マンション管理費が高くて支払いがきつい?滞納者と管理組合ができるそれぞれの対策とは
国土交通省が5年ごとに実施しているマンション総合調査(平成30年度)の結果では「管理費等の滞納トラブルを抱えている」と回答された方は、全体の約24%でした。
決して少なくはない数のマンションで滞納問題が起きているようですね。
今は滞納者がいないマンションでも、将来的にも同じ状態であるとは言い切れません。
今回はマンションの管理費・修繕積立金などの滞納に関して解説します。
滞納をされて困っている管理組合の方、滞納してしまっている区分所有者、どちらの方が読んでも参考になる内容です。
ぜひ、最後までお読みください。
INDEX
そもそもマンション管理費はなんのためにあるのか
管理費は管理会社への管理委託費や、建物の清掃・点検などの日常的な作業費用に使われます。
住民が快適に生活するためには欠かせない、大事な費用です。
また、管理費は管理会社に支払う費用だけでなく、共用部の光熱費や保険料などにも使われています。
管理費の滞納が増えると、マンションの維持管理のための費用が捻出できなくなり、安心して暮らすことができなくなってしまう可能性があるでしょう。
管理費の相場
先述の国土交通省マンション総合調査(平成30年度)の結果によれば、管理費の平均額は単棟型マンションで16,213円、団地型マンションで14,660円でした。
なお、マンションの地域による差も多少見られましたが、ほとんどの地域で月額15,000円以上といった回答でした(金額にはいずれも使用料や専用使用料が含まれます)。
ちなみに修繕積立金は、単棟型マンションで11,875円、団地型マンションで14,094円です。
こちらは管理費とは逆で、団地型マンションの平均額の方が高い傾向にあります。
団地型の方が、築年数が経過したマンションが多いことが理由と思われます(一般的には築年数が経過すればするほど修繕積立金が高くなる傾向がある)。
関連記事:老朽化マンション問題とは?あなたのマンションもいずれ迎える老朽化。今のうちにできることとは?
マンション管理費は何を基準に決められる?
管理費決定の流れは一般的には以下の通りです。
①マンション全体で管理費会計から捻出される総費用を洗い出す
例:管理会社に委託する費用、水道光熱費、小修繕費用、各種設備点検費用、マンション全体で加入する保険料など。
②駐車場や駐輪場などの共用部があるマンションの場合は、そこから得られる収入の見込み金額を算出する
駐車場などは、近隣の月極駐車場の相場を参考にします。また、稼働率は実態に合わせて設定します。
③①から②を差し引いた不足分を管理費総額とし、案分して各部屋の金額を出す
①で出した総費用から、②の収入見込み金額を引いて不足分を算出します。
ここで気をつけたいのが「ぴったりの金額にしてしまわないこと」です。
もしぴったりの数字にしてしまうと、滞納が発生したり、なんらかの費用が値上がりしたり、共用部での収入が減少したりなどの異常事態に陥った際に、すぐに資金がショートしてしまうおそれがあります。
そのため、計算でマンション管理費を出す際は、ある程度剰余金が出るように設定しましょう。
そうして設定した総額を各部屋の大きさに応じて案分し、各部屋の管理費を決定します。
マンション管理費の金額がマンションによって大きく異なる理由
管理費の平均額は先ほど触れた通りですが、あくまでも平均値です。
「うちのマンションはそんなに払ってないよ」という方もいれば、逆に「うちは倍くらい払っているんだけど……」という方もいらっしゃるでしょう。
管理費はマンションによって大きく金額が変動します。
理由としては以下が考えられます。
①マンション内に維持コストのかかる設備などがある
②マンションの規模が小規模
③管理会社への委託費用が割高
④管理業務にかかるコストが高すぎる
⑤駐車場などの共用部収入が少ない
ひとつずつ見ていきましょう。
①マンション内に維持コストのかかる設備などがある
たとえば機械式駐車場です。
設備に不具合があれば最悪、人身事故も起きかねないため、機械式駐車場に対し日々のメンテナンスは欠かせません。
点検の結果、少しでも設備に異常の可能性があればすぐに部品交換や修理費用が発生します。
また、少し「設備」とは異なりますが、たとえば立派に切り揃えられた植栽なども維持コストがかかります。
②マンションの規模がそもそも小規模
小さな規模のマンションであれば大規模マンションと比べて、たしかに管理にかかる総コストは少額だと言えるでしょう。
しかし、実際のところでいえば戸当たりで案分することで管理費が割高になってしまう場合も多く見受けられます。
たとえば20戸のマンションと40戸のマンションで、日常的な清掃を行う場合。そこまで作業時間は変わりませんが、発生した人件費を20で割るか、40で割るかで大きく異なります。
小規模マンションの方が、負担額が大きくなってしまう訳です。
③管理会社への委託費用が割高
管理会社にすべて業務を委託しているマンションの場合、管理費の多くが管理会社への発注に回されます。
たとえば、利益率を30%で設定している管理会社と20%で設定している管理会社では、当然ながら管理組合の発注金額に大きく変わってきます。
④管理業務にかかるコストが高すぎる
たとえば管理員を週5日の8時間勤務にしてもらっていたり、植栽の剪定の頻度が多すぎたりする場合が挙げられるでしょう。
エレベーターのメンテナンス一つとっても、その契約内容次第で大きく変わります。
メーカー系の会社に委託するか、独立系の会社に委託するかでも金額は変わりますし、POG契約かフルメンテナンス契約かによっても金額が変わります。
クオリティの高い管理業務にはもちろん相応のコストがかかりますが、はたしてそこまでのクオリティが必要なのか、改めて精査する必要があるかもしれません。
関連記事:マンションの設備点検とは?業者の選び方や相場などを解説
⑤駐車場などの共用部の利用料収入が少ない
管理費の計算で使用するうえで割と重要なのが駐車場などの共用部の利用料収入です
マンションの維持管理のための費用は、管理費+共用部の収入によって賄います。
つまり有料の駐車場や駐輪場、バイク置き場など管理組合の収入源が少ないとその分管理費が高くついてしまうのです。
とはいえ、先述のとおり機械式駐車場があるとそれだけ維持コストもかかってしまうため有料の駐車場がよいという訳ではありません。
管理費を安くする、という面だけで言うならば平面駐車場がたくさんあるのがよいということになります。
管理費の金額は変えることができる?その方法とは
管理費を少しでも安くするためできることは以下の通りです。
①管理業務の仕様を見直す
②管理業務の発注先を変更する
③管理会社に委託している業務の一部を自主管理に切り替える
④管理会社を変更する
⑤電力会社を変更する
⑥空いている駐車場を外部者に貸し出す
⑦マンションの空きスペースを有効活用する
簡単に言えば、支出を抑える取り組みと、収入を増やす取り組みを同時に行うということですね。
たとえば①では宅配ボックスや自動ドアの点検などを見直してみるのは一つの手として挙げられます。
しかし、なんでもかんでも削ればいいという話ではありません。
消防設備など、法律で定められているものの点検頻度を下げることはNGです。
ほかの項目に関してのよりくわしい説明などは下記の記事に記載されています。
ぜひあわせてお読みください。
関連記事:管理費の値上げを回避したいマンションの管理組合役員が確認すべき7つの費用削減ポイント
【管理組合向け】マンションの管理費滞納者への対策
では、マンション内で管理費や修繕積立金を滞納する方がいる場合、どのように対応したらよいのでしょうか?
まずは、速やかに督促をすることです。
督促の方法はいくつかあります。滞納の総額や、相手の反応などによって、下記のステップにあげていきましょう。
ステップ1:書面や電話による督促
ステップ2:訪問による督促
ステップ3:法的手段を視野に入れた督促
なお、管理会社に管理業務を委託している場合、これらの業務は管理会社が実施してくれます。
しかし、管理会社がきちんと督促業務を行っているかの確認は、管理組合として必要です。
管理会社の担当者は10~20くらいのマンションを同時に担当していて、日々忙しくしている方が多いため「ついうっかり督促状を出し忘れた」「忙しすぎて訪問での督促なんてできない」というケースも、可能性としては大いに考えられます。
滞納者についての予防策などは下記の関連記事をご覧ください。
関連記事:マンションの管理費を払わない人への対処法や予防策を徹底解説!法的措置に関する注意点も
管理会社が行う督促業務期間について
管理会社が督促業務を行う期間については、管理委託契約書に「○ヶ月まで」と定められているのが一般的です。
仮に6ヶ月と取り決められていれば、滞納が7ヶ月以上になった場合、管理会社は督促業務を行う義務がなくなります。
滞納は長期化すると支払う側も支払いづらくなるため、解決が難しくなりがちです。そのため、早め早めの対応が求められます。
【滞納している区分所有者の方向け】マンションの管理費などを滞納してしまった場合の対策
実際にマンション管理費を滞納してしまった場合、以下のケースに分けて考えましょう。
- ついうっかり支払うのを忘れてしまったケース
- 何らかの事情により支払いが困難なケース
①ついうっかり支払うのを忘れてしまったケース
まずは①の場合についてみていきましょう。
管理費などの収納方法は大きく分けて以下のパターンがあります。
A:管理組合が指定する特定の金融機関の特定の支店からの引き落とし
B:各区分所有者の指定した金融機関からの引き落とし
C:管理組合口座への振り込み
ついうっかり引き落とし口座にお金を入れておくのを忘れてしまった、期限までに振り込むのを忘れたと、いうことは人間誰しもあるでしょう。
その場合、気付いた時点で管理会社や管理員さん、理事会役員などに連絡してどのように支払えばいいかを相談しましょう。
たいていの場合は、翌月分の支払いの際に2か月分支払って下さいと言われ、実際に入金されれば特段問題となることもありません。
管理会社や管理組合から目を付けられることもないでしょうし、1カ月程度の滞納なら遅延損害金も請求される可能性は低いです。
とはいえ、頻繁にうっかりミスが起こると管理会社や管理組合も心配するでしょうから、ミスは気を付けるように心がけましょう。
②何らかの事情により支払いが困難なケース
次に②の場合です。支払いたくても支払えない、つまり手持ちのお金がないケースです。
事業に失敗した、身体を壊して働けなくなった、誰かの借金を肩代わりした、事情はさまざまでしょう。
事情は置いておいて、支払いが困難になってしまった場合はとにかく管理会社や管理組合の方と話し合いの場を設けること、それから少しずつでも良いから滞納を返済していくことが第一です。
管理費の滞納が長期化した場合、管理組合は最終的に競売にかけることができます。
滞納分は競落した方から回収することが期待できるため、滞納が長期化してしまうと、管理組合としてもそのような選択をする場合があります。
競売が成立すると滞納者は強制的に退去を命じられます。
滞納者に小さなお子さんなどがいた場合、強制的にマンションから追い出すのは心苦しいと思う方も多くいらっしゃいます。
管理組合にとっても、競売という選択はできればとりたくない最終的な手段なのです。
しかしながら滞納が長期化し、滞納者も話し合いに応じず、全く誠意が見られない態度を取り続けていると管理組合側から見切りをつけられ、その結果競売に踏み切られやすくなってしまうでしょう。
逆に、誠意ある態度で支払う意思があることを説明していくことで最悪のケースを回避することができるかもしれません。
その意味でも管理組合の方々との話し合いには真摯に対応するようにしましょう。
また、少しずつでもよいので支払いを続けていくことが大切です。
まとめ
今回は管理費の滞納に関するお話でした。
冒頭に触れましたように滞納問題を抱えていらっしゃるマンションは割と多くあるようです。
1~2か月程度のうっかり滞納ならともかく、半年以上の長期化した滞納問題を抱えてしまうと、管理組合的には心理的にも大きな負担となってしまいます。
そのため、滞納問題は早め早めに対応することが重要です。
最近では「VAMOS ~安心を届ける不動産保証サービス~」という管理費などの滞納保証を行うサービスも登場しています。
月々のランニングコストはかかりますが、このサービスを利用すると滞納の悩みはかなり軽減されるでしょう。
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