マンション建て替えの1住戸ごとの費用負担は◯◯円!建て替え以外の選択肢についても解説

「このマンションにあと何年住み続けられるのだろうか」
「修繕積立金は足りるのか?」

━━こうした切実な不安から「建て替え」を検討している高経年マンション理事・管理組合員の方々がいらっしゃるかもしれません。

しかし、建て替えには1戸あたり2,000万円を超える莫大な費用と、住民の5分の4の合意という極めて高いハードルを伴います。
これが多くの管理組合が直面し、なかなか議論が進まない共通の課題となっている背景です。

とはいえ、マンションの老朽化は待ってくれません。

今回は建て替え費用の現実と「建て替え以外の再生の選択肢」について解説します。
あなたのマンションにとって最善な道筋を探すための確かな情報として、ぜひ最後までお読みください。

マンションの建て替え費用はいくらかかる?

建物の規模や構造、立地条件によって異なりますが、建て替えにかかる区分所有者の平均負担額は約2000万円を超えると言われています。

部屋の取得費用のほかにも、建て替え期間中の仮住まいや引越し費用、税金などの諸費用も発生します。

ただでさえ高額な負担額は近年、上昇傾向にあります。
建て替え事業における工事費の高騰や新たな容積率の確保困難などが影響しているようです。

【議論が停滞する前に、あなたのマンションの課題を整理しませんか?】

莫大な費用負担と合意形成の難しさから、多くの管理組合では再生に向けた議論が停滞しがちです。

しかし、建物の老朽化は待ってくれません。

問題が複雑になる前に、まずは現在のマンションが抱える真の課題と、将来の選択肢について専門的な知見を入れて整理することが重要です。

建て替えありきではない中立的な立場からのサポートで、議論の第一歩を踏み出しましょう!

マンションの建て替えが難しい理由4つ

一区画あたりおよそ2,000万円以上と、多額の費用が必要な建て替えですが、費用負担以外にも「建て替えが難しい」とされる下記理由が存在します。

  • 費用負担が大きい
  • 住民の合意形成が難しい
  • 法的・構造的に建て替えできないケースが多い
  • 建て替えの条件を満たせるマンションが少ない

詳細を解説します。

費用負担が大きい

前述の通り、建て替えには数千万円単位の費用がかかります。

立地条件が良い、容積率を大きく伸ばすことができるなど、建て替えの条件がかなり恵まれている場合には、負担金を低減することも可能です。

しかし、法的な制約や工事費の高騰により、このような建て替えは非常に難しくなってきています。
高齢の住民が多い高経年マンションでは資金調達が困難なケースも多く、建て替えに踏み切れない大きな要因となっています。

住民の合意形成が難しい

マンションの建て替えには、原則区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。

マンションの特性上、世代構成や経済状況が各々異なる中、合意形成の難易度は非常に高いと言えるでしょう。
また、高齢化が進むと健康上の理由などから

  • 積極的に議論に参加できなくなる
  • 意思表示が難しくなる

などの問題が発生しがちです。

その結果、不賛成者が多くなり、建て替えの決議要件を満たすことができない。といった事態も想定されます。

法的・構造的に建て替えできないケースが多い

建て替えには、建築基準法や都市計画法などの法的な制約が伴います。

特に、現在の建物が容積率や高さ制限を超えている場合、同じ規模の建物は再建できない可能性があります

高経年マンションの場合は、特に注意が必要です。
建築当初から法律や基準が改正されている可能性が高く、現行の基準を満たしていない、いわゆる「既存不適格」のケースが考えられます。

既存不適格の場合、建て替えたとしても当初より面積の小さいマンションとなってしまう恐れがあります。

建て替えの条件を満たせるマンションが少ない

国土交通省のデータによると、これまでのマンション建て替えの実績は、全国累計で323件(約26,000戸)に留まっており、マンションのストック数(約713万戸)と比較すると非常に少ないことが分かります。

これは、前述のような費用や法的制約、住民の合意形成の難しさが大きな障壁となり、なかなか前に進まないのが現状なのです。

引用:国土交通省掲出資料 マンションに関する基礎データ「マンション建替え等の実施状況」

建て替え以外の選択肢を検討するのもあり

高経年マンションをはじめとする老朽化の進んだマンションに残された道は、建て替えしかないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。
具体的には、下記のような選択肢も存在します。

  • 修繕・改修による延命
  • 敷地売却
  • 建物の取り壊し

それぞれの詳細を解説します。

修繕・改修で延命する

築年数が経過していても、新耐震基準など構造的に問題がなければ、大規模修繕や定期的な設備のメンテナンスによってマンションの寿命を延ばすことが可能です。
改修(※)も併せて行うことで、建物の資産価値を高めることも期待できます。

ほかの選択肢と比べ費用負担が少なく、住み慣れた環境を維持できるなど、大きなメリットも持ち合わせています。

ただし、あくまでも「比較的」であり大規模修繕や改修にも高額な費用が発生する点には注意が必要です。

修繕積立金の残高が計画に対して不足していないか、将来の建て替え費用を考慮した積立計画になっているかなどの確認は不可欠となります。

また、根本的な構造の改善は期待できないこと、修繕もいつかは限界を向かえることも念頭においておかなくてはなりません。
修繕の計画を立てる場合は「建物をあと何年使い続けるのか」という視点が重要となります。

※マンションの居住性を高めるための工事。オートロックの新設など。

敷地売却を行う

敷地売却とは、建物と敷地を一体でデベロッパーなどに売却することで権利を金銭化し分配することで区分所有関係を解消する方法です。

ほかの再生方法と比べると区分所有者の金銭的な負担が少なく、各々の事情に合わせた多様な選択肢が広がることが特徴です。

修繕・改修も現実的に難しく、建て替えも負担額の大きさで困難といったマンションにとって有効な手段と言えるでしょう。

2014年に新たに登場した敷地売却制度は何度か法改正を重ね、現在では耐震不足に加えて耐火性・防火性の不足、外壁などの剥落の恐れがある建物についても敷地売却が可能となりました。

建物を取り壊す

マンションを解体し、敷地を更地に戻す選択肢もあります。

これまで建物の解体には全員の合意が必要でしたが、法改正により5分の4以上の合意で実施可能となりました。

建物のみを取り壊すことを目的とした手法で、再建や売却の方針が未定でも実施可能です。
耐震性の不足や老朽化が著しいマンションなど、危険な状態の建物などに有効とされています。

ただし、解体費用は管理組合の負担となるほか、取り壊し後も固定資産税や維持管理費は必要になるため、取り壊したあとの管理組合方針の検討が必要になります。

【建て替え、修繕、売却… 数ある選択肢の中から「最善の答え」をどう選ぶ?】

マンション再生には、建て替え以外にもいくつかの選択肢があります。

重要なのは、これらの選択肢を「建て替えありき」ではない中立な視点で客観的に評価し、管理組合の皆様にとって最適な道筋を判断することです。

将来の資産価値を守る複雑な決断だからこそ、まずは専門知識を持つ中立な第三者に相談し、ゼロベースで再生プランの検討をスタートさせましょう!

マンション建て替えに関するよくある疑問

マンションの建て替え費用が払えない場合はどうなる?

マンションの建て替え費用は、建て替え決議の賛成者(区分所有者)が支払います

建て替え費用の捻出にあたっては、融資制度の活用も検討の一つです。
それが難しい場合には建て替え決議において非賛成者となり、建て替え事業に参加しない代わりに、賛成者に対して自身の区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すことになります。

なお、マンションの建て替えには、区分所有者ならびに議決権の5分の4以上の賛成が必要です。
そのため、少人数の賛成者だけで建て替えが決まり、費用を負担させられることはありません

マンションは築何年で建て替える?

これまでの事例では、一般的に築40〜50年が建て替え目安とされていますが、建物の状態や管理状況によっても異なります。

鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションの法定耐用年数は47年とされています。

しかし、法定耐用年数は、税法上の減価償却を算出することを目的に定められているため、マンションの物理的な寿命と直接的な関係はありません

一方でこの年数では耐震性・老朽化・陳腐化など何かしらの問題を抱えていることが多いことから、区分所有者全体で再生について検討する時期と言えるでしょう。

マンションを建て替えるとき、住民はどうなるのか

建て替えでは、再建建物の工事期間中は仮住まいが必要になります。

決議が成立するとここから建て替えの実施に向けた詳細な検討時期に入るため、すぐに引越しが必要というわけではありませんが、提示されるスケジュールをみながら仮住まい先の確保や引越しの準備を進めていく必要があります。

また、仮住まい先の家賃や引越し費用などは自己負担となるため、これらも念頭に置いておく必要があるでしょう。

建て替えに反対する区分所有者がいる場合、どうすれば議論を円滑に進められる?

反対意見を持つ方々に対し、下記の内容について丁寧かつ具体的な説明をすることで理解を求めることが基本となります。

  • 建て替えの必要性
  • 建て替えをすることのメリット(安全性の向上、資産価値の回復など)
  • 代替案(修繕や解体)との比較

2026年の区分所有法の改正により、一部条件において区分所有者の「4分の3」が賛成すれば建て替えが可能となります。

しかし基本は現行規定(5分の4の賛成)のままであり、多数の賛成を得ることはそう簡単なことではありません。

どうしても議論が滞るようであれば、専門家に相談してみるのも一つの手でしょう。

外部に相談する場合の留意点

外部に相談を依頼する際に注意したいのが、専門家による提案内容の偏りです。

専門家によっては売却や建て替えなど「それを前提とした」提案をしてくる場合があります。

それが悪というわけではありませんが「それがあなたのマンションにとって最善策なのか」という点に関しては少し疑問が残ります。

重要なのは「建て替えをすること」ではなく、マンションの継続や区分所有者にとっての最善策を取ること

これを忘れず、マンションの今後を検討していきましょう。

【「建て替えありき」ではない。あなたのマンションの最善策をゼロベースで検討する】

専門家による提案は時に偏りがちであり、「マンションにとっての最善策」を見失うリスクがあります。

もっとも重要なのは、マンションの継続と区分所有者の皆様の利益を第一に考え、建て替え・修繕・売却といったあらゆる可能性を中立的な視点で検討すること

私たち三菱地所コミュニティは「建て替えありき」ではない中立な立場から、管理会社としての実績と知見を活かして、皆様の最善策を見つけるまで伴走します。

まずは一歩、現状整理と相談から、マンション再生に向けた議論をスタートさせましょう!

【まとめ】建て替え費用を正しく理解し、将来の選択肢を見極めよう

建て替えは費用・合意形成・法的制約など多くのハードルがあり、実現が非常に困難です。

高経年マンションの再生においては「建て替え」に絞るのではなく、修繕・改修や敷地売却などの多様な選択肢を比較・検討することが不可欠です。
まずは各手法のメリット・デメリットを正しく理解し、マンションごとの課題解決に合った検討を進めていきましょう。

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