マンション管理費の滞納はトラブルの元?管理費を払わない人への対応策などを紹介

マンションにおいて、各区分所有者から徴収されるのが管理費・修繕積立金です。

管理組合はこれらを収入源とし、日々のメンテナンス費用や一定期間ごとに行う大規模修繕工事費用に充てています。

マンションを維持管理していくには必要不可欠なお金であることは周知の通りです。

しかし、この管理費などを滞納する人が一定数いらっしゃるのもまた事実。

この記事を読んでいる方の中には、管理費などの滞納に頭を悩ませている管理組合役員の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、マンション管理費などの滞納問題について説明します。

滞納者への対応や法的措置に関する解説もしていますので、滞納問題を抱えている管理組合の方は、ぜひ参考にしてください。

管理費と修繕積立金のマンションにおける重大な役割とは

そもそも、マンションの管理費はなんのために徴収されているのでしょうか?

費用の使いどころを知らないのに、決して少なくはないお金を徴収されるのは誰だって嫌に感じてしまうことでしょう。

この章ではマンションの管理費の役割について解説します。

管理費は管理会社への委託費用や水光熱費など、日常的なものが多い

管理費は管理会社への管理委託費や、建物の清掃・点検などの日常的な作業費用に使われます。

住民が快適に生活するためには欠かせない、大事な費用です。

ちなみに、よく「管理費って全部管理会社の売り上げになっているんじゃないの?」と思われている方がいらっしゃいます。

しかし、実際そんなことはありません。

管理費は管理会社に支払う費用だけでなく、共用部の光熱費や保険料などにも使われています。

管理費の金額、その決め方は?

まず、マンション全体で必要となる一年間の費用を全て洗い出します。
その総額を、管理規約で定められている管理費の負担割合(通常なら部屋の広さ)で案分します。

それを12ヵ月で割って、一カ月の管理費の額を決定する、というのが一般的な管理費の決め方です。

分譲当初の管理会社の考え方にもよりますが、一般的にはあまり大きな金額の剰余金が出ないように設定されています。

つまり、滞納が多く発生したら管理組合会計として赤字になってしまうのです。

修繕積立金はマンションの工事に使用する費用

修繕積立金は、計画的に行う工事に備えて積み立てておく費用のことです。
主に10~15年ごとに行われる建物全体の大規模修繕や、エレベーターや機械式駐車場の改修や更新などを想定して積み立てられています。

管理費同様、修繕積立金についてもたまに「管理会社に払っているもの」と勘違いされている方がいらっしゃいます。

実際には管理組合の将来に備えた貯金とでもいいましょうか。

修繕積立金の金額の決め方は、長期修繕計画に基づいて決定します。

30年先までの修繕計画で必要な費用の総額を洗い出し、それを管理費と同様、管理規約で定められた部屋ごとの負担割合で案分するのが一般的です。

一方で30年後の工事費用がどの程度変動しているか、消費税の増税はあるか、などを正確に予測するのは困難です。
そのため、長期修繕計画は5年ごとに見直すことが推奨されています。

長期修繕計画とは

修繕工事は長い周期で行われます。

そのため先まで見据えた計画を立てておかないと、いざ修繕しようとなったときに費用が足りないなどの最悪のケースが起こってしまうかもしれません。

それらを避けるために、将来的に見込まれる修繕工事の内容などを想定して作成されるのが長期修繕計画です。

国土交通省は新築、既存かわらず「30年以上」を計画期間の目安として設定しています。

マンション管理費などの滞納は深刻な問題になっている

滞納が発生すると以下のような問題が生じます。

・維持管理に支障をきたす
・修繕積立金会計に影響をおよぼし、必要な修繕が実施できなくなる
・マンションの資産価値が低下する
・マンション内のコミュニティ形成に支障をきたす

費用面での問題はもちろん、マンション内における人間関係に亀裂が生じる可能性もあります。
もう少し詳しくみていきましょう。

維持管理に支障をきたす

滞納が長期化または複数住戸で発生すると、必要な作業の発注ができなくなる可能性が生じます。

そのため、修繕すべき部分の修繕ができずマンションの劣化が進んでしまうかもしれません。マンションの老朽化については近年大きな問題として取り上げられています。

マンションの老朽化については、下記の記事で詳しく説明しています。
もしよければご覧ください。

関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?

関連記事:マンションの建て替えって実際してるの?住民の負担費用や、マンション寿命などから詳しく解説

修繕積立金会計に影響をおよぼし、必要な修繕が実施できなくなる

管理費会計が赤字に陥った場合、修繕積立金を取り崩して管理費会計に充当する場合があります。

一時しのぎにしかならないため、もちろんお勧めできる対応策ではありません。

しかし、背に腹は代えられないという場合にこの選択をすることでしょう。

この場合、当然ですが将来の修繕計画に影響を及ぼし、必要な修繕が実施できなくなる可能性があります。

マンションの資産価値が低下する

マンションを中古で売却する際は、不動産仲介会社に売却の依頼をするのが一般的です。

仲介会社はあらかじめそのマンションの様々な情報を調査し、購入検討者に必要に応じて提供します。

購入検討者の中には「このマンション全体の滞納金ってどのくらいあるの?」ということを質問される方もいらっしゃいます。

そこで滞納金が多量にあることがわかると、敬遠されてしまうことが考えられます。

その結果、マンションが売りづらくなり、値段を下げざるを得なくなるでしょう。

そうすると、将来的に資産価値が下がるということが発生してしまいます。

また、資産価値には外観なども大きく影響するもの。

先述のようなことがあって適切な修繕ができていなかった場合、マンションの見た目や印象が悪くなってしまいます。
その結果、売りづらくなり資産価値が下がる、というケースも考えられます。

関連記事:必要?大規模修繕工事コンサルタントの役割と選び方とは

関連記事:自主管理マンションは売りづらい? 買い手から敬遠されてしまう自主管理マンションとは?

マンション内のコミュニティ形成に支障をきたす

管理費の滞納者であっても、普通にそのマンションで生活している場合もあるでしょう。

「あの人は管理費の支払いをしていないのに、なんで支払っている私と同じマンションに住んでいるの?」と、不満に思う方も一定数出てくる可能性も否定できません。

滞納している人とはなんとなく挨拶を交わさなくなったり、中には滞納している人に向かって「あなたは管理費を払っていないんだから、エレベーターは使わないで」と怒り出したりする人もいらっしゃいます。

そうやってマンション内の雰囲気や住民同士の関係性が悪くなる場合があります。

関連記事:マンションの管理組合でよくあるトラブルとは?その解決法も解説

管理費滞納の背景にあるものとは

マンションの管理費などを滞納する人の背景には、いくつかの要因があります。

・何らかの理由で仕事を失ってしまい、収入が無くなった
・高齢者になり、年金で暮らしているため、資金に余裕がない
・区分所有者が亡くなったが、相続人が誰だか分からないため督促できない
・相続人は判明しているが、管理費等を支払ってくれない

お金があるのに払わないといったような悪意のあるケースというよりは、払いたいけど払えないというケースの方が多いようです。

管理費を払わない滞納者へできる対応

管理費滞納者に対しては、支払ってもらうよう督促するしかありません。
督促には、書面、電話、訪問からはじまり、内容証明や支払督促による請求、さらには訴訟まで、滞納状況に応じた対応が考えられます。

詳しくは別のコラムで触れておりますのであわせてお読みください。

関連記事:マンションの管理費を払わない人への対処法や予防策を徹底解説!法的措置に関する注意点も

管理費の長期滞納が起きやすいケース

長期滞納の発生には大きく分けて以下3つのパターンがあります。

① 金銭的な問題により、払いたくても払えないケース
② 館外に住む区分所有者の連絡先が分からず督促できないケース
③ 区分所有者が亡くなったが、相続人が誰なのかが分からず、誰に請求して良いのか分からないケース

このうち、①のパターンについてはどのマンションでも起こり得る問題です。

②③においては発生するマンションに、とある傾向があります。

それは、区分所有者名簿の整備がずさんなマンションです。

館外に住む区分所有者の連絡先や、親族など緊急連絡先などをしっかりと管理しておけば、そもそも②は発生しなくなります。

③についても相続人と話し合いをすることで、滞納の長期化を防ぐことができるでしょう。

相続人からすると、ある日突然「管理費の滞納5年分、100万円お支払い下さい」と言われたらとても困ってしまいますよね。

すぐに用意できないかもしれませんし、もしかしたら早い段階で「管理費の未納が3か月分あるので、全部で5万円お支払いください」と言われていれば、すぐに支払えていたかもしれません。

あなたのマンションの名簿の整備状況はいかがですか?一度確認してみてはいかがでしょうか?

管理費の滞納によって引き起こされかねないトラブル

滞納が長期化すると、管理組合内の人間関係に悪影響を及ぼす場合があります。

たとえば、滞納が長期化していることで理事会役員が責められてしまうような場合です。

督促の仕方が悪いんじゃないか、対応が遅いんじゃないか、理事会の責任も大きいんじゃないか、などと好き勝手に理事会を批判する方がたまにいらっしゃいます。

理事会の方たちも「一生懸命にやっているのにそんな言い方しなくても」と感情的になり、ついつい言い返してしまい、管理組合内の雰囲気が悪くなる……といったケースも珍しくありません。

それ以外にも、滞納が拡大することで資金不足状態に陥り、必要な修繕工事ができず、設備に支障をきたし、トラブルに発展するといった可能性も考えられます。

とにかく滞納は長期化・深刻化させないことが重要です。

マンションの管理費滞納への予防策

管理費などの滞納の理由はさまざまです。

本当にお金がない人、あるけど支払わない悪質な人。
ルーズな人、区分所有者がどこに住んでいるかも分からないケースなど、まちまちです。

本当にお金がない人については滞納させない対策よりも、どうやって回収しようか、という点を主眼に対応を検討すべきでしょう。

しかし、それ以外の人(=お金がある人)についての滞納を発生させない方法は以下の通りです。

  • 徴収方法を見直す
  • 区分所有者名簿を定期的に見直す
  • 滞納者への督促に関する定めを決めておき、それを周知しておく

徴収方法を見直す

滞納された費用の徴収方法は「収納代行会社による口座引き落とし」「銀行指定による口座引き落とし」「振り込み」「持参」などがあります。

この中でおすすめなのは「収納代行会社による口座引き落とし」です。

他の徴収方法と決定的に違うのは「区分所有者の指定する口座から引き落としができる(日本全国ほとんどの金融機関から選択可能)」という点です。

管理費などの引き落し口座がマンション最寄りのA支店のみ、と指定されているマンションも多くあります。

しかし、その口座がその人のメインバンクでない場合、ついお金を入れておくのを忘れ、滞納が発生しやすくなります。

また、最近は金融機関で複数の口座を開設することができないケースも多々みられます。

他支店の口座を持っていたがゆえに、管理組合が指定した口座を作成できないということがたびたび起こります。

そうなると、その方は管理費などを管理組合口座に振り込むしかありません。

収納代行会社による口座引き落としであれば、通常は各区分所有者のメイン口座を指定してくれます。そのため「残高不足により引き落としができない」というケースが発生しづらくなることが期待できるでしょう。

また、万が一引き落としができなかった場合ですが、メインの口座に数万円のお金が入っていないということですから、この方は金銭的に問題を抱えている可能性があるかも、ということが分かります。

つまり管理組合からすると、たった1~2カ月の滞納であっても「もしかしたら」という万が一の長期化を視野に入れた迅速な対応が取りやすくなるのです。

区分所有者名簿を定期的に見直すこと

「区分所有者の居場所が分からない」
「督促状をどこに送って良いか分からない」

というケースがときどきあります。

また「区分所有者が亡くなったが相続人が誰なのかが分からず、誰に管理費などを請求していいのか分からない」というケースも。

こういったことはどのマンションにも起こりうるもの。

このような事態に備え、必要なのが「定期的に区分所有者名簿を整備すること」です。

名簿自体を作成していない管理組合や、作成はしたもののその後の情報更新がされていない、といった管理組合が意外と多く存在するようです。

管理組合運営は何十年にも渡ります。その間に管理費などの金額や徴収方法が変更となる可能性も十分にあります。

その際にスムーズに館外の区分所有者と連絡が取れる状態にしておくことが、滞納を発生させないことにつながるのです。

滞納者への督促に関する定めを決めておき、それを周知しておく

たとえば「滞納○ヶ月で弁護士による内容証明郵便を発送する」「○カ月以上で支払督促」などのような対応基準を定めておき、管理組合内で周知しておきましょう。

滞納が発生した際に「どう対応しましょうか?」と議論する手間も省けますし、迅速な対応が可能になります。
また、このルールを周知することで滞納に対するけん制機能が働くことも期待できます。

時効を防ぐためにできること

滞納が長期化した場合に、必ずやっておいた方が良いのが「時効の中断手続き」です。

管理費などの「定期給付債権」の時効は5年間と決まっています。

時効を中断させるには、裁判上の請求や差し押さえ、管理費滞納の承認(債務の承認)などが必要です。
時効が中断されると、その時から改めて時効のカウントが開始されるようになります。

つまり、滞納額全額が無理であっても一部だけでも支払ってもらったり「自分に債務があると認める(債務の承認)」書面を書いてもらったりすると、時効までの期間がリセットされるのです。

たとえあと1年で時効が成立していた、という場合でも、時効中断の手続きをすれば、時効のカウントはまた数え直し(5年間)となります。

気が付いたら時効を迎えていた、ということがないよう、滞納が長期化している場合は時効の期日管理も重要なポイントとなるでしょう。

まとめ

今現在、滞納問題を抱えていないマンションも今後発生する可能性は十分あります。

滞納者を今後なるべく出さないようにするために、なるべく早い段階で下記にある3つのポイントを実施しておくとよいでしょう。

・管理費などの徴収方法を収納代行会社による収納に変更する。
・区分所有者の名簿を定期的に整備する
・万が一、滞納が発生した場合の対応方針を管理組合内に周知し、第二第三の滞納者を生み出さないようけん制する

この3点を心がけていれば、本当にお金がなくて払えない人以外の滞納は確実に減少するでしょう。

 

ちなみに、弊社のマンション管理アプリ“クラセル”は、収納代行会社(三菱UFJファクタ-)による管理費などの引き落しが可能です!

とある管理組合の方からは「以前の徴収方法の時と比べて大幅に滞納が減少した」と喜びのお言葉をちょうだいしました。

また、クラセルには各区分所有者の名簿管理機能があり、その中には緊急連絡先や、管理組合の書類の送付先なども登録できるようになっています。
クラセル導入時に一度、各区分所有者から名簿を提出してもらい整備。その後は総会案内と一緒に変更届を送るという運用をされている管理組合もあります。

 

また、最近では「VAMOS ~安心を届ける不動産保証サービス~」という管理費などの滞納保証を行うサービスも登場しています。
月々のランニングコストはかかりますが、このサービスを利用すると滞納の悩みはかなり軽減されるでしょう。

一度ご検討されてみてはいかがでしょうか?

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