マンション建て替え決議は「3分の2」にまで引き下げ?マンション再生の多数決割合について

築年数の経過に伴いマンションの管理組合が直面する最大の課題は、建て替えに必要な「5分の4」という合意形成のハードルでしょう。

今回「建て替え決議が『3分の2』に引き下げられる」という噂を聞き、再生への希望を見いだした方もいるかもしれません。

結論として、建て替え決議の多数決割合は、依然として高い水準(5分の4)を維持しています。

ただし、2026年の区分所有法改正により、特定の再生手法については、議決権の3分の2以上で決議が可能になるケースが出てくるのです。

本コラムでは、「マンション再生」と「3分の2」の多数決割合の真実と、法改正による新たな選択肢を明確に解説します。

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法改正により、一部の多数決割合が「3分の2以上」に緩和

2026年4月施行の区分所有法改正により、合意形成のハードルが下がります。

2025年12月現在の区分所有法では、建て替えをはじめとするマンション再生の合意形成を図ることが難しい状態です。

マンションの老朽化・居住者の高齢化など、避けられない問題が浮き彫りになってきた今、この状況を打破するために必要な改正と言えるでしょう。

2026年の区分所有法改正では、集会決議やマンション再生を円滑に進めるための新ルール制定、管理不全の専有・共用部分などについての管理制度が制定される予定です。

最大のポイントはマンション再生における議決要件の緩和です。

特に、建て替え以外のマンション再生手法(敷地売却・一棟リノベーション・建物取り壊し)については大きく変更されます。

従来改正後
全員同意・通常時:5分の4
 
・要件該当時:4分の3
 
・被災時:3分の2

今回の改正により、従来は区分所有者全員の同意が必要だったマンション再生手法について、元は全員の同意が必要だったところ、多数決で決議できるようになりました

耐震不足や政令指定災害による被災など、特殊な条件下においては「4分の3」や「3分の2」まで条件が引き下げられます。

「マンション建て替え」と「3分の2以上」の多数決割合は関係なし

今回の法改正でよくある誤解が「建て替えも3分の2で決議できるようになった」というもの。しかしこれは正しくありません。

建て替えは従来通り、区分所有者数と議決権の5分の4以上の賛成が必要です。
条件によっては4分の3まで緩和される場合がありますが、3分の2にはなりません。

つまり、建て替えは依然として高いハードルを維持しており、合意形成の難しさは大きく変わらないのです。

今回の改正で「3分の2」まで決議要件が緩和されたのは建て替え以外のマンション再生、つまり敷地一括売却や一棟リノベーション、建物の取り壊しなどの再生手法です。

これらの手法を取る場合かつ、高経年化や災害被災など一定の条件を満たす場合に限り、議決要件が大幅に緩和されます。

区分所有法の改正について詳細は下記の関連コラムをご覧ください。

関連コラム:2026年の区分所有法改正で何が変わる?改正の背景や影響を徹底解説

なぜこの違いが重要なのか?

建て替えは費用や工期、居住者の負担が大きいことから、合意形成に時間がかかるのが現実です。

今回の改正で比較的柔軟な再生手法は実施までのハードルが大きく下がりましたし、建て替えに関しても以前よりかは条件が緩和されます。

これにより、管理組合にとって選択肢が広がったことは大きな前進と言えるでしょう。

とはいえ「建て替えを選ぶ場合は、依然として高い議決要件をクリアしなければならない」事実は変わりません。

実際、この「5分の4」の壁を前にして計画が頓挫し、時間だけが過ぎていくことが管理組合にとって最大のリスクです。

建て替えが先延ばしになることで修繕コストはかさみ、空室増による管理費の枯渇、さらには耐震性不足による居住者からの訴訟リスクなど、深刻な「負動産化」のシナリオが現実味を帯びてきます。

だからこそ、管理組合は建て替えの検討と並行して「どの方法を採るべきか」を専門家と中立的に比較検討することが極めて重要なのです。

決議要件「3分の2」への緩和対象となるマンション再生について

建て替え以外のマンション再生は、一部の条件下において決議要件が「3分の2以上」に緩和されます。

その対象となるマンション再生は下記の通りです。

  • 建物・敷地の一括売却
  • 一棟リノベーション
  • 建物取り壊し
  • 共用部分の変更

建物・敷地の一括売却

一括売却とは、高経年化したマンションを敷地ごと売却し、再開発事業者に委ねる方法です。
再開発による資産価値向上や、管理組合の負担軽減につながります。

従来は全員同意が必要でしたが、改正後は条件付きで多数決決議が可能となります。

建物・敷地の一括売却は、耐震性不足や災害リスクが高いマンションにとって特に有効な選択肢です。

建て替えに比べて合意形成のハードルが低く、資金調達や工事の手間を管理組合が負担する必要がないためです。

再開発事業者が計画から施工までを担うため、居住者は新しい住まいへの移行や補償を受けながら、より安全で快適な環境を手に入れることができます。

通常時区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成

耐震性不足などの要件を満たす場合

区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成
政令指定災害による被災時区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成

一棟リノベーション

一棟リノベーションとは、建物の骨組み(柱や梁などの構造体)を残し、内部や外装をすべて新しくする大規模改修の手法です。

耐震補強や最新設備の導入、間取りの刷新などを行うことで、外観や機能はほぼ新築同様に生まれ変わります。

従来は区分所有者全員の同意が必要でしたが、今回の法改正により条件を満たせば多数決で決議できるようになりました。

この方法のメリットは、建て替えに比べて工期や費用の負担が軽く、環境負荷も抑えられる点です。

ただしこれは一般的な傾向であり、すべてのケースにあてはまるわけではありません。
建物の状態や工事内容によっては、費用や期間が大きく変わる場合があります

そのため、管理組合は事前に専門家の調査やシミュレーションを行い、どの手法がもっとも適しているかを慎重に検討することが重要です。

合意形成のハードルが下がったことで、老朽化マンションの再生手法として注目度が高まっています。

通常時区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成

耐震性不足などの要件を満たす場合

区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成
政令指定災害による被災時区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成

建物取り壊し

建物取り壊しは、高経年化や災害などで居住が困難になったマンションを解体する手法です。
従来は区分所有者全員の同意が必要でしたが、今回の改正で多数決による決議が可能になりました。

この方法は、耐震性が著しく不足している場合や、修繕コストが建て替えよりも高額になるケースで選ばれることがあります。

取り壊し後は敷地を売却し、再開発事業者に委ねることで、管理組合の負担を大幅に軽減できます。

また、災害で被災した場合には議決要件が3分の2まで緩和されるため、迅速な対応が可能です。
老朽化マンションの安全確保と資産価値の再構築に向けた現実的な選択肢と言えるでしょう。

通常時区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成

耐震性不足などの要件を満たす場合

区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成
政令指定災害による被災時区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成

共用部分の変更

今回の法改正では、共用部分の変更に関する議決要件も緩和されます。

具体的には、階段室部分を改造するバリアフリー化工事や、建物の外壁に新たに外付けするエレベーター設置工事などです。こ

れらの工事は、従来は出席区分所有者数、および議決権数の4分の3以上の承認が必要でしたが、改正後は「3分の2以上」の承認で可能になります。

この緩和により、居住者の高齢化や安全性向上に対応するための改修がより現実的に進めやすくなります。

特にバリアフリー化やエレベーター設置は、生活の質を大きく改善するだけでなく、資産価値の維持にもつながります。

ただし、工事費用や構造上の制約によっては実現が難しい場合もあるため、事前に専門家の調査や合意形成の準備が重要です。

政令で指定された災害とは

政令で指定された災害とはいわゆる「激甚(げきじん)災害」で、地震・津波・豪雨など国が政令で指定するものを指します。

これに該当する場合、建物の取り壊しや敷地売却の決議要件が「3分の2」に緩和されます

さらに激甚災害に指定されると、公共施設や農地の復旧費用の補助率が引き上げられ、仮設住宅の整備や中小企業支援など、幅広い特例措置が講じられます。

こうした制度は、災害後の迅速な復旧・再生を後押しするためのものです。

管理組合にとっては、被災時にどのような選択肢があるのかを事前に理解しておくことが、スムーズな意思決定につながります。
特に、議決要件の緩和は合意形成を大きく前進させるため、災害リスクを踏まえた再生計画の検討が重要です。

建て替えか、それ以外の再生か?管理組合が直面する最後の壁

建て替えのハードルの高さ、そして3分の2で決議可能な再生手法(一括売却、リノベーションなど)が抱える「高額な費用や技術的リスク」について把握いただけたかと思います。

重要なのはこれらの膨大な選択肢やリスクの中から、マンションにとって最適な答えを「中立的な立場」で選べるかどうかです。

多くの管理組合は情報を整理する専門知識や、意見が対立する中で円滑に合意形成を進めるための経験が不足しています

唯一の解決策:中立性と合意形成のプロフェッショナル

この課題を解決できるのは、特定の再生手法に偏らず、合意形成を中立的にサポートできる専門家しかいません。

三菱地所コミュニティでは、豊富な管理組合運営実績を基に、意見が対立しやすい再生のプロセスにおいて円滑な合意形成をサポートします。

「建て替えありき」ではなく、管理会社として中立の立場からあらゆる再生の選択肢を吟味し、居住者目線でそのマンションにとって最適な答えを一緒にお探します

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制度緩和で広がる、マンション再生の新たな選択肢

今回の法改正によって、マンション再生の可能性はぐっと広がりました。これまで「全員の同意」という高いハードルがあり、実現は難しいと感じていた管理組合も多かったはずです。

しかし、議決要件の緩和により、次のような選択肢が現実的に検討できるようになります。

  • 建て替え
  • 敷地売却
  • 一棟リノベーション
  • 建物取り壊し
  • 共用部分改修(バリアフリー化や外付けエレベーター設置など)

これらの方法は、従来の「全員同意」という壁を乗り越え、管理組合がより柔軟に未来の住まいを描ける環境を整えます。

ただし、選択肢が増えたからこそ、安易な判断は禁物です。

「建て替え」「敷地売却」「一棟リノベーション」、それぞれの道のりが持つ技術的・費用的な制約やリスクを正確に把握し、管理組合として中立的かつ客観的に比較検討することが、成功への唯一の鍵となります。

後悔しない選択のために。管理組合に寄り添う三菱地所コミュニティのサポート体制

老朽化マンションの再生は、時間との戦いです。

三菱地所コミュニティの「再生コーディネート業務」は、マンション再生の「実現」まで責任をもって最後までお手伝いします。

  • 知識を深めるための勉強会の開催
  • 区分所有者が判断できる資金面の詳細なシミュレーション
  • 各区分所有者との個別面談による合意形成の徹底支援

など、上記を通じて、管理組合が中立的な立場で最適な答えを導き出すまで徹底的に寄り添います

再生計画を前進させるために、ぜひ三菱地所コミュニティの具体的なサポート内容をご確認ください。

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「選択肢が増えたけど、何から検討すれば良い?」

そんな際は、ぜひ弊社にご相談ください。
弊社では管理会社としては非常に珍しく、管理組合向けの再生コーディネート業務を行っております。

三菱地所コミュニティの再生コーディネート業務とは?

主な業務内容は以下の通りです。

・区分所有者の皆様に再生の選択肢について知識を深めていただくための勉強会の開催

・大規模修繕を続けできるだけ建物の延命を目指すべきか、建て替えや敷地売却の方向に向かうべきか、区分所有者の皆さんがその判断を行えるための資金面のシミュレーション

・各区分所有者との個別面談による合意形成支援

管理会社ならではの管理組合に寄り添った中立的な立場でしっかりと検討の伴走をしていきます。
もちろん、方向性が決定した後も管理組合の方針に基づき、最後までご支援させていただきます。

弊社が管理業務を受託していないマンションでも対応していますのでお気軽にお問い合わせくださいませ。
詳しくは以下のサービス紹介をご覧ください。

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