築古マンション建て替え費用は誰が払う?相場と解決策を紹介

建て替えが実現した場合その料金は区分所有者が支払わなければなりませんが「そんな大金、用意できない!」と不安を抱く区分所有者は当然少なくありません。
そのため、住宅金融支援機構による融資をはじめとした、建て替え資金の負担を軽減するための施策がいくつか用意されているのです。
今回は、建て替え費用が払えない場合についてお悩みの方へ向け、建て替え費用の基本知識から支払いが難しい際の選択肢までを分かりやすく解説します。
INDEX
マンション建て替え費用の基本知識

建て替えにかかる費用は大きく分けて「事業費」と「居住者の一時的費用」の2種類があります。
事業費は建て替え事業そのものにかかる費用で、解体・設計・建築・各種申請などの直接費に加え、調査・コンサル費用などを含みます。
居住者が個々で負担する一時的な費用は、建設期間中の仮住まいや引っ越しの費用など、建て替えに直接関係しない費用があてはまります。
建て替え費用の内訳とは?
建て替え事業全体で発生する一般的な費用項目は次のとおりです。
【事業費の内訳】
- 解体費用(現在のマンションの解体・廃材処分)
- 設計費用(建て替えマンションの基本計画・実施設計・監理)
- 建築工事費用(建て替えマンションの躯体・内外装・設備などの建築)
- 各種申請・許認可取得費用(行政への建築確認などの申請にかかる費用)
- コンサルタント費用(事業を進めるための調査・検討のため)
- 予備費(物価変動・設計変更等のリスク対応)
建て替えで発生する「事業費」の具体的な金額は、マンションの規模や仕様、工法、行政手続の難易度により大きく変動します。
各項目の見積もりは早いタイミングで専門家へ依頼しましょう。
その際は概算からスタートし、詳細の見積もり提示まで段階的に精度を高めていく必要があります。
また、各区分所有者が負担する金額は:
- 再建マンションの評価(従前資産評価との比較)
- 補助金・融資を活用できるか
- 住戸数を増やして販売収益を事業費へ充当できるか
などの項目を受けて確定します。
細かい部分で見積もり詳細も変化するため、合意形成へ向けて複数案の比較や総会での丁寧な説明は欠かせません。
また「事業費」に加えて、仮住まいへの引っ越し費用、仮住まいの家賃、仮住まいから建て替え後のマンションへ再び戻る引っ越し費用が個々に発生します(居住者の一時的費用)。
マンションの寿命と建て替えのタイミング
一般的に、マンションの寿命(耐用年数)は鉄筋コンクリート(RC)造の場合60年程度、適切な維持管理を行えば100年以上に延びると言われています。
しかし、これはあくまで建物の外側の構造の話でありマンションの建て替えタイミングを語るうえではあまり参考となりません。
マンションの建て替えタイミングとして一概に「◯◯年」と断定することは難しく、一般的には設備の老朽化が著しく、修繕費が嵩むようになってきたタイミングが建て替え検討時期とされています。
排水管の漏水事故が多発するようになったなどは、老朽化のサインの一つです。
また、耐震性能も建て替えを検討する大きな判断基準です。
特に築古のマンションでは旧耐震基準(※)にのっとり建造されたものも少なくなく、今後予想される大地震に対する備えが急務となっています。
統括すると、大規模修繕を重ねても根本的な改善が難しい場合、建物診断や耐震診断を実施し、その結果を踏まえて改修・敷地売却・建て替えなどのマンション再生に進んでいくと良いでしょう。
※1981年5月31日までに適用された基準のこと。耐震性について震度5強までしか規定がなく、震度6以上の大地震について言及がなかった。
マンション建て替え費用は誰が負担する?

マンションの建て替えは、区分所有者自分たちで費用を出し合って実施することが原則です。
事業協力者(デベロッパー)が参加する場合、元のマンションと同等の価値の住戸を再取得することが可能ですが、再建後の新築住戸が以前よりも高額となる場合、その差額を負担する必要があります。
タダで建て替えができると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、工事費の高騰などにより、東京都内の市場価格が高額なエリアでも負担金ゼロで建て替えが実施できるケースはほとんどありません。
建て替えを検討する場合は、各区分所有者の持ち出しが発生することに留意し、経済条件を確認することが重要なのです。
住民の負担額の相場
建て替えを行う場合の自己負担額の目安は、1戸あたり1,000万円〜3,000万円程度と言われています。
ただし、これはあくまでも目安であり、全国一律の公的な統計はありません。
費用はマンションの立地・規模・仕様・行政条件などにより大きく変動し、現在と同じ面積の住戸を取得しようとした場合に、数千万円から億単位での持ち出しが必要になることもある、といった程度でしか相場を語ることはできないのです。
マンションごとに条件が大きく異なるため、詳細を把握するには設計・建築概算、資産評価を基にマンションごとに試算する必要があります。
住民の負担が軽減されるケース
建て替え費用は高額になりますが、下記のケースにあてはまる場合、住民の自己負担額が減る可能性もあります。
- 容積率に余剰がある場合
- 融資・支援制度の活用が受けられる場合
詳細を解説します。
■容積率に余剰がある場合

建て替え後のマンションの容積率に余剰があるなど、床面積が増えた場合にはその部分をデベロッパーに売却し、その収入を建て替えの事業費に充てることができます。
売却できる床面積が多いほど、自己負担額を抑えた建て替えが可能です。

容積率は行政により都市計画の中で地域ごとに決められています。
ただし耐震性の不足など、一定の理由が認められた場合に建て替えを行う場合、容積率の緩和の特例を受けられる場合があります。
また、もともと広い敷地に小さい容積のマンションが建っている場合にも、建て替えにより容積を最大限に増やすことが可能です。
建て替えに参加せずに転出する住戸が多い場合も、売却できる床面積が増えます。
このように「容積率に余剰がある場合」と言っても、それにあてはまるケースはいくつか存在します。
どれだけの余剰が生まれるかはマンションごとに条件を確認する必要があるため、専門家へ相談してみるのが良いでしょう。
■融資・支援制度の活用
日本政策金融公庫や各地方自治体では、建て替え組合に対し「長期事業資金」として事業費に充てる費用の融資制度があります。
負担金の捻出が困難な高齢者に対し返済負担を軽減する「高齢者向け返済特例」などの制度もあります。
例えば、東京都では建て替えを⾏うマンションの居住者に都営住宅を仮住居として提供する制度もあり、各区分所有者が負担する一時金が軽減される手法もあります。
こうした資金面のサポートを受けることで負担を減らしながら建て替えを実行することが可能です。
適用条件や上限、申請時期などは行政・制度により異なるため、早期に情報収集し、採択可能性を精査しましょう。
三菱地所コミュニティが、再生に向けた「確かな合意」を形成できる理由
補助金や制度の精査は、あくまで再生への第一歩に過ぎません。
専門的な制度の活用と、住民間の合意形成。
この両輪を、管理組合の運営を熟知した三菱地所コミュニティが完遂します。
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詳細は下記よりご覧ください。
マンション建て替えの流れと期間

建て替えは準備段階、検討段階、計画段階、実施段階と順序を経て進みます。
マンションの建て替えは長期にわたる大規模プロジェクトで、検討開始から建て替えが完了するまでに8年から10年以上かかる場合もあります。
建て替えの準備段階

マンション建て替えは住民の暮らしに直結する大きな決断であり、合意形成には長い時間と丁寧なプロセスが必要です。
建て替えを実施するにあたっては、以下のプロセスを経て、最終的には5分の4以上の賛成による建て替え決議の承認が必要です。
【STEP1】 再生検討の土台作り
まずは建物の現状把握(修繕履歴や耐震診断)や都市計画・法規制の確認を行い、勉強会やアンケートで情報共有を行い、管理組合全体で議論を進める土台を築きます。
【STEP2】 建て替えの情報収集と評価
改修や敷地売却などほかの再生手法との比較検討を進め、費用・期間・住民意向を総合評価します。
この段階では、理事会とは別に「建て替え検討委員会」を設置し、概算費用の算出や、普通決議による建て替え推進決議を行うことが有効です。
【STEP3】 建て替えに向けた計画実施
管理組合として建て替えを実施する方針が固まったら、コンサルタントや設計事務所、デベロッパーを選定し、事業計画・資金計画を策定します。
最終的な建て替え決議には5分の4以上の賛成が必要なため、個別面談や説明会を重ね、住民の不安や要望に対応しながら、透明性の高い合意形成を進めることが成功の鍵です。
関連コラム:マンション建て替えの多数決割合が「4分の3」になる条件
実施段階とその期間

実施段階も、実際の工事や再入居まではさまざまな工程を経る必要があり、一般的に以下のような流れで進めます。
■建替組合設立
定款および事業計画について、建て替え合意者およびその議決権の各4分の3以上の同意により、都道府県知事などに建替組合設立認可を申請します。
事業主体として権利変換や工事契約を進めるためぼ法人格となります。
■建て替え不参加者への売渡し請求
建て替え決議に賛成しなかった区分所有者に対し、参加するか否か催告します。
建替組合は不参加者に対して、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することが可能です。
■権利変換計画の策定
従前資産評価や新住戸の割当、増床負担金の算定などを行い、旧マンションから新マンションへどのように権利を移すかの計画を策定します。
そして、建替組合が都道府県知事などに認可の申請を行います。
■解体工事、新築工事
権利変換認可後、工事に着手します。
解体工事から新築工事までの期間は一般的に1.5~3年程度で、その間仮住まいへの引越しが必要です。
また、この工事期間中に新しいマンションの管理規約や管理費などの管理運営計画を策定します。
■建替組合の解散、再入居
工事完了後は建替組合の清算手続き、解散を行い、新しい管理組合へ移行します。
組合設立から再入居までは5~8年程度を要するケースが多く、各工程は契約・許認可の進捗に左右されるため、スケジュールと資金計画の管理を適切行い、変更リスクに備えます。
※建替え円滑化法による建て替えを実施する場合の流れを記載。
建て替えが進まない理由

実際問題、建て替えが進まない理由として合意形成の難しさと、経済的負担の大きさがあげられます。
国土交通省のデータによると、全国の分譲マンション約713万戸のうち、築40年以上の「高経年マンション」は約148万戸に達しているものの、実際に建て替えが行われた事例は累計でわずか数百件にとどまっています。
利害関係や意見が異なる複数の区分所有者のいるマンションでは、検討から決議まで長期化しやすいのが実情なのです。
住民の合意形成の難しさ
建て替え決議は5分の4以上と高い賛成要件となっています。
投資目的で資産価値を高めたい若い世代、現在の住まいを「終の棲家」としたい高齢者など、利害の違いにより賛否が割れてしまうことはどのマンションでもありえることなのです。
合意形成のためには丁寧な説明と対話を重ねることが欠かせません。
経済的負担の大きさ
建て替えには各戸数千万円の負担がかかりますが、加えて、最終的な事業費が当初より上振れる恐れもあります。
建て替えの検討から実際の工事の発注までの間、物価・金利・施工環境などが変化することが考えられ、それにより事業費が当初より値上がりするケースです。
収益充当や補助金・融資・特例の活用により少しでも負担を減らし、住民に納得感のあるプランを練ることが重要となります。
建て替え費用が払えない場合の選択肢

建て替えの検討を進める中で「費用を払えない」といった声があがってくることもあるのではないでしょうか。
個々の事情に応じ、転出や融資の活用などの検討を進めることが重要です。
住戸を売却して立ち退く
資金負担が困難な場合、権利を売却し金銭化したうえで住み替える選択肢があります。
建て替えに参加しない場合、マンションの持ち分を売却し、従前資産評価額に基づく転出補償金を受け取り立ち退きます。
転出補償金は権利変換の認可後に、建替組合より支払われます。
補助金や融資の活用
自治体の補助金、住宅金融支援機構の融資など、公的支援を組み合わせることで負担を軽減することができます。
住宅金融支援機構などの建替組合に対する事業費の融資や、金融機関による組合員個人に対する各種住宅ローンの活用が可能です。
住宅ローンについては、基本的に区分所有者ごとに個別に対応する必要があるため、管理組合内で建替えの検討が進んだ場合、早い段階で確認を進めると良いでしょう。
税務上の優遇措置について
建て替えに伴う税負担には軽減策が設けられている場合があります。
各種税制、特例の適用可否、申告手続については自治体ごとに異なったり改正されたりすることもあるため、適宜最新情報や諸条件を確認しましょう。
| 建替組合に対する税制優遇措置 | ||
|---|---|---|
| 内容 | 申請方法 | |
| 登録免許税の軽減 | マンション建替事業に関する登記の登録免許税が軽減 | 登記申請時に、マンション建替組合であることを証する書類を添付 |
| 不動産取得税の軽減 | マンション建替事業により取得する不動産に対する不動産取得税が軽減 | 都道府県税事務所に申請書と必要書類を提出 |
| 法人税等の優遇 | 権利変換に関わる事業は法人税法上の「収益事業」とはみなされず、非課税となる | 法人設立時に税務署への届出が必要 |
| 組合員個人に対する税制優遇措置 | ||
|---|---|---|
| 内容 | 申請方法 | |
| 所得税の特例措置 (居住用財産の買換え特例) | 建て替えにより新しい住居の権利を取得した際、譲渡益課税の繰り延べが可能 | 確定申告時に譲渡所得の内訳書や新資産の明細書などを提出 |
| 住宅ローン控除 | 新たに取得する住宅のローンに対して所得税から控除 (年末ローン残高の最大1%) | 確定申告時に「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」などを提出 |
| 固定資産税の軽減 | 新築マンションに対する固定資産税が一定期間軽減 | 自動的に適用される場合が多いが、自治体によっては市区町村の税務課に申請 |
※詳細は各自治体などにご確認ください。
マンション建て替えに関するよくある質問

立ち退き料はもらえるのか?
建て替えの際に区分所有者に対して退去の費用が支払われるか?という点においては、建て替えに参加せず転出する場合には、建替組合より従前資産評価額に基づく転出補償金を受け取ることができます。
建て替えに参加する場合は、一律に「立ち退き料」を義務付ける法律はなく、基本的に支払われるものではありません。
建て替え事業では、仮住まい・引越費の支援を事業費の中で設ける事例があり、自治体が仮住まい支援を行う制度も存在しますが、実際の支援内容は事業計画・合意内容次第です。
また、建て替えが決まった際には定期借家契約に切り替えるのが一般的です。
ちなみに「立ち退き料」という言葉は、賃貸借契約で貸主都合により賃借人に退去を依頼する場合に支払う費用として使われることが多いですが、賃料や移転費用の補償などは所有者と賃借人との交渉により任意で設定します
修繕積立金は使えるのか?
結論から言うと、修繕積立金は既存の建物を維持・保全するための「修繕」を目的とした資金であり、原則として建て替え事業に充てることはできません。
ただし従前の管理組合で、建て替えに関する調査費用や合意形成のために取り崩すことは可能です。
修繕積立金の残金は、管理組合解散の際に管理費と合わせて各区分所有者に清算(返金)されることが一般的です。
建て替え決議の際に修繕積立金を建替えの用途で使用することについて合わせて決議を取ることも考えられますが、管理組合と建替組合は異なる組織であり、組合員も異なる場合があるため、目的外利用の是非や公平性の観点から、慎重な手続きが求められます。
まとめ:マンション建て替えを考える際のポイント

建て替えは解体・設計・建築などの事業費に加え仮住まい費も発生し、負担金額はマンションの条件で大きく変動します。
お金に関わる重要な話ですので、合意形成を円滑に進めるためにも容積率の余剰や緩和、販売収益、補助金・融資・税制優遇を総動員した資金計画が要となります。
さらに5分の4決議を見据え、専門家と試算・説明・比較検討を重ね、透明性の高い合意形成を進めることが成功の鍵と言えるでしょう。

