マンションの建て替え費用が払えないと不安な人へ 「今」知っておくべきプランとは

「建て替えの話が出たけれど、正直費用が払えない」
「反対したら“自宅を失う”と言われて、不安で眠れない」
――高経年マンションの現場では、こうした声は珍しくありません。
建て替えは、その是非を判断する前に、家計と暮らしの問題として重くのしかかります。
ただ、結論から言うと「払えない=すぐ家を失う」ではありません。
制度上の回避方法や、資産と生活を守る選択肢は用意されています。
今回は、よくある誤解をほどきながら、今のうちに知っておくべき選択肢を整理します。
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建て替え費用が払えないとどうなる?大切な自宅を失う最悪のシナリオとは

建て替えが確定しその費用が支払えない場合、最悪のケースだと競売にかけられる可能性も考えられます。
しかし大前提として、建て替えは「決まったら自動的に全員強制的に参加させられる」わけではありません。
建て替えに参加する人、しない人で支払い義務は異なりますし、支払う場合でも負担額が軽減されるケースも存在します。
そもそも、こうした負担の大きさや合意形成の難しさからマンションの建て替えが実行されるのは非常にまれです。
とはいえ、最悪のケースに陥る可能性がゼロであるわけではありません。
もしあなたのマンションが建て替えを検討しているようであれば、自分ごととして建て替え費用やその周辺についてあらかじめ知っておきましょう。
関連コラム:マンション建て替え事例から見る、建て替えが進まない理由と実情
そもそも建て替え費用とは
建て替えにかかる費用は大きく分けて「事業費」と「居住者の一時的費用」の2種類があります。
事業費は、建て替え事業そのものにかかる費用で、解体・設計・建築・各種申請などの直接費に加え、調査・コンサル費用などを含みます。
これらは基本的に区分所有者の個人負担となり、条件により差がありますが平均で2,000万円以上にのぼります。
また、居住者が個々で負担する一時的な費用として、建設期間中の仮住まいや引っ越しの費用などがあります。
建て替え費用に悩む人が「今」知っておくべき3つの法的・経済的なプラン

建て替えの議論は、賛成・反対を議論する前に「費用を負担できるかどうか」という点で意見の温度差が生じ、話が進みにくくなることがあります。
だからこそ、建て替えの話が出た段階で融資や支援制度、費用を負担できない場合の選択肢を早めに把握しておくことが安心につながります。
ここでは、建て替え費用を払えるかどうか不安を感じている方に向けて「建て替えに参加する場合」と「建て替えに参加しない場合」、それぞれの具体的なプランを紹介します。
【参加する場合】「公的支援」を活用する
まず検討したいのが、公的制度や融資の活用です。
例として、住宅金融支援機構の制度の中には一定条件のもとで高齢者の返済負担を軽くする仕組みが用意されているものがあります。
具体的には、存命中は利息のみを支払い、元金は死亡後一括返済とするといった仕組みです。
また自治体によっては、耐震化・老朽化対策として補助制度を設けていることもあります。要件や補助額は地域で異なるため、各自治体へ確認が必要です。
制度をうまく活用することで、自己負担額を抑えられる可能性があります。
管理組合としては早期に情報を整理し、該当しそうな方が相談できる導線(相談窓口・説明会・資料)を整えることが重要です。
【参加しない場合】建て替え事業費を払わず住み替える「立ち退き」

建て替えに参加しない場合は、建て替え費用を支払う必要はありません。
この場合に選択肢にあがるのが「立ち退き」です。
「立ち退き」と聞くと強い言葉に感じますが、マンション建て替えや再生事業の現場では、一般的に「転出」や「明け渡し」といった表現を用います。
実態は「建て替え事業に参加せず、住み替える」という選択肢ですね。
建て替えに参加しない(賛成しない)場合は、新築住戸を取得する代わりに「現在の権利を手放し、対価を受け取る」ことができる「売り渡し請求」という仕組みがあります。
この対価(転出補償金)をもとに賃貸へ移る、あるいは別マンションを購入するなど、次の住まいを選ぶことが可能です。
ただし、受け取れる金額が「新居取得に十分」とは限らない点は注意が必要です。
立ち退き料の支払いについて
「立ち退き料」という言葉は基本的に区分所有者には適用されません。
立ち退き料とは、賃貸借契約において貸主都合により借主に退去を依頼する場合に支払われるケースが大半です。
移転費用や賃料差額の補償など、その内容や金額は貸主と借主の交渉により任意で設定します。
なお、建て替えが決まった場合には、定期借家契約に切り替えることが一般的です。
一方で、マンションの建て替えや再生事業における区分所有者の退去費用については「転出補償金」の支払いが発生します。
建て替えに参加(賛成)する場合は、一律に「立ち退き料」を義務付ける法律はなく、基本的に退去のための費用の補償はないのです。
ただし、場合によっては仮住まい・引越費の支援を事業費の中で設ける事例があります。
自治体が仮住まい支援を行う制度も存在しますが、実際の支援内容は事業計画・合意内容に依るため確認が必要です。
2026年度区分所有法改正について
2026年4月の区分所有法改正では「建て替え決議がされた場合に、金銭補償を前提として賃貸借等を終了させる制度」が創設されます。
背景として、建て替え決議がされても賃借人の同意がない限り専有部分の賃貸借契約が終了しないことから、建て替え工事の円滑な実施を阻害されていたという事例がありました。
法改正により請求権者(専有部分の賃貸人である区分所有者など)は「賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金」を支払うことで、賃貸借契約の終了請求から6カ月経過後に賃貸借契約を終了することができるというものです。
関連コラム:2026年の区分所有法改正で何が変わる?改正の背景や影響を徹底解説
【建て替え決議の前に】事前に住戸を売却する

建て替えの費用負担が現実的に難しいなら、住戸を売却するという選択肢も有効な手段になり得ます。
検討しやすいのは建て替えが具体化する前、つまり相場や買い手がつきやすいタイミングです。
ただし、注意点もあります。
- 建て替えの情報が出回ると、価格が下がりやすい
- 売却益へ税金がかかる場合がある
- 住宅ローンが残っていると、売却しても完済できない(オーバーローン)の可能性がある
焦って結論を出すのではなく、複数社から査定を取ることや、今後の資金計画を考慮して「手元にいくら残るのか」を比較検討することが大切です。
建て替えを含むマンション再生の相談は三菱地所コミュニティへおまかせ
建て替え以外の選択肢も検討したい、という場合はデベロッパーに相談するのは適切ではありません。
建て替え以外の提案を受けられる可能性は極めて低いでしょうし、そもそも事業性が低そうなマンションの場合は相談にすら乗ってもらえない可能性もあります。
「じゃあ、どこに相談したら良いの?」
そんな際は、ぜひ三菱地所コミュニティにご相談ください。
まずは、負担額の見える化と出口戦略(参加/不参加)の整理を、中立的な専門家と一緒に確認しておきましょう。
建て替え決議後の手続きの流れ

マンション建て替えへの参加表明は、建て替え決議が成立したあとでも何度か意思決定のタイミングが用意されています。
一般的な「マンション建て替え円滑化法による建て替え」の流れを踏まえておくことで、建て替えに賛成するか否か冷静に判断することができるでしょう。
建て替え決議で正式に管理組合の方針が決まったあとは、以下のような流れで手続きが進みます。
- 建替組合の設立
- 建て替え不参加者への売り渡し請求
- 権利変換計画の策定・認可
- 解体工事・新しいマンションの建設工事
- 建替組合の解散・再入居
① 建替組合の設立
建て替え合意者および議決権の各4分の3以上の同意により、定款と事業計画を定めたうえで建替組合の設立認可を申請します。
建替組合は建て替え事業の施工者として法人格を有し、工事請負契約や資金の借り入れなど各種契約の締結を行います。
② 建て替え不参加者への売り渡し請求
建て替え決議に賛成しなかった区分所有者に対して、事業に参加するか否か催告します。
催告を受けた場合は、2カ月以内に参加の有無を回答する必要があります(回答しない場合は不参加とみなされます)。
この手続きによって建替組合は、不参加者に対し区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます。
この期間が建て替えに参加する・しないを決める基本的なタイミングです。
つまり「参加しない=取り残される」ではなく、制度上の清算ルートが用意されているのです。
③ 権利変換計画の策定・認可
権利変換計画とは、建て替え前のマンションの区分所有者や借家権者などの権利が、新しいマンションにどのように移行するかを定めた計画のことです。
建て替えに合意したものの事業に参加しない区分所有者は、建替組合の設立認可の公告から30日以内であれば区分所有権または敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができます。(借家人においても同期間に「権利変換後の借家権を取得しない旨」を申し出ることが可能)
新マンションでは従前よりも家賃が高くなることが一般的であることから、借家権を新たに取得せず「補償金を受け取って転出する」選択が可能な仕組みが用意されています。
④ 解体工事・新しいマンションの建設工事

権利変換計画が決定すると、建替組合と建設会社の間で工事家請負契約を締結。
いよいよ工事に着手します。
解体工事から新しいマンションの建設工事までの期間は一般的に1.5~3年程度で、建て替え参加者はその間仮住まいへの引っ越しが必要です。
この期間に新しいマンションの管理規約や管理費などの管理運営計画を策定します。
⑤ 建替組合の解散・再入居
工事完了後は建替組合の清算手続きと解散を行います。
新しいマンションの権利の価格が建て替え前のマンションより高い場合は、その差額が建て替え参加者の負担する費用となり、建替組合へ支払います。
すべての手続きが完了すると、仮住まいしていた建て替え参加者は再入居し、新しいマンションでは新たな管理組合が設立されます。
払えないと競売(差し押え)の対象になる?
結論から言うと、建て替え費用が払えない「だけ」で自動的に競売とはなりません。
ただし、注意点があります。管理費・修繕積立金などの滞納が長期化すると、管理組合には法的に回収手段があり、手続きとして競売が検討される可能性があります(先取特権など)。
個別事情で判断が分かれるため、不安がある場合は、早めに管理組合や弁護士などへ相談することが安全です。
あなたの不安解消には管理組合の「公平な意思決定プロセス」が必須

建て替えが進まない大きな理由の一つに、経済的負担の大きさがあります。
また、経済事情は個々で事情が異なることから、建て替え決議に至るまでの合意形成は容易ではありません。
個々の事情を置き去りにしないためにも、管理組合は十分な議論を重ねながら融資情報や補助金についてなど、住民の負担軽減に向けた検討や情報共有を行い、建て替えに対する各区分所有者の納得感を高めることが重要です。
とはいえ、管理組合だけで進めることにもある種の危険が潜んでいます。
推進派やデベロッパーなど特定の業者の意見に偏りがちで、そのマンションにとって本当に意味のある結論に落ち着くかどうか不安が残ります。
だからこそ、マンション建て替えについて議論する際「中立的な専門家」の立場が重要となるのです。
なぜ中立的な専門家の介入が必要なのか?不公平なプロセスを防ぐメカニズムとは

理事会や総会だけで進めると、推進派の熱意が強いほど「建て替えありき」に寄りやすいことがあります。
また、事業者の提案は悪意がなくても「事業者に有利な前提」が入りやすいことが現実です。
どちらにも肩入れしない中立的な立場の専門家が入ることで:
- 建て替え以外の選択肢も含めて、客観的に条件を比較検討・整理できる
- 情報格差が小さくなり、区分所有者の納得感が上がる
などの効果が期待できます。
マンション再生は「建て替え」以外も存在する
マンションの将来を考える際、建て替え以外にも選択肢はあります。
建て替えの議論が強くなると、大規模修繕や改修工事で建物を維持する案や、敷地を売却して金銭化を図るといった代替案が、十分に比較されないまま進むことがあります。
ここで大事なのは「どれが正しいか」ではなく、各案の費用対効果や1戸当たりの負担額、マンションの課題を解消できるのか、といった各項目を同じ物差しで公平に比べることです。
こうした事情に対しおすすめなのが、三菱地所コミュニティの「再生コーディネート」です。
私たち三菱地所コミュニティでは、建て替えをはじめとするマンション再生の準備段階から実施段階に至るまでトータルでサポートしています。
長年積み重ねてきた管理組合運営実績と居住者目線を基盤に、マンション再生に関するあらゆる選択肢を提示。
区分所有者の皆様が心から納得できる最善の答えを一緒に見つけだします。
最善のマンション再生計画をスタートさせるため、まずは管理会社ならではの知見を持つ三菱地所コミュニティにご相談ください。
安心してマンションの将来を考えるために今からできること

建て替えを含むマンションの将来についての議論は、早く動くほど選択肢が多く、時間が経つほど選択肢が限られていく傾向があります。
例えば:
- 公的支援や融資条件に関する情報収集を行う
- 引越しや仮住まい、売却にかかる諸費用などを含めた資金計画を立てておく
- 中立的な専門家の力を借りて、客観的な事業試算や選択肢の比較を行う
など、これからの暮らしをより安心して考えていくために、まずは「いま」できる小さな一歩から始めてみましょう。

