マンション建替円滑化法の改正内容を徹底解説!老朽化マンション再生の新ルールとは

2026年(令和8年)4月に、マンション関連法が大幅に改正されます。
中でも注目すべきは「マンション建替円滑化法」の改正です。この法改正により、老朽化マンションの再生手法が多様化し、これまで建て替えが困難だったマンションにも新たな選択肢が生まれることになります。
今回のコラムでは、マンション建替円滑化法の改正内容とその背景、そして管理組合が今から取るべき対策について詳しく解説します。
INDEX
マンション建替円滑化法とは?

マンション建替円滑化法は、正式には「マンションの建て替え等の円滑化に関する法律」といい、老朽化したマンションの建て替えを円滑に進めるための手続きや、権利調整の方法を定めるために制定されました。
マンションの建て替えは、区分所有者全員の権利に関わる非常に複雑な事業です。
そのためこの法律によって、建て替え組合の設立や権利変換計画の作成など、具体的な手続きの枠組みが整備されてきました。
しかし、耐震化や建て替えについてなかなか進まない現状は目下の課題としてよくあげられます。
そのため、2002年(平成14年)に施行されてから今に至るまで、継続して法改正が行われているのです。
2014年(平成26年)には、耐震性不足など特定の要件を満たすマンションについて「マンション敷地売却事業」を行えるよう法改正が行われました。
この改正により、マンション再生の選択肢に建て替えだけでなく敷地売却も加わりました。
そして2026年(令和8年)4月には、さらなる法改正が行われます。
法改正の背景
2026年の法改正の背景には、マンションを取り巻く次のような背景があります。
- マンションストックの急増
- 老朽化の進行
- 管理不全問題
このようなマンションを巡る「建物と居住者の2つの老い」は、時間が解決してくれるものではありません。
むしろ悪化の一途を辿るばかり。居住者の安全を脅かす問題を解決するため、改正は必然でした。
こうした背景により同時に区分所有法も改正されることから、マンション再生に向けた法整備が2026年から大きく前進することになります。
関連コラム:2026年の区分所有法改正で何が変わる?改正の背景や影響を徹底解説
マンション建替円滑化法2026年改正の主なポイント

2026年(令和8年)4月に行われる、マンション建替円滑化法の法改定。
どのような点が変更となるのでしょうか?
法改正では大きく4つのポイントが示されています。
- 名称の見直し
- マンションの新たな再生手法に対する事業手続を整備
- 一部地権に対する権利変換
- 建て替え・更新における高さ制限の特例を追加
名称の見直し
これまでの法律は「マンション建替円滑化法」という名前でしたが、改正後は「マンション再生法」に変わります。
この変更は単なる名前の変更ではありません。
これまで法律の対象は「建て替え」だけでしたが、今後は一棟リノベーション、建物や敷地の一括売却、建物の取壊しなど、さまざまな再生方法が含まれます。
つまり、マンションの老朽化問題に対して建て替えだけではなく、より柔軟で現実的な選択肢を法的に整備することが狙いです。
新たな再生手法の拡充
区分所有法の改正により、これまでの手法である「建て替え」などに加えて新たな再生手法が創設されます。
| 従来 | |
| 建て替え | ・老朽化したマンションを解体し、新しいマンションを建てる方法 ・耐震性不足や構造劣化など、根本的な問題が解決可能 |
| 改修(耐震改修・バリアフリー化など) | 建物を使い続けながら、耐震性や設備を改善し、快適性を高める方法 |
| 敷地売却 | マンションと敷地を一括で売却し、区分所有関係を解消する方法 |
| 新たに加わる手法 | |
| 建物更新(一棟リノベーション) | ・基礎や柱などの構造部分を残し、専有部、共用部を全面的に改修する方法 ・住戸の配置変更や権利変換も可能で、建て替えよりコストや合意形成のハードルが低い場合がある |
| 建物取り壊し敷地売却 | ・建物を解体し、更地にして敷地を売却する方法 ・買受人から高値での買取が期待できるが、解体費用の準備が必要 |
| 取り壊しのみ | ・再建や売却の方針が決まっていなくても、危険な建物を取り壊すことが可能に ・取り壊し後の土地利用や固定資産税への対応が必要 |
これらの選択肢が増えることで事業性や合意形成の柔軟性が高まり、マンション再生の可能性が広がります。
新たな再生手法に対する事業手続きの整備
新たな手法を実行するためには、事業の安定した進行が欠かせません。
そのため、新たな再生手法に対する手続も整備される予定です。
具体的には次のような仕組みです。
| ① 再生組合の設立 | 各手法に応じた組合を設立し、事業を進めるための主体を造る |
| ② 権利変換計画 | 区分所有権を再生後の権利に置き換える計画を策定し、認可を受ける |
| ③ 分配金取得計画 | 敷地売却などで得られる分配金の取り扱いを明確にする計画 |
| ④ 賃貸借の終了請求 | 賃借人への補償や契約終了の手続きを法的に整備 |
こうした手続きが整うことで、マンション再生事業の実行可能性と透明性が高まり、管理組合にとって安心して進められる環境が整います。
多数決要件の緩和
これまで、マンションの建て替えを決めるには「議決権の5分の4以上」という非常に高いハードルがありました。
今回の改正では、この要件が緩和されます。
| 条件 | 従来の決議要件 | 改正後の決議要件 |
|---|---|---|
| 耐震性不足など一定の条件を満たす場合 | 5分の4以上の合意 | 4分の3以上の合意 |
| 敷地売却の場合 | 全員の合意 | 5分の4以上の合意 ※耐震不足などの条件を満たせば4分の3以上で可 |
| 被災マンションなど特定の条件下 | 3分の2以上の合意 |
この緩和によって、合意形成のハードルが大きく下がり、再生事業を進めやすくなることが期待されています。
決議要件の緩和についての詳細は下記コラムをご覧ください。
関連コラム:法改正マンション建て替え決議が「4分の3」へ緩和!その条件とは?
一部地権に対する権利変換
マンションを建て替えるとき、隣の土地や底地を取り込むことで敷地を広げる場合があります。
では敷地を広げた場合、その土地の権利はどうなるのでしょうか?
今回の改正ではその土地の所有者の権利を、新しいマンションの部屋の権利に置き換えることができる仕組みが導入されました。
これにより隣接地の所有者と「土地をどうするか」で揉めることなく、合意形成がしやすくなります。

建て替え・更新における高さ制限の特例追加
耐震性が不足しているマンションを建て替える場合、これまでは高さ制限がネックになることがありました。
今回の改正では特定の条件(※後述)を満たせば、行政の許可を受けて高さ制限を緩和できる特例が追加されます。
この特例を使えば、建て替えや一棟リノベーションの際に、より高い建物を建てられる可能性があります。
結果として、保留床(販売できる床)を増やせるため、事業性が高まり、区分所有者の費用負担を減らせることが期待されています。
追加された特例について
高さ制限の特例を受けることのできる条件としては下記が予定されています。
・要除却認定を受けたマンション
(耐震性不足などにより、老朽化したマンションを取り壊す必要があると行政が認めたもの)
・敷地面積が一定規模以上
(例:500㎡以上)
・周辺の市街地環境に配慮し、特定行政庁が許可したもの
(許可に当たっての考え方は、法施行までに「許可準則」として示される予定)
マンション建替円滑化法の改正がもたらす影響と管理組合が取るべき対策

2026年の法改正で、マンション再生の選択肢が広がることは分かりました。では、再生の進め方そのものは変わるのでしょうか?
結論として、大きくは変わることはありません。
マンション再生は、次の4つのステップを踏んで進めます。
- 準備段階:再生への発意
情報収集、問題意識の共有、勉強会の開催、意向調査などを行う
- 検討段階:再生手法の比較
改修・建て替え・敷地売却など、複数の手法を比較検討する - 計画段階:再生方針の決議
改修決議、建て替え決議、敷地売却決議など、方針を正式に決定 - 実施段階:事業の実行
再生組合の設立、工事の実施、売買手続きなどを進める
この一連のプロセスは、全体で約8~10年程度かかる長期的な取り組みです。
法改正で方法は増えましたが、どの手法を選ぶか、そして実施まで進めるには、依然として区分所有者の合意形成が最大のハードルとなります。
管理組合が今取るべき対策

法改正に備え、管理組合として今から何を始めるべきでしょうか?
法改正の施行は2026年4月ですが、準備は早ければ早いほどスムーズです。
今のうちから次の4つのポイントを押さえておきましょう。
| 長期修繕計画の見直し | ・築年数に応じて、現実的な修繕・再生計画を策定するのがおすすめ ・建て替えやリノベーションを視野に入れた計画が重要 |
| 専門家との連携 | ・再生コーディネーター、弁護士、税理士など、専門家の支援を受ける体制を整える ・法的手続きや資金計画の検討に不可欠 |
| 金融支援制度の活用 | ・住宅金融支援機構による融資や税制優遇など、国や自治体の支援制度を確認 ・活用できる準備を進める |
| 合意形成の準備 | ・勉強会やアンケートを通じて、区分所有者の理解を深める ・情報共有と対話の場を早期に設けることで、あとの決議がスムーズになる |
法改正がもたらすマンションの新たな展望

今回の「マンション再生法」への改正によって、これまで再生が難しかったマンションにも新しい可能性が広がります。
ただし、合意形成や資金負担といった課題は依然として残るため、注意が必要です。
重要なのは、「このマンションを今後どうしたいか」を、居住者一人ひとりが自分事として考えること。そして、管理組合が情報を共有し、対話の場を設けることです。
ちなみに、「建て替え以外の選択肢も検討したい」という場合、通常の管理会社では対応が難しいケースがほとんどです。
そこで、弊社では管理会社としては珍しく、管理組合向けにマンション再生コーディネート業務を提供し、再生の検討から実行までをサポートしています。
主な業務内容は以下の通りです:
- 区分所有者の皆様に再生の選択肢について知識を深めていただくための勉強会の開催
- 延命を目指すべきか、建て替えや敷地売却の方向に向かうべきか判断を行えるための資金面のシミュレーション
- 各区分所有者との個別面談による合意形成支援
管理会社ならではの管理組合に寄り添った中立的な立場でしっかりと検討の伴走をしていきます。
もちろん、方向性が決定したあとも管理組合の方針に基づき、最後までご支援させていただきます。
詳しくはサービス紹介をご覧ください。
弊社が管理業務を受託していないマンションでも対応していますので、お気軽にお問合せください。

