マンションによって管理費の高い・低いが異なる理由とは?そもそも何に使う?

「うちのマンションの管理費ってちょっと高くない?」

そういった疑問を持たれる方は結構多くいらっしゃるようです。

管理費は毎月のことですから数千円でも上がったら嫌ですし、下がったら嬉しいですよね。
携帯電話料金や電気代なら「もっと安いところに切り替えよう」と考えて、個人個人で動くことができますが、マンションの管理費の場合はそうはいきません。

管理組合として決定した額を支払い続けるしかありません。

「うちのマンションの管理費は、近隣のマンションと比べて高いみたい」

そう感じた方のために、どうしてマンションによって管理費に差が出るのか、そもそも管理費は何に使われているのか、などを解説していきます。

マンション管理費は何に使うためのお金なの?

管理費は、マンションの日常管理に使われるものです。

廊下やエレベーター、エントランスなどの電気代や、清掃作業を行うための水道代などの水道光熱費や、設備の保守・メンテナンス費、管理組合の活動資金などが管理費から支払われます。

管理業務を管理会社に一括で委託している場合は、管理会社に支払う管理委託費が占める割合が大きくなります。

管理費会計から支払うものは、具体的には以下のような項目があります。

①管理員さんの人件費
管理員さんの派遣費用です。(日常の清掃業務を含む場合もあります)。
管理員さんの出勤日数や一日の労働時間数によって総額が変わってきます。

②事務管理業務費
会計業務や理事会・総会の支援業務などの事務管理業務費です。

③共用設備の保守・点検費用
給排水設備・エレベーター・消防設備・機械式駐車場などの保守・点検・維持管理費です。

④清掃費
日常的に行う清掃費や、月に一度から数カ月に一度くらいの頻度で行う特別清掃の費用です。

⑤植木・植栽の管理費
マンション敷地内の植木・植栽の刈り込み、消毒・除草等の維持管理費用です。

⑥共用部分の水道光熱費
主に共用部の電気代です。

⑦小修繕費
各種設備に不具合が生じた場合の修繕費用です。数年ごとに計画的に行う高額な工事は修繕積立金から捻出しますが、日常の管理の延長で発生するような不具合対応は管理費から賄うのが一般的です。

⑧損害保険料
火災や台風や暴風雨による水害に備えて加入する保険です。管理組合として加入する保険ですから、原則的には共用部が対象となりますが、個人賠償責任特約を付けることで、たとえば上下階の漏水事故などもカバーされます。

関連記事:マンション管理費が高くて支払いがきつい?滞納者と管理組合ができるそれぞれの対策とは

金額はどう決められるのか

マンション管理費の金額は、一般的には以下の流れで決定します。

①マンション全体で管理費会計から捻出される総費用を洗い出す

例:管理会社に委託する費用、水道光熱費、小修繕費用、各種設備点検費用、マンション全体で加入する保険料など。

②駐車場や駐輪場などの共用部があるマンションの場合は、そこから得られる収入の見込み金額を算出する

駐車場などは、近隣の月極駐車場の相場を参考にします。また、稼働率は実態に合わせて設定します。

③①から②を差し引いた不足分を管理費総額とし、案分して各部屋の金額を出す

①で出した総費用から、②の収入見込み金額を引いて不足分を算出します。

ここで気をつけたいのが「ぴったりの金額にしてしまわないこと」です。

もしぴったりの数字にしてしまうと、滞納が発生したり、なんらかの費用が値上がりしたり、共用部での収入が減少したりなどの異常事態に陥った際に、すぐに資金が足りなくなってしまうおそれがあります。

そのため、計算でマンション管理費を出す際は、ある程度剰余金が出るように設定します。
そうして設定した総額を各部屋の大きさに応じて案分し、各部屋の管理費を決定します。

関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント

マンションによって管理費の高い・低いが違う理由

管理費はマンションによって大きく変動します。
理由としては以下が考えられます。

①マンション内に維持コストのかかる設備などがある
②マンションの規模が小規模
③管理会社への委託費用が割高
④管理業務にかかるコストが高すぎる
⑤駐車場などの共用部収入が少ない

ひとつずつ見ていきましょう。

①マンション内に維持コストのかかる設備などがある

維持コストのかかる設備が、マンション内にありませんか?
たとえば機械式駐車場など。

設備に不具合があれば、最悪、人身事故も起きかねないため、機械式駐車場のメンテナンスは欠かせません。
点検した結果、少しでも設備に異常の可能性があればすぐに部品交換や修理費用が発生します。

また「設備」とは少し異なりますが、たとえば立派に切り揃えられた植栽なども維持コストがかかります。

②マンションの規模がそもそも小規模

小さな規模のマンションであれば大規模マンションと比べて、管理にかかる総コストは少額だと言えるでしょう。

しかし、実際のところでいえば戸当たりで案分することで、管理費が割高になってしまう場合も多く見受けられます。

たとえば20戸のマンションと40戸のマンションで日常的な清掃を行い、そこまで作業時間も変わらないとする場合、発生した人件費を20で割るか40で割るかで、1戸あたりの負担額は大きく異なります。

小規模マンションの方が、負担額が大きくなってしまう訳です。

③管理会社への委託費用が割高

管理会社にすべて業務を委託しているマンションの場合、管理費の多くが管理会社への発注に回されます。

たとえば、利益率を30%で設定している管理会社と20%で設定している管理会社では、当然ながら管理組合の発注金額は大きく異なります。

④管理業務にかかるコストが高すぎる

たとえば管理員を週5日の8時間勤務にしてもらっていたり、植栽の剪定の頻度が多すぎたりする場合が挙げられるでしょう。

エレベーターのメンテナンス一つとっても、その契約内容次第で大きく変わります。
メーカー系の会社に委託するか、独立系の会社に委託するかでも金額は変わりますし、POG契約(パーツ・オイル・グリス契約=エレベーターの点検・注油・消耗部品交換のみ対応する契約)か、フルメンテナンス契約なのかによっても金額が変わります。

クオリティの高い管理業務にはもちろん相応のコストがかかりますが、果たしてそこまでのクオリティが本当に必要なのか、改めて精査する必要があるかもしれません。

⑤駐車場などの共用部の利用料収入が少ない

マンション管理費の計算する場合、割と重要なのが駐車場などの共用部の利用料収入です。一般的に、マンションの維持管理のための費用は管理費+共用部の収入によって賄います。

つまり有料の駐車場・駐輪場・バイク置き場など、管理組合の収入源が少ないとその分管理費が高くついてしまうのです。

とはいえ、先述のとおり機械式駐車場があると、それだけ維持コストもかかってしまうため有料の駐車場が良いとは一概に言えません。

管理費を安くする、という面だけで言うならば平面駐車場がたくさんあるのがよいということになります。

高い管理費設定から考えられるデメリット

管理費が高いことによって考えられるデメリットは以下の通りです。

①各世帯の負担が大きい

単純なお話ですね。毎月の支出は少なければ少ないほど嬉しい、というご家庭の方が多いでしょう。

②マンションの資産価値が下がる可能性がある

中古でマンションの購入を検討する方は、当然ながら売買代金・立地条件・間取り・築年数などを重視しますが、同じように月々の管理費や修繕積立金も購入の意思決定において重要な要素となります。

購入検討者は住宅ローンや、管理費・修繕積立金の毎月の支払総額を計算し、自分たちの収入で将来に渡ってちゃんとやっていけるかをチェックします。

管理費が高すぎると、購入検討客から購入を見送られ続け、なかなか買い手が見つからないマンションになってしまう可能性があります。

なお、長い期間売れずにいると、不動産仲介会社からは「販売価格を下げましょう」と提案されることもよくあります。こうしてマンションの相場を下げてしまい、資産価値を下げてしまうことにつながってしまうのです。

「なかなか買い手が見つからなくても販売価格を下げずに粘る」という選択肢もありますが「ずっと売れていないマンション」というイメージがついてしまい、ますます売りづらくなる可能性もあります。

関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?

③修繕積立金も高いかも?

マンション管理費が割高だと、修繕積立金も高めに設定されている可能性があります。
修繕積立金は管理費と違ってマンションの将来に備え、貯金をしておくようなものですので、高すぎたとしても一概に損をしているようなものとは言えませんが、やはり管理費と同様に「月々の徴収金額は少ない方が良い」と考える方が多いのではないでしょうか。

また、②と同じように修繕積立金が高いことが理由で、中古で売れづらくなり、資産価値を下げることにつながる可能性もあります。

管理費は安ければいいというわけではない

たまに「えっ、どうしてこんなに管理費が安いの?」というマンションの情報を耳にします。

もちろん、なるべく管理費を安く抑えるような取り組みによってすごく安くなっているのであれば、問題はないのですが、中には「法定点検を実施していない」「損害保険に加入していない」「修繕積立金を取り崩して賄ってしまっている」「清掃を実施していない」といったマンションの例も見受けられます。

このようなマンションの場合は、いくら管理費が安くてもあまり良い状態とは言えないでしょう。
あくまでも理想は「管理運営上、きちんとやるべきことを実施したうえで、なるべく管理コストを安く済ませる」ということです。

まとめ

管理費はそのマンションを所有している限り、毎月ずっと支払いを続けなければなりません。
世の中の色々なモノの値段があがっているため、管理費の値上げも仕方ないと思う一方で、少しでも安く抑えたいと考える方も多いでしょう。

弊社のお客様においては、管理会社を変更したり、管理業務の一部を自主管理に切り替えたりすることで管理費を抑える事例も多く見受けられるようになりました。

このあたりの話を詳しく聞いてみたい、他マンションの事例を参考にしたいといったご要望がありましたら、ぜひお気軽にお問合せ下さい。

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