組合の役員となる人手が不足しがちです。

また、近年増加しているタワーマンションなどの大規模マンションでは、管理が専門的で複雑化しやすいという状況もあり、適切な管理が難しくなる懸念もあります。

適切な管理が行われないと、マンションの老朽化が進み、破損や倒壊のリスクが高まります。

以前、滋賀県野洲市で老朽化マンションが周辺住民に危険を及ぼし、多額の税金を投入して取り壊された事例がありました。

このような背景から、マンション管理計画認定制度が制定されたのです。
この制度ができるまではマンション管理に関する基準はありませんでした。

ちゃんと管理できているマンションとずさんな管理をしているマンションの違いは?
どこをどう改善すれば良い状態になるの?

マンション管理に関するこういった疑問について、これまでは見る人の主観によって判断する面が大きかったのですが、マンション管理計画認定制度によって判断基準が明確に示されました

認定を取得するかどうかは別として、ご自身のマンションの管理状態をチェックしてみてはいかがでしょうか。

関連記事:マンション管理計画認定制度とは?認定の受け方やその他評価との違いを解説

まとめ

マンションの管理は業務範囲が多岐にわたり、専門的な知識が必要となる場合もあるため、どうしても管理会社に頼りがちになります。

管理会社の専門的な知見を活用すること自体はとても良いことですが、あくまでも管理の主体は管理組合であり、管理会社は管理組合から業務を委託された立場にあります。

気が付いたら管理会社に全部任せっきりで管理組合の状況が分からないという事態は避けた方が良いでしょう。

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