法改正によりマンション建て替え決議が「4分の3」に緩和!その条件とは?

マンションの老朽化が進む中、建て替えを検討する管理組合が増えてきています。

これまでの区分所有法では建て替え決議に「区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成」が必要だったため、実現が難しいケースが多くありました。

しかし、2026年の区分所有法改正では、一定条件下で「4分の3以上の賛成」に緩和されます。

このコラムでは、建て替え決議の要件緩和の条件と合意形成のポイントを解説します。

マンション建て替えの多数決割合が「4分の3」になる条件

2026年の区分所有法改正に伴い、マンション再生を円滑に進めるための新ルールが制定されます。

これまで、マンションの建て替えにはかならず区分所有者の「5分の4以上」の賛成が必要でした。

しかし、今回の法改正により特定の条件下において必要な賛成の割合が「4分の3以上」と緩和され、建て替えがしやすくなります

【特定の条件】

  • 耐震性が不足している
  • 火災に対する安全性が不足している
  • 外壁の剝落など周辺に危害が生じる恐れがある
  • 居住環境や衛生面に老朽化を起因とした問題がある
  • バリアフリー基準に適合していない

これらの条件を満たすためには、自己申告ではなく専門家による判断などが必要です。

詳細を解説します。

耐震性が不足している

1981年の新耐震基準以前に建てられたマンションなど、現行の耐震基準を満たしていない建物が対象です。

耐震診断を実施し、専門家によるIS値などの具体的な数値で不足を証明する必要があります。

火災に対する安全性が不足している

火災時の避難経路や防火設備が現在の基準から見て不十分なマンションが対象です。

防火設備の点検や専門家による防火診断を受け、現行基準との差異を示す資料を準備することが求められます。

外壁の剝落など周辺に危害が生じる恐れがある

外壁のタイルやコンクリートが経年劣化により落下する危険性がある状態です。

建築士などによる外壁調査を実施し、危険度を示す調査報告書を取得しなければなりません

居住環境や衛生面に老朽化を起因とした問題がある

配管の老朽化が進行し、水漏れや配管破裂のリスクが高く、居住環境や衛生面で問題がある状態が該当します。

専門業者による配管調査と腐食状況のレポートが必要です。

バリアフリー基準に適合していない

高齢者や障がい者にとって住みにくい環境であるマンション、特に段差が多い、エレベーターがないなどの状況が対象です。

建築士などによるバリアフリー診断を実施し、現行法との不適合を示す資料が必要です。

マンション再生、最初の一歩を踏み出せていますか?

法改正の恩恵を生かすには、老朽化状況の専門的な調査や正確な判断が不可欠です。

しかし、建て替えありきで進めてしまうと修繕や売却など、より最適な選択肢を見落としてしまうかもしれません

私たち三菱地所コミュニティでは、管理会社としての豊富な実績と中立な立場から建て替えだけでなく、あらゆる再生の選択肢を提示。
居住者目線で、本当にそのマンションに最適な答えを一緒にお探しします

まずはあなたのマンションについて、お気軽にご相談ください。

建て替え決議が「4分の3」に緩和された背景

区分所有法の改正、ないしは建て替え決議緩和の背景には、日本全国で急速に進むマンションの高経年化と居住者の高齢化が関係しています

国土交通省の調査によると、築40年以上の分譲マンションストック数は2023年末には約137万戸、築40年以上のマンション世帯主が70歳以上の住戸の割合は55%に達しているのだそう。

築40年以上のマンションストックの推移を示したグラフ。経年のたびに数値は上昇していく傾向にある。
出典:国土交通省「マンション関係法改正の概要」令和7年9月 より

こうした課題がありながら、管理組合がマンション再生を行いたいと思っても現行制度だとスムーズに議決が進まないという現実がありました。

改正前は建て替えに「区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成」が必要で、また所在不明の区分所有者の議決権が分母に含められていました。
そのため、建て替え決議を進めることは極めて困難で、迅速に対応できない状態だったのです。

マンションの老朽化、居住者の高齢化という避けられない課題に対し、政府が法改正に踏み切ったのは当然の流れと言えるでしょう。

ちなみに、区分所有法改正で見直されたのは建て替えだけではありません。

建て替え以外のマンション再生(建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物取り壊しなど)についても、多数決決議などの見直しがされています

区分所有法の改正について、詳細は下記の関連コラムをご覧ください。

関連コラム:2026年の区分所有法改正で何が変わる?改正の背景や影響を徹底解説

区分所有者の合意形成を得るためのポイント

法改正で多数決割合のハードルが下がっても、区分所有者間の合意形成は依然として大きな課題です。

建て替えはすべての区分所有者の生活と資産に直接関わる問題であり「誰かに任せておけば良い」という姿勢ではなく、一人ひとりが「自分ごと」として向き合う必要があります

多様な価値観や事情を抱える区分所有者の理解と協力を得るため、下記のようなポイントを抑えることが重要です。

  • 議題に関する情報は簡潔に整理!事前共有しておくとなお良し
  • 住民の声を聞く場を定期的にセッティングする
  • 行政や専門家への相談をうまく活用する

議題に関する情報は簡潔に整理!事前共有も◎

「なぜ」「何を」「どのように」「いつ」など、議題に関する各情報については簡潔にまとめることを意識しましょう。

建て替え検討にあたって区分所有者が十分な情報を得たうえで判断できるよう、複雑な情報を整理して伝える工夫が必要です(下記一例)。

  • 建物の現状評価(老朽化の状況、耐震性能など)
  • 建て替えとその他手法(敷地売却、大規模修繕など)のメリット・デメリット比較
  • 建て替えに必要な費用と資金計画
  • スケジュール案と仮住まい対応策

これらの情報を事前に資料として取りまとめ、定期的に情報発信することで、区分所有者が十分に検討する時間を確保できます。

ただ、建て替えなどについての知識量に差があると、管理組合側でどれだけ情報を整理しても議論が一方的になったり、知識の少ない区分所有者が不安を抱えたまま判断を迫られたりするリスクが残ってしまいます

このような場合は、専門家による勉強会やセミナーを事前に開催することも有効です。

事前共有で使えるツール

分かりやすく、簡潔にまとめた情報を共有する際には以下の方法が有効です:

  • 管理組合の広報誌(理事会便り)の定期発行
  • 掲示板やデジタルサイネージの活用
  • クラウドストレージでの資料共有
  • SNSやメーリングリスト、チャットツールの活用

ただ、オンライン上でのやり取りは楽な反面、人によっては拒絶反応を抱きがちなところでもあるため注意が必要です。

特に高齢者が多いマンションになると、SNSやチャットツールなどの利用がそもそも困難と感じられるケースは少なくありません。
アナログかデジタルか、ではなく区分所有者の特性に応じた方法を選択することがもっとも重要です。

住民の声を聞く場を定期的にセッティングする

建て替えのような大きな決断には、区分所有者一人ひとりの意見を丁寧に聞くプロセスが欠かせません。

そのために、例えば以下のような取り組みが効果的です:

  • 定期的な住民懇談会や意見交換会の開催
  • 高齢者や単身世帯など、情報収集や意思表明が難しい方々への個別訪問
  • 匿名性が担保されたアンケートの実施
  • 住民どうしが交流できるイベントの開催

一方、さまざまな意見を聞く中では、多様な価値観や優先順位の違いによる要望、技術的・経済的に実現が難しい提案に直面することもあるでしょう。

管理組合としてはすべての意見を尊重しながらも、全体の利益を考えた合理的な判断が求められます

このバランス、つまり「聞く姿勢」と「判断する責任」の両立を適切に保つためには、透明性のある情報発信と、住民懇談会や意見交換会、アンケートなどの意見聴取の場を計画的に運営する、公明正大な手続きを確立することが必要です。

行政や専門家への相談をうまく活用する

マンション建て替えや大規模修繕の成功には、専門家の知見活用が不可欠です。

マンション再生の実務で重要な役割を担う専門家は以下の通りです。

専門家特徴
マンション再生コンサルタント・費用対効果や資産価値の観点からの助言
 
・複雑なプロジェクトでも、全体を俯瞰可能
建築士・建物の現状評価や再生プラン作成、設計監理を担当
 
・技術的判断を行う
弁護士(不動産法・区分所有法専門)・法的手続きの助言や契約書チェック、トラブル対応を担当
 
・所有者不明問題や合意形成プロセス
専門業者(設備関連)・老朽化した設備の評価を行う専門業者
 
・再生方針決定の基礎データとなる劣化状況の正確な把握を行う
行政の相談窓口担当者補助金や低利融資の情報提供、許認可手続きのアドバイスが期待できる

これらの専門家選定では、マンション再生の実績や合意形成サポート経験を確認することが重要です。

また、複数の専門家からセカンドオピニオンを得ることで、より客観的な判断が可能になります。

初期段階から専門家に相談することで、後々の手戻りや混乱を防ぐことが可能です。

中立的な専門家が導く、最良のマンション再生

マンション再生の合意形成には専門家の助言が欠かせませんが、その専門家の選定こそが成功の鍵です。

特に、管理組合内で「意見がまとまらない」「本当に最適な選択肢が分からない」などの課題に直面しているなら、マンションの現場を知り尽くした中立的なパートナーが必要かもしれません。

私たち三菱地所コミュニティでは、建て替えをはじめとするマンション再生の準備段階から実施段階に至るまでトータルでサポートしています

長年積み重ねてきた管理組合運営実績と居住者目線を基盤に、マンション再生に関するあらゆる選択肢を提示。
区分所有者の皆様が心から納得できる最善の答えを一緒に見つけだします。

最善のマンション再生計画をスタートさせるため、まずは管理会社ならではの知見を持つ三菱地所コミュニティにご相談ください。

安心できる住環境を、マンション再生から

2026年の区分所有法改正によるマンション建て替え決議要件の緩和は、老朽化マンションの再生にとって大きなチャンスです。

建て替え以外にも、一括リノベーションや敷地売却など、マンション再生の選択肢も拡充されます。
あなたのマンションに最適な再生方法を見つけるためにも、情報収集と専門家への相談を積極的に行いましょう。

マンションは単なる住まいではなく、長期にわたる大切な資産です。

安全で快適な住環境を次世代に引き継ぐためにも、この法改正を契機に、専門企業や自治体の支援も活用しながら、マンション再生について検討を始めることをお勧めします。

とはいえ「何から手を付けていいか分からない」「中立的な意見を聞きたい」といった悩みの尽きない方も多いでしょう。

私たち三菱地所コミュニティでは区分所有者方の多様なニーズに応えるサポートを提供しております。

詳しくはマンション再生相談窓口ページをご覧ください。

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