マンション管理費の支払いは無駄で馬鹿らしいと感じている方へ、値下げの方法を紹介
分譲マンションを購入し区分所有者になると必ず発生するのが管理費や修繕積立金の支払い義務です。
最近はさまざまなモノが値上がりし、家計を見直す方も少なくはないでしょう。
「管理費は水光熱費のように節約しよう思ってできるものではないし……」
「携帯電話のプランとか加入している保険を見直して支出を減らせるものではないし……」と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実際、管理費の値下げは簡単ではありません。
しかしマンションの状況によっては可能な場合があるのです。
今回は管理費の値下げ方法について解説します。
なお、最近はどちらかというと管理費の値上げが必要なマンションが多いようです。
値上げの回避は実質的に値下げと同じですので「管理会社から管理費の値上げの要請があった」という方もぜひお読みください。
関連記事:マンションの管理費を払わない人への対処法や予防策を徹底解説!法的措置に関する注意点も
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INDEX
管理費とは
管理費は、マンションの日常管理に使われます。
廊下やエレベーター、エントランスなどの電気代や、水道光熱費、設備の保守・メンテナンス費、管理組合の活動資金などが管理費から支払われます。
管理業務を管理会社に一括で委託している場合は、管理会社に支払う管理委託費の占める割合が大きくなります。
管理費会計から支払うものは、具体的には以下のような項目があります。
管理員の人件費
管理員の派遣費用です。(日常の清掃業務費用を含む場合もあります)
管理員の出勤日数や一日の労働時間数によって総額が変わってきます。
事務管理業務費
管理費などの収納、管理組合口座からの支払い、決算書類の作成などの会計業務や、理事会・総会の支援業務などの事務管理業務費です。
共用設備の保守・点検費用
給排水設備・エレベーター・消防設備・機械式駐車場などの保守・点検・維持管理費用です。
清掃費
日常的に行う清掃費や、月に一度から数カ月に一度くらいの頻度で行う特別清掃の費用です。
植木・植栽の管理費
マンション敷地内の植木・植栽の刈り込み、消毒・除草などの維持管理費用です。
共用部分の水道光熱費
主に共用部の電気代です。
小修繕費
各種設備に不具合が生じた場合の修繕費用です。
数年ごとに計画的に行う高額な工事は修繕積立金から捻出しますが、日常の管理の延長で発生するような不具合対応は管理費から賄うのが一般的です。
損害保険料
火災や台風や暴風雨による水害に備えて加入する保険です。
管理組合として加入する保険のため、原則的には共用部が対象となります。
しかし個人賠償責任特約を付けることで、上下階の漏水事故などもカバーされます。
管理費と修繕積立金との違いは?
管理費と同じように毎月支払う必要がある修繕積立金。
まだ管理組合のことはよく分からない、という方の中には修繕積立金は管理会社に対して支払っているものと思っている方がいらっしゃいますが、それは誤りです。
修繕積立金は、十数年ごとに行われる大規模修繕工事のために管理組合として積み立てられているお金のこと。
一般家庭でいうところの、将来を見据えた貯金といったところでしょうか。
劣化した共用部分の修繕や、資産価値を高めるための改修工事に使われます。
大規模修繕工事は長期修繕計画に基づいて行われるため、修繕積立金も長期修繕計画に基づいて積み立てられるのです。
マンション管理費の相場について
たとえばスーパーに買い物に行ったとき、10個入りの玉子が1パック100円で売っていたら「安い」と思うでしょうし、カップラーメンが1個500円で売っていたら「高い」と思う方が多いでしょう。
玉子なら○○円、カップラーメンなら××円前後が相場、といった基準となるものが頭のなかにあるからです。
では、マンション管理費の相場はどうでしょう?
結論から言いますと、自分のマンションの管理費が高いのか安いのかの目安となる「相場」のようなものはありません。
たまに1㎡あたり△△円くらいが相場、という記事を見かけますが、あまり参考にはなりません。
管理費の金額は「マンションの状況によって違うから」です。
たとえば総戸数20戸のマンションと200戸のマンションでは1世帯当たりの管理費負担額はずいぶん変わってきますし、マンション内にある設備の多さや築年数によっても差が出てきます。
委託する管理会社によっても違います。
大手でブランド力のある管理会社は信頼性が高く、手厚いサービスを受けられる代わりに管理委託費が高くなりがちですし、逆に大手でも安さを売りにしている管理会社もあります。
築年数も総戸数も委託している管理会社もマンション内にある設備もほぼ同じ、というマンション同士を比較するなら良いですが、なかなか同じような条件のマンションというのは存在しません。
よって管理費に対して「相場」という考え方は難しいのです。
強いて「相場」のような金額を示すとしたら、国土交通省が実施しているマンション総合調査(平成30年度)の結果がやや参考になります。
この調査によれば、管理費の平均額は単棟型マンションで16,213円、団地型マンションで14,660円でした。
なお、マンションの地域による差も多少見られましたが、ほとんどの地域で月額15,000円以上といった回答でした(金額にはいずれも使用料や専用使用料が含まれます)。
修繕積立金の平均額は?
ちなみに修繕積立金は、単棟型マンションで11,875円、団地型マンションで14,094円です。
こちらは管理費とは逆で、団地型マンションの平均額の方が高い傾向にあります。
団地型の方が、築年数が経過したマンションが多いことが理由と思われます(一般的には築年数が経過すればするほど修繕積立金が高くなる傾向がある)。
繰り返しになりますが、これらの金額は「相場」では無く、あくまでも回答された方の平均値ですのでご注意下さい。
相場を示すことは難しいですが「相場を知る」ことは可能です。
「相場を知りたい」というご要望の先には、「今自分が支払っている管理費が安いのか高いのかを知りたい」というお考えをお持ちの方が多くいらっしゃいます。
その場合は、他の管理会社の見積を取ってみることです。
今より高くなるのならば「うちのマンションは相場より安いんだ」と考えて良いでしょうし、逆なら高いというが分かります。
関連記事:マンション管理費が高くて支払いがきつい?滞納者と管理組合ができるそれぞれの対策とは
マンション管理費は安ければいいわけではない
たまに「えっ、どうしてこんなに管理費が安いの?」というマンションの情報を耳にします。
もちろん、なるべく管理費を安く抑えるような取り組みによってとても安くなっているのであれば問題ないのですが、なかには「法定点検を実施していない」「損害保険に加入していない」「修繕積立金を取り崩して賄ってしまっている」「必要なメンテナンス作業を実施していない」といったマンションの例も見受けられます。
このようなマンションの場合は、いくら管理費が安くてもあまり良い状態とはいえないでしょう。
あくまでも理想は「管理運営上、きちんとやるべきことを実施したうえで、なるべく管理コストを安く済ませる」ということです。
管理費で得られるサービスが値段相応かを確認しよう
マンションの各区分所有者は毎月管理費を管理組合に支払い、管理組合は管理費を原資として管理会社などに管理委託費用を支払っています。
この管理費や管理委託費によって管理会社から受けているサービスが値段相応なのか確認するにはどうしたら良いのでしょうか?
そのためには、やはり他の管理会社と比較をするしかありません。
管理会社によって管理業務のやり方や体制などが多少異なります。
たとえばA社の場合は、24時間356日稼働のコールセンターを持っているが、B社は土日は電話がつながらない、C社は理事会出席回数の制限はないけど、D社は年5回まで、などです。
これらを管理業務の仕様といいます。
仕様を合わせたうえで、金額を比較するとどこの管理会社が安いか高いかが分かりやすくなります。
また、もし仕様を合わせられなければ、仕様の違いを明確にしたうえで、比較すると値段が適切かどうか分かりやすくなるでしょう。
管理会社に管理費の値下げ交渉をする方法
管理会社に管理費の値下げを交渉することはできますか?
こたえはYESですが、正確に言いますと「管理費」の値下げ交渉ではなく「管理委託費」の値下げ交渉です。
管理費は管理組合に収め、管理組合は管理費を原資として管理会社に管理委託費を支払っています。
つまり、値下げ交渉をするのは「管理委託費」の方なのです。
仮に管理委託費の値下げに成功し、管理費会計に余剰金がうまれた結果、管理費を値下げすることも考えられます。
しかし管理費の値下げは管理会社と交渉するものではなく、管理組合の総会で決定されます。
では「管理委託費」の値下げ交渉の方法はどのように行えば良いのでしょうか?
関連記事:マンション管理費値上げ時の総会決議の進め方や反対されないためのポイントを解説
管理業務の仕様を見直してもらうよう要請する
たとえば管理員さんが有給休暇を取った場合、管理会社は代わりの管理員さんを派遣する契約になっている場合があります。
このような管理員さんを代行管理員といいますが、昨今の人手不足によりこの代行管理員を派遣する費用がとても高騰しており、管理会社の負担が大きくなっています。
「管理員さんが有給休暇を取得する場合や、研修などで不在にする場合、代行管理員は派遣しない」という契約に変更すると管理委託費を下げられるかもしれません。
また、それ以外にもたとえば定期清掃の頻度を下げたり、理事会の開催頻度を変えたりすることも有効です。
管理業務の発注先を管理組合の直接発注に変更できないか申し入れる
管理会社は大半の業務を下請けに委託しています。
たとえば点検作業を10万円で管理会社が受注し、7万円で下請けに依頼するようなパターンの場合、管理組合が直接下請企業に発注すれば3万円のコストカットができます。
管理組合からすると契約先が管理会社から下請会社に変わるため、下請先と直接やり取りしなくてはならないという面はありますが、さほど大きなデメリットではないでしょう。
他の管理会社の見積を取得し、下がるようであればその見積書を材料に値下げの交渉をする
ある意味これが一番てっとり早い方法かもしれません。
管理会社からするとよほどの理由がない限り、ある程度の値下げ要求に応じてくれるでしょう。
もし仮に値下げに応じてもらえなかったとしても、本当に管理組合が管理委託費を下げたいのであれば、その安い管理会社に切り替えることも有効な選択肢になります。
サービスの質低下には注意
いくら管理費が安くなるからといって金額だけで管理会社を変更すると、サービスの質低下につながる場合がありますので注意が必要です。
たとえば清掃の仕上がりが悪くなったなどが挙げられますが実際のところ、サービスの質低下につながったというような話はあまり多くないようです。
というのも先述の通り、管理会社は多くの業務を下請に再委託しており、実際に作業するのは管理会社ではなく、下請企業の方々です。
つまり、管理会社が代わったとしても結局は下請企業次第、ということなのでしょう。
管理費の変更には総会の決議が必要
管理費の変更を決定するには、総会の決議が必要です。
国土交通省が作成し、公開している標準管理規約では以下のように定められています。
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
六 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
標準管理規約 議決事項
管理規約とはマンションの維持・管理、その他住民が快適かつ安全に生活を送るための基本的ルールを定めたもののこと。
中でも標準管理規約は、国土交通省が管理規約の標準モデルとして作成したものです。
管理規約を作成・変更する際の参考になるよう作られた標準管理規約に準拠したものを、多くのマンションは制定しています。
標準管理規約の第48条はいわゆる普通決議について定めたものです。
普通決議の場合、議決権総数の半数以上が出席する総会において出席した組合員の議決権の過半数の賛成が必要となります。
ただし、標準管理規約とは異なる取り決めをしているマンションの場合、特別決議が必要となる場合があります。
また、管理規約そのものに管理費の金額が記載されている場合「管理規約の変更」との解釈になり、その場合も特別決議が必要な可能性があります。
関連記事:マンション管理費の滞納はトラブルの元?管理費を払わない人への対応策などを紹介
まとめ
今回は管理費の値下げやその方法がテーマでした。
毎月の支払いですから、できるだけ安くしたいのはみんな同じです。
そのために重要なのはより多くの区分所有者が管理組合運営に目を向けることです。
最近はむしろ管理費の値上げを迫られているマンションが多いため、値下げを実現することは難しいかもしれません。
しかし、管理組合側の取り組みによっては、値上げを回避したり、値上げ幅を圧縮したりすることは十分可能です。
また、もう一つ重要なのは「管理組合としての総意はなにか」という点です。
値下げをしたい、値上げはしたくないという思いは、区分所有者ほぼ全員の共通した考えだと思います。
しかし「どれくらいそう思っているのか」は個人差があります。
管理組合内における意見の最終決定は多数決です。
重要な意思決定は全て総会の決議によって確定するので、多数決の原則に従って判断していかなければなりません。
区分所有者全員に対するアンケートを取るなど、管理組合の総意を確認しながら合意形成を進めていくことをおすすめします。